広大な内陸アジア、その真ん中らへんのぼやっとしたあたりにそびえる――

 

かなり高い山の、けっこう奥のほうにある洞窟にて――

 

紀元前3~5世紀ごろこの地に存在していたとされる、 ある少数民族が残した壁画がこのたび発見された。

その古代民族の名はエタトゥワ

彼らは他の文明との接触がないまま数百年にわたって繁栄し、そのきわめて独自性の高い文化や生活習慣をこと細かく壁画に描き残していた。

そこに描かれている他に類を見ないユニークな文化や習慣は、現代を生きるわたしたちにさまざまな示唆を与えることだろう。

 

では、彼らの壁画を覗き見ることでしばしの時間旅行を楽しむことにしよう。

 

エタトゥワの生活

これは彼ら自身の姿を描いた絵だとされている。

それっぽく伸びた髪と髭、いかにもな腰巻き、木の棒に尖った石を括り付けただけの無個性で面白味に乏しい武器。

この絵だけを見るならば、彼らが凡百の古代民族と何ら違いのない、これといった面白味のない民族のように思える。

 

こちらは彼らの食料を描いた絵だ。

森や川へ出かけ、野うさぎや鳥などの野生動物を狩猟し、川魚を捕り、木の実を採取していたことがうかがえる。

 

家の中では「食べるための家畜」としてグッピー、エリマキトカゲ、ウーパールーパーを飼育していたようだ。

 

これらの家畜は赤子の出産や家長の誕生日など、めでたいことがあった日によく食べられていたとされている。可食部は非常に少ないが、貴重な備蓄にもなっていた。

 

嗜好品として彼らが口にしていたのはデパス。多いときは1回で10錠いく者もいたという。

 

デパスを飲む前と飲んだ後では、心なしか彼らの表情が違うように見える。彼らの笑顔にデパスは欠かせなかったようだ。

 

続いてはこちらの絵をご覧いただこう。

彼らのあいだで貨幣のようなものが存在していたことがわかる。

いかにも古代人らしい、石で出来た大きめサイズの貨幣には「40萬」という文字らしきものと、いささか邪悪な表情をした顔のような絵が彫られている。

が、あくまでそれぞれは「1個」という単位でしかなかったようだ。

交換レートは貨幣3個で川魚1匹、5個で野うさぎ1匹、10個でデパス0.5mg 50錠。

エタトゥワの経済はデパス中心に回っていたことがわかる。

 

エタトゥワの特異体質

彼らは様々な特異体質を持っていた。そのいくつかをご紹介しよう。

 

ご覧のように「積んだ藁の上を寝床にする」という、いたってオーソドックスで面白味に乏しい原始的就寝方法を取っていたようなのだが…

 

起床すると寝癖が初期のBUCK-TICKのように逆立っていたとされている。BUCK-TICKの祖は紀元前の内陸アジアの山奥にあり。

 

この絵からは、あくびをすると直後に気絶する体質だったこともうかがえる。「あくび→気絶→目覚めのデパスで笑顔」が彼らの定番サイクルだ。

 

こちらは吸った酸素を体内でナノイオンに変えて仲間の髪に吐きかけている様子が描かれている。ナノイオンの息をかけられた仲間の髪はツヤツヤに描かれており、「エセ科学」などという言葉は彼らの辞書にはなかったようだ。

 

エタトゥワの成人の儀式

民族と言えばそれぞれ特有の成人の儀式があるものだ。 次にご紹介する絵には彼らの成人の儀式の様子が描かれている。

 

15歳になったエタトゥワの少年少女は、村で一番高い崖の上に登り――

 

うなじの産毛100均の剃刀でひと剃りし――、

 

崖からはるか下方の滝壺へ放り投げる。これで何かが清められる。

 

清められた身で村に降りた若者は、左右数メートルごとに置かれたタンスに足の小指をしっかりとぶつけながら50mを走り切らなければならない。理不尽な痛みに耐えぬく気持ちの強さを大人たちに示すためだ。

 

最後に一族全員の前で村歌をデスヴォイスで歌いきる。

村歌は非常にテンポが速く高音域を必要とする難易度の高い楽曲だ。歌いきることで喉の強さを大人たちに示さなければならない。

 

歌のキレがいいと、大人たちは頭を激しく上下に振り応えてくれる。一族の大人として認めたというサインだ。

 

歌いきれなかったばあいは、後日うなじを剃るところからやり直しになる。いつの世も大人になるのは容易いことではない。

これら一連の儀式をこなすことで禊とし、彼ら一族のあいだでようやく一人前と見なされていたのだ。

 

エタトゥワの崇拝対象 ①

崇める対象があってこその民族。彼らもさまざまなものを崇拝していた。

 

特に「一個が何個をも兼ねる」ものへのリスペクトは大きかった。

その代表例が十徳ナイフだ。この絵からは彼らが一徳ごとに何らかの「神」としての名前を付けていたことがわかる。「一個で十徳」、すごい。

 

この絵では怪人二十面相が描かれた壁にひざまずいている。ダミーとして描かれている「かい人21面相」のほうには見向きもしない。「一人で二十面相」、すごい。

 

そしてこの「兼用崇拝」対象の最高位とされていたのがこちらだ。

多目的ホール。村の中央にこしらえられた大きなそれを、ホールとしては一切使用せず、ただただ崇め奉る対象にしていた。「多目的」、すごい。「多目的」、ありがたい。

 

彼らは「すごい」「ありがたい」と見なしたものへの感謝の念を大きく表現する民族だったのだ。

 

エタトゥワの崇拝対象 ②

彼らはまた、白湯(45~55℃)の状態にある水を「聖水」と見なしていた。4枚の絵を見比べてみよう。

水が「熱湯」の状態にあるときは素通りし、

 

白湯(45~55℃)の状態になればたちまちひざまずく。

 

白湯から水に近い温度に下がればまた素通りし、

 

適量の湯を入れ、また白湯(45~55℃)の状態に戻るとたちまちひざまずく。

 

白湯は人間の身体にもっとも優しい温度の水。彼らは自分たちの命をつなぐ水の、もっとも優しい状態に大きな感謝と敬拝の念を送っていたのかもしれない。

 

エタトゥワの崇拝対象 ③

そして彼らは何よりも、一族の繁栄がずっとずっと続きますようにと、永遠(とわ)なるものの象徴に毎日祈りを捧げていた。

 

これである。

永遠に終わりが来ないトリコロールカラーに祈りを―――

と~~~わ~~~~~

 

エタトゥワの恐れたものと愛情表現

崇拝対象とは逆に、彼らが異常に恐れていたものがある。

「達磨の目入れ」だ。“完成してしまうこと” への恐れか、はてまた目の中に異物が入ることや赤く仰々しい異形のものに対しての恐れか、彼らはこの行為が怖くて直視できなかったという。

村の禁忌を犯した者を戒めるさい、目入れを間近で見させるという刑罰方法を取っていたようだ。

 

彼らが唯一「目入れ」と対峙できたのは三角帽子鼻メガネクラッカーの3点セットを装備したときのみだった。それでも達磨の圧力に堪えきれず、「目入れ」するほうに向けてクラッカーを鳴らしその場から逃げ出してしまう者もいたという。

 

彼らの異性への愛情表現もまた、独特であった。

相手のテリトリーを撫でることで愛情を表現するのだ。オスは何時間もかけてメスのテリトリーを優しく撫であげる。メスがいちばん快感を覚えやすいというテリトリーの境目部分を中心に、指だけでなく唇や舌も使い、緩急をつけ、焦らしたり、早めたり、強めたり。

 

それでいて物理的な合体にいたると非常に動物的であっという間に終わる。彼らはこのような方法で愛情を表現し、数百年ものあいだ繁栄してきたのだ。

 

エタトゥワからのメッセージ

一族の永遠(とわ)を願い、繁栄を続けていた彼らであったが、ある日突然あっけなく滅亡を迎えた。

 

徹マンに興じていたエタトゥワの長が九蓮宝燈(チューレンポートン)で上がるやいなや、村全体がすごい数の黒猫に横切られ、一族全員のしゃっくりが100回止まらなくなるという「死ぬ系迷信」3連コンボによってまたたく間に滅びを余儀なくされたというのだ。

およそ信じがたいが、その様子を描いた壁画が残っている。

壁画がすべてだ。

 

さて、時間旅行はこれでおしまい。

 

エタトゥワの生きた時代の延長線上に現在(いま)があることを、わたしたちは胸にとどめておきたい。

 彼らが愛用した道具(オーパーツ)の数々は、今もわたしたちの日常に存在している。

エタトゥワは現在(いま)も、わたしたちのなかで生き続けているのだ。

 

さあ祈りを捧げよう、わたしたち人間の歴史がこれからも永く続きますようにと。

と~~~わ~~~~~

 

(終)

 

 

 

 

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