こんにちわ、オモコロライターの原宿です。
皆さんは世界各地で行われる「奇祭」をご存知でしょうか? この世界には、様々な種類の珍しいお祭りが存在しています。
例えば…
ロケット花火祭り(ギリシャ)
エーゲ海東部に位置するギリシャ領の島、ヒオス島で行われる祭り。復活祭の前夜に、島にある二つの教会同士がお互いにロケット花火を打ち合う。
この島の住人は、このイベントのために年間を通じてロケット花火を製造するという。
ファヤス(スペイン)
スペインのバレンシアで行われる火祭り。「ファヤ」と呼ばれる人形を、毎年3月19日の夜中に一斉に焼き払う。
正式名称を「サン・ホセの火祭り」といい、サン・ホセとはスペイン語でイエス・キリストの父、聖ヨセフのこと。
チーズ転がし祭り(イギリス)
イギリス西部のグロスター郊外で行われる負傷者が絶えない危険なお祭り。
クーパーズヒルと呼ばれる急斜面に円形のチーズを転がし、それを参加者が全速力で追いかける。チーズの時速は100キロ以上にも達するという。
このように世界中に散見される変わったお祭の数々ですが、もちろん我々の住む日本にもそんな「奇祭」が存在します。
本日はこちらの公園で、まだほとんど世間に知られていない不思議なお祭りが開かれるという噂を聞きつけてやってきました。
約束ではこの辺りで「案内人」が迎えにきてくれるはずなのですが、はて……
んっ? もしかしてあの人かな……?
「あのぉ…すいません。このあたりで珍しいお祭りがあると聞いてきたんですが……」
「……………」
「あ、どうもどうも!取材の方ですよね? ようこそきてくださいました辺呉呂(へごろ)公園へ! 私、町役場の井崎と申します」
ホッ、町役場の方でしたか! 本日取材させていただくオモコロの原宿と申します。今日は井崎さんにお祭りを案内していただけるんですか?
ええ、させていただきますよ。皆さんにぜひ「オヒサギさま」のことを知ってほしいですからね。
オヒサギさま……?
あ! 説明は後にしましょう。もうすぐ祭りに欠かせない“儀式”が始まりますからね。見てください、「えーさーんちゅ」がやってきましたよ。
えーさーんちゅ……?
わっ!!
あいや! 今年のえーさーんちゅーも立派だわいな~!
なかなか衝撃的なヴィジュアルですね……。井崎さん、「えーさーんちゅー」とはどういう意味なんでしょう?
ばっこでしがった、おにわいさんがえーさーんちゅーだわいな。ほで、うちみっとろくなべえがでぃべるんよ。
はい?
すいません、ちょっと都会の人に標準語で説明するのが難しくて。少しずつ解説していきますね!
まず、こちらが祭りの主役になる“オヒサギさま”です。オヒサギさまは代々決まった家系の者が務める習わしになっていまして、選ばれた人間は祭りの半年前から黒い布で顔を覆い、土蔵にこもって生活します。こもっている間は、他の誰とも口を聞きせまん。
半年間、誰とも話さず暗闇の中で生活するんですか!? それは大変だな……
なんのなんの、すべては年に一度のお祭りのためですからね!
そして、こちらはオヒサギさまの補佐役を務める「かぶらお」です。勇壮なお姿でしょう?
確かに勇ましいというか、関わっちゃいけない感じですね。こちらも代々決まった家系の方が務めるのでしょうか?
いえ。「かぶらお」は町で一番ハリボーグミが好きな人間がやる習わしになっています。
非常に先進的な取り組みですね。
「オヒサギさま」と「かぶらお」が揃ったら、いよいよ「地祝(ちいわい)」と呼ばれる儀式が始まります。これによって、祭りの行われる土地を清めるという意味があるんです。
「地祝」ですか。おや? 木槌で地面に打ち付けているのはもしかして……
BIGあらびきソーセージ……
「井崎さん、一体なぜBIGあらびきソーセージを杭のように地面に打ち込んでいるんでしょ
「あれっ? 井崎さん? どこに行ったんですか? おーーーい!」
あっ、すいません。説明が途中でしたね。
………。
ささ、このように地面に穿たれたBIGあらびきソーセージによって、きったねぇ不浄な大地が清められました。いよいよここからが祭りの本番です。千歳の闇を振り払い、オヒサギ様のご本尊が姿を現します!
一体なにをするんですか?
オヒサギさま、出まっしゃれ!!!!!!
こ、これがオヒサギさまの真の姿……
オヒサギさま! 今年も強いの! 強いの!
強いの?
とんびきり強いの、強いの、強いのおたのもおおおおおおおおおおおおおおおおおすうううううううううううううううううううううううううううううううう
すごい! あらびきBIGソーセージが、一瞬で真っ二つに!
これが古代より辺呉呂に継承されてきたオヒサギさまの御力です。ありがたやありがたや……
最後にあらびきBIGソーセージの切り口を見て、今年の収穫を占います。うん、今年の切り口は非常によさそうですよ。こりゃ豊作だべんかな。
亀の甲羅や鹿の骨のヒビで吉凶を占う、占卜(せんぼく)のような風習なんですね。オヒサギさまの家系は、古代のまじない師から繋がっているのかもしれないな……
「いやぁ、色々と謎の多いお祭りでしたが、非常にエキゾチックな体験でした。井崎さん、今日はどうもありがとうござい
「見て、しまったのですね。オヒサギさまを」
え?
私もね、最初はあなたと同じ取材記者だったんですよ。それがオヒサギさまの祭りを見たことで、この辺呉呂という地に閉じ込められてしまった……。もう何十回、この閉ざされた世界で祭りを見てきたことか。
井崎さん、一体何を言ってるんですか?
「私のこの格好、祭りのためのハッピ姿だとお思いですか? 違うんです。これはね、パチンコ屋に新店長が就任する時の格好なんですよ。オヒサギさまの姿を見たものは、パチンコ屋の新店長となって、この町に永遠に閉じ込められる……。身代わりとなる犠牲者がやってくるまではね」
「ウワハハハハハ! お前のおかげでようやく解放されるぜ! せいぜいこの町で、パチンコ屋の新店長として働き続けるんだな! バーーーーーーーーーーーーカ!!!!!」
「ななっ! なあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ」
オヒサギさまのBIGあらびきソーセージ祭り(日本)
地面にBIGあらびきソーセージを打ち込み、“オヒサギさま”と呼ばれる神の使いがそれを切断する。切断面の様子で、その年の吉凶を占うお祭り。
オヒサギさまの顔は、決して外部の者が見ることは許されないという。もし見てしまった時は、その時は……
「……ス……ケテ……、タス………ケテ…………」
(おわり)