某日、ジュリアさんに聞いたよりも1日早くE半島にやってきた僕たちは、事件の舞台となるかもしれない洋館へ訪れていた。ちなみに、想定よりも生活が苦しかった僕たちは結局下着を買えなかった。今回の一件が片付いた時には真っ先に下着を買おうと思う。

うわあ、大きな館ですね!
玄関だけで僕たちの事務所の倍くらいありそうですよ!
レイニー君、気を引き締めてかかりましょう
はい!

あなたがメッセンジャー・ジュリアの推薦された探偵さんか
どうしてわかったんですか?
なあに、簡単ですよ

そんな蝶ネクタイを付けるのは、探偵か幼稚園のお遊戯会くらいだ
よろしくお願いします
早速ですがご主人、お話を詳しく聞かせていただいても?
ええ、この館は祖父の代から管理しているものでして、現在はE半島へ観光に来た方へ宿泊用に部屋を貸し出しておるのです
とは言っても、私が以前経営していた鉄板居酒屋の常連くらいしか来ませんが……
なるほど、他のゲストの方々にお話を伺ってもよろしいでしょうか?
構いません
ですが、犯行声明があったことだけはくれぐれもご内密に
ゲストの皆様に混乱を招いてしまいます
承知しました

さて、私はこういう聞き込みが苦手です
レイニー君、出番ですよ
え!? 僕ですか!?
大丈夫、君ならただのしがないサラリーマンにしか見えない

それに、私だとすぐに探偵だとバレてしまう
事件を起こそうとする者であれば、警戒させてしまいます
君以外に適任はいませんよ
そういうことなら……
僕、がんばりますよ!

そうは言ったものの、僕もこんなの初めてでどうしたらいいのか……
とりあえず誰かに声をかけてみないと
すいませーん!

なんじゃい!?
ヒィッ!
何か用かワレェ
ぼ、僕はE半島の刊行誌で記者をやってる者で!
聞いたことないのお
最近できたばかりのしがない出版社でして……
今日はどうしてE半島に来たのか、取材しているんです
兄ちゃんも大変じゃのお
龍三さんは、最初は怖い人かと思ったけど、あまりに僕がみじめに見えたのか、いろいろとお話をしてくれた。館のご主人とは中学時代の先輩後輩とのこと。E半島にご実家があるらしく、たまに帰ってくるときには館のご主人に顔を見せているのだと言っていた。意外と優しい人なのかもしれないと思ったけど途中何発か肩パンをくらったのでやっぱり怖い。多分こいつが犯人だと思う。

その後も、他のゲストに話を聞いて回った。

みんな、館のご主人に縁のある方々のようだった。

カップルで来ている方もいた。くーっ! うらやましい……
……と言うわけで、怪しいのは龍三くらいです
他の人たちは殺人をするだなんて考えられないですよ
レイニー君、確かに龍三は荒っぽい性格のようですが、そればかりにとらわれてはいけません
もしも犯行の声明が犯人からのものならば、巧みに犯意を隠すはずです
セミクラウド先生、片目曇りの能力で視ることはできないんですか?
あれはかなり体力を消耗しますし、視る対象はある程度絞らなければハッキリと視ることができません
いざという時に使えなくても困りますから、ここぞという時まで温存しておきましょう

とは言っても、何も対策しないわけにはいきません
どうしたものでしょうか……

セミクラウド先生は、どんな対策を打ったのか教えてくれなかった。
秘密はとにかく誰とも共有しないことを信条としているらしく、奥の手ほど隠しておくのだそうだ。

スーッ
ノーパン生活は思ったよりキツいな
身体の芯から冷えてくるようだ……
それも、もうしばらくの辛抱ですよ
この依頼を達成すれば報酬が入ります
当面、衣食住には困らないはずです
セミクラウド先生……
犯人はわかったんですか?
あらゆる可能性を考慮し、多角的な視点で推理をしてみましたがどれも決め手にかけるものばかりでした

やはり、真実を視るには片目曇りの能力を使うしかないようですね

ス……

あれ?






ス……

片目が曇ってない!
一体どうして!?

これは困りましたね……

手に、熱気がこもっていません
どどど、どうして!?
おそらく、下着を着用していないために身体の芯から冷えてしまっているのでしょう
これでは手の熱気を使って片目を曇らせることができません
そんな! 手の熱気が使えないんじゃどうしたらいいんですか!
レイニー君!
まずは落ち着いて、炊き立てのお米を用意してください
炊き立てのお米なんて何に使うんですか!

私に任せてください
事件を発生させたくないんです……
わ、わかりました!


セミクラウド先生! お米を炊いてきました!

レイニー君! お米の湯気を私の顔に!

そうか! お米の湯気で片目を曇らせるんだ!

ダメです! お米の湯気が強すぎて片目だけを曇らせることができません!
これでは何も視えません!
い、一体どうしたらいいんだ!
「誰か! 誰か来てくれ! 早く!!」

!?

嫌な予感がします
そんな!

キャサリン! 返事をするんだキャサリン!
どうしたんですか!?
部屋にいる彼女に呼び掛けているのに反応が無いんだ!
鍵もかかっていて、ドアが開かないんだ!
館のご主人を呼びましょう
マスターキーを持っているかもしれない

ガチャ
開きましたよ


!?

キャ、キャサリン!
……触らない方が良い

コナンに出てくる遺体と同じ表情をしています
それって……
死んでいる、ということです


……よし、遺体の回収後、現場の調査と宿泊客全員への聞き込みだ!

お久しぶりです、サニー警部
貴様、片目曇りか
松葉崩しのギリアムを捕えた時※以来、ですね
※かつて、セミクラウドとサニーが協力することとなった連続松葉崩し事件のこと。犯人のギリアムはあらゆる場所で松葉崩しを行っては逃げ切っていたが、セミクラウドとサニーが協力し、税務署で松葉崩しを行っていたギリアムを追い詰めることに成功。事件解決へと導いた二人の功績は町中に知られることとなったが、これをきっかけにセミクラウドとサニーはお互いの方向性の違いに仲違いすることとなり、以来疎遠になってしまった。松葉崩しとは、SEXの体位のことである。
貴様がいながら、なんというザマだ
…………
まあ良い
我々、警察が来たからには貴様のような探偵の出る幕など無い!

ザッザッザッ……

セミクラウド先生、これからどうしましょう?
私たちのやるべきことは、変わりませんよ
それって、どういう……?
探すんですよ……

りきすい






