東京の上野に「みはし」という老舗のあんみつ屋がある。

私は、ある時からみはしのあんみつにハマりまくっており、約500杯ぐらい食べ続けている。

 

みはしのあんみつにハマった理由のひとつが自由度の高いトッピングだ。

抹茶アイスに小倉アイス、ソフトクリーム、白玉、干し杏、さらに季節のフルーツやアイスなど期間限定ものが加わる。

どんなトッピングをするか迷っているうちに次の季節がやって来て、また期間限定ものが加わって……。
みはしの季節感にいつだって感情が追いつかない。

 

そんなみはしのあんみつに翻弄され、追いかけ、食べ続け、気づいたことがある。

 

 

突然の問いかけにみなさんも戸惑っただろう。

私もつい最近気がついたのでドキドキが止まらない。どうか落ち着いて受け止めてほしい。

改めて言うが、みはしのあんみつを眺めているとポーカーの役が見えてくるのだ。

 

 

例えば、クリームあんみつに小倉アイスをトッピングしたもの。

「こしあん」「小倉アイス」で小豆要素がそろって「ワンペア」と言えないだろうか。

 

 

白玉クリームあんみつなんかは見るからに分かりやすい。

「ソフトクリーム」「白玉」「求肥」で白色がそろった「スリーカード」である。

 

 

トランプにマークや数字、絵札などの要素があるように、みはしのあんみつにも色や食感、風味などの様々な要素があって、それらが揃うとまるでポーカーだと思った。

 

気づいてしまったので、やりたい。

みはしのあんみつポーカーをやるしかない。

 

私はさっそく企画書を作り、みはし様に「みはしのあんみつでポーカーをやりたいのですが、よろしいでしょうか?」という旨のメールを送った。
なんと快諾してくださった。自分から提案しといて「いいんですか!?」という気持ちだ。

 

というわけで、みはし上野本店にお邪魔して……

みはしのあんみつポーカーを開催します!

 

 

 

プレイヤー紹介

 

みはしのあんみつポーカーに興じるのは、こちらのメンバーだ。

 

【モンゴルナイフさん】
甘いものが好き。特にその季節の旬なものを情熱的に追い求める。

【ダ・ヴィンチ・恐山さん】
最近になって寒天と求肥のうまさに目覚めた。いつも注文は呼出ボタンを押してから決める。

【鬼谷さん】
今回で三度目のみはし。具材をひとつひとつ分析し、そこから全体を組み立てるのが得意。

【かとみ(私)
ディーラーとして参加。まだ見ぬ最強のあんみつを期待している。

 

 

ゲームのルール&手順

無限にトッピングしてしまう可能性があるので、トッピング過多で器に乗りきらなかったら失格という非情なルールを設けた。

 

 

一番重要なのはポーカーの役の強さだが、あんみつの見た目や味のバランス、プレイヤーの意図なども加味して勝敗を決めたいと思う。

 

 

 

1人目のプレイヤー:モンゴルナイフさん

まず私から注文いかせてもらいます!

 

注文を書き込んだメモを、店員さんにお渡しするモンゴルナイフさん。

プレイヤーはお互いに注文内容が分からないよう、今回は特別にメモ書きで注文を受け付けていただいた。

 

 

あんみつが運ばれてくるまでに意気込みなどを聞いてみた。

 

今回はテーマを決めてきました!
テーマは侘び寂び(わびさび)です。

秋の落ち着きを見せつつ、確実に役をつむぎたいと思います。

普段と違うトッピングを選んだので、挑戦の一杯でもあります。

私とモンゴルナイフさんは何度か連れみはしをしているが、私たちはいつも興奮状態で、上記のように盛り盛りのトッピングをしていた。
人はみはしのあんみつを前にした時、決して欲望に抗えない。
しかし、今回のモンゴルナイフさんはそうではないらしい。

 

注文したあんみつが運ばれてきた。

 

 

ほうじ茶あんみつ」「ソフトクリーム」「杏」トッピングです

 

 

全員で笑顔のため息をもらしてしまう。
見れば見るほど「良いな……」としみじみ思わせる構成をしている。
どこか静けさをまとった秋色のあんみつだ。

 

まずメインに据えたのは期間限定のほうじ茶アイスです。秋を思わせるくすみ系のブラウンが素敵で……

あと、みはしに来たらさ! やっぱソフトクリームは乗せたいっしょ!?!

そして、ソフトクリームを加えた分甘みが増すので、バランスを取るために酸味のある杏をさらに足してみました……

 

途中でギャルの人が乱入してきた気がするが、言っていることは冷静そのものだ。

まずは骨格となるメインと決め、そこから全体のバランスを見て整える。まるで生け花のような組み立てだ。

 

「ほうじ茶アイス」と「ソフトクリーム」の甘味のペア、「杏」と「みかん」の酸味のペアで、ツーペアです

確実に役をそろえてきましたね

色味のセンスが光るいいあんみつですね~

 

 

私、ほうじ茶アイスって初めてなんです! さっそく食べていいですか?

あーーほうじ茶の香りがすーーーーーーごいっしょ~~

情緒豊かなギャルがちょくちょく出てくるなあ

 

いえ、わたくしはお茶を愛する者、千利休でございます……

みはしに来てから色んな人格が出たり入ったりしてすごい

 

ギャルや千利休を出入りさせつつ秋らしいあんみつを見せてくれたモンゴルナイフさん。

ポーカーの役はツーペア! お見事でございました。

 

 

 

2人目のプレイヤー:ダ・ヴィンチ・恐山さん

 

つづいてプレイヤーを交代して、ダ・ヴィンチ・恐山さんが注文

 

え!? もう出来たんですか!?

 

みはしのスピードを侮ってはいけない。油断している隙にあんみつはどんどん運ばれてくるのである。

 

 

なんですかこれ! すごい!

 

 

斬新な盛りつけ!!

注文した本人が一番びっくりしてる

素晴らしい……この白玉の配置は私も初めて見ました……!

シェフ! 天才シェフをここに呼んでちょうだい!!

 

私もびっくりしたんですけど、解説しますね。まず、土台には豆かんを選びました

 

豆かんはシンプル故にいろいろ失うのが怖くて、今まで頼んだことなかったんです。でも今回はあえて挑戦しようと思って

シンプルな豆かんに好きなものをひたすら足してみることにしたんです。
私はアイスが好きなので、みはしにある種類のアイス全部と、食感が好きな白玉を足しました。

 

役は3種のアイス「スリーカード」です!

 

なんて気持ちのいい一杯なのか。もともと具材の数が多いあんみつを、ここまで潔い構成に仕上げるには相当な強い意志がいる。

実は4項目もトッピングを追加しており、いつバーストしてもおかしくない品数だが、ここまで美しく収まったトッピングを私は見たことがない。

 

これは……! シンプルな豆かんに香ばしいアイスがすごく合います。
小倉アイスはあっさりした甘さで、めちゃくちゃバランスがいい

3つのアイスが山みたいで圧巻ですね……

私も絶景にドキドキしてます

あ、溶けたアイスが混ざり合って、器の底においしいスープがたまってきました

わかります! 旨味が凝縮したスープがたまらない!

なるほど、山が健康だと海が豊かになって漁場が潤う、という話ですね

ん?

 

3つのアイスで出来た山脈から流れ出した香りや旨みが、豆かんという名の海に栄養を与えて環境を豊かにするっていう……

めちゃくちゃ丁寧に言い直してくれるな

こういう時、鬼谷さんは諦めない

わははは!

 

 

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