熱気球。

 

 あの、熱で飛ぶ気球だ。きっとみんなもスーパードンキーコング2の「ねっききゅうライド」や『よつばと!』の熱気球の話なんかでよく知っていると思う。眼科に行くとなんか見せられるやつとしても有名だ。その熱気球の話だ。

 

 皆熱気球がどんなものなのかは知っていても、熱気球の競技についてはどうだろうか。俺(ナ月です)は先日佐賀県で行われた「2019佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」に遊びに行った際に熱気球の競技を目の当たりにして大興奮した。熱気球の競技、めちゃめちゃ熱い。

  このイベントはインターナショナルと銘打っているように世界的な熱気球のイベントだ。世界中から熱気球野郎たちが腕を競いにやってくる。

 

 熱気球の競技には様々なものがあるが、大会でどの競技が行われるかは競技の直前に風とかの様子をみて決定される。まさに風まかせだ。俺が観戦した時に行われたのは「ゴードンベネットメモリアル」という競技だった。

 

 ゴードンベネットメモリアル。図で説明すると、こんなだ。

 

 熱気球を操作してターゲット近くまで飛んできて、四角や三角の採点エリア内にマーカーをぶん投げる。ターゲットからの距離が近い人が勝ち。そういうのだった。

 

 熱気球たちは風上の方からやってくる。熱気球の操作というのは「上昇」「下降」の二つしかできない。行きたいところへ行くには行きたい方向へ風が吹いている高度まで上がったり下がったりするしかない。風を読む力が重要なのだ。そのようなことを司会の方が解説していた。超かっこいい。

 

 じっと風上を見ていると、遠くに少しずつ熱気球が見えてくる。

 

 ふわふわふわふわ徐々に迫ってくる。

 

 ゆったりしているようでいて結構早いぜ、熱気球。気がついたら空が無数の熱気球で埋め尽くされていた。

 

 巨大な飛行物体が頭上を悠々と飛んでいる。1つでもかなりの迫力だ。それが次から次へと飛んでくるのだ。

 

 このようにかなり低いところを攻めて来る方もいる。日常と非日常が入り混じった、なんだか夢みたいな光景だ。

 

 そしていよいよマーカーを投げる。マーカーはリボンのようなものがついた砂袋らしい。投擲の瞬間は高所恐怖症でなくとも「そんなに乗り出しちゃって大丈夫かよ」と心配になってしまう。そして無事マーカーが採点エリアに入るとホッとする。

 

 次々とマーカーが投げられていく。右にチラッと写っている風船は風向きを見るためのもの。

 

 この方は綺麗に真上まで飛んで来ている。すごい。下のでかいバツ印がターゲットで、右側に伸びているのが三角の採点エリアだ。もうすでにかなりの数のマーカーがギリギリに投げ込まれていることがわかる。接戦だ。

 

 もしもターゲットに近づくことに失敗したとしてもマーカーをぶん投げて採点エリアに入ればいいので、これ以上近づけないと判断したらこうして放り投げるのもアリだ。客席に落ちて来ることもあるのでそういう時は触らないようにしよう。過去の大会ではエリア外に落ちたマーカーを犬が持っていってしまったこともあるらしい。のどかだ。

 

 当然できるだけ狙いたい地点の真上にくるのが望ましい。皆狙う地点は一箇所だ。よってこのように「ぶつかるんじゃねえのかそれは」というほど熱気球同士が近づく場面もある。両者ともかなり良い位置に投下していた。

 

 限りなくターゲットに近い採点エリアの真上だ。しかもめちゃめちゃ低い。超すごい。

 恥ずかしながら俺は30歳にもなってスポーツ観戦の何が楽しいのか今までまったくわからなかった。自分がやるならまだしも、他人と他人がスポーツしているのを見て何が楽しいんだよと思っていた。

 だが俺はこの投擲の瞬間、自然に「ウォーーーーー!!!」と叫んでしまった。スポーツ観戦で叫ぶ人間の気持ちが完全にわかった。熱気球の競技で。熱気球の競技、めちゃめちゃ熱いスポーツだ。

 それからというもの俺は良い位置に落ちれば「ウォーーーーー!!!」エリア外に落ちれば「アァーーーー!!!」と叫びまくっていた。

 

 マーカー投擲を終えた熱気球たちは悠々と客席の上を飛んでいく。そこにあるのはのんびりふわふわな熱気球ではない、渾身の一撃を放った空の戦士たちの姿だ。客席からは惜しみない拍手が送られる。

 

 そして気球たちはそこらへんに着陸する。そこらへんに着陸できる会場探すの、大変だっただろうな。

 

 これが熱気球の競技、ゴードンベネットメモリアルだ。熱気球の競技の熱さを少しでもお伝えできただろうか。熱気球の競技には他にも様々なものがあるが、何が見られるかは冒頭でも述べたように風まかせだ。競技そのものが中止になることも少なくない。

 熱気球のイベントがあればぜひ機会を逃さずに見にいってみて欲しい。

 無数のでかい飛行物体が頭上で戦いの火花を散らす。そんなのが見られるのは熱気球の競技だけだ。