今から遡ることおよそ200年前の1817年、ドイツのドライス男爵が、火山の噴火により死 んでしまった馬の代わりとして人間が馬のように速く走るための器械を発明しました。 その名もドライジーネ。

 


“Draisine” by Karl Friedrich Freiherr Drais von Sauerbronn (1817) – Wikipediaより引用

ペダルもチェーンも無いただの二輪車ですが、乗った人が地を蹴ることによって馬車にも勝る速度を発揮でき、現代にいたるまでの全ての自転車の起源とされています。

 


Draisine und zwei alte Fahrräder während der Verantaltung Stages! in Staufen im Breisgau – Wikipediaより引用

さて、自転車の歴史にはもう一人の発明家が存在することをご存じでしょうか。

 

その名はマンスーン

今から3年前の2023年、100円ショップで売っている商品だけで自転車を作り上げた男です。

 

約5,000円で制作したという画期的な自転車は、世界中に衝撃を与え「先行者のチャリじゃん」「フレーミー?」「カゴちっさ」などといった称賛の声を浴びたことも記憶に新しいと思います。

 

残念ながら、彼の自転車はその第一歩を踏み出した瞬間にゴミクズと化しました。

しかし、そのレガシーに感化された精神的後継者たちが世界中で次々と産声を上げ、新たなムーブメントが生まれているとかいないとか……。

 

第一回100円ショップ自転車レース開催!

 

時は流れて2026年の夏。

100円ショップ自転車に夢を見続ける人たちによる『100円ショップ自転車レース大会』が開催されることになりました!

 


出場者はこの4人

 

マンスーン:自転車で道路の端にあるスルッとした溝の蓋部分を走るのが好き。
巡宙艦ボンタ:小学生以来、15年以上の間自転車に乗っていない。
まどめクレテック:自転車をこぎながら寝てしまい、電柱にぶつかってドブに落ちたことがある。
タイピソ:高校では自転車部に入っており、片道15キロを自転車で通学していた。

 

開会式


ボンタ氏による開会式が執り行われました。

自転車の原型となる二輪車「ドライジーネ」が発明されてから約200年、人類は常にスピードを追い求めてきました。人類の歴史とはスピードの歴史でもあります

なんかちゃんとした大会みたいに思えてきた

 

しかし自転車の魅力はスピードだけではありません。その柔軟性やシンプルかつ合理的な機構など、歴史と共に進化してきた様々な魅力に溢れています。だからこそ今一度ものづくりの原点に立ち返りましょう! 第一回 100円ショップ自転車レースをここに開幕いたします!

この宣言の後に、自分の作った自転車を出すの不安かも

 

さらに優勝者には、100円ショップの商品で作ったトロフィーを贈呈します!

土台部分はガスカートリッジを入れるケースだ

熱量がすごい

 

果たして100円ショップ自転車界の王者になるのは誰なのか、そもそも自転車はちゃんと走るのか!?

 

やるぞっ!!!!!

 

ルール説明

今回の大会では、見た目や機構のかっこよさとスピードを競い、総合点で優勝者を決定。

速さだけでなく、ちゃんと自転車になっているのかという部分も評価されます。

 

「①:かっこよさ」をみんなで評価する

マンスーンの自転車

トップバッターはマンスーンです。

初代の100円ショップ自転車は大失敗に終わりましたが、オリジネーターとして今回の大会では絶対に負けられないはずです。いったい前回からどのような進化を見せてくるのでしょうか。

 

これが僕の自転車『人生送りバント号』です!

 


ボディにはMDF木材を使用

なんかデフォルメはされているけど、広義においては自転車と言える形だ!

子供が描いた自転車の絵が現実に出てきたみたい

ちゃんと2輪だし、それっぽい車輪もついてる!!

 


木製の車輪

前回は自転車と言い張りつつ実は4輪だったので、今回は2輪にこだわりました。そして耐久度も上げています!怖くて一度も乗ってないので実際に回るかどうかは分かりませんけど……

そもそも、こんな大きい円形の木材って100円ショップに売ってましたっけ?

 

サイドテーブルの天板部分だけを使ってます!税込770円×2個なので予算的には厳しかったですが

予算全体の結構な割合を車輪に使っちゃってる……

 


ダイソーで買った謎の人形が付いている

あと、ハンドル部分はかなり自転車に寄せました。突っ張り棒と自転車用品コーナーにあったグリップを使って高さや幅など本物の自転車に近づけています

初代の時もハンドルだけはしっかりしてましたよね

細かな意匠へのこだわりもある

 

一応、泥よけもつけました

これでオフロードが走れる気でいる事がすごい

 


前から見ると、何の物体なのかまったく分からない

 

採点

4点:スマートさは無いけど、大まかに自転車ではあると思います

4点:2輪へのこだわりを評価しました

4点:ちゃんと走るのかは別として、自転車として認識できました

 

最初としては、なかなかいいスタートをきったマンスーン。しかし実際に走るかどうかを試していないとのことで、二輪へのこだわりが吉と出るのか凶と出るのか!?

 

まどめクレテックの自転車

普段は漫画家として活動しており、トーチwebにて「生活保護特区を出よ。」を連載中のまどめクレテック。不器用で細かい作業は苦手らしいですが、ノコギリを引いたりトンカチで打ったりするのは好きらしいです。怒らせたら一番怖いタイプかもしれませんね。

 

「私の技術力で必ず乗れるものを作る」ということを第一目標に作ってみました。これが私の自転車『労働への反逆』です!

 

幼児がレゴで一番最初に作った車?

すいません、自転車はどこにあるんですか?

(おばあちゃんのカート……?)

 

2輪にするのが難しかったので、ダイソーの折りたたみキャリーカート(500円)を2つ使って結束バンドで組み合わせました

自転車感はないけど、キャリーカートなら頑丈だし車輪も最初からついていて一石二鳥ですね!しかも500円!?

(おばあちゃんのカート……?)

 

椅子部分はバケツですか?

バケツを2つ重ねて高さを出しています。一応デザイン性のあるバケツを選んでみました

(おばあちゃんのカート……?)

 


突っ張り棒を2重に束ねたハンドル

 

ハンドル部分はちょっと粗さが目立っている気が……

レースでの速さと安定性を重視しています!!大事なのは走るかどうかですよ!

 

採点

3点:ちゃんと走りそう感はありますが、自転車ではないかもしれません

2点:カートを500円で売っているダイソーの企業努力への点数です

3点:(おばあちゃんのカート……?)

 

あまりにストイックな見た目だったので点数が低かったまどめクレテック。しかしキャリーカートの耐久性を活かした走りでレースでの逆転に期待ができます。

 

巡宙艦ボンタの自転車

アニメ監督/映像作家として活躍しており、自主制作アニメ『ダンジョン&テレビジョン』も話題の巡宙艦ボンタ。学生時代は物理部に所属しており、様々なものづくりを得意としている彼は、いったいどんな自転車を作り上げるのでしょうか?

 

100円ショップ自転車へのリスペクトと進化をテーマに制作をしました。これが僕の自転車『シムーン200』です!!

 

え!?

 

初代の魂が受け継がれている!?

そうなんです!コンセプトは”マンスーン100円ショップ自転車の正統後継者”で、初代のマシンを全面的にリスペクトしつつ、木材を大胆に使って剛性をアップしました

たしかに形は似ているけど、初代の「か弱い」感じが薄れてますね

 


ボンタ氏が制作した『マンスーン百均自転車に関する事故調査報告書』

バージョンアップするにあたって、初代が発表された動画を徹底的に調べて、問題点と課題を洗い出しました。

すごい情熱だ

 

あとは初代の3DCGモデルを作って、物理的に弱い部分がどこなのかを計算して、後継機としてふさわしい構造設計になるようにしています

なんか、申し訳ない気持ちになってきた

 

初代は細いフレームに全ての力が加わったことが破損の原因だったので、上からの負荷を分散させられるトラス構造にしています

さすが元物理部!!

何も考えずその場の流れだけで作った自分の自転車がどんどん恥ずかしくなってくる!もうやめて!!!

 

でも車輪部分は100円ショップで大きなものを入手するのが難しくて、初代と同じくキャスタになってしまいました

店舗によって品揃えも在庫量も違うから、100円ショップ自転車作りは店選びも重要になってきますよね。これは100円ショップ自転車作りあるあるです

世界中でここにいる4人しか理解できないあるあるですね

 

 

採点

5点:初代に対するリスペクトと進化させた箇所のバランスが素晴らしいと思いました!

3.8:負荷の軽減などはすごいけど、やっぱり大きな車輪じゃないという部分で少し減点させてもらいました

4点:オリジナルを作った身として素直に嬉しいのですが、車輪の進化も見たかった!

 

マンスーンの初代自転車に対するリスペクトを見せつつも、負荷の軽減対策をするなど正統的進化を見せてくれた巡宙艦ボンタ。果たして改良されたマシンはちゃんと走行ができるのでしょうか!?

 


前から見た時の薄さも初代そっくり

 

タイピソの自転車

普段は至極一般的な会社員をしているというタイピソ。学生時代は自転車部に所属しており仕組みについても詳しいことや、子供の頃から工作が好きだったということで今回の大会にエントリー。技術力は未知数ですが、果たしてどんな自転車が出てくるのでしょうか?

 

自転車部のメカに明るいキャラ出身として恥ずかしくない、自転車っぽいものを目指しました。これが僕の自転車『ブルース号』です!!

 

 

????????

 

店で買ってきた自転車なので失格です!!

いや、全部100円ショップで買ったもので作りましたよ

嘘乙

 

例えば、このホイールはハンガーを曲げてスポークを組んで、チューブはジョイントマットを使ってます

 

チェーンリングはMDF木材を切り出して制作、チェーンはベルトを使って作りました。

 

ステアリングも木材で作りました。ハンドルを切ればちゃんとタイヤも曲がります

待ってください!たしかに凄いんですが、100円ショップにこんなに色々な種類の木材って売ってましたっけ!?

実はホームセンターを使ったんじゃないですか?白状して下さい!

 

さっき僕が「100円ショップ自転車作りは店選びも重要」と言いましたよね。実はレモンという静岡発祥の100円ショップがあって、店舗にもよると思いますが木材が充実しているんです。僕は1つのお店だけじゃなくて複数のお店に行って素材を調達しました

くっ…。何も言い返せない……

しかもダイソーの公式キャラだいぞうくんのぬいぐるみすら買えるぞという、制作費の余裕も見せつけられている……

 

 

でもこの自転車、サドルだけしょぼくないですか?

予算に余裕があると思ってだいぞうのぬいぐるみを買ったけど、最後になってサドルが無いことに気がついて……なけなしの100円で買いました

最後に人間味のあるエピソードが聞けて安心しました

 

 

採点

5点:構造のすばらしさ、クランクがついていることのすごさ、細かなパーツへのこだわりとカラーリングの可愛さ、全てにおいて余裕を見せつけられました

5点:ハンガーで組まれたスポークのアイデアが素晴らしく、そもそもペダルを付けられるなんて考えもしませんでした。満点です!

4.5:もちろん気持ちは5点なのですが、完成度がオモコロじゃなくてタモリ倶楽部だったので減点しました。ここはオモコロです!! でもすごすぎ!!

 

遠くから見たら本物にしか見えない自転車を作ってきたタイピソ。ほぼ満点に近い点数を獲得して他の3人と差を広げました。このまま優勝なるか!?

 

②:スピードで勝負する

これにて4台の100円ショップ自転車が出揃いました。

しかし見た目だけでなく移動手段としての役割を果たさなければ自転車ではありません。

というわけで、速さで勝負をつけましょう。

 

10m程のコースを自転車2台ずつで走行、ゴールまでのタイムを競います。

タイムアタックなので1台ずつ走行する方法でもよかったのですが、ライバルが横にいた方が白熱するし楽しそうだからという理由で2台ずつにしました。

 

ちなみに、機体を抱えてほぼ脚で走ってるだけというズルを防ぐために、機体を完全に抱えて走行するのはNGとしました。ちゃんと走らなくても「自転車に乗っているんだ!」という気持ちを忘れず、正々堂々と戦いましょう!

 

第1レース (マンスーン/巡宙艦ボンタ)

まずは100円ショップ自転車を生み出したマンスーンと、その正統後継者であるボンタによる新旧の戦いです。ついに二輪化に成功したマンスーンが勝つのか、それとも初代を進化させた4輪のボンタが勝つのか!?

 


遠くから見たら、ちゃんと自転車っぽく見えないこともない

 

まずはボンタがリード! 脚で蹴って進んでるとはいえ、初代と違って体重を乗せてもすぐに壊れていません! ちゃんと進化の成果が見えています!!

うおおおおお!!!!!!!

やばい!ぜんぜん進まない!! タイヤが回らない!!

 

そのまま軽快にマンスーンとの差を広げるボンタ!! このまま逃げ切れるのか!?

 

ガシャッ!!!

あっ!!!

 

ここでまさかの破損です!!

前へと進みたい気持ちが強すぎて、前方フレームに力がかかり過ぎてしまいました!

 

その間にマンスーンが追い上げます!!マンスーンの自転車はどこも壊れていません!!

チャンスだ!!!!

そうはさせませんよ!!

 

しかし機体の軽さのおかげでボンタが折り返し地点を最初に通過!!!

これは自転車レースなのか!?ただ脚で走っているだけなのか!? みなさま温かい気持ちでご覧ください!!

 

マンスーンの機体は壊れていないものの、成人男性の体重が乗った車輪が一切回ってくれず、ぜんぜん前に進めません!

自転車の前に体が壊れるかも!!脚も痛いしお尻も痛い!!!

 


苦戦するマンスーンを横目に、ボンタが早々とゴール!

初代とほぼ同じ箇所が破損するという奇跡が起きつつも、圧倒的な走りを見せました。

やったー!!!

 


かなり遅れてマンスーンもゴールした

 

【レースの感想】

走ってみて100円ショップ自転車の真の難しさが分かりました。これからは売られている自転車に足を向けて寝られません。

2輪にするため機体を頑丈にしたのが裏目に出たのか、重くてまったく進みませんでした。

 

致命的な破損があったものの、自転車に乗っているという意識だけは忘れずに最後まで走りきったボンタ。それに比べて、壊れることなく最後まで走ったが、二輪にするというこだわりが裏目に出たマンスーン。波乱の幕開けです。

 

第2レース (まどめクレテック/タイピソ)

第2レースは、キャリーカートを組み合わせて自転車と言い張るまどめクレテックと、マジの自転車を作ってきたタイピソの勝負です。

しかしタイピソの姿が見えません。

 

実は……僕の体重が重くて乗れないんです……

え!? じゃあレースは棄権ということ……?

 

代わりに妻が乗ります!

夫からは自転車に乗ってほしい」としか聞いてないのですが、乗ります!

 


これが100円ショップの商品で作られているとは思えない

 

急遽タイピソに代わって妻が乗ることになりましたが、このマシンがどこまで戦えるのか楽しみです!

 

キャリーカートの安定性によって、まどめクレテックが先頭に立ちました!

ぜんぜん壊れなさそう!!これなら勝てる!!

これ大丈夫な自転車ですよね!?真面目な機関の検査とか受けてるやつですよね!?

 

タイヤが見たことない角度になってるし、ヤバい音がしてるんですけど!!!

 

しかし地道な走行(歩行)でトップを奪い返すタイピソの自転車!!

最初は良かったけど、意外と前に進まないかも!!!

 


てくてく…てくてく…

 

ペダル漕がないの〜〜!?

ペダルに体重乗せたら私含めて終わっちゃうから!!!

 

進む速度は遅いものの、キャリーカートの安定性が功を奏したのか、まどめクレテックが少しずつ距離を離してゴールへ近づいていきます!

あと少し!!勝てる!!!

 


↑写真だと高速に見えるけど、まったく進んでいない

 

 

スタート前の期待とは裏腹に、見ていられない程の泥仕合になりましたが、まどめクレテックが1着でゴールしました。

 

その頃タイピソの自転車は……

 

どうした!?

 

あっ……

 

本体よりも先に、まさかのハンドルが大破!!

その後は自転車を引きずるようにして何とかゴールしました!

※進むことはできるので致命的な破損とはカウントせず

 

【レースの感想】

たった10mなのに普通に走る1000倍くらい疲れました。ただ破損は無かったので耐久性については証明できたと思います。

もう二度と手作りの自転車には乗りません。

 

安定性はあったのですが、体力面の問題で思ったよりタイムが伸びなかったまどめクレテック。そして完全に見た目だけだったタイピソの自転車。

 100円ショップ自転車界の歴史に残る迷レースでした。

 

結果発表

運動を普段あまりしないので、自転車レースに疲れ切っている表情のメンバーたち。

タイピソは乗ってなくない?

いきなり手作り自転車に乗せた妻から怒られそうで胃がギューッってなってます

家に帰ったらちゃんと夫婦で話し合ってくださいね

 

そして、かっこよさポイントと速さポイントを計算した結果……

 

優勝はタイピソ!!

速さ勝負では残念ながら高得点を逃しましたが、圧倒的な工作力で優勝となりました!

100円ショップの材料の強度で、ステアリングの仕組みを作ったかいがありました!ぜんぜん走りはしなかったけど!

 

タイピソには手作りのトロフィーが贈呈されました。

おめでとうございます!!

家に帰ったらどうやって怒ろうか考えていたのですが、優勝できたなら許します!

よかった〜

 

さらに副賞として、心ばかりのレッドブルが贈られました。

なんかレッドブル協賛!って書いてませんか!?

いや、なんかレッドブルならこういうのに協賛してくれるかなと思って勝手に書きました

ダメだろ

 

 

1817年、ドイツのドライス男爵が、火山の噴火により死んでしまった馬の代わりとして

人間が馬のように速く走るための器械を発明しました。

その名もドライジーネ。

 

 

ペダルもチェーンも無いただの二輪車ですが

乗った人が地を蹴ることによって馬車にも勝る速度を発揮でき

現代にいたるまでの全ての自転車の起源とされています。

 

それから約200年後の現代。

とある公園の片隅で、4人の挑戦者による手作り自転車レースが開催されました。

それはとても小規模で、見るに耐えないグダグダなレースでした。

 

 

しかし彼らはレースを通じて、ものづくりの楽しさを再認識し

100円ショップとDIYに夢を見続けることを誓いました。

 

彼らの挑戦はこれからも続きます。

 

fin.