どの変化球がお好き?(弁当丸)
ロマンあふれる変化球。
ピッチャーとバッターの間に存在する空間は、それはもう濃密。
「ピッチャー振りかぶって・・・」
「投げませんね。悩んでいるのでしょうか。」
「そうですね。彼は変化球が多いですから。」
「解説の土井垣さんはどう予測されますか?」
「シンカー・・・ですかね。」
「彼のシンカーは、角に指をひっかけることで
異常な軌道を描きますから。」
「最後は得体の知れない回転をしますものね。」
「ただ、先日の試合で見せたカーブも捨てがたい。」
「あれには驚かされました。」
「アンコをまき散らしながら、軌道を変えますからね。」
「掃除が大変という点で不評でしたね。」
「まだ悩んでいますね。」
「こうなると、意外にベタな球で来るかも知れません。」
「子どもの夢を打ち砕くチェンジアップか・・・」
「油で異常に右滑りするスライダーか・・・」
「やわらか~く落ちていくフォークですかね。」
「ここまで悩んだ投手は甲子園史上初です。微動だにしません。」
「これは・・・出るかも知れませんね。」
「一度だけ彼がリトル・リーグで投げたという?」
「ええ、封印されたあの球が。」
「・・・ナックルですね。」
「ええ。しかし、一度投げた時に・・・」
「耳が。」
「耳がちぎれて中身が出てしまったことが、トラウマに。」
「いまだに、肉を食べることが出来ないそうですね。」
「となると、残るは伝家の宝刀」
「SFFですね。彼のSFFは、ただの高速フォークじゃありません。」
「あの、途中の変化が独特な。」
「途中で浪人生に変化するSFFは
後にも先にも、彼しか投げられないんじゃないでしょうか。」
「偶然、カラクリ武者に変化したときの、
バッターが切り刻まれた事件も記憶に新しいですね。」
「カラクリむ・・・のあたりで、真っ二つになってましたね。」
「あっ!投げたー!!」
カキーン!!!
ベチャッ!
「やはり、こうくると思ってましたよ。」