
本。漫画。小説。
読んでますか?読んでますよね?最近なにか良い本、ありましたか?ということで、バーグハンバーグバーグの人たちに定期的に聞いて回っている「最近読んでよかった小説、エッセイ」をご紹介させていただきます。
シルバーウィークのお供にどうぞ!
ダ・ヴィンチ・恐山が最近読んで良かった本
『石球城』殺人事件
物理トリックの名手、北山猛邦による長編小説。ダンガンロンパのゲームのトリックやノベライズを手掛けている人でもあります。
舞台は塀で囲まれて外部から隔絶された「石球城」。そこら中に転がっている石球や100人の住人、灯台に住まう巫女……。怪しげな世界の中で起きるのは13の密室殺人。しかもみんな首無し死体!
本編中のほとんどのページに死体があった気がします。密室の13の謎、そして世界そのものに隠された謎が怒涛の勢いで解き明かされる解決篇はあまりにも気持ちよく、パズラーミステリの快楽が詰まっていました。トリックも大胆すぎる。そんな発想あるんだ。
原宿が最近読んで良かった本
陽の光が消えた町で
6本のSF小説が入っている短編集なのですが、なんと6本で英米SF賞を8冠穫っているらしい。ヒューゴー賞とネビュラ賞を一生分獲ったナオミ・クリッツァーさんは、恐らくSF小説界の令和ロマンと呼ばれているに違いありません。「そんなに褒められているなら読んでみるか」と、権威主義に毒されし俗物の王たる自分も買って読んでみたのですが、こりゃヒューゴーもネビュラも総ナメにするわ、自分がヒューゴーでもそうするわと納得感しかない出来栄えでした。とにかく収録作すべての読み味がよく、温かで、読後感が心地よすぎる。表題作の「陽の光が消えた町で」は、いわゆるポストアポカリプス的な終末世界が描かれ、略奪や暴力が横行するどぎついサバイバルモノになるのかと思いきや、人々はコミュニティと人間性の力を信じ、残った物資を分け合い、自家発電をしながら弱きを助け、風雪に耐えながら小さな共同体を我慢強く運営していく。
「これだよな」と思うんです。人間の本当の欲望とは、理性が剥奪された終末世界でヒャッハーすることではなく、老人を気遣い、隣人と分け合い、自分ができる役割を引き受けて共同体の一部として承認されることにあるのではないか。勝った負けたのゼロサムゲームではなく、日々の厳しさに立ち向かう実践的な生活の中で生み出される生活知や伝統のようなものの中にこそ、人は存在したいと願っているのではないでしょうか。そうじゃなかったら、この作品集がこんなに気持ちよく読めるわけがないものな。
一方で、共同体の中に宿らずにはいられない「やだ味」のようなものへの意識もしっかりとあり(性格の悪い人も出てきます!安心して!)、単なる善人ポルノに堕していないバランス感覚が「信頼……」という感じでナオミ・クリッツァー、頼りになります。ナオミよ(TBCエステのナオミ・キャンベルのCM、誰が知ってるの?)。
「路傍のフジイ」とか好きな人にはめちゃくちゃオススメしたいのですが、6編の作品集なのに3000円と目ん玉ひんむくお値段ではあります。きちぃ!でもそれ以外は欠点が見当たらない傑作ぞろいでした!手堅い勝負ではあります!
雨穴が最近読んで良かった本
ドリフターズとその時代
近年、お笑い論が盛んですが「クリエイターとしての『いかりや長介』論」が不当なほど語られていない気がします。ドリフターズは予備知識や文脈を知らずとも楽しめる大衆演芸の代表格ではありますが、戦後日本における「おもしろさ」の雛型を作った彼らの功績やクリエイティビティは、昭和への憧憬などを抜きにしてもっと研究されてもいいのではないかと思います。
この本を読んで分かるのは、ドリフターズのメンバーがもともとミュージシャン出身であるがゆえに、お笑いに対して「我々はアマチュアである」という意識を持っていたこと、彼らが活躍を始めた頃「劇場→テレビ」へとエンターテイメントの主戦場が移動したこと、高度成長期の日本人が熱病のように急成長する社会の中で抑圧されていたこと、そしてそんな環境下でもっともウケるお笑いの形を模索した結果、いかりや長介が生み出した形式が前期「全員集合」であったこと、です。
そして後期、鉄壁のチームワークの中に、プロフェッショナルなコメディ・スター志村けんが合流したことで、それまでの形を変えざるを得ず、最終的にいかりや長介はブレインの座を追われてしまった…というところまで書かれています。著者の意図とは外れるかもしれませんが、私はこの本を「天才クリエイター・いかりや長介の盛衰記」として読みました。
かまどが最近読んで良かった本
成分表
『あたしンち』の共作者であり、けらえいこ先生の夫でもある俳人・上田信治さんのエッセイ本です。「大喜る人たち」でおなじみの大久保八億さんがご自身のYoutubeチャンネル紹介なさっていたので、「へえ〜」と思って読んでみたんですが、これがまあ、とても、とてもよかったです。
芯のある思考と、粒だった言葉で日常のあれこれを整理整頓していく様が心地よくて……。「この人の話をずっと聴いていたいな」と感じます。
よく考えたら、『あたしンち』を作るために、何十年も「日常のおもしろいこと」を捉え続けた人のエッセイなのだから、そりゃ面白くないわけがない。
最近、第2弾も発売されたそうで、そちらも楽しみにしています。
まきのが最近読んで良かった本
ダクダデイラ
カクヨムで連載されてたホラー小説の書籍版(第一部完結済)。ネット上で散見された怪文書を取りまとめており、Googleクチコミ、mixi、はてなブログなど様々な媒体から抜粋した不思議な体験や不気味な文章を約20エピソード掲載している…という設定です。今まで色んな怖い話やネット怪談に触れて生きてきましたが、ここに収録されているエピソードは全て独創性が凄まじく、誰も読んだことのないような圧倒的で異常な恐怖体験にハマってしまいまいした。色んなWEB媒体からの体験談を繋ぎ合わせることで怪異の全貌が見えてくる構成、あまりに異常で想像するだけでも鳥肌が立つような恐怖体験の筆致、本当にネット上から抜粋してきたんじゃないかというくらい媒体別・男女別・世代別の書きわけのリアルさ、どれをとっても高水準!
特に、「上空に自分しか見えない巨大な女性器が出現し、そこから少しずつ何かが産まれてきて、その進行を止めるために野球ボールサイズの魔除けを7年間肌身離さず怯えながら持ち続けた人がとあるVtuberの配信に書き込んだ最期のコメント」というエピソードが凄まじくてオススメです。常軌を逸しすぎてる出来事なのに「www」を多用して自暴自棄になりながらネタ投稿のように書き散らかしている雰囲気が逆に悲壮感と絶望感がたっぷりです。
ほぼカクヨムで読めますが、終盤のエピソード三部作は「二作目の時点であまりにも猟奇的&凄惨すぎてカクヨム公開後 数時間で削除されてしまった」という逸話も。曰く付きの三部作も含めて全てのエピソードが収録された書籍版もまた一興です。ちなみに、「ネットのクチコミの抜粋」という体裁で半分ぐらい横書きで表記されていて電子書籍版だとめちゃくちゃ読みにくいので単行本が大オススメです。
個人的に好きな話は、05【呪われた道順】、06【コイノバイオント】、11【死が産まれる】、14【校歌斉唱】です。普通のホラーじゃ満足できない方は是非…。
加藤が最近読んで良かった本
葉桜の季節に君を想うということ
2003年に刊行され、「このミステリーがすごい!」や「本格ミステリ・ベスト10」で1位になった有名な作品なので、ミステリーを読む人ならタイトルくらいは聞いたことがあるかもしれない。読むと、全然ミステリーが始まらない。主人公は成瀬将虎。悪質な霊感商法を行う蓬莱倶楽部について調べることになる。
一方で、駅のホームから飛び込もうとしていた麻宮さくらという女性を助け、それをきっかけに恋愛も始まる。霊感商法を追いつつ、二人の恋愛が並行して進んでいくわけだが、その中で人が死んだりしても、特にミステリーがないのだ。多少の推理はあるが、「え、これがすごいミステリーなの?」となって終わる。何なんだこれは、と思い読み続けていくと、最後でとんでもないどんでん返しが来る。
はぁ!?
これが凄い。爆笑してしまった。
だから未読の人は、とりあえず最後まで読んでほしい。とにかく驚かせることに特化しているので。あと、読んだ人とめっちゃ喋りたくなる。是非。
読書の秋に読もう!
今年は早めに暑さが和らいでまさに読書の秋といった季節感。雨が続いて外に出づらい時は、読書しちゃいましょう!
それではまた。

ブロス編集部
















オモコロ編集部








