人気アニメ「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の主題歌、「葛飾ラプソディー」の技巧性について書きます。
「こちら葛飾区…」をご存知ない方の為に軽く説明すると、東京都葛飾区亀有公園前の派出所に囚われている両津勘吉という男性が、様々な人物と関わる事で相互理解を深めていく物語です。TVアニメは1998年から2008年にかけてフジテレビ系列で放送され人気を博しました。
そんなアニメのオープニング曲として有名な「葛飾ラプソディー」ですが、特筆すべきは歌詞の巧みな構成です。
( 参考:http://j-lyric.net/artist/a0165f6/l00ba88.html )
「中川に浮かぶ…」で始まるAメロからBメロにかけての歌詞では、実在の地名が効果的に用いられ、葛飾区の事しか知らない両津勘吉ならではの詳細かつ情趣に富んだ風景描写が続きます。
ところが、この曲のサビに差し掛かると歌詞の様相は一変します。サビの後半部、楽曲が最も盛り上がる箇所で「無くして気がついた」「俺」という不可解な一人称の人物が初めて姿を見せます。
この箇所に至ってようやく、両津勘吉ではない人物、そして派出所とは無関係の人物であると推察される「未知の何者か」の視点で語られた歌であった事が判明し、それまで両津の気分に浸っていた視聴者はその先入観を裏切られ涙する仕掛けなのです。初めてこの曲を聴いたアニメの視聴者は誰しも、優れた叙述トリックの効いた推理小説を1冊読み終えた時に似た感動を覚えた事でしょう。
と書いた手紙をガラス瓶に入れ海へ流したところ、数日ほど経ってから下記のような内容の手紙が私の元へ届きました。
「この歌詞の語り手が両津勘吉であるという先入観は万人が持ち得るものではない。お前個人の思い込みで勝手に拵えられた仮定にすぎず、作詞者の森雪之丞氏がそのような意図のもと作詞を行ったかどうかも断定できない。極めて根拠に乏しい妄言であり、世間に向けて公表する価値はない」
もしかして私たち、入れ替わってる!?