一、午后の授業

 

映画の前のCMとかなく、すぐ始まるんだ……緊張するなぁ!!!

みくのしんさんにコントローラーお渡ししますので、解説が必要になったらいつでも止めてくださいね!

おれ、なんで『銀河鉄道の夜』が人気かまったく分かってないもん……
JUNERAYさんは、この映画は観たことあるんですか?

小さい頃に1度観ただけなので、おぼろげなんですよね。
「映像が綺麗だった」って記憶しかなくて……。

なるほど、でも映像があるっていいですよね。
本だと、どういう場所なのかとか逐一気になっちゃうから。自分でイメージしなくていいなら楽かも!

じっさいセル画のアニメって、すごく素敵ですよね。
これがアナログで手描きされているのが信じられないくらい。

そうだ、アニメってこれ全部1枚1枚描いてるのか!!!
すげえな、おれだったら気が狂っちゃうよ……。

 

〜OP映像視聴中〜

 

緊張……

 

「ではみなさんは、そういうふうに川だと云われたり、乳の流れたあとだと云われたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか。」

教室に猫がいっぱいいる! かわいっ!!

※この作品中の登場人物は、一部を除いてほぼ全員が猫の姿にデフォルメされています

 

「ジョバンニさん。あなたはわかっているのでしょう。」

ぇ……。

 

「大きな望遠鏡で銀河をよっく調べると銀河は大体何でしょう。」

…………。

 

これちょっと、難しいかもな……。

大丈夫です! 冒頭の授業シーンは宇宙の基礎知識みたいな話なので、聴き流しても平気ですよ!!
たぶん原作だと授業の内容がややこしくて混乱しちゃうだろうから、かまどさんも勧めなかったんだと思います。

そっか、でも先に1つ訊いていいですか……?

 なんでしょう?

 

この主人公の名前って、「ジェバンニ」で合ってますか?

「ジョバンニ」です。ジェバンニはデスノートの方ですね。

そっか、おれ、今ジョバンニと同じ気持ちになってます……。おれも小学生の時に授業中先生に当てられて、みんながこっち見てるってだけで泣いてたから……。

 

「このぼんやりと白い銀河を大きないい望遠鏡で見ますと、もうたくさんの小さな星に見えるのです。ジョバンニさんそうでしょう。」
ジョバンニはまっ赤になってうなずきました。けれどもいつかジョバンニの眼のなかには涙がいっぱいになりました。

カムパネルラってやつ、あいつが答えに詰まってるのをかばって自分も答えなかったんだ……。
優しいけど、それやられるともっと泣いちゃうんだよな……。

感情移入のスピードが新幹線だ。

 

 

「では今日はその銀河のお祭なのですからみなさんは外へでてよくそらをごらんなさい。ではここまでです。本やノートをおしまいなさい。」
 そして教室中はしばらく机の蓋をあけたりしめたり本を重ねたりする音がいっぱいでしたがまもなくみんなはきちんと立って礼をすると教室を出ました。

ジョバンニ、明らかに落ち込んでんな〜!! 歩き方でわかるよ!!

ジョバンニはお父さんが漁師さんで、漁に出たっきり帰ってこないのをクラスメイトからいじめられてます。

かわいそうだなジョバンニ……
さっきからこの先生とか、クラスメイトの子とかはなんの話をしてるんですか? お祭り?

そうそう、この日の夜に星のお祭りがあるから先生も「銀河とは何か」っていう授業をしてくれていて、
クラスメイト達はお祭りで川に流す烏瓜(からすうり)を探しに行くところです!

なるほどね! でもジョバンニはお父さんのかわりに働いてるから、みんなと一緒には行けないのか……。さびしいな……。

 

 

二、活版所

 

 家へは帰らずジョバンニが町を三つ曲ってある大きな活版処にはいってすぐ入口の計算台に居ただぶだぶの白いシャツを着た人におじぎをしてジョバンニは靴をぬいで上りますと、突当りの大きな扉をあけました。中にはまだ昼なのに電燈がついてたくさんの輪転器がばたりばたりとまわり、きれで頭をしばったりラムプシェードをかけたりした人たちが、何か歌うように読んだり数えたりしながらたくさん働いて居りました。

 

でっかい機械が出てきた!!!!

ここは活版印刷所ですね。ジョバンニの職場です。

 

ジョバンニはすぐ入口から三番目の高い卓子に座った人の所へ行っておじぎをしました。その人はしばらく棚をさがしてから、
「これだけ拾って行けるかね。」と云いながら、一枚の紙切れを渡しました。

これ……なに、なにしてるの……?

活版印刷って、小さい文字のスタンプみたいなものを原稿の通りに並べて、それを捺すことで印刷するんですよ。
ジョバンニはそのスタンプを並べる仕事をしています。

ひっくり返ってる文字を集める、大変なやつか……!! しんどい雑用だ……!!

 

 

青い胸あてをした人がジョバンニのうしろを通りながら、
「よう、虫めがね君、お早う。」と云いますと、近くの四五人の人たちが声もたてずこっちも向かずに冷くわらいました。
 ジョバンニは何べんも眼を拭いながら活字をだんだんひろいました。  

ぅわ〜……おいおいおい!!!

 

これ。ちょっとつらい仕事すぎるだろ! ほとんど警備員と同じ!!

警備員?

おれ、むかし警備員のバイトしてて。誰でもできる仕事ってほんとに辛かったんですよ。

みくのしんさんにも活版所で働くジョバンニみたいな経験があったんですね。

ジョバンニの気持ち考えたら、ほんとにしんどくなってきた……!!!

学校だけでなく、印刷所でも周りの大人にふんわりといじめられて……

人付き合いが上手いタイプじゃないんですよ、ジョバンニは。

ジョバンニに憑依されてる?

面白くなってきたな……ちょっと分かってきました、この話。

おお、憑依が功を奏し……。

 

とりあえず面白く観られているならよかった(?)

 

 ジョバンニはおじぎをすると扉をあけてさっきの計算台のところに来ました。するとさっきの白服を着た人がやっぱりだまって小さな銀貨を一つジョバンニに渡しました。

ねえ!!! 今渡されたコイン、「5」って書いてなかった!?

書いてましたね、銀貨に「5」って。

こんだけ働いて「5」のコインかよ!!!!!!!

 

まあまあ、通貨単位は「円」じゃないかもしれないし。

でも、でもせめて紙のお金をあげてよ……!!!

 

ジョバンニは俄に顔いろがよくなって威勢よくおじぎをすると台の下に置いた鞄をもっておもてへ飛びだしました。

やっと休みになった!? 

学校も仕事も終わったので、ジョバンニはようやく家に帰れます!

もう日暮れどきじゃん……。
でも、学校が終わって、明日になるまでの休みの時間っていいですよね……。

 

 

三、家

 

 ジョバンニが勢いよく帰って来たのは、ある裏町の小さな家でした。

 

街並みが綺麗だな〜。このアニメ、どこで止めてもずっと綺麗。

建物はぜんぶヨーロッパ風ですね。看板とか表札とかは……これは何語なんだろう。

※エスペラント(共通の母語を持たない人が意思疎通をするために作られた人工言語)だそうです

 

その三つならんだ入口の一番左側には空箱に紫いろのケールやアスパラガスが植えてあって小さな二つの窓には日覆いが下りたままになっていました。
「お母さん。いま帰ったよ。工合悪くなかったの。」

ぐあい悪いのかよ……

 

ジョバンニは靴をぬぎながら云いました。
「ああ、ジョバンニ、お仕事がひどかったろう。今日は涼しくてね。わたしはずうっと工合がいいよ。」
 ジョバンニは玄関を上って行きますとジョバンニのお母さんがすぐ入口の室に白い巾を被って寝んでいたのでした。

一人で寂しく帰ってきて、お母さんも病気なの……?

 

 

「お母さん。今日は角砂糖を買ってきたよ。牛乳に入れてあげようと思って。」

砂糖入りの牛乳は美味いよねえ……。

 

一応お姉さんがいて、たまに来て家のことをやって行ってくれるらしいです。

そっか、よかった……いや、よくはないか……。

 

「ねえお母さん。ぼくお父さんはきっと間もなく帰ってくると思うよ。」
「あああたしもそう思う。けれどもおまえはどうしてそう思うの。」
「だって今朝の新聞に今年は北の方の漁は大へんよかったと書いてあったよ。」

これ、どういう会話ですか???

ジョバンニは新聞の印刷所で働いているから、お父さんが行っているはずの漁がうまくいったことを、新聞で読んで知っていて。それできっと帰ってくると信じてるんですよね。

ほんとに!?? お父さん帰ってくる!!???

でもお父さんは何かの罪で捕まっていて、もう帰ってこないかもしれないとも言われてる状態です。

うわ〜……!! お父さんが極悪人だったらどうする……っ!?

 

「お母さんの牛乳は来ていないんだろうか。」
「来なかったろうかねえ。」
「ぼく行ってとって来よう。」
「あああたしはゆっくりでいいんだからお前さきにおあがり、姉さんがね、トマトで何かこしらえてそこへ置いて行ったよ。」

……ッ、あ”ぁ〜〜!!!!!
これちょっと、もう、悲しい話かもな!!!!

 

どうしましたか急に。

お父さんの件まだモヤモヤしてるのに「牛乳とってくる」とか言うし! 飯食ってるのに家の中暗いし、悲しい話だろこれ!

家が暗すぎるのは言われてみればたしかに。

まだ……まだ分かんないけどでも! これからやばそうだな〜!!!

キャラクターが猫さんであるが故に、不憫さにブーストが……

そうなんだよ!! 猫だからか、まばたきしない感じが不安を増してる感じがする怖いよマジで、これから本当に……大丈夫かな……

 

「そうだ。今晩は銀河のお祭だねえ。」
「うん。ぼく牛乳をとりながら見てくるよ。」
「ああ行っておいで。川へははいらないでね。」
「ああぼく岸から見るだけなんだ。一時間で行ってくるよ。」
「もっと遊んでおいで。カムパネルラさんと一緒なら心配はないから。」
「ああきっと一緒だよ。お母さん、窓をしめて置こうか。」
「ああ、どうか。もう涼しいからね」
 ジョバンニは立って窓をしめお皿やパンの袋を片附けると勢よく靴をはいて
「では一時間半で帰ってくるよ。」と云いながら暗い戸口を出ました。

よくないことが起こる前のこと全部言ってない!? 「川に入る」とか!!

以前読まれてた『オツベルと象』、最後の謎の一行が “おや〔一字不明〕、川へはいっちゃいけないったら。” だったじゃないですか。
あそこ読んで、銀河鉄道の夜のことを思い出してました。

不穏すぎるだろ。いい加減にしろよ!! 幸せになってくれよ!!!!!

 

 

四、ケンタウル祭の夜

 

ジョバンニは、口笛を吹いているようなさびしい口付きで、檜のまっ黒にならんだ町の坂を下りて来たのでした。
<中略>
大股にその街燈の下を通り過ぎたとき、いきなりひるまのザネリが、新らしいえりの尖ったシャツを着て電燈の向う側の暗い小路から出て来て、ひらっとジョバンニとすれちがいました。
「ザネリ、烏瓜ながしに行くの。」ジョバンニがまだそう云ってしまわないうちに、
「ジョバンニ、お父さんから、らっこの上着が来るよ。」その子が投げつけるようにうしろから叫びました。

ザネリ〜〜〜〜〜……

ザネリも猫の姿だからギリギリかわいいけど、嫌なやつですよね〜

 

こんなこと言ってくるザネリに、ジョバンニはまだ声かけられるんだ……

 

ジョバンニは、ばっと胸がつめたくなり、そこら中きぃんと鳴るように思いました。
「何だい。ザネリ。」とジョバンニは高く叫び返しましたがもうザネリは向うのひばの植った家の中へはいっていました。

うわ、泣いてる表現すご……! 視点が急にジョバンニの視界になって景色がにじんでく……!!

このあたりは原作にない、アニメーションならではのかっこよさですね。

お祭りに行く人たちとは反対方向に歩いて、お母さんのおつかいに行くんだね。絵は本当にずっと綺麗だな、不安だけど……。

 

 ジョバンニは、いつか町はずれのポプラの木が幾本も幾本も、高く星ぞらに浮かんでいるところに来ていました。その牛乳屋の黒い門を入り、牛の匂いのするうすくらい台所の前に立って、ジョバンニは帽子をぬいで「今晩は、」と云いましたら、家の中はしぃんとして誰も居たようではありませんでした。

牛乳屋も暗いのか……。お金持ってきてないんじゃない、大丈夫……?

この牛乳は月額で払ってるやつだと思いますよ。

 

「今晩は、ごめんなさい。」ジョバンニはまっすぐに立ってまた叫びました。するとしばらくたってから、年老った女の人が、どこか工合が悪いようにそろそろと出て来て何か用かと口の中で云いました。
「あの、今日、牛乳が僕んとこへ来なかったので、貰いにあがったんです。」ジョバンニが一生けん命勢いよく云いました。
「いま誰もいないでわかりません。あしたにして下さい。」

がっかりじゃねぇかよ……!!!! せっかくお母さんの牛乳もらいにきたのに!!!!

感極まってるところ申し訳ないんですけど、まだ鉄道に乗ってないですからね、お話これからです。

もうしんどいよ、すでに……

 

「おっかさんが病気なんですから今晩でないと困るんです。」
「ではもう少したってから来てください。」その人はもう行ってしまいそうでした。
「そうですか。ではありがとう。」ジョバンニは、お辞儀をして台所から出ました。

こいつにインターネットあげてくれよ!!!!!

なんて!?

 

みんなお祭りに行ってるのに一人だけかわいそうだよ……!! インターネットで友達つくらせてあげてくれ!!!!!

ああ確かに、現代ならジョバンニにもネットの友達がいたかもですね。

というか、おれが友達になるから……!!!!

 

 

五、天気輪の柱

 

友達もいないし牛乳ももらえないし、ひとりで森まで来ちゃったし、どうすんのこれから……?

 

 牧場のうしろはゆるい丘になって、その黒い平らな頂上は、北の大熊星の下に、ぼんやりふだんよりも低く連って見えました。
 ジョバンニは、もう露の降りかかった小さな林のこみちを、どんどんのぼって行きました。まっくらな草や、いろいろな形に見えるやぶのしげみの間を、その小さなみちが、一すじ白く星あかりに照らしだされてあったのです。

そっか、ジョバンニは星が好きなんだもんね。星が綺麗に見えるとこまで来たんだ。いいじゃん!!!!

 

 そのまっ黒な、松や楢(なら)の林を越えると、俄(にわか)にがらんと空がひらけて、天の川がしらしらと南から北へ亘っているのが見え、また頂の、天気輪の柱も見わけられたのでした。つりがねそうか野ぎくかの花が、そこらいちめんに、夢の中からでも薫りだしたというように咲き、鳥が一疋、丘の上を鳴き続けながら通って行きました。
 ジョバンニは、頂の天気輪の柱の下に来て、どかどかするからだを、つめたい草に投げました。

すごいな、このシーン……。いま映像で観てるからすごい綺麗なのわかるけど、元は本なんでしょ……?

そうですね、宮沢賢治のすごいところは、この綺麗な風景をそのまま文字にしたような文章を書くんです。

おれ、本を読んでもこんな光景想像できるかな……。

いつか原作にも挑戦してみてほしいです。『銀河鉄道の夜』にはみくのしんさんに読んでほしい文がたくさんあるから……。

 

個人的に気になったポイントお話してもいいですか?

もちろん!

ここ、たしか原作ではツリガネソウ(カンパニュラ)などが咲いてる丘の設定なんですけど、この映像見る限りハナニラみたいに見えるんですよ。
花びらの枚数が違う気もするけど、葉っぱが細長いし。

 

これがハナニラ

お花の種類が違うってこと?

ツリガネソウよりもハナニラの方が早く咲くから、原作とは季節の設定が違うのかも。

お花が分かるとそんなことまでわかるんだ! ハナニラって、つまりニラの花ってこと?

一応ネギの仲間だったと思います。

じゃあ、この丘綺麗に見えるけど、実際ネギ臭いのかもな……。そんなとこで寝転がって大丈夫かなジョバンニ……。

 

……!!!

JUNERAYさん……!! 汽車が! 汽車が来ました!!!

あ〜〜! やっときた!!

突然来たな〜。でもこれで動き出すでしょ、汽車も物語も!!!

 

銀河鉄道の夜、はじまります。

みくのしんさんと観てたら、ここまでで別の作品1本観賞したくらいのカロリーありましたわ……。

 

 

六、銀河ステーション

 

 気がついてみると、さっきから、ごとごとごとごと、ジョバンニの乗っている小さな列車が走りつづけていたのでした。ほんとうにジョバンニは、夜の軽便鉄道の、小さな黄いろの電燈のならんだ車室に、窓から外を見ながら座すわっていたのです。

いつの間にか乗っちゃったんだ。すごいな〜これ!! でも大丈夫な鉄道かな……!? 大丈夫じゃなさそうかもな……!?

(いい勘してるな……)

 

 すぐ前の席に、ぬれたようにまっ黒な上着を着た、せいの高い子供が、窓から頭を出して外を見ているのに気が付きました。そしてそのこどもの肩のあたりが、どうも見たことのあるような気がして、そう思うと、もうどうしても誰だかわかりたくて、たまらなくなりました。いきなりこっちも窓から顔を出そうとしたとき、俄かにその子供が頭を引っ込めて、こっちを見ました。
 それはカムパネルラだったのです。

カムパネルラがいるじゃん! いつの間に!?

 

「みんなはねずいぶん走ったけれども遅れてしまったよ。ザネリもね、ずいぶん走ったけれども追いつかなかった。」と云いました。
 ジョバンニは、(そうだ、ぼくたちはいま、いっしょにさそって出掛けたのだ。)とおもいながら、
「どこかで待っていようか」と云いました。するとカムパネルラは
「ザネリはもう帰ったよ。お父さんが迎いにきたんだ。」

…………。

 

「この地図はどこで買ったの。黒曜石でできてるねえ。」
 ジョバンニが云いました。
「銀河ステーションで、もらったんだ。君もらわなかったの。」
「ああ、ぼく銀河ステーションを通ったろうか。いまぼくたちの居るとこ、ここだろう。」

……メチャわからんぞ……。

いったん止めますか?

 

急にメチャわからんくなったかも……オシャレに全振りされすぎて……。

原作でも、原っぱで横になっていたらいつの間にか汽車に乗っていたというようなシーンなので、「なぜか汽車に乗っていてカムパネルラもいて不思議だな〜」くらいに思っていて大丈夫ですよ。

ほんとに!? みんな何が起こったか分からず読んでるってこと!?

アニメ版の方がまだ描写が親切なくらいです!

本てすげ……っ

 

「ぼくはもう、すっかり天の野原に来た。」ジョバンニは云いました。
「それにこの汽車石炭をたいていないねえ。」ジョバンニが左手をつき出して窓から前の方を見ながら云いました。
「アルコールか電気だろう。」カムパネルラが云いました。

でも、嬉しいよなぁ! カムパネルラはザネリじゃなくて、ジョバンニの方に来てくれたんだもんな。ジョバンニが浮かれるのもわかるよ。

…………。まあ、そうですね!!

 

「ああ、りんどうの花が咲いている。もうすっかり秋だねえ。」カムパネルラが、窓の外を指さして云いました。
 線路のへりになったみじかい芝草の中に、月長石ででも刻まれたような、すばらしい紫のりんどうの花が咲いていました。
「ぼく、飛び下りて、あいつをとって、また飛び乗ってみせようか。」ジョバンニは胸を躍らせて云いました。
「もうだめだ。あんなにうしろへ行ってしまったから。」
 カムパネルラが、そう云ってしまうかしまわないうち、次のりんどうの花が、いっぱいに光って過ぎて行きました。
 と思ったら、もう次から次から、たくさんのきいろな底をもったりんどうの花のコップが、湧くように、雨のように、眼の前を通り、三角標の列は、けむるように燃えるように、いよいよ光って立ったのです。

これがりんどうか、綺麗な花だな〜。

急に季節が秋になった……。

どんどん不思議なことが起こる汽車だな、やっぱりちょっと心配になってきた。

 

 

七、北十字とプリオシン海岸

 

「ぼくはおっかさんが、ほんとうに幸(さいわい)になるなら、どんなことでもする。けれども、いったいどんなことが、おっかさんのいちばんの幸なんだろう。」カムパネルラは、なんだか、泣きだしたいのを、一生けん命こらえているようでした。
「きみのおっかさんは、なんにもひどいことないじゃないの。」ジョバンニはびっくりして叫びました。
「ぼくわからない。けれども、誰だって、ほんとうにいいことをしたら、いちばん幸なんだねえ。だから、おっかさんは、ぼくをゆるして下さると思う。」カムパネルラは、なにかほんとうに決心しているように見えました。

たしかに! それがいちばん幸せってのはわかる!!

わかるんだ。

難しいけどね、おれもそう思う。

 

 さわやかな秋の時計の盤面には、青く灼かれたはがねの二本の針が、くっきり十一時を指しました。みんなは、一ぺんに下りて、車室の中はがらんとなってしまいました。
〔二十分停車〕と時計の下に書いてありました。
「ぼくたちも降りて見ようか。」ジョバンニが云いました。
「降りよう。」

降りていいんだ、この汽車。

昔の汽車って停車時間が長いから、一旦降りて駅を見て回れたっていいますよね。

あー、そうだったそうだった! 小さいころ会津に行った時とか。駅弁買ったりして楽しいんだよなー!!

 

そして間もなく、あの汽車から見えたきれいな河原に来ました。
 カムパネルラは、そのきれいな砂を一つまみ、掌にひろげ、指できしきしさせながら、夢のように云っているのでした。
「この砂はみんな水晶だ。中で小さな火が燃えている。」

うわ、すごい、綺麗〜!!! でもこいつらリアクション薄いな、おれだけはしゃいで馬鹿みたいか……!?

いや、この光景ではしゃがない彼らの方がちょっと怖い。

 

 だんだん近付いて見ると、一人のせいの高い、ひどい近眼鏡をかけ、長靴をはいた学者らしい人が、手帳に何かせわしそうに書きつけながら、鶴嘴(つるはし)をふりあげたり、スコープをつかったりしている、三人の助手らしい人たちに夢中でいろいろ指図をしていました。

誰かいる……! ていうかここ、水辺っていうかなんか川みたいなことじゃない……? 渡ったらやばいんじゃない!?

お母さんに「川には入らないでね」って言われたのに……。

 

 見ると、その白い柔らかな岩の中から、大きな大きな青じろい獣の骨が、横に倒れて潰れたという風になって、半分以上掘り出されていました。そして気をつけて見ると、そこらには、蹄の二つある足跡のついた岩が、四角に十ばかり、きれいに切り取られて番号がつけられてありました。
「君たちは参観かね。」その大学士らしい人が、眼鏡をきらっとさせて、こっちを見て話しかけました。

学校にいた先生そっくりじゃん!! じゃあザネリもいる……!?

みくのしんさん、もしかしてザネリのこと嫌いですね??

ザネリにはごめんだけど、おれ、一回ジョバンニの気持ちになっちゃったから……。

 

「くるみが沢山あったろう。それはまあ、ざっと百二十万年ぐらい前のくるみだよ。ごく新らしい方さ。ここは百二十万年前、第三紀のあとのころは海岸でね、この下からは貝がらも出る。いま川の流れているとこに、そっくり塩水が寄せたり引いたりもしていたのだ。

ちょっと……この人の説明、

 

このけものかね、これはボスといってね、おいおい、そこつるはしはよしたまえ。ていねいに鑿(のみ)でやってくれたまえ。ボスといってね、いまの牛の先祖で、昔はたくさん居たさ。」

難しすぎるって!!!!!!

急に学者が出てくると情報量がヤバいな〜〜!

ずっと何を!? どこに!!!!????

 

落ち着いて! 大丈夫です!!!

なんか今のすごかったよ!!? 牛のなんちゃらとか……くるみがどうとか……怒涛!!!

ここは一応本編には直接関わってこないところなので、「何か発掘してる人がいるな」くらいに思っていただければ問題ないです!

本当に!? おれ、この博士みたいな人が言ってること1ミリも理解してないよ!!?

いまジョバンニたちは、変な汽車に乗ってしまって、次々不思議な場所に辿り着いてしまうようになった状態なんですね。
だから「夢の中にいる感じ」と思っていただいた方がいいかも!

なるほどね、不思議な世界を楽しめばいいわけね……。

そうそう、ディズニーランドで次々違うアトラクションに乗ってるみたいなものと思ってください。
乗る前にじっくり解説を聞かなくても、アトラクション自体は楽しめるものじゃないですか。

 

次々世界観が変わって楽しさもあるけど、ずっと不安もあるな……!! 急に人がバーンて増えたりするし、難しいこと言ってくるやつもいるし……!

 

「標本にするんですか。」
「いや、証明するに要るんだ。ぼくらからみると、ここは厚い立派な地層で、百二十万年ぐらい前にできたという証拠もいろいろあがるけれども、ぼくらとちがったやつからみてもやっぱりこんな地層に見えるかどうか、あるいは風か水やがらんとした空かに見えやしないかということなのだ。わかったかい。

わかりません!!!!!!!!

 

急におれに話しかけるみたいに言うけど、ぜんぜんわからないよ!!!!

銀河の学者とみくのしんさん、相性が悪すぎるな〜〜!

 

二人は、その白い岩の上を、一生けん命汽車におくれないように走りました。そしてほんとうに、風のように走れたのです。息も切れず膝もあつくなりませんでした。
 こんなにしてかけるなら、もう世界中だってかけれると、ジョバンニは思いました。

 

 

八、鳥を捕る人

 

この章、今から出てくる人のことすごく好きなんですよね。

 

「ここへかけてもようございますか。」
 がさがさした、けれども親切そうな、大人の声が、二人のうしろで聞えました。
 それは、茶いろの少しぼろぼろの外套を着て、白い巾(きれ)でつつんだ荷物を、二つに分けて肩に掛けた、赤髯(あかひげ)のせなかのかがんだ人でした。
「ええ、いいんです。」ジョバンニは、少し肩をすぼめて挨拶しました。

この人……?

はい、通称鳥捕りさんです。

 

「わっしはすぐそこで降ります。わっしは、鳥をつかまえる商売でね。」
「何鳥ですか。」
「鶴や雁です。さぎも白鳥もです。」
「鶴はたくさんいますか。」
「居ますとも、さっきから鳴いてまさあ。聞かなかったのですか。」
「いいえ。」
「いまでも聞えるじゃありませんか。そら、耳をすまして聴いてごらんなさい。」

もしかしてこの人のデカいバッグ……

 

みっしりチキンか……!?

 

「おかしいねえ。」カムパネルラが首をかしげました。
「おかしいも不審もありませんや。そら。」その男は立って、網棚から包みをおろして、手ばやくくるくると解きました。
「さあ、ごらんなさい。いまとって来たばかりです。」

わあ!!!……あ、よかった綺麗な鳥が入ってた……  。

鶏肉を鞄に直入れしてる人はこの作品に出てこないと思いますよ。

そっか、怖いシーンかと思っちゃった……。

 

「どうです。すこしたべてごらんなさい。」鳥捕りは、それを二つにちぎってわたしました。ジョバンニは、ちょっと喰べてみて、(なんだ、やっぱりこいつはお菓子だ。チョコレートよりも、もっとおいしいけれども、こんな雁が飛んでいるもんか。この男は、どこかそこらの野原の菓子屋だ。けれどもぼくは、このひとをばかにしながら、この人のお菓子をたべているのは、大へん気の毒だ。)とおもいながら、やっぱりぽくぽくそれをたべていました。

鳥の脚って中華料理じゃないの? お菓子なの?

車内で中華料理の方の鳥の脚を渡してくる人は不気味すぎる……。
鳥捕りさんが捕まえた鳥は、不思議とお菓子に変わってしまう、みたいな設定だと思って観てます。

宮沢賢治の作品だから、お菓子の鳥がいるのもアリなのか……。

 

「そうそう、ここで降りなけぁ。」と云いながら、立って荷物をとったと思うと、もう見えなくなっていました。
「どこへ行ったんだろう。」
 二人は顔を見合せましたら、燈台守は、にやにや笑って、少し伸びあがるようにしながら、二人の横の窓の外をのぞきました。二人もそっちを見ましたら、たったいまの鳥捕りが、黄いろと青じろの、うつくしい燐光を出す、いちめんのかわらははこぐさの上に立って、まじめな顔をして両手をひろげて、じっとそらを見ていたのです。

うわ、ちょっと目を離した隙に汽車から降りてる!!! おれがうつむいてた隙に!!!

新鮮にジョバンニと同じ驚きを持てていて羨ましい。

 

がらんとした桔梗いろの空から、さっき見たような鷺が、まるで雪の降るように、ぎゃあぎゃあ叫びながら、いっぱいに舞いおりて来ました。するとあの鳥捕りは、すっかり注文通りだというようにほくほくして、両足をかっきり六十度に開いて立って、鷺のちぢめて降りて来る黒い脚を両手で片っ端から押えて、布の袋の中に入れるのでした。

綺麗なシーンだな……。

音楽がメチャいい……。

 

このあと、また目を離した隙に鳥捕りさんがいなくなってしまって、もう2度と会えないんです。

え……それはかなり寂しいかも……。

そのときにジョバンニが、”僕はあの人が邪魔なような気がしたんだ。だから僕は大へんつらい。”って独白するんですよ。それがほんとに、すごいなって。

汽車で居合わせただけのおじさんを邪魔に思って、しかもそれが辛いって言ってるの……?

子どもの頃、世話を焼いてくるおじいさんやおばあさんを疎ましく思う気持ちってあったなあと思って。
でもいつか2度と会えなくなるから、邪険にしてたことを後からすごく辛くなるんですよね。

なるほどね、ジョバンニはカムパネルラと2人でいたいわけだから、なおさらだよなあ……。

 

 

九、ジョバンニの切符(最終章)

 

※このあたりから2人ともほぼ無言で食い入るように観てしまったため、ラストシーンまでダイジェスト写真でお送りします。

 

「切符を拝見いたします。」三人の席の横に、赤い帽子をかぶったせいの高い車掌が、いつかまっすぐに立っていて云いました。鳥捕りは、だまってかくしから、小さな紙きれを出しました。車掌はちょっと見て、すぐ眼をそらして、(あなた方のは?)というように、指をうごかしながら、手をジョバンニたちの方へ出しました。

「やばい、ジョバンニ切符もってないんじゃない!?」

 

「おや、こいつは大したもんですぜ。こいつはもう、ほんとうの天上へさえ行ける切符だ。天上どこじゃない、どこでも勝手にあるける通行券です。こいつをお持ちになれぁ、なるほど、こんな不完全な幻想第四次の銀河鉄道なんか、どこまででも行ける筈でさあ、あなた方大したもんですね。」
「何だかわかりません。」ジョバンニが赤くなって答えながらそれを又畳んでかくしに入れました。

「切符あった、よかった〜!! ドキドキした!」

 

 

 そしたら俄かにそこに、つやつやした黒い髪の六つばかりの男の子が赤いジャケツのぼたんもかけずひどくびっくりしたような顔をしてがたがたふるえてはだしで立っていました。隣には黒い洋服をきちんと着たせいの高い青年が一ぱいに風に吹かれているけやきの木のような姿勢で、男の子の手をしっかりひいて立っていました。

「人間が乗ってきた……!!!!」

 

「わたしたちはもうなんにもかなしいことないのです。わたしたちはこんないいとこを旅して、じき神さまのとこへ行きます。そこならもうほんとうに明るくて匂がよくて立派な人たちでいっぱいです。そしてわたしたちの代りにボートへ乗れた人たちは、きっとみんな助けられて、心配して待っているめいめいのお父さんやお母さんや自分のお家へやら行くのです。さあ、もうじきですから元気を出しておもしろくうたって行きましょう。」

「この人たち、って。もう。」

 

「なにがしあわせかわからないです。ほんとうにどんなつらいことでもそれがただしいみちを進む中でのできごとなら峠の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づく一あしずつですから。」
 燈台守がなぐさめていました。
「ああそうです。ただいちばんのさいわいに至るためにいろいろのかなしみもみんなおぼしめしです。」
 青年が祈るようにそう答えました。

「……。」

 

 

 

 

「さあ、下りるんですよ。」青年は男の子の手をひきだんだん向うの出口の方へ歩き出しました。
「じゃさよなら。」女の子がふりかえって二人に云いました。
「さよなら。」ジョバンニはまるで泣き出したいのをこらえて怒ったようにぶっきり棒に云いました。女の子はいかにもつらそうに眼を大きくしても一度こっちをふりかえってそれからあとはもうだまって出て行ってしまいました。汽車の中はもう半分以上も空いてしまい俄かにがらんとしてさびしくなり風がいっぱいに吹き込みました。

「……これって、」

 

 

「死の話、ですよね……。」

 

「…………。」

 

 

「僕もうあんな大きな暗やみの中だってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く。どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行こう。」
「ああきっと行くよ。ああ、あすこの野原はなんてきれいだろう。みんな集ってるねえ。あすこがほんとうの天上なんだ。あっあすこにいるのぼくのお母さんだよ。」カムパネルラは俄かに窓の遠くに見えるきれいな野原を指して叫びました。

「ぜったい駄目だろ、そっちに行ったら……」

 

 

「カムパネルラ、僕たち一緒に行こうねえ。」ジョバンニが斯う云いながらふりかえって見ましたらそのいままでカムパネルラの座っていた席にもうカムパネルラの形は見えずただ黒いびろうどばかりひかっていました。ジョバンニはまるで鉄砲丸のように立ちあがりました。

「カムパネルラ……!」

 

そして誰にも聞えないように窓の外へからだを乗り出して力いっぱいはげしく胸をうって叫びそれからもう咽喉いっぱい泣きだしました。もうそこらが一ぺんにまっくらになったように思いました。

「……!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ジョバンニは眼をひらきました。もとの丘の草の中につかれてねむっていたのでした。胸は何だかおかしく熱り頬にはつめたい涙がながれていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジョバンニ、カムパネルラが川へはいったよ。」
「どうして、いつ。」

 

 

 

けれどもみんなはまだ、どこかの波の間から、
「ぼくずいぶん泳いだぞ。」と云いながらカムパネルラが出て来るか或いはカムパネルラがどこかの人の知らない洲にでも着いて立っていて誰かの来るのを待っているかというような気がして仕方ないらしいのでした。けれども俄かにカムパネルラのお父さんがきっぱり云いました。
「もう駄目だめです。落ちてから四十五分たちましたから。」

 

「あなたのお父さんはもう帰っていますか。」博士は堅く時計を握ったまままたききました。
「いいえ。」ジョバンニはかすかに頭をふりました。
「どうしたのかなあ。ぼくには一昨日大へん元気な便りがあったんだが。今日あたりもう着くころなんだが。船が遅れたんだな。ジョバンニさん。あした放課後みなさんとうちへ遊びに来てくださいね。」

 

 

 ジョバンニはもういろいろなことで胸がいっぱいでなんにも云えずに博士の前をはなれて早くお母さんに牛乳を持って行ってお父さんの帰ることを知らせようと思うともう一目散に河原を街の方へ走りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

っえ

 

終わった!!!?????

終わりました、映画はこれで完結です。

だって……カムパネルラは!!??? 川に落ちた後どうなったの!!???

原作でも、カムパネルラの生死はわからないままです。
というより、『銀河鉄道の夜』自体が完成前に宮沢賢治が亡くなってしまったせいで、未完の作品なんですよ。

そんな……本ってそんなこともあるの……? すごすぎない……?

 

そんなわけで、およそ1時間50分にわたる『銀河鉄道の夜』、無事(?)視聴終了です。

 

 

いかがですか、映像で観てみて。

これおれ、本で読みたいかも……。

!!

すごくつらい話だよね……。なんで人気があるのかわからないくらいつらい。

原作読んでからこの映画版を観ると、なおさら暗い感じがするかもしれません。映像がいいだけに拍車がかかってる。

おれは『オツベルと象』しか読んでないから、宮沢賢治ってこういうのもできるんだ!! って思った。それにしても、「死の話」すぎる。

こんなにずっと死が示唆される話なのに、タイトルが『銀河鉄道の夜』なのは怖いかもしれない。

ちょっとすごすぎたかもな……まだぜんぜん消化できてない。本だと読み返せるけど、映像だとおれの方が飲み込まれちゃった。

『銀河鉄道の夜』についてはこの不条理さというか、分からなさが人気の理由なのかもしれません。

最初の方はね、そういう話だと思ってたのよ。分かんないなりに楽しむ話なのかなって。でも、本当の軸がそれじゃないって分かってから、ヘコんだかも。ちょっとだけ。

 

このあと、内容をあちこち補足しながら、宮沢賢治自身の人柄や生い立ちについても筆者の知る限り伝えてみました。

 

その中で、とある話をしてみたところ、みくのしんさんはしばらく考えてから

 

「あぁ、そっか。じゃあ分かった。」

と言って、後で感想を送るねと約束してくれました。

 

 

 

ここまで読んでくださった方、本当にお疲れ様でした&ありがとうございました!!!
なんとこの記事は1万8千字くらいあります。よくぞここまで。

映画を観る人たちの会話と原作の引用で進行する妙なスタイルで、どこまで『銀河鉄道の夜』の魅力をお伝えできたかわかりませんが、楽しんでいただけたら幸いです。

 

映画を見終えてから、『銀河鉄道の夜』の初期型(現在の状態に改訂される前の原稿)も読んでみたのですが、まったく違う話かつ知らないキャラクターが出てきて「これはこれで何!!????」と思いました。読んでみてね。一緒に悩もう。

 

ちなみにこの撮影の後、みくのしんさんは「宮沢賢治、生きてたらオモコロライターになって欲しかったな……」と悲しそうにしていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みくのしんの感想文

以下は、映画をみた日の夜にみくのしんさんから送られてきた感想文です。

 

宮沢賢治に対して→本当にお疲れ様です。本でも読みたいと自分の口から出るとは思わなかった。です。

 

――宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』というアニメ映画を見ました――

 

本を読む行為はかなり苦手で生きてきた。本を読まないといけない行事がこの世に今まで多かったが、幸いそれから逃げても生きていけるから良かったものの、それをしなければああなる行事が本読みだったら僕はとっくにだった。とさえ思うほど、本読みが苦手だ。もちろん書くのも苦手だ。

そんな僕がというと偉そうだけど、今までに読んできた本は、太宰治の『走れメロス』。芥川龍之介の『トロッコ』。梶井基次郎の檸檬『檸檬』。そして宮沢賢治の『オツベルと象』だ。

かなり読んでるな。かなり読みすぎているかもしれない。まぁ、そんなことはいいか。

……かなり読んでるなぁ〜!すごくない!?関係ないけどすごいよ!!!おれ!!!!?

いや、凄くはない。関係ないこと言うのは凄くはない。

 

――宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』というアニメ映画を見ました――

 

今まで読んだ本はそこまでページ数もなくて、それでも3~4時間かかっていて、長すぎると集中力が持たなくて読んでいるのかその時間をやり過ごしているだけなのか、もうなんなのかわからないような感じになってしまう事が多かったから、今回はアニメの映画で、そして気になっていた『銀河鉄道の夜』を見させてもらいました。

まず、意味不明過ぎた。素直に言うと流石に意味不明過ぎた。漢字や知識、情報。その全てがフィクションなのか事実なのかわからないほどに卓越された言葉達。文章のばくれつけん。意味がわからない自分が悔しい。今までの読書体験ならその場で聞いて答えを噛み砕いて納得して、次の文字に進めていたから理解できたんだけど、映像故にどんどん先に行くそのスピード感。ばくれつけん。

自分は映像ならいけると思っていたが、この銀河鉄道の夜に関しては、何故か「わからない。……けどいっか!」とならなかった。

わかりたかった。

かなりの全てをわかりたかった。

ただ、その歯痒いわかりたい気持ちと裏腹に物語はガスガス進んでいって、難しいことを言うようだけど、最後に全てをわかってしまってそれでまたわかりたくなった。

 

???????

 

はははっ(笑)

はははっなんですけど。流石に自分でもわからないな。でも、まずはわかりたい気持ちが先行していた。ここまではわかると思います。わからない物をわかりたいと思う気持ち。

そして、最後まで見て、エンドロールで放心してる最中、JUNERAYさんから宮沢賢治の人生を少し聞いた。本当に少しだ。どういう経験をしているか。本当に1分もかからない。一言だけ聞いた。その瞬間に全てがわかったのだ。僕なりにだけど、僕が勝手に言ってるのだけど、わかったのだ。

このテーマ。この分厚くも軽いこのテーマを書くことにした思いや、やりきらないといけないその気持ち。「なんでやらなきゃいけないんだこんなこと!」をという感情や、やるしかない。それしか方法がない。というような目頭の先っぽまで、わかったのだ。

これは隠してるんじゃないし、ボヤボヤにさせたいわけでもない。言いたくないんだ、そんなこと。

それに向き合うことに決めた。宮沢賢治という人間を前にまたしてもくらってしまい、お腹に遠くの海が見えるようなおっきい穴が空いた気分。大敗かまされた。最後に全てわかったというのはこういうことです。説明になっているかわかりませんが。

 

――それでいて、その後「わかりたくなった」というのは、宮沢賢治そのものにだ。
前回の『オツベルと象』を読んだときも同じことを思ったけど、本当に会いたかった。会って喧嘩の一つや二つ出来たんじゃないか。そう、やるべきだったと強く思う。その想いが溢れ出た。ここまでこれを書いたというあなたに会いたかった。俺は全部を知らないけど人間関係ってそういうもんでしょ。相手のことを知りたいから会うんでしょ。

 

……色々言ったけど、本当にお疲れ様。マジでお疲れ。飯でも行きたいよ。場所は新宿?渋谷?池袋とかにも行くよ。お互いの近い場所でごはんにしよう。お酒は飲める?飲めたら嬉しいけど、飲めなくても全然いいよ。好きなものは何かと聞くけどなんとなく焼き鳥ら辺になるかもしれないからそこは許してくれ。店についたら「やいやいやい」と言って酔いが回ってくるまで間を埋めながらジョジョの何部が好きかを話そう。記事や本の話は俺からはしないよ。メニューを見て話そう。「これ気になるな」だとか「これ言ったら日本酒になっちゃうよ」とかそういうの言おう。君より早くグラスを空けておかわりしやすい空気も作るよ。本当にお疲れ様。そしてありがとう。俺もやるよ。

 

――宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』というアニメ映画を見ました――

 

 

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(おわり)