宮川専務インタビュー
そういうわけで、大森会長と四文屋を立ち上げ、現在まで全ての店舗のクオリティコントロールを担う四文屋の裏ボス的存在・というか専務、宮川さんに急遽お話を聞くことができてしまいました。飲食業界がざわつくぞ。
低価格の理由
メニューのほとんどを宮川さんが開発されたと伺ったのですが。
はい。自分が肉のバイヤーもしてるんで。工場(セントラルキッチン)も自分が見てます。
ガツキムチもよく頼むんですけど、あれもセントラルキッチンで作ってるんですか?
そうです。ああいうのは端くれ。もちろん一番いいところは串で使って、ホルモン漬けとか、しぐれ煮とか、そういうのは端くれです。あとは希少部位、ああいうのも端くれですね。チレアブラとかガツアブラとか。肉を掃除すると出てくる、捨てるには忍びない、むしろそっちの方が美味しいみたいなところ。そういうところも1串100円(現在120円)で出しちゃう。そうするとお客さんも、選択の幅が広がるじゃないですか。
そういう低価格で出せる理由って、やっぱりたくさんお店があるからたくさん肉を仕入れられるっていうことなんですか?
もちろん。たくさん安く仕入れて、切り刻んで、それで最後の最後まで使う。例えば豚の内臓の、赤物っていうレバとかタンハツ・ハラミってつながってるんですよ。ほかだと捨てちゃうところもあるかもしれないですけど、うちは捨てるところはほぼない。いつも言ってるんですけど、豚は唾液と血以外は捨てないです。
四文屋の大革命・1本から注文できる串
今はたくさんお店があるからそういう買い方ができますけど、最初の一店舗目ってそれができないじゃないですか。
最初は大したものなかったです。鮮度も悪かったですし。会長と2人でやってた時は、タン切ったら色がグレーみたいなのが平気で来たんですよ。少しずつ少しずつ、店舗が増えてたくさん仕入れられるようになって、客として大きくなってくると肉屋さんもいいものをくれるようになる。
そんな肉しか仕入れられない状態から、どうやってお店が増やせるくらいになれたんですか?
結局、競合店が少なかったんじゃないですか。昔は小洒落たダイニング系の、一本2〜300円で、いい感じに暗くして雰囲気よくして、BGMにジャズ流してみたいなのがいっぱいあって笑 それと真っ向逆のことをやったんですよ。
あとこれが画期的だった。1本100円っていうインパクト。1本から串を頼めるようにしたんです。昔は「串は2本から」っていうのが普通だったんですよ。「1本80円(2本から)」みたいな。そしたら2人できて4本頼まなきゃいけないとか。我々が四文屋を始める前はそれこそ5本からとかざらにあった。本当はオペレーション的に1本ずつっていうのは大変なんですよね。
でもそれをやった。カウンターに並んでる串、端から端まで全部一本ずつくれとかにも対応した。これができてなかったら今みたいになってないんじゃないですかね。おれがその技術を教えた人間が似たようなことをほかでやるようになったりして、今でこそ当たり前になりましたけどね。
そんなにたくさん肉があったら火加減とかバラバラで大変そうですが。
バラバラなところがミソなんですよ。肉は全部火の通し方が違うんです。だから、あえて炭火のムラがあった方が都合がいい。均一なガス火だとできないと思います。ここの火がこうだからここにこれを置いて、ああしてこうして…みたいな。
なんかパズルみたいというか、その感覚掴んだらゾーン入って楽しそう。
そうなんです。感覚なんですよ。言葉じゃないんです。だから外国人とかも楽しんでやれるんじゃないですか。むしろ外国人の方がうまかったりすることもありますね。
四文屋フォントの産みの親
最初は大森さんが「焼きとん」でわかるだろっていうのを、宮川さんがメニューを書くようになったと伺ったんですけども。
会長は絶対わかるもんだと思ってたんですよ、言わなくてもわかるっていうのが常識だと思ってたんですって笑 それはわかんないからって言って、新井薬師の店で、その頃はまだ木の札じゃなくてケント紙みたいのに描いたやつがまだあります。
最初のメニューを書いて25年経ってますよね。まだ新井薬師の店では劣化しないようにビニールをかけて、直すところは直して使ってますよ。あそこの全てが我々の原点ですね。
看板とかも書いてるんですよね?
これはもうただの趣味です。一番好きな仕事と言えば仕事なんですけど。もう50作品というか50件以上やってるんで。
あのトイレとかに貼ってある、イラストのやつも…?
あれは従業員です笑
焼きおにぎりの個性には目をつぶっている理由
焼きおにぎりは最初からあるメニューで、ここ(どすこい四文屋)で今の形になったと伺ったのですが。
そうです。あれは2系統あるんですよ。ひとつは135gのふつうのサイズ、もうひとつは魚のほうが180g。ここもたぶん180gくらい。
使っている醤油が違ってたりすることもありますか?牛の四文屋だけ色が違いますよね。
そう。牛の四文屋は「成田醤油」っていうたまり醤油を使ってるんです。牛の四文屋は醤油がたまり醤油なんで。濃いけど味がしょっぱくないやつ。
宮川さん的には、焼きおにぎりの焼きの難易度はどれくらいなんですか?どうやってあんな網にくっつかず焼けるんでしょう。やはり炭火を使っているからというのが大きいですか?
まあくっつくこともありますけどね。なので結構難しいですよ。イメージとしては表面に糊がついてるような感じです。だから必ず3回に分けて塗ります。まず軽く表面を焼いてから1回目塗って。焼けてない時に醤油を塗ると表面の糊が薄まって溶けちゃうんで。
ただ、必ず3回塗るというのも実際には個人の趣味が出てます。しょっぱくいきたいなら何度も塗るし。そこらへんにはおれは結構目をつぶってるんですよ。壁面の、こっちの面とかあるじゃないですか。立てて焼きたがる奴とかいるんです。おれはそこまでいらないって言ってんですけど、やりたがる。そこにこだわるのはあえて目をつぶる。クソ忙しいときとかは別ですけど。
そういうこだわれる部分があった方が楽しいですもんね。あの江古田の三角錐のやつとかも。
ああ、あれは邪道ですね笑
まあ彼は結構ベテランなんで。本当は許しちゃいけないんですけど、完璧にやろうとすると絶対にどっか崩れるんで。どっかでちょっと遊びがあった方がね。
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宮川さんありがとうございました!!!
すごいんじゃないでしょうか。四文屋の成り立ちから現在に至る魅力の根幹に迫るお話が聞けたと思います。焼きおにぎりからこんなことになるなんて誰が思いますか???
その後、いつものアゴ・アスパラ・手羽ネギ・焼きおにぎりなどのほかに「どすこい四文屋」だけで提供されている刺し盛りや日本酒などをめちゃくちゃご馳走になりました。ありがとございました。みなさま四文屋に行ってしこたま飲んで食べてぜひ焼きおにぎりで〆てください!!!
ベロベロ。