はじめまして。オグラホロと申します。
ふと見渡してみると、人の生活って「スイッチ」に溢れてますよね。
家電を操作したり、部屋の電気を点けたり、また消したり…
「現代人の一日はスイッチを押すことに終始している」と言っても過言ではないのかも…
ところで皆さんは、こんな話を耳したことがあるでしょうか。
普段何気なく使っているコンビニのATM。
そのテンキーには「静電容量無接点方式」なる高級スイッチ部品が使われているというウワサ…
何やら耐久性に優れていて、押し心地がとても滑らかなのだとか。
…というわけで、近所のセブンイレブンにやってきました。
普段通りATMを利用し、ついでにテンキーも感触を確かめてみようと思います。
…
確かにすごい。
一般的なキーボードが「カタカタ」「パチパチ」みたいな感触なのに対し、
ATMのテンキーは「もしゅっ…もしゅっ…」みたいな上品な押し心地。
例えるなら板チョコと生チョコくらい違います。(どっちも好きです)
あまりの心地よさにずっと触っていたくなりますが、残念ながらそれは不可能です。
なぜならコンビニATMは公共のものなので、一人で占有すると鬼迷惑だから…
しかし、
場所や時間にとらわれずATMのテンキーを使う方法が一つだけあります。
「自作キーボード」です。
つまりATMの仕様を再現すれば、いつでもその気分が味わえるってワケ。
というわけで、今回はATM風のテンキーを作ってみます。
ATMっぽいスイッチを選ぶ
まずは肝心のスイッチ部品を選んでいきます。
ここで一つ残念なお知らせなのですが、
ATMと同じ「静電容量無接点方式」で自作するのはとてもハードルが高いらしい。
そこで今回は、自作キーボードでよく使われる「メカニカル方式」で作ってみようと思います。
メカニカル方式のスイッチはこんな感じの小さな部品。
打鍵感の異なる様々なスイッチが販売されているのですが、
その中から「静電容量無接点方式に似てる」という評判のものをいくつか取り寄せてみました。
候補のスイッチで作ったテスター。
これをカバンに忍ばせておき、ATMの利用後などに押し比べた結果…
選ばれたのはこちら、「Kailh Pro Purple」というスイッチ。
若干反発する感触が、ATMテンキーの滑らかさと似ている気がしました。
コロコロしててかわいいですが、カラーリングはほぼフリーザ様ですね。
肝心のスイッチが決まったので、次のステップに進みます。
ATMっぽい仕様にする
どうせ作るなら、キーの配列や見た目も本物っぽくしたいですよね。
普段利用しているATMを参考に、仕様を考えてみました。
細かな部分まで本物に似せることで、より没入感が高まるはず。
下部にある青いキーは、マクロという機能を設定して「万」は”0,000″、「千」は”,000″、「円」はそのまま漢字の”円”が入力されるようにします。
これによって、PC上でも「数字」→「万・千」→「円」というATMライクな入力が可能に。
あとは上記の仕様に合わせて、CADソフト等で基板と外装プレートを作ります。
ただATMっぽいテンキーを目指すだけでは味気ないので、
架空の銀行「セキセイ銀行」のロゴを基板とプレートに入れてみました。
最終的な組み立てのイメージはこんな感じ。(分かりやすく色分けしています)
これで準備はすべて完了…。
あとは完成した設計データを業者に発注し、
「ちゃんと動くのか…!?」という不安を胸に部品の到着を待ちます。
実際に組み立ててみる
部品が揃ったので、早速組み立てていきますよ。
今回用意したのはこちら。
- 基板
- キースイッチ×15
- ダイオード×15
- マイコンと取り付け用パーツ
- リセットスイッチ
- キーキャップ×15
- 固定用プレート×3
- ネジやスペーサー
まずは基板に電子部品を取り付けていくのですが、全体的に細かいパーツが多いです。
中でもこちらのダイオードは、鉛筆の芯先ほどのサイズしかありません。
(しかも向きを間違えると動作不良の原因になるらしい)
「いきなり難所かい」という気持ちを抑えながら、慎重にハンダ付けしていきます。
キースイッチをアクリルプレートに固定したら、
プレートごと基板と合体させてこちらもハンダ付け。
制御用のマイコンも一緒に取り付ければ、部品の実装は終わりです。
あとはトッププレートとボトムプレートを取り付けて…
転写シールで印字をしたキーキャップを装着したら…
かなりATMだこれ!
キーを押した感触もかなり「ぽい」です。
しかしこのままではただのスイッチ付きの板。
PCに接続してファームウェア(キーボードとして動作させるためのプログラム)を書き込みます。
無事書き込まれたようなので、動作テストをしてみます。
果たして動くのか…!?
ちゃんと文字が打ててる!!
色々な金額の入力を試してみたのですが、
配列や機能まで本物に寄せたこともあり使用感はかなりATMに近いです。
とりわけ、ATM特有の「1,000円、10,000円単位の金額を入力する感覚」は完璧に再現できています。
これでいつでもATMのテンキーを打つことができるぞ!!!
ひとつ上のATM体験へ
せっかくなので、さらなる没入感を求めて自宅にATMコーナーを作ってみました。
出かける直前に使えるよう、設置場所は玄関に。
どう見てもモニターにUI風の画像を映しているだけですが、
雰囲気だけでもATMの操作を再現してみようと思います。
まずはキャッシュカードを入れて…
メニューから取引を選択。
今回は口座からお金を引き出してみようと思います。
暗証番号の入力には、もちろん自作したキーボードを使用。
プライバシー保護のための覆い(LED付き)も用意したのですが、自宅なので一切意味はありませんでした。
金額はとりあえずこれくらいでいいかな?
最後に「確認」キーを押せば…
…
わぁい
2万円を引き出すことができました。
このあと他の操作も試したかったのですが、
帰宅した家族に撮影風景を目撃されてしまったので本日の業務は終了です。
おわりに
最後に思わぬ傷を負ってしまいましたが、なんとかATMのキーボードを再現することができました。
感触を直に伝えられないのは残念ですが、本物に負けず劣らず良い押し心地なので外付けテンキーとして普段使いしたいと思います。
また、今回は「ATMを再現する」という目的での製作でしたが、
自作キーボード自体が実用的かつとても楽しいので、電子工作に覚えのある方は是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
今から私は本物のATMにお金を戻してこようと思います。
それでは、ありがとうございました。
(おわり)