うーん、コミュ力がないから取り残されてしまったぞ。すっかり見渡す限り荒野だ。元々こんなだった気もするけど。

 元々コミュ力がなかったから慣れているとはいえ、完全な孤独は人を狂わせる。酒で自我を薄めないとやってられない。

 チェッ、もう空か。かっこいいからスキットルを使ってたけど、普通に4Lの大五郎とかを持ち歩くべきだった。

 こうなると己を慰める手段がこれしかない。

 いくら大声を出そうが文句を言う奴はいない。

 ギターといえば、今よりもうちょっとコミュ力があって、バンドとかやってた頃に変な思い出があったな。あれを歌にしよう。

 

C D Bm Em D

C D Em

C D Bm Em D

Am Bm Em

 俺がなんとなく爪弾いたコードは奇しくもアニメ「けいおん!」のエンディング、Don’t say “lazy”のコード進行と同じであった。この奇跡は時空を超えた。

 そして歌はたまたま金属のバケツをかぶり、耳に独特な形のアルミホイルを差し込んでいた2023年の俺の元に届いた。こうすると未来の声が聞こえる。やってみてほしい。

 未来で孤独になっても人とコミュニケーションが取りたいとかではなく「他人の薄いコミュニケーションの話が聞きたい」とは実に俺らしい。

 よし、集めようじゃないか。俺はGoogleフォームで「全然知らない人とその場の流れでなんか会話した思い出募集」を開始した。その後とくに仲よくなったりしていないような、本当にその場限りの会話だ。誰しも人生にはそういう変な会話が何度かあるはずだ。そしてそれは、大抵なんか変な思い出として残るものだ。それが集まったら絶対面白い。

 ありがたいことにドサドサ集まった。送ってくれた皆様ありがとうございました。未来の俺も喜んでいると思います。いつもの如く全部は紹介できないのでご了承ください。でも全部読んでるからね!!

 それでは皆様の歪な一期一会、知らん人とその場の流れで会話したエピソードを紹介していこう。

 

 単純なコミュニケーション能力の強さで知らん人と会話した事例。あるいは意図せずそれっぽくなってしまった事例。

 

競馬

 競馬場の発券機で、2回目だったのでやり方がわからなくなりました。

 隣の発券機を操作してるのは友人だと思って「ねーこれどうやるんだっけ〜?」と聞いたら、知らない強面のおじさんでした。「チッ!(舌打ち)ここに入れてこう!」って教えてくれました。

 ビビりましたが、こちらもタメ口キャラを通して「できた!ありがとー!」とお礼を言いました。馬券は外れました。

甘夏せと香

「このまま通し切れば間違いではなくなる」という時に勝負に出られるのはかっこいい。

 

あそぼー!

 小さい頃に公園で、『ぼく 山田めらち(仮名)ー!だれかいっしょにあそぼー!』ってフルネーム叫んで20人くらいで鬼ごっこやらかくれんぼやってました。

 そのなかでめちゃくちゃ仲良くなったゆうた(仮名)くんに、アイスをもらいました。めちゃくちゃ美味しかったです。

 今思えばコミュ強すぎる。

めらち

 子供時代とはいえ投稿されていた中では最強のコミュ強エピソード。あと、なんて良い地域なんだ。

 

富士山

 私が高校一年生のとき、県外にいる友達に会いに、初めて1人で新幹線に乗っていたときのこと。

 静岡あたりで、車窓から見えた富士山の大きさときれいさにとてもびっくりして、隣の席で仕事していた人(20-30代くらいのスーツの人)に、「富士山すごいですよ!」と思わず声をかけてしまった。

 今思えば、その人は出張中っぽかったし、新幹線からの景色なんて見慣れていたのだと思うが、 その時はしばらく一緒に車窓をみて「本当だ、富士山すごいですねえ。大きいですね」とニコニコしてくれた。特にそれ以外は話さなかった。

 もう10年以上経つけど、あのとき知らない人と車窓を覗き込んでニコニコしたことを、なんかずっと覚えている。

かす

 あまりにも素朴な良い話でなんか泣きそうになりました。

 

帰り道

 仕事からの帰り、ランチバッグを持って歩いていたら、その辺を歩いていた女性に「今日お弁当だったの?」と聞かれ 「うん、今日はスペイン風オムレツ」 「へぇ〜!オシャレだね」 「でもひっくり返すの失敗しちゃいました」 「ドンマイw」 などと和やかに雑談をして別れましたが、全然知らん人でした。

ドッペルゲンガー

 こんな通り魔みたいに雑談のラリー始まることあるんだ……。

 

カラス

 大学に行くために家から最寄り駅に行くまでの道中で、突然カラスに頭を強めに蹴られ、思わず一部始終を見ていた知らないおじいさんに「やばくないですか!?!?」と話しかけてしまった。

 一通り話し終わった後に今の俺コミュ力高かったな~~と思った。大学には遅刻した。

ぱおっぱおぱお

 ここまでのことがあれば誰でも良いからすぐに共有したくなるかもしれない。

 

イカ

 高校の遠足でしながわ水族館に行ったとき、水族館が大好きな僕ははしゃいでずっと班員に話しかけまくっていました。

 ところが知らない間に班員とはぐれてしまったらしく、ふと見ると僕が話しかけまくっていたのは知らない家族連れ… 知らない高校生に「ねえイカがいるよ!…あれ、生きてる??生きてるのかな…あっ動いた!!!ってこれタコじゃん!あっこっちがイカか。コウイカだって!」とか言われ続けてどんな気持ちだったでしょうか。

 しかしその家族は優しく、僕の話を聞いて相槌を打ってくれていました。(だから気づかなかったのですが)

 話しかけていたのが班員じゃないと気づいた僕は無言でそっと消えました。

 恥ずかしかったです。

バス人間

 知らん高校生から逃げるでもなく相槌を打ち続ける知らん家族の包容力。

 

 己のテリトリー内ではコミュ力が急激に上昇しがち。

 

ゴジラ

 映画館にシン・ゴジラを観に行った時の話です。

 前情報を何も入れず、なんか人気らしいよとミーハーな気持ちで行ったのですが、終わってみると大変面白く、 エンドロールまでしっかり読んでいたのですが、キャストに「野村萬斎」の名前を見つけました。

 場内が明るくなってから、同行していた妻と「野村萬斎の名前あったよね」「あった」「野村萬斎なんて出てた?」「いや〜……いなかったと思うけど……」「カメオ出演とか?」と話していたところ、前に座っていたおじさんが振り向いて 「ゴジラが萬斎ですよ……!」 と教えてくれました。

 咄嗟に「あっ……そうなんスかー!ありがとうございますー!」と返すしかなかったのですが、おじさんは満足げに頷くとそのまま去って行かれました。

 後ろにアホなカップルおるな〜教えてやりて〜と思われたんだろうなとは思いますが、あの人はきっと映画の神様だったのかもしれない、と盛り上がった、いい思い出です。

ねりたん

 俺にはおじさんの気持ちがわかる。この瞬間めちゃめちゃ気持ちよかったと思う。

 

アイドル

 アイドルゲームのライブのライブビューイングがあり、チケットを余らせている人から同行者募集があったので連絡し、知らない人と見に行った。

 ライブが始まるまで軽く話していて他にどんなジャンルのゲームをするかみたいな話をしていたつもりなのに、途中から何か噛み合わないなーと思いだして、気付いたら私がアイドルでよくライブをしているという話になっていた。もうこれは修正できない…とめんどくさくなったので適当に話を切り上げてライブに集中することにした。

 こんなナリでアイドルなわけないだろ…と思ったが、相手は私以上に思っていただろう。

 その方のご好意でライブを見られたのに適当言ってすみませんでした……

りん

 まあ二度と会わない人に誤解されたままでも支障はないしな……。

 

チュートリアル

 小4で近所のスーパーにポケモンのアーケードゲームをやりにいったとき。

 映画の入場特典でもらったトレッタ(カード代わりのICチップみたいなやつ)だけで初めて遊んでたら、前に遊んでた知らない男の子が遊び方を説明してくれた後にかなり強いトレッタを数枚くれた。

 親との待ち合わせがあったから特にそこから仲良くなることもなかったけど、今だにポケモンのアーケードを見るとなんとなく思い出す

チュートリアル少年

 そんな野性のオーキド博士みたいな人いるんだ。

 

友人の友人

 大学に行ったら初対面の友人の友人がいて、そのままノリで私の推しキャラの誕生日を祝うために全員で焼肉に行って、カラオケでオールした後私の家まで送って貰い、初対面の人間に優しくしてくれて感謝が溢れたので深々とお辞儀をしたらぎっくり腰になり、その人が場で唯一のぎっくり腰経験者だったため階段しかないアパートの4Fの部屋まで運んでもらった。

無記名

 コミュ強枠かなとも思ったけど、ここまで一文で書き切っているのはオタク枠だな。

 

ノート

 友達とショッピングモール内を歩いている時に、携帯ショップが臨時出店?していて、子供に配る用のポケモンのノートが置いてあった。

 私はポケモンが大好きな20歳児なので、ついノートを見ながら「ガブリアスもドラパルトもいて、かっこいいノートだね~」と友達に話しかけていた。

 するとそれに気づいた店先のおじさん(茶髪でぽっちゃり、36歳くらいでそこそこえらい役職そう)が私に、「ノート持ってきなよ!」と声をかけてくれた。

 ノートをもらえる嬉しさより知らない人にタメ口で話しかけられた怖さが勝ってしまい、とっさに自分を強く見せようとして「え、これほんとにくれんの?いいの?マジ?やった~ありがと~」とありえんタメ口をきいてしまった。

 ごめんねおじさん、ノートありがとうね。

そのはら

 威嚇のタメ口ってあるな……。

 

ファンサ

 とあるアイドルものの舞台で、俳優が客席に降りてファンサービスをしてくれる時間がありました。

 推してる俳優が近くに来てめちゃくちゃ楽しんだのですが、終演後隣に座ってた知らない人に「肩叩いちゃってごめんなさい!近くに来てよかったですよね!」と言われました。

 正直それどころじゃなかったので全く気づいてなかったのですが、私が持ってるうちわで推しだと気づいて、近くにいるのを知らせたくて肩を結構叩いていたらしいです。

 その後少し感想を話してすぐにそれぞれの帰路についたのですが、なんとなく印象的でずっと覚えています。

ひみつ

 結果要らない世話ではあったけど、こういうオタク現場特有の善意しかないコミュニケーション良いよね。

 

Q

 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Qの世界最速上映を深夜の映画館で見たあとに、隣の知らん人と顔を見合わせて「なんだったんですかね……ハハ」と会話しました

ほうき

 良くも悪くも「なんだったんだ」という気持ちを最速で誰かと共有できたのは幸運だ。

 

ブックオフ

 中学の時にブックオフの特撮系の物が山積みになってる棚の辺りで未就学か低学年ぐらいの男の子と結構話し込んだことがある。

 Vシネマの話まで出来るかなりのめり込んでる感じの子だったのでめちゃくちゃ話が弾んだ。

 数十分ぐらい経った所でその子の母親が迎えに来たが今考えると母親から俺に注がれてる目線は完全に警戒してるものだった。

 別の時に孫へのプレゼントを買いに来てるおばあちゃんへもかなり熱く解説してしまったこともあるから多分俺は社交性があるんだかないんだかわからない駄目なオタクらしい

イーデェン

 典型的な己のテリトリー内でコミュ力が上がるオタクだ!! 特撮見てると子供と会話しなきゃいけなくなった時便利だよね。

 

 コミュニケーションの潤滑油とは言うけどよ。

 

BBQ

 川辺で友達グループ10人くらいで花火をしていた時。気づいたら知らない酔っぱらいのお兄さんがぼんやり立ってた。

 少し離れた場所でBBQをしていた全く知らないグループの人だったらしく、いつの間にか他のBBQ仲間が全員いなくなっており、置いて行かれたらしい。

 見るからにふらふらで、自分の名前や勤務先・住所などの個人情報を無防備に垂れ流す危険な状態だったので、心配になり、紙コップに烏龍茶を入れて渡してあげると「こんなに優しい人たちがいるんだ…」と言って泣き出した。

 タクシーを呼びましょうか、駅まで付き添いましょうか、と提案したけどなぜか固辞され、結局彼は烏龍茶の2Lペットボトルを抱えたままふらふらと駅の方面に消えていった。

 無事に帰れてたらいいな。

ななは

 酔っ払ってなくても置いてけぼりにされた時に知らん人に優しくされたら泣くかもな。いやまあ、全体的におかしい話だけど。

 

アジア

 友人と深夜にカラオケに行き店を出たところ、店先でぶっ倒れてるおじさんがいました。

 メガネは割れていましたが意識はあるようで、恐らく酔い潰れて転んで立てなくなったというような状態でした。

 私が近くの自販機で水を買い手渡すと、おじさんは私に「君は韓国人か?」と聞いてきました。私が日本人ですよ、と答えた後も「中国人か?」「ミャンマー人か?」などとおじさんは色々なアジアの国の名前を挙げてきました。

 その後おじさんは急に語り始め、どうやら若い頃にアジアの色々な国に行きそこで多くの人に親切にされたようで、どうやらその時のことと水を渡した私が被ったようです。

 おじさんがひとしきり語った後、こちらに手を伸ばしてきたので立ち上がりたいのかと思い私がその手を引こうとしたら、急に「日本人はそんなことしない!!」とめちゃくちゃデカい声で怒鳴られました。

 呂律も回っていなくて詳しくはわかりませんでしたが、外国人は優しかった、日本人はそれに比べて冷たいなどのことをひたすら怒鳴り散らしていたので、ほっといて帰りました。

お口

 店先でぶっ倒れているだけある強烈さだ。べつに親切な日本人がいてもいいだろうがよ。

 

調味料

 広島のアンテナショップで買い物中。日本酒と、家族から頼まれていた七味唐辛子を持ってレジに並んだ。

 後ろに並んだおっさんに「調味料で飲むようになったらおしまいだぞ!」と大声で言われたので「わかってねえな!」と答えた。(そう答えましたが、アテにするために七味を買った訳では無いです。)

やき

 赤の他人同士でこんな味がある会話発生することあるんだ。これに「わかってねえな!」なんて返せるのがすごい。コミュ強。

 

鏡月

 確かコンビニで、カゴに鏡月を4,5本入れてるおじいちゃんがいたので、「お父さん鏡月お好きなんですか?」と話しかけたことがあります。

 おじいちゃんはニコニコで「そうなの〜美味しいんだよね」と返してくれました。

すがわら

 たしかに鏡月のビンそんなにカゴに入れてるおじいちゃんがいたら見ちゃうな。コミュ強だったらそこからこんな感じの会話ができるのか……。

 

恋愛

 大学4年の卒業間近の時期のサークルの飲み会で、居酒屋のトイレに並んでいたところ、全く知らん兄ちゃんに唐突に恋愛相談をされた。

 自分は彼女が出来たことすらない生粋の童貞だったのだが、同じくトイレに並んでいるサークルの後輩達が見ている前で、クールで大人な先輩で通している自分がそれを悟られる訳にはいかないと思い、必死でそれっぽいことを言って乗り切った。

 兄ちゃんの話を聞くことよりも、周りの後輩に経験豊富なフリをすることの方に全力なあたりがいかにも童貞らしいと思う。

 まゆしぃ

 めちゃめちゃ良いな。状況が全部面白い。居酒屋のトイレで知らん人からアドバイスをもらってどうしようと思っていたんだそいつは。

 

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