タピオカうーーーーっめ!
タピオカ片手に台湾へ想いを馳せていたところ、変わったゲームを発見した。
台湾産のホラーアドベンチャー「螢幕判官」。スマホだけじゃなくてSteamとSwitchでも遊べる。
画像に写っているキービジュアルを見てほしい。小学生の頭をキツツキがぶっ叩いている。なんなんだ。最後まで遊んだが小学生もキツツキも一切登場しなかった。
なんなんだ。
タイトルの読み方もわからない。
1文字目から読めない。紹介記事を書いている今も読めていない。みんなも雰囲気で読もう。
さて、肝心のゲーム内容は輪をかけて珍妙である。
舞台は1970年代の台湾。プレイヤーは主人公の半生を追体験しながら、彼が引き起こした事件の真相を解き明かしていく。
主人公には強い妄想癖があり、彼の主観で見る世界はゲームそのもの。
本来のジャンルは「アドベンチャー」なのだけど、妄想をそのままゲーム化したようなシステムになっていて、一言で説明するなら「なんでもあり」だ。なんでもありの世界だからビームも出る。受け入れるしかない。
一応補足しておくが、この世界で俺たちは左側のおぼっちゃまくんだ。受け入れるしかない。
剣と鎧でモンスターと戦ったかと思えば……
いきなり音ゲーが始まったりする。リズムに合わせて嫌な金持ちをぶん殴れ!
個人的に好きなのが、第1章にあたる幼少期編。
でっけー宇宙馬(うちゅんば)が見守る幼稚園からコッソリ抜け出すのが目的だ。この章はパズル要素多めのステルスゲーになっている。
おひるね中の友達をそ〜っと動かして……
見回りの先生だ! 隠れろ〜〜〜!!!
なぞときパズル! 解けるかな〜〜〜?
いや力技で詰め込むんかい
ボス戦では唐突にランアクションが始まる。怖いしムズイ。
子供の頃って目に映るもの全てが巨大で、魔法じみた新鮮さを帯びていた気がする。公園のアスレチックはお城に見えたし、怖い先生は逆らいようのない怪物だった。
子供が世界に感じている楽しさと恐怖、正と負の両面が表現されていて面白い。
だけど「潰すとギャン鳴きする鳥のおもちゃ」がトラップ的にいっぱい落ちてるのはカルチャーショックで笑ってしまった。台湾の幼稚園ではこれが普通なのか。めちゃめちゃうるさくないか。保育士さんの心労は大丈夫だろうか。
ところで、主人公はなぜ幼稚園から脱走を試みたのだろう? おひるねに飽きてお外で遊びたくなったのかしら?
正解は……
「不倫疑惑のある父親を問い詰めるため」である。不倫相手は担任の先生。ボス戦で追いかけてきた蜘蛛の化け物も彼女だ。この事実を知ってめちゃくちゃ気分が沈んだ。マジの意地悪が考えたいじわるクイズを出すな。
幼少期を過ぎても主人公の境遇はとにかく悲惨である。いじめ、裏切り、社会的制裁……。そうした苦境をゲームに捉えることで、かろうじて現実と向き合おうとする。
妄想の中でモンスターに剣を突き立てている時、現実では「誰か」を痛めつけているわけだ。
プレイヤーは楽しげな空想を眺めながら「うわ〜〜〜、絶対に悪いことが起こってんだろうな〜〜〜」と恐怖することしかできない。ファンタジー感が増せば増すほど、その裏で進行する最悪の事態を想像して薄ら寒くなる。
「ホラー」の方向性が嫌すぎる。
どこまで行っても救いがない。陰湿な方向にパワー全振り。心のやらかい場所を一息に締め殺す。グラップラースガシカオ。
映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」は不幸な女が偽りのミュージカルを演じる物語だが、「螢幕判官」はそのゲーム版といえるかもしれない。ああ嫌だ嫌だ……。
そんなわけで
3時間かけて一気にクリアしてしまった。
めちゃめちゃ胸糞悪いんだけど、そのせいで逆に続きが気になってしまう。演出も斬新で飽きさせない。
「次は何が起こるんだろう……」という怖いもの見たさと、「次は何が起こるんだろう!?」というワクワクが悪魔合体して、悪趣味なモチベーションがずっと続く。
初めてタピオカに出会った時、馴染みの薄い黒糖味とモチャモチャした食感、沼から湧き出た黒マナみたいなビジュアルに、「何これ!?」と叫びながら飲み干したのを覚えている。
「螢幕判官」を遊んだ感想も、タピオカに受けた感じたカルチャーショックと同じだ。何これ!?
万人ウケする作品ではないが、ハマる人はめちゃくちゃハマるし、いつの間にか止められなくなっているはずだ。
断片的な情報からさらなる考察を深める「コレクション要素」があったり、条件を満たすと鑑賞できる「ボーナスストーリー」があったり、やり込み要素も充実している。
僕は1周クリアしたあと、タピオカを飲むタイミングでちょこちょこ2周目を進めている。
味がしないので早くコンプリートしたい。
ちなみに・・・
僕の読み方は「螢幕判官(ほとまくはんかん)」でした。みんなは何て読んだかな?
▲沼から湧き出た黒マナ