初めてのパソコンとの出会い、みなさんは覚えていますか?

 

──2001年夏、小学2年生だった私の家にパソコンがやってきた。

それまで映像の映るモニターで身近なものはテレビかゲームボーイしかなかった私の家に革命が起きた。

 

テクノロジーじゃ! うちにもテクノロジーが来たんじゃ! そう思った。

その頃の私にとってパソコンとは、NHKの教育番組「音楽ファンタジーゆめ」に出てくるハーディとコミーというキャラクターだった。

 

普段はパソコンとマウスに擬態しているハーディとコミー、ときどきケンカもするけれどとっても仲良しな2人(2匹?)。飛んだり跳ねたり、表情豊かに遊ぶ彼らのやり取りを見るのが大好きで、幼少期はVHSに録画された映像を狂ったように見続けていた。

 

あとはCMで見たことのあるキッズコンピュータ・ピコ。

 

ドラえもんやアンパンマンのような子ども向けアニメの絵本ソフトをセットし、タッチペンで操作すると音声が鳴るおもちゃ、いわゆる知育玩具で、子どもの興味をそそるカラフルな色合いに私の単純な心は奪われたが、買ってもらうことは叶わなかった。これも幼少期はVHSに録画されたCMの映像を狂ったように眺め続けていた。今のところ幼少期に見たVHSの思い出でしかない。

 

我が家にやってきたパソコンは表情こそ持たず色も地味であったが、多くの小学生の例に漏れず横文字に弱かった私は家の片隅に置かれたテクノロジーの塊に心を釘付けにされた。

 

「一体どうやって操作するのだろう? どんなことができるアイテムなのだろう?」

 

何もわからなかった。例えばゲームをするのにも説明書をちゃんと読むタイプの子どもであった私は特に説明書のない(親がどこかに大切に保管していた)パソコンの操作についてはさっぱりわからなかったので、親に教えてもらうままにパソコンのなんたるかを覚えていくしかなかった。

 

NECの機種でOSはWindowsXP、詳しいことは何一つわからないなりに、基本的なマウスの使い方を教わった私だが、何故かマウスのボタンは左のものしか押してはいけないと教わった。右のボタンは使ってはいけないのだと言われた。どういうことかはわからないが、ダメと言われたらダメなのだ。私は素直にその言葉を受け入れ、まずやることになったのはWindows 3Dピンボールだ。

 

一部では神ゲーとの呼び声も高く、当時のパソコンを触ったことのある者ならほとんどはプレイしたことがあるのではないだろうか。宇宙船を模したステージでのピンボールゲームだ。私はまずこのゲームをやることになったが、おそらく親が「ゲームはできるの!?」とうるさい私にとりあえず適当にあてがったものだと思う。その証拠にどのキーを押して操作するのか教えてもらえなかった。マウス操作ではプレイできなかったので、最初はとにかく試しにすべてのキーを押すことから始まった。

当時、家にあるものではニンテンドー64のコントローラーボタンが一番多かった。次いでプレイステーションかセガサターンのコントローラーだったかもしれない。しかし、それらをはるかに凌駕する量のキーを持つキーボードには押してはいけないボタンがあるかもしれず、何か起こると親に怒られるかもしれない。目の前の3Dピンボールをプレイするにはまず越えなければならない壁であったが、なんとか無事に操作キーを見つけ出すことはできた。

しかしその壁を越えたところで生来のセンスの無さ、反射神経の無さゆえに私のスコアは非常に粗末なものであったが、それでも初めてパソコンでやってみたことは楽しかった。

他にもいろいろなソフトが入っているということだったので、次は何をしたら良いのか親に聞くと、パソコンのいろはというソフトをやりなさいとのことだった。

 

次は一体どんなゲームなんだろう……! 私は期待に胸を膨らませ、マウスを操作していった。

3Dピンボールと違い、パソコンのいろはとやらには文字の羅列が多かった。8歳の私には読めない漢字もあったような気がしたが、7歳にしてファイナルファンタジーをプレイしていた私には大した問題ではなかった。どうやらクリックというものについて教えてくれているようだった。そうか、マウスのボタンを押すのはクリックというのか。

クリックには左クリックと右クリックがあるらしい、だが基本は左クリックを使用するということで、親が言っていたのとおおむね同じ要領だ。右クリックは何やら違う用途で使うようで、いわゆるメニュー画面のようなものが表示されるのだが、幼い私にはその用途がさっぱりわからなかった。やはり右のボタンは押さない方が良さそうだ。

それはさておきパソコンのいろは、どうやらこれはゲームではない。ドラッグ(薬ではない)についての説明が始まったあたりで察した。これはパソコンの使い方について勉強するためのソフトだ。なんてこった、これは私に対して勉強しろという親からのメッセージかもしれない。言いつけは素直に守る子どもであったが、勉強となれば話は別だ。

私の頭のキャパは夏休みの宿題をこなすのでさえいっぱいいっぱいだというのに、その上さらに別の勉強を強要してくるなんてあまりに非道だ。宿題でさえ手一杯というのに父親に強要された自由研究だってある(自由とは)。夏休みは長いようでいて短いのに、その貴重な時間をこんな得体の知れない勉強に充てる余裕はなかった。私には8歳の夏休みを謳歌する権利がある。

ローマ字入力についての説明が終わったあたりで私はパソコンのいろはを閉じ、その後はまったくルールのわからないスパイダソリティアをやったりペイントソフトで適当な絵を描いてみたり、やがてインターネットに繋がれた頃にはあらゆるゲームの裏技を調べ尽くし、片手間でポケモンオフィシャルサイトのミニゲームに興じるくらいしかパソコンの使い道はなかった。親はパソコンのいろはをどんどんと進めていたが、あれ以来、私がパソコンのいろはをプレイすることはなかった。

 

やがて中学生になり、Youtubeが日本で普及し始めた頃にはメールやファイルの保存といった基本的なパソコンの使い方はある程度できるようになっており、3Dピンボールのスコアもかなり伸びた。

商業高校の情報処理科に進学するとワープロ部に所属し、タイピングの速度で県大会2位にまで上り詰め、授業ではWordやExcelといった将来仕事で使うようなことにも触れることとなり、パソコンについてさらなる知識を蓄えていった。その頃にはいろいろな悪知恵も働くようになり、3Dピンボールを大元のフォルダごとUSBメモリに保存し、授業中にプレイするといった変な尖り方をしていった。

 

さらに年月は流れ、私は大人になり、自分のパソコンを持つことになった。今ではWeb記事を書くようになり、Excelで記事用の画像を作成することもできるようになった。パソコンのいろはどころかパソコンのちりぬるをくらいは習得したと言っても過言ではないだろう。

しかし、私はまだまだパソコンのなんたるかを完全に会得したわけではない。世の中にはパソコンのあさきゆめみしとは行かずとも、パソコンのつねならむくらいは習得している人がその辺にゴロゴロしている印象だ。私なんて広い世界の中では取るに足らない程度の存在だろう。

 

そんな折、私のパソコンに入っているとあるソフトを見つけた。

 

パソコンのいろはだ。今の時代にもあったのだ。あれからXP→Vista→7→8と、WindowsのOSは進化を遂げていった。現在私の手元にあるのは2016年に購入したWindows10、世の中にはWindows11を使用している人も多いことだろう。それどころか若年層であればわざわざパソコン教室に通わなくとも基本的な使い方を熟知している者は多い。以前と現在では世代間のギャップも大きくなってしまっている。それだけの年月が経っても、パソコンのいろはは変わらずそこにいたのだ。

行き詰ったならば来た道を振り返ることも大切。誰かが言ったような言葉だが、もしかすると私がパソコンをさらに使いこなすためのヒントがここにあるかもしれない。ならば敢えて今、パソコンのいろはをプレイすることが私には必要なのだろう。

 

 

起動すると、大きくNECの文字が書かれたパソコンにタイトル画面が表示された。これだけデカデカと書かれているということは、NECからリリースされたソフトなのだろう。

 

そういえば私のパソコンもNECだ。パソコンなんて他にもいろいろなメーカーがあるだろうに、数あるメーカーの中から当時と同じNECを選んでいたのもまた奇妙な縁(えにし)を感じる。

わかることは、パソコンのいろはというソフトはNECのパソコンに初期装備として入っているソフトだということだ。別メーカーのパソコンには入っていないソフトなのだろう。なんてこった、ただでさえ私という一個人の思い出語りでしかないこの記事がさらにニッチなものになってしまった。もう後には引けない。各々何らかのパソコン学習ソフトを思い浮かべながら、あるいはプレイしながら読んでみてほしい。

 

それはそうとこの画面はキレイだ。私の記憶にあるパソコンのいろはとは随分かけ離れたキレイさで、異様とすら思える。単純なディスプレイの性能差というだけではなく、時代の変化を感じる。例えるなら1990年代と2010年代のアニメ絵を比べたくらいの時代の変化を感じる。

感情が死んだような目をしているがパッと見は親しみやすそうなキャラクターが表示され、これからパソコンという未知の世界を学ぶことも相まってワクワクしてきそうだ。私が小学2年生の頃にプレイしたパソコンのいろはとは明らかに画質も違い、キャラクターも変わっている。

 

インターネットはすごい、私が当時見たパソコンのいろはに登場するキャラクターの情報も出てきた。

 

こいつこいつ! こいつが教えてくれたんだよー!

 

お前……梅にいちゃん、略して「梅にい」というキャラだったのか。もっと佐々木みたいなよくある名前かと思ったら結構濃いキャラ名してたんだな。梅にいて。

 

 

 

さて、パソコンのいろははゲーム感覚でパソコンの基本操作について勉強していくソフトだ。

 

たからばこというメニューがある。

 

どうやら進めていくことでアイテムを集めることになるのだろう。おしゃれアイテムとあるので、あの死んだ目の女性キャラクターが身に着けるのだろうか。

 

死んだ目っていうか魚の目ですね、これ。魚類の目ってこんなのじゃなかったっけ。

 

不思議だ、梅にいの目の方がよほど温かみを感じる。

おっと良くない。適当なキャラクターをとっ捕まえて目に温かみが無いなんて言い出したら、何にでも難癖を付けるめんどくさいおっさんになってしまう。日々の新陳代謝によりほっといてもおっさんにはなってしまうものだけど、おっさんにはなりたくない。

私、多分もう梅にいやこのお姉さんより年上だろう。8歳の頃ならば無知ゆえの純粋さを持っていたのに、30歳になってしまった私では、変に賢いだけに可愛げも無いめんどくさい奴でしかないのだろうな。最近思う、賢い奴は可愛くない。私は可愛くないと思われているのだろうし、逆に相手の賢さを受け入れるだけの器量を持たない私は、なんとしょうもない人間であろうかと。

ハァ……

 

 

 

さあ、気を取り直してプレイしていこう。

 

はじめにお読みください。もうたからばことか触ってしまった後だからなんだか申し訳ないが、お姉さんも言っていることだし、読んでみよう。

 

結構ガッツリめなテキストが出てきた。

 

1.はじめに

「パソコンのいろは」を始める前に、次のことを確認してください。

・他のプログラムが起動しているときは、すべて終了する

・画面の解像度は1366×768以上にする

・キャプスロックキーランプまたはマークが消えていることを確認する

・テンキーがついていないノートパソコンをお使いの場合は、ニューメリックロックキーランプまたはマークが消えていることも確認する

わかんないけど、多分パソコン初心者はここでつまづくんじゃないだろうか。

画面の解像度を変える方法とか、キャプスロックキーやニューメリックロックキーって多分わからんだろう。まず私がキャプスロックキーしか知らないんだもの。そりゃ調べればわかるんだろうけども、ニューメリックロックキーなんて初耳だよ。

 

ニューメリックロックというのは調べたらこれのことだそうだ。ナムロックって呼んでたけど、別にどっちでも良いらしい。

 

圧倒的にナムロック派が多い。地味にニューメリックロック派が132人中1人いる。他の呼び方も気になるところだが、パソコンのいろはでNumLockデビューした人はずっとニューメリックロックキーと呼ぶのだろうか。どこかのタイミングで私のようなよく知りもしない人間からナムロックだよ!って指摘されることを思うと胸が痛む。

 

順番的にまずはマウスについて学ぶそうだ。この画面まではカーソルを動かし左クリックをすることができればたどり着けるわけだから、当然それ以上のことを教えてくれるのだろうとは思う。右クリックやドラッグ、スクロールなんてのも必要だし。

 


 パソコンを操作する方法を練習しましょう。ここでは、マウスを練習しましょうね。
マウスって、浦安に住んでいるという、世界的に有名なアノねずみさんですか?

 

ぷよぷよの対戦前デモみたいなのが始まった。なんとフルボイスである。フルボイスで際どい発言をするんじゃあない。

 

それはそうと、パソコンのいろはを起動するまでの流れはやはり購入した店舗等で教えてもらうのだろうか。「最初からデスクトップにショートカットを入れておくから、電源を入れたらダブルクリックで開いてくれ……」おそらくそういった要領の説明をするのだろうが、パソコンのいろはをやらなければならない層にはその説明をするだけでも骨が折れそうだ。

最近、職場で立て続けに2度も新しいパソコンを購入したので特に感じるのだが、最初の設定だけでもそれなりの情報量があり、特にパソコンへの馴染みがない層には初期設定だけでもひと眠りの休息を取らなくては次のステップに進むことができないほどのダメージとなるだろう。

 


違うわ。パソコンの操作に使う装置のことよ。キーボードの横に丸っこいものが置いてあるでしょう?あれがマウスよ。形や動きがねずみに似ているからマウスっていうの。

 

そのような私の憂いとは別に、お姉さん(仮称)と犬(仮称)は気楽に会話をしている。

 


ちなみに、「ミッキー」っていう単位があるのを知ってる? マウスを100分の1インチ動かしたときの移動量を1ミッキーっていうのよ。

 

なんかしれっと豆知識が披露されている。私はこれまで何ミッキー動かしてきたのだろうか。調べてみると1ミッキー(100分の1インチ)というのは約0.25mmだそうだ。これまでの人生の総ミッキーは途方もない数字になりそうな気もする。

 

FF6の歩数みたいにメニュー画面に総ミッキーが表示されるのも面白いのではないだろうか。世の中には人生を低ミッキー攻略している人もいることだろう。

 


じゃあ、ミニーは?

 

いちいち際どい発言をするんじゃあない。さてはこの犬、バカだな? ミニーなんて単位あるわけないだろ。……無いよな?

 


・・・。それではマウスの使い方について、具体的に説明します。
ミニーはいないの?

 

調べたが、ミニーという単位は無い。お姉さんのあしらい方が雑な気もしなくはないが、こういう奴は相手にするとどんどん調子に乗るので無視するのが一番だ。この犬にも良いお灸となるだろう。

 

ん? 犬とは言ったがよく見るとお腹に袋のようなものがある。まさかカンガルーやコアラのような有袋類なのか? 人語を話し袋を持つ、不可解な生き物だ……

 

さて、予想したようにこちらではマウスの基本的な操作方法を学習することができる。

左クリックや右クリックにダブルクリック、スクロールやドラッグといった基本的な操作だ。

 

なんかわからんがジワジワくる絵だ。画像にもよるけど残像がつくと笑っちゃいませんか?

 

学んだ操作を実際に体験する時間もある。ちょうど全てのピースが向きを変えなくてははめられなくなっており、絶対にダブルクリックを身に付けさせたいのだという強い意志を感じる。それはそうとお姉さんが何の脈絡もなく突然メガネをかけた。急なイメチェンはやめていただきたい。

 

最後にまとめを見て終わり。おおむねこのような流れで各学習が進行する。

いろいろ突っ込みはしたが、ここまでだけでも非常に親切丁寧な説明でパソコン初心者にも安心な内容だと思う。

 

また脱線してしまうが、私の職場は職員20人規模の小さな自動車学校である。自動車学校の教習というのもオンライン化が進んでおり、いわゆる座学の教習はリモートで受けられる時代となった。

しかし私の勤める学校では上層部の決断が遅れたこともあってオンライン教習をスタートするのが遅れており、いち早くスタートさせた学校と比べると3年ほど遅れている。今年の夏からようやく準備を始め、ついこの11月に始動することができたのだが、このオンライン教習という新サービスの立ち上げは概ね私が一人で行った。いや、もちろん完全に一人で行ったわけではない。当然別の職員にも一部協力してもらってのことではあるが、それでもあえて言うならば、この立ち上げは私無くしては成しえなかった。

 

職員の過半数はあと10年もしないうちに還暦を迎え、ある程度は雇用を延長したところで10年経つ頃には現在の職員の数も半分に減少することが目に見えている。もう10年も経てばさらに半分が還暦を迎える。そういった年齢層の職員たちには昨今の時代の変化は大変目まぐるしく、新しい業務を立ち上げるだけのキャパシティも柔軟さも無いため、立ち上げ責任者を据える際、私に白羽の矢が立った。

とはいえ、前述の職員たちの中では勤続5年の私(30歳)など下っ端中の下っ端。私の思いとは別に自分のペースでせっかちに進めてしまうパソコンは人並み程度に扱える先輩職員もいれば、私の思いを汲んで協力してくれようとする上司もいたがパソコンに非常に疎く何をすれば良いのかもわからないような状態であり、私が上司に足並みを揃えて丁寧に説明していると先輩職員が横から効率化のための応用操作を教えようとしてくるが、それによって上司の頭はパンクしてしまう。

 

そういった人数は少ないくせにさまざまな層の職員に囲まれた新サービス立ち上げは混迷を極めた。

今回強く感じたが、私が想像する以上にパソコン苦手層はパソコンに対してわからないという恐怖を感じているし、同じようにパソコン普通層はパソコン苦手層のパソコン苦手度がわからない

新サービスにかかる業務のほとんどはパソコンを使用して行う。私はあくまで立ち上げの責任者ではあるが、実際に運用していくのは上層部である。この上層部が軒並みパソコンに疎い。

 

これを見ていただきたい。新しく増えた業務のマニュアル作成を命じられ、私が作った業務マニュアルの一部だ。かなり懇切丁寧に作成したつもりだが、パソコン苦手層への説明としてはこれでもまだ不十分だ。正しくはGmail を開く(画面右上のGmailをクリック)である。クリック操作があるならクリックと書かなくては伝わらない。これが手順というのだから恐ろしいし、この程度のマニュアルにこれだけのシワができるほど使い込まれているという事実にも震える。

 

上層部の一人は言った。「マニュアル通りにしているのに違う画面が出てくることがある」

何を言っているのかさっぱりわからなかったが、よくよく聞くとこうだ。

 

「これと、

 

これは、違う画面だ」と言うのだ。なるほど、わからん。

これは表示の仕方が違うだけで同じ画面なのだと説明しても、すぐには理解してもらえなかった。彼が言うのには「違う画面が出たら取り返しのつかないことになってしまうような気がして怖い」というのだ。大抵のことは取り返しがつくからわからないなりにやってみてくださいよと話しても怖がってなかなか踏み込めない。

 

気持ちはまったくわからないが、彼の言うことは理解できる。要は自分の理解や力が及ばない領域で何かが起こっていることが怖いのだ。下り坂でブレーキが壊れてしまうような感覚なのだろう。たしかに私も幼少の頃に家のパソコンをフリーズさせたときは死ぬほど怖かった。その後も懲りずに何度もパソコンをフリーズさせたが、この辺に子どもと大人の決定的な違いを感じる。大人になると新しいことへの挑戦が億劫になるとはよく聞くが、それを目の前でまざまざと見せつけられていると、私もいつかそうなる日が来るのだろうとわかっていても恐ろしい。

 


キーボードには文字を入力する以外にも使い道があるのよ。ポッケくんは、キーボードでどんなことができると思う?
デコボコした形をしているから、ワッフルを焼いたりとか・・・できるの?

 

それに比べたらこのバカ犬、名前はポッケくんというらしい。ポッケくんはよほどマシな部類だ。失敗や失言を恐れていない。

 


そんなこと、できるわけないでしょ。
ワッフルじゃないなら、チョコレートとか・・・

 

バカだな~。このバカさが心地良い。

 


ポッケ君のポケットの中はがらくたばかりだけど、アプリは役に立つわよ!
ガーン!!!ひどいやアイコ先生・・・

 

さらに進めてみる。バカ犬だなどと言う私もヒドいとは思うが、お姉さん(アイコ先生)もたいがいである。それはそうとおしゃれアイテムを手に入れたのでポッケくんがベストを着ている。お前が身に付けるんかい。

 


まあポッケくん、そんなに力んじゃってどうしたの?
あっ、アイコ先生! ちょうどよかった・・・これどうにかならない? 画面を真ん中に動かしたいんだけど、ボクの念力がきかないんだ。

 

ポッケくんはパソコンのウインドウ相手に念力を試みたらしい。バカだな~。

 

 

 

そんなこんなありつつ、すべての学習を終えた。ポッケくんの姿もよりバカバカしくたのもしくなった。

すべての学習を終えて思うことは、これをやったからといってもパソコンをマスターできるわけではない。あくまでもパソコンは目的を達するための手段でしかなく、その目的を何とするかで必然と操作の仕方も変わってくるのだ。

これからパソコンを使ってさまざまな目的を達することになるあなたへ、パソコンはいつでもあなたと共にある。パソコンの操作を忘れないでね。パソコンを愛してね。パソコンのいろはを覚えたあなたなら、大丈夫。

そんなメッセージが聞こえてくるはずもないが、何事も基礎が大事であることはたしかだ。職場の上司たちにもやらせたいと思ったが、職場のパソコンはNECではなかった。残念だ。

 

 

 

最後に、いくつかの謎が残ったので共有したい。

 

これはすべての学習を終え、おしゃれアイテムをコンプリートしたはずのたからばこなのだが、あまりにも収まりが悪いではないか。この感じからいって、もう3つはアイテムがあるはずだろう。

 

調べるべく、大元のファイルが格納されたフォルダにアクセスすることにした。

たいていのアプリケーションソフトはソフトを構成する多くのファイルを保有するフォルダとなっており、インストールされたソフトの構成情報等は特に変な操作をしていなければパソコン本体内のメモリー等に格納されているため、表に出てくることはない。インストールとともにデスクトップ等に表示されるショートカットアイコンによってアクセスすることでソフトを起動することができるのだが、このように右クリックメニューのファイルの場所を開くによって大元のフォルダへ直接アクセスすることができる。

 

フォルダ名iroha、これがパソコンのいろはを構成するファイルの数々である。誤ってこれらのファイルを消去してしまうと、パソコンのいろはというソフトは破損してしまうといったところだ。

フォルダirohaを漁ることによってアイテムの謎を調べようとしたが、残念ながらアイテムについての情報を得ることはできなかった。しかし新たな謎が浮上した。

 

narration と sfx という2つのフォルダ。このフォルダにはソフトで使用する音声データが格納されており、フォルダnarrationにはデモ画面で使用されたボイス音源が、フォルダsfxには効果音やBGMの音源が入っていた。

しかしこれらの中には明らかに本編で使用されていない音源(没音源)が含まれており、前述のアイテムの謎とも何か関係があるのかもしれない。もしかすると以前のバージョンで使用していたデータをそのまま置いているだけなのかもしれないし、本来使う予定だったのを何か事情があって没にせざるをえなかったのかもしれない。

いずれにしてもゲームの没データと聞くとワクワクする性分の私にとっては、これほど楽しいことはない。これもパソコンのいろはを身に付けたおかげの産物だろう。