ゴボコボコボコボゴボゴボゴボボ……
唐突に水中から失礼いたします、ライターの松田和幸です。
ところで皆さん、プラモデルを作るのはお好きですか? 僕は大好きです。
いつものようにプラモデルを作っていたところ、ふとこんなことを思いつきました。
「水中でプラモデルを作ってみたらどうなるのだろう?」と。
「いや、普通に部屋で組み立てたらよくない?」と思われるのも最もなんですが、人間ずっと同じことを続けていると脳が早く萎縮してしまうという話もありますし、よりエクストリームな場所で作ることでプラモデルへの愛も証明できるのでは? と僕は考えました。
何よりこのプラモデルは、「機動戦士ガンダム」に登場した水陸両用モビルスーツであるシャア専用ズゴックです。
水中でも戦えるこのモビルスーツ、僕も水中で作ってみるべきではないか? 数々のプラモデルを作っていくうちにそんな思いに取り憑かれました。
というわけで今回は、僕の住んでいる沖縄の海の中でシャア専用ズゴックを作ってみたいと思います。
水中でプラモデルを作るにあたり、いちばん必要な物は「空気」です。当たり前ですが。
ドンキに1500円くらいで売っているシュノーケルの先っちょを外し、ホースをねじ込んでガムテープを巻き付けました。
これで深いところに潜っても呼吸が可能です。
地上部分の空気の通り道は、「呼吸スポット」としてしっかり確保しておきます。海中でホースの先が詰まるとその時点でゲームオーバーなので、この場所は外敵からの攻撃を受けにくい位置に設置するのが望ましいです。
外敵とは主に、近くで釣りをしている小学生です。彼らに石を詰められたら一貫の終わりですので、事前に真剣な顔で「本当にやめてね」などのアピールをしておきましょう。
これで無事、海中でプラモデルを作るためのライフラインが確保できました。
次に直面するのは「ゴミ問題」です。
水中で作ったプラモデルの部品が海流に流された場合、それはゴミとなって魚や海鳥の口などに入ってしまいます。
今のご時世、そうなると炎上必至かつシーシェパードにゴムボートで特攻されるので、パーツはしっかりと水着にくくりつけておきましょう。
ここまでできて、ようやく海の中でプラモデルを作る準備が整ったと言えます。
さぁ、潜水開始!
海中に体が浮かんでしまうと作業に集中できないので、重ための靴を履いてしっかりと足元を固定いたします。
説明書に全幅の信頼を置くことは、海の中では危険な行為です。
重要なポイントを確認するだけにとどめ、基本的には長年の経験とカンを頼りに作っていきます。
これはプラモ作りには全く関係ない部分なのですが、せっかく誰にも見られない海の中なので、「修学旅行で買った沖縄のやばいTシャツ」を着てみました。
街中でこれを着ると、「あいつ、声のでかい居酒屋とかで働いてそうだな」と思われる危険がありますが、海の中なら誰の目を気にすることもありません。
うみんちゅの魂を体に込めつつ、実際のプラモ作りに入っていきましょう。
身長にランナーからパーツを切り離し、流されないようにしっかりとつまみます。少しでも力を抜けば、ズゴックの部品が島唄の風にのり流されてしまうからです。
説明書はこの時点でただのビショビショの紙になっているので、イメージを膨らませながらスピーディーに組み上げていくしかありません。
思い出せ。友達もできず、TSUTAYAでガンダムを延々と借りまくるしかやることがなかった、大学1年の冬を。
半年ぶりに誘われた学科の飲み会を、前日にインフルエンザにかかってドタキャンしたため、そのあと二度と集まりに誘われなくなったあの日々を…!
~2時間経過~
色々と試行錯誤しながら、何とかズゴックの腕を完成させることができました。
スタートから2時間かけて腕一本か……。
先が思いやられますが、僕が当初考えていた海中にドームを作ってそこに立てこもるプランに比べれば進みは速いはずです。
当初はこのような円錐形のプラスチックを海に沈め、自分がその中に入ってプラモを作ろうと思っていましたが、直近の闇金ウシジマくんに出てくる沖縄のヤバイ闇金融にお金を借りないと実現できなさそうな予算感だったので、こうして素潜りで作っています。
このまま夜までプラモを作っていると間違いなくダツに襲われますので、ここからペースアップしていかねばなりません。
~さらに1時間経過~
足、完成!
水中でプラモデルを組み立てるときのコツは、先に作る部位を決めて、それ以外の無駄なパーツを手にもたないことです。最速で作るためには、腕か足のどちらかを先に作るべき。
この2つの部位って、パーツの形状が似ているじゃないですか? 似ているパーツが多く残っていると、パーツを切り取るときに混乱してしまうのです。だから先に腕か足を作りきってしまって、残ったパーツを見たときに「これは脚だな」とすばやく判断できる状態を整えることが大事になってきます。僕は何を真面目に解説しているのでしょうか。水中でプラモを作る人なんか普通いないのに。
ちなみに写真を見てお分かりかと思いますが、完成したパーツは流されないように海パンに挟んでしっかりと固定します。
陸上では冴えない赤ブリーフも、水中ではパーツを抑える「パーツキーパー」としての性能を十二分に発揮するのです。
このあたり、「不格好だけど水中では強い」という水中専用モビルスーツとの類似性を感じないでしょうか?
無駄口を慎み、作業に戻りたいと思います。
~さらに1時間経過~
ついに胴体までこぎつけました!
ここまで合計4時間。3月の海は沖縄といえど寒すぎて、体の震えが止まりません。急げ…!急げ…!
あとは慎重に部品同士を組み合わせて……
正真正銘、水中生まれのズゴックの完成だ~!!
真っ赤なボディが水中で実に見事に映えますね。
海中でプラモデルを組み立てる良さは、できた瞬間に天然のジオラマでの撮影ができることだと思います。
自分より巨大な魚に驚くズゴック。
突起物を回避するズゴック。
ヒトデに無謀な戦いを挑むズゴック。
完全に魚たちに囲まれるズゴック。
いかがでしたでしょうか?
今回、海の中でプラモデルを作るという特に課さなくてもいい試練を乗り越えて、自分の中で確実に何かが成長した気がします。
海中とはいえ立ちっぱなしでプラモを作るのは疲れるので、次回はイスとテーブルを持ち込んで作りたいですね。
それでは唐突なだるま浮きにて今回は失礼いたします。
次回、パーフェクトジオング編でまたお会いいたしましょう。
(おしまい)
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