■意外な終末
というわけで山を降り始めたんですけど、とにかく下山が怖い!そもそも「登るのが大変な道」はイコール「降りるのも大変な道」でもあるわけです。それに加えて雨のせいでますます足元が不安定になって滑りまくる。
富士山の下山も大変だったけど、そうは言ってもひたすら長いだけだった。けど、こっちは普通に危ない。単純に言うと「嫌だ!」「やめて!」「勘弁して!」の連続。
「いや、これでこそ登山というものだ」
「マジすか」
「降りるのがきついが、降りない限り逃げようがない。極限状態まで身体を追い込むことで、肉体を鍛えるわけだ」
「なるほど。カッコいい」
「そして帰宅したら、「12歳。~ちっちゃなムネのトキメキ~」で、小学生のくせに軽々と男女交際をしている連中を見て、心を鍛える」
※ちゃおに連載されていた小学生少女の恋愛漫画。現在アニメが放送されている
「なるほど。大丈夫かこの人」
そんな感じでヒーコラいいつつ下山すること数時間。多少は山道もマシになってきて、ちょっとは落ち着いてきたか…と思ってたら、向かいから犬の散歩をしながら歩くご婦人とすれ違いました。
登山のお約束で「こんにちわー」と挨拶しつつすれ違う我々。
「地元の方かな。犬の散歩にこんな道を使うとは凄い」
「確かにすご…ん?」
「どうした」
「……あれ?あまりにも登山がキツかったから完璧に忘れてたけど、そういえばここって、女人禁制の地だったハズじゃ?」
「あっ」
「ひょっとしたら、どうしても山に登りたくて、禁を破って入山したとか…?」
「いや、普通に犬を連れてたし、そんな雰囲気でもなかったが…てか今にして思えば、山小屋にも普通にカップルで来ている人とかいたな」
「そういやいたー! なんでなんでー!?」
■帰宅後
「よくよく調べたら、“大峰山”とは現在、広義として”大峰山脈”のことを指しているらしい」
「はあ」
「そして女人禁制になっているのは大峰山脈の中でも”山上ヶ岳”という山だけのようだ」
「ほうほう」
「対して我々が今回登ったのは、大峰山脈の中の“八経ヶ岳”という山だ。これは大峰山脈の中では最高峰の高さではあるんだが、別に女人禁制でもなんでもなかったようだ」
「マジすか! コミケで大手の列に数時間並んでようやく本を購入したと思ったら、委託販売してただけの別サークルの本だった時みたい! 一番悲しいやつだ!」
「分かりづらいが分かりやすいな」
「こうなったら自分を慰めるために、奮発してアニメグッズを買いまくるしかない。女人禁制も完全解禁!」
「そもそも女人禁制の山には入ってないんだけどな」
(おわり)