そういう夢をみた。明かりのない真っ暗なヤマザキYショップの中で一生懸命「ポテトサラダ蒸しパン」というものを探していた。Yショップは真っ暗なだけで普通に営業していた。俺は「明かりをつければいいのに」と思いながら探していた。

 夢の中の俺が探していた「ポテトサラダ蒸しパン」がどんなものなのかはわからない。小さいのがいっぱい入ってるタイプなのか、大きいのが一つ入っているタイプなのか。

 夢の中の俺はただ「ポテトサラダが入った蒸しパンがあって、美味しいらしい」という情報で探していた。

 起きたあと調べてみたら、かつてヤマザキから「ちぎって食べるロールパン ポテトサラダ」という似たような商品が発売されていたことがあるらしい。もちろん食べたことない。残念ながら今は扱っていないようだ。

 夢のせいでポテトサラダ入りの蒸しパンが食べたくて仕方がない。

じゃあ、作るぜ。

ポテトサラダの章

 ポテトサラダ作りにはいろいろな流派がある。俺は早さを重んじる流派なので、まずジャガイモの皮を剥いて手頃な大きさに切った。せっかちなみんなは皮付きのまま鍋に放り込みたいかもしれないが、最終的にこの方が早くなる。

 そして茹でる。あらかじめ細かく切っておくことで熱の通りが早くなるのだ。皮付きの場合とこうする場合で風味とかが変わるのかも知らないけど、最終的にほとんどマヨネーズと胡椒の味になるから気にしないぜ。

 ジャガイモを茹でている間に具材のハムを切っておく。具材はハムだけでいく。今回は安い惣菜パンのイメージなので具が入っていてもハムの切れ端くらいだろうというイメージだ。きゅうりだの玉ねぎだのにんじんだの入れたい人は入れてもいい。

 そうこうしているうちにジャガイモが茹で上がった。尖ったものを刺して「ああ、正直よくわからないけどこの感覚は多分茹で上がったな」と思ったら茹で上がったことにする。もっと普段から生のジャガイモを刺したりして「これは茹で上がってないジャガイモの感覚だな」というのを覚えておくべきだったかもしれない。

 潰す。

 潰した。

 切ったハムと、マヨネーズをしこたま入れる。ポテトサラダのマヨネーズ量にもいろいろな流派があるが、今回は蒸しパンに入れるのでかなり多めにしてクリーム状一歩手前になるくらい入れる。写真の量では全然足りなかった。あとで足した。

 塩コショウを「さすがに入れすぎだろ」と思った段階から5倍くらい入れる。蒸しパンの中に入れるものなので味はかなり濃いめにしておいた方がいいだろう。味見しながらマヨネーズと塩コショウをドバドバ入れる。
 健康が気になるなら控えめにしてもいいが、俺は夢で探していたポテトサラダ蒸しパンを再現するためにこれを作っている。健康のために作っているわけではない。

「もういいかな」と思うまで混ぜたら完成。

 とりあえずタッパーとかに入れておこう。

蒸しパンの章

そういえば蒸しパンなんか作ったことないな〜!

 でも今はインターネットの時代、なんとかなるだろう。とりあえずググってみたら簡単そうなレシピが出てきたのでこれを参考にする。真似する人はこの記事ではなくそのレシピを参考にしてください。

 卵、砂糖、牛乳をボウルに入れる。

 そういえば今の家に引っ越してから泡立て器がどこかにいったんだ。割り箸でいいか、なんとかなるだろう。なんとかなるか? 割り箸でなんとかなるわけなくない? なんとかなってしまったら泡立て器の立場がなくない? 今手を止めてダイソーとかに買いに行くべきでは?

 でもこのままやる。

 薄力粉、ベーキングパウダー、サラダ油を入れて混ぜる。もう引き返せないのでこのまま割り箸で混ぜる。

 お、なんかいけそうだな……。やるじゃん割り箸。

 耐熱カップに少しだけ入れて、レンジで蒸し物作るやつに入れる。レンジで蒸し物作るやつの底にはあらかじめお湯を入れている。

 うまいことこんな感じにするために蒸しパン1の部分を作ろうとしている。

 よし、行ってこい。何分やればいいのか全然わからない。まあ微量だし3分とかでいいだろ。

 良さそう。勘でやったわりにはいい塩梅だ。想定より膨らんだな。

 ポテトサラダをのせたいのでちょっと削る。削った部分を味見してみたところめちゃめちゃ素朴な味だった。まるぼうろからさらに個性を抜いたような味。

ポテトサラダ蒸しパンの章

 さっき作ったポテトサラダを乗せる。

 蒸しパンの種を上から流し込む。

 これがさっきの図でいうと蒸しパン2になる。うまいことポテトサラダを包み込んだ蒸しパンになるはずだ。

「これでやると蒸しパン1の部分が2回蒸されることになって、なんか均等じゃなくてよくない感じになったりするんじゃないの?」と思われるかもしれない。そういった弱気な考えで行動を起こさなかったやつはみんな飢えて死んだ。戦わずに死ぬのか、戦って死ぬのか。

 君はどっちだ。

 絶対入れすぎたな。蒸しパン1の時の膨張率見たでしょ? カップなみなみ入れちゃダメだって。絶対とんでもないことになるって。

 ダメだってば。

 ほら言わんこっちゃない。蒸しパンミッチミチ。

 ほらこんなになっちゃってる。デッドバイデイライトのパークみたい。

 あれ、でもカップとって切り分けるといい感じだな。早速食べてみたいところだけど、コンビニで売ってるイメージなので常温まで冷まそう。

 冷ましてひっくり返したものがこちら。

 いいじゃん……形はさておき、ちゃんと蒸しパンじゃん。

 断面。ちゃんと蒸しパンにポテトサラダが包まれているな。蒸しパン1と蒸しパン2の密度の差が見た目にもあらわれているが、多分絶対大丈夫。

 食べてみよう。

食レポの章

美味いな。

 地味な見た目からは信じられないくらい美味い。蒸しパン1と2の密度の差も全然気にならない。

 そりゃ無難に美味い蒸しパンと無難に美味いポテトサラダ合わさっているのでマズくなることはないのだが、そういう問題じゃない。ちゃんとコンビとして相性がいい。

 甘さほんのり程度の蒸しパンとマヨネーズと塩コショウバキバキのポテトサラダの相性がめちゃめちゃ良い。分類するなら甘じょっぱ系だが、甘とじょっぱのバランスが奇跡みたいに良い。「ほんのり甘」と「やり過ぎなくらいじょっぱ」が正解だったんだ。
 問題は蒸しパンはまた再現できるけどポテトサラダは完全に目分量で作ったので再現ができないところだ。まあとにかく塩辛くすればいけるだろう。

 夢の中の俺が明かりのないヤマザキYショップで探していたのはこれに違いない。見つけたよ、ありがとう夢に出てきた明かりのないヤマザキYショップ。照明はつけてね。

 

残りの蒸しパン種で

 残った蒸しパンの種をシリコンパウンドケーキ型に流しこんでポテトサラダを適当に放り込んだもの。

 蒸し器に入らないので熱湯を入れたマグカップと一緒にレンジで温めてみた。これで蒸したということにならないか。べつにレンジで温めるだけでも膨らむっぽいけど「蒸した」と言いたいのでこうしている。これでは「蒸した」ことにはならない気がする。でもやる。祈りに近い行為。

 あれ、なんかちゃんと美味そう。

 サービスエリアの名物パンって感じがする。

 よかれと思ってケチャップをかけたらなんかグロくなった。かけ方の問題か、照明の問題か。そのままだとグロすぎたので若干色調補正をかけたのにグロい。

 当然めちゃめちゃ美味かった。