「えーと、ここでいいんだよなぁ?」

 

ピンポーン

 

「あら、いらっしゃい」

 

 

 

 

「あ、お邪魔しまぁす」

 

「はーい、スリッパどうぞ」

 

 

 

 

 

「行こうぜ行こうぜ! こっち!」

「おう!」

 

 

 

 

 

 

「あ、トイレ行っていい?」

「うん、いいよ。トイレそこ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほえ~~」

 

 

 

 

 

「ここ僕の部屋!」

「お~~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「入るわよ~」

 

 

「はい、お菓子どうぞ」

 

 

 

 

 

「なにこれ! うまっ!!!」

「美味しいよね」

 

 

 

 

「何して遊ぼうか」

「んーとねぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ! ねえねえ! ミニ四駆しようよ!」

「うん、やろやろ!」

 

 

「えっ! すごいモーターいっぱい持ってる! ベアリングもすげえ!!」

「え? そう?」

 

 

 

 

 

「じゃあ、コース持ってくるね!」

「え?! コースあんの?!」

 

 

 

 

 

 

「すごいな~」

 

 

「ノブいる~?」

 

 

「あれ? あんたノブの友達?」

 

 

 

 

「あ、あ、はい…」

 

 

「あ、それミニ四駆でしょ~」

「あ、そう……っス」

「うちのクラスの男子もみんなやってるよ~」

 

 

「……じゃあ、またね~」

「あ…、はい」

 

 

 

 

 

「今度ミニ四駆教えてよ、じゃね!」

 

 

 

 

 

 

「………っス」

 

 

 

 

 

「ねえねえ、リビングでやっていいって!」

「……どうしたの?」

「や……、なんでもないし」

 

 

 

「うわ、でっっけ~~~~!!! これ、おもちゃ屋にあるやつじゃん!!!」

「さっそくレースやろうよ!」

 

 

「レディ…………ゴー!!!」

「行け!!」

「よし! そのままそのまま!」

「うわ! ノブくんのマシン速ぇ!!」

 

 

「ねえ、これ見て見て!」

「すっげ! なにそれ!!!」

「これお父様が作ってくれたんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにこれ!!!! 超はえぇ!!超はえぇ!!」

「速いでしょ、お父様のシャイニングスコーピオン!」

 

 

「……く~~~ん! マーく~~ん!」

「あ、ママが呼んでる。は~~~い! 何~~~?!」

 

 

 

「こんな時間だし、せっかくだから夕飯も食べていってもらったら?」

「いいの?! そうしよそうしよ!! いいよね?!」

「うん!!!」

 

 

「もしもし、お母さん?」

 

 

 

 

 

 

 

「はい、どうぞ」

「あ、カレーだ! やった!!」

「うふふ」

 

 

 

 

 

 

「うめ~~!! 何これ?!! カレーじゃないの?!」

 

 

「ねえねえ! 食べ終わったらもう一回ミニ四駆しようよ!!」

「もう~、遅いんだからほどほどになさいよ」

「え~、いいじゃん! あとちょっとだけ!!」

 

 

 

 

 

ああ……

楽しい……

 

 

 

 

楽しいなぁ……

こんな日がずっと続くんだろうなぁ……

 

 

 

 

「……氏!」

 

 

 

「……起……て……さい!」

 

 

「起きてください! 加藤氏!」

 

 

「あ、あれ…? いつの間に寝て………。い、今のは夢……?」

 

 

「ご安心を。夢はまだ終わっちゃいませんよ」

 

 

「こちら、ご存知ですか?」

 

 

「な、永田氏! このアプリは一体?!!」

ミニ四駆 超速グランプリですぞ」

 

 

 

「マグナムセイバー!! なつかしっ!!!」

「あの頃の名マシンがアプリで完全再現されてますぞ!!」

「作り上げたマシンをAR撮影できる機能もあるですとっ?!」

 

 

「もちろん、作るだけでなくオンラインでレースもできますぞ!!」

「オンラインなら場所や時間を選ばずに対戦できますなぁ!」

「大人になると集まる時間もなかなか取りづらいですからな……」

「パーツも多っ!! はっ!! もしや、前輪と後輪でタイヤの径を変えたりも……?」

 

 

 

「できるのです…!!」

「最高!!!」

 

 

 

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「加藤氏、楽しむのに必要なのは幼さではありません。童心ですよ」

「よ~~し、金に物言わせて、あの頃の憧れマシンにフルチューンしますぞ~!」

「はっはっは! 童心は持てど、我々は大人ですからな!」

「ふふっ、原氏。お金をかけて改造するだけで勝てるほど、ミニ四駆は甘くありませんぞ」

 

 

 

「シャーシは何にされましたかな?」

「もちろん、FMシャーシ一択でしょうなぁ」

「私はコーナリング重視の設定で攻めますぞ」

 

「肉抜きもできるとは!!」

「ふふ、メッシュを貼ったり、カラーリングも自由自在ですとも」

 

 

 

 

「いや~、忙しくてもアプリなら組み立ても簡単ですなぁ」

「モーターは、ハイパーダッシュモーターを選択と……」

「あ、ズルっ!!」

「ズルくはないのです」

 

 

「ふっ、私の『サプレッションデザイア(抑圧された欲望)』に勝てるとでも…?」

「マシンの名前かっけ!」

「よろしい、それではレースと参りましょう」

 

 

 

「行け行け行け行け!!!!」

「負けるな!!!!!」

「抜け抜け抜け抜け抜け~~!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ…

楽しい……

 

 

 

 

楽しいなぁ……

いくつになってもこんなに楽しいんだ……

 

 

 

 

 

「……ちゃん」

 

 

 

「…おじいちゃん!!」

 

 

 

 

「おじいちゃん!! 目覚ましてよ!!」

 

 

 

 

 

「でも……、おじいちゃん、笑ってる……」

 

「きっと…、きっと…楽しい人生だったんだよ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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