国立科学博物館附属自然教育園をご存じだろうか?
いきなり漢字を14文字も並べてしまって、ギョッとさせてしまったかもしれない。『自然教育園』は、東京都・白金にある、自然緑地である。
どんな場所かを説明するために、まずご覧いただきたいのが、この画像。
(公式サイトより引用)
大都会の中にぽっかりと口を開いた、密度の濃い緑。
それも、かなり広大な面積を覆っていることが窺える。
聞くところによるとこの場所、なんと庭園などではなく全域が天然記念物に指定された広大な森なのだとか……?
これはぜひ、実際に訪れて、どんな場所なのかを確かめてみたい!
というわけで、本日この自然教育園を訪れてみるのは、この男!
こんにちは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
みくのしん:オモコロブロス編集部員。自然に愛されたいし、自然を愛したい。
そして案内人を務めるのは、この男!
加味條(かみじょう):この記事を書いているライター。森の怖さを知っている。
今日は加味條さんが案内してくれるんだよね! 自然教育園には行ったことあるの?
ないです、初めて行きます。みくのしんさんは?
僕は、実は、あります。1回だけ行った。
そうなんですね! でも今日は僕がバッチリ案内します!
歪(いびつ)!!
自然教育園へは、目黒駅から徒歩9分。せわしなく人や車が行きかう大都会のなかを進んでいく。
自然教育園ってそもそもどんな場所なのか、ご存知ですか?
あんまり知らないかも……!
もともとは、高松のお殿様のお屋敷があった場所で、その後は軍の火薬庫 ⇒ 天皇の直轄地として変遷してきた場所なんだそうです。だから、民間の手が一切入ってないんですよ。
偉い人の土地だから、開発されなかったってことか。
そうです! 戦後ほどなく、1949年に全域が天然記念物&史跡に指定されて、現在の自然教育園になりました。つまり、隅々まで開発されてる東京において、ここだけピンポイントに昔からの自然が残ってるんです。
そういう場所だったんだ!
歩くこと数分、都会の中に突然「緑」が姿を現す。
じゃあ、中は昔からまったく手つかずってこと!?
もちろん、保存するために人の手は入っているそうですが、概ね当時の景色を残していると言っていいんじゃないでしょうか。動植物の研究にも使われてるらしいですよ。
大昔の東京が見られるってことか……。俄然楽しみになってきた!
というわけで、今日の目標はこれです!
あとは、せっかく自然豊かなところに行くなら、良い景色の場所でご飯食べたいなぁ。
そういえば、さっき駅でお弁当を買いましたね。
よし、これも目標にしよう!
そうこうしているうちに、国立科学博物館附属自然教育園に到着!
果たして、園内にはどんな景色が広がっているのか……?
いざ入園!
(地図画像は公式サイトより引用)
地図右下の「教育管理棟」で取材パスを受け取り、入園。
え!? ちょっと待って!
急に森すぎない!?
来たことあるんですよね?
いや、実は結構前だからあんまり覚えてなくて……。しかもちょっとした「事件」があって、自然どころじゃなくなっちゃったんだよね。
事件……?
まあ、それについては後でじっくり……。
めっちゃ森の香りがする。嬉しい。
さっそく奥に行ってみましょう!
あ、見て、見て!
こういう「森の奥行き」がすごく好きなんだよね。ディズニーの映画みたいで。
「ジブリっぽい」ならわかりそうですが、ディズニー?
そうそう、絵が何枚も重なって、びゅ~って動くやつあるじゃん。
ああ!
※イメージ
こういうやつですね。確かにディズニーだ。
奥に行くにつれてどんどん深くなってく感じ、良いよなぁ。
あ、ビュースポットですって。『モミジの新緑・紅葉』。
紅葉(こうよう)は……
してないね。
まだちょっと早かったかもしれないです(撮影日は10月末)。そもそも今年は紅葉が遅いらしいですね、ナントカ現象のせいで。
ああ、あのカタカナのやつね。
「ナントカ」に当てはまる言葉は、ぜひ皆さん自身で調べてみてください。
ああ、このあたりだわ! 前回来たの。
それは、例の「事件」が起きたという?
そう。友達と2人で来たんだけど、ここで小さい子が迷子になってるのを見つけたんだよ。3~4歳くらいの。
あー、なるほど……。
周りに誰も居なくて、「とりあえず入り口の管理棟まで連れていこう」ってなったんだけど、見知らぬ子を抱っこして連れてくのも気が引けてさ。『八日目の蝉』みたいになっても嫌だし。
泣き叫ばれて、そこにちょうど親御さんが来たら怖いかも……。
だから一緒に歩いて行ったんだけど、小さい子だからすぐに疲れちゃうわけよ、ちーちゃんは。
ちーちゃんっていうんだ。
管理棟に着くまでにすごく時間がかかって、そのころには俺たちも疲れ果てちゃって、結局そのまま帰っちゃったんだよね……。
それは確かにもったいないですね。ここ、まだ全体の3%くらいの地点ですから。
だから今日は楽しみたい! これより奥に行きたい!
ちーちゃん、元気に育ってるといいですね。
みくのしん、前回訪問時には未踏の区域へ。こんな感じですが、東京都港区です。
おお、あれすごいよ!
めっちゃ上の方、枝が大変なことになってる!
写真じゃ伝わりづらいですが、信じられない高さの場所で枝が絡み合ってます。
いいなぁ。ほら、あっちもとんでもないことになってるよ。
ああ、これは『物語の松』ですね。さっき言った高松のお殿様が、屋敷の庭に植えたという松です。
歴史がすごいんだなぁ。
表皮が信じられない硬さですよ。もはやコンクリ。
いやいや、あくまで木だから……
マジだ。コンクリだ。思ったんだけど、この木の高さは、もう「縦」かもしれない。
え、縦写真ってことですか? Web記事って、基本的に縦写真はNGじゃないんですか?
大丈夫。これは「縦」のときだから。
いきますよ! いいんですね!?
おおおおー。
さっきの木といい、この松といい、並の公園には無い自然の迫力が感じられますね。
すでに楽しい! お、今度は水辺が見えてきたぞ?
水生植物園エリアへ
このあたりを散策する。
これは「ひょうたん池」ですね。
水面が鏡みたいで綺麗だなぁ。近くに建物もあるよ。
あら、この東屋、弁当スポットじゃないですか!?
たしかに! ちょっと確認してみよう!
水辺が見渡せて、最高じゃないですか。
うーーん……良い、良いんだけど……。もうちょっと日当たりも欲しいかも。
アパートの内見?
まだ「見(けん)」で。これより良い場所があるかもしれないから。
じゃあ、候補①ということにしましょう。
池や湿地に生息する動植物を見られる、水生植物園エリアへ。繰り返しになりますが、ここは東京都港区です。
あ、珍しそうな蝶だ! ちょっと撮ってもいい?
僕に言ってます? 蝶に言ってます?
隣にある案内板によると、それはツマグロヒョウモン♂だそうです。うまく撮れました?
いけた! ツイートするからちょっと待って!
できた
すごい、図鑑みたいな写真だ。
こうやって大自然の中で生き物を探すのも楽しいねぇ。
ただ、大自然と言いつつ、上を見ると……
ちょっと「港区(げんじつ)」が見えてて不思議なんですよね。
本当だ、ディズニーランドでは絶対に見えないやつだ!
ユニバーサルスタジオ・ジャパンではめっちゃ見えるやつ。
中にいると忘れそうだけど、都会の真ん中にいるんだよなぁ。不思議な感覚だ。
武蔵野植物園エリアへ
今度はこちら側のエリアへ向かう。
いきなり広大な空間がありますね。休憩所みたいですが、ここはお弁当ポイントでは?
うーん……
ここも良い。日当たり抜群だし、これだけ緑に囲まれた空間で爽やかに食べるのもありっちゃあり。ただ……
さっきのところの方が景色は良かったんだよなぁ。まだ、「見(けん)」で!
了解しました、では候補②ということで。
「森の小道」を進んでいく。
さっきより森のガチ度が増してない?
ですね。道も細いし、植生も変わってきた気がします。
ちなみにこの奥は、特別保存地区になっていて、一般客は入れないみたいです。全敷地の半分くらいに及ぶ広大な自然が広がってます。
もはやジャングルだ……!
さらに進み、武蔵野植物園エリアへ。ここは武蔵野の草原や雑木林が残り、かつての面影が窺える場所だ。
立体感があって面白いね。ここだけ「森」ってより「林」って感じ。
『となりのトトロ』の曲が聞こえてきそうですね。テンテッ、テーレレレ♪ テンッ、テーレテレー♪ (注:「五月の村」を歌っている)
え!? そっち!? ふつうは テ テ テ ン、テ テ テ ン♪ テ テ テ ン、テ テ テ ン♪ テレレレレレレレレレ、テテテン♪ じゃない?(注:「風のとおり道」を歌っている)
いやいや、昼間ならテンテッ、テーレテレ♪でしょ。
トトロといえばテ テ テ ン、テ テ テ ン♪ でしょうが!
これ伝わるか?
そうこうしているうちに、元いた水生植物園エリアへ戻ってきた。
あれ、ちょっと待って! ここさっき来てないよね?
ちょうど通らなかったところですね。
これは……!
日当たりもいいし、水辺も見渡せるし、ここじゃない!? お弁当ベストプレイス!!
水辺に沿ってベンチが並んでいる。
たしかに! 候補①と②の良いところを合わせたような場所だ!
よっしゃー!! お腹すいた!!
弁当 in 大自然
ベンチからの景色。
加味條さんは、なんの弁当にしたの?
目黒駅のスーパーで全国のいろんな弁当が売ってたんですよね。僕はこれにしました。
福岡、やまやのめんたい彩膳!
絶対おいしいじゃん!!
みくのしんさんは?
亀戸升本のあさり飯!
下町の風を感じる! 古 (いにしえ) の東京を思って食べるにはピッタリですね。
この場所でオムライスとかだと、ちょっとね。
実食ッ!
美味……ッ!!
美味い……。僕、外で飯食うの好きなんですよ。
わかる。
でも夏と冬は外出てられない気温ですし、春は花粉症があるので、この秋の「残暑が落ち着いてから寒くなるまでの数週間」が1年で唯一のゴールデンタイムなんですよね。
外で楽しく飯食えるのって、めっちゃ貴重なことなんだ……。そう思うと、より美味い気がするわ!
暖かい陽光と、緑に囲まれた澄んだ空気の中で食べる弁当は格別……。くどいようだが、ここは東京都港区である。
その後は、まだ行っていない西側のエリアに足を延ばした。
『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』をまあまあな音量で垂れ流しながら歩くオジサンとすれ違ったり……
「水鳥の沼」で鴨を観察したり……
2019年に倒れてしまった巨木「おろちの松」の根にビビったり……
その根と少し心を通わせたり……
クリッターカントリーにありそうな木を見つけたりしながら、散策終了!
食事の時間もふくめ、およそ2時間強の森林浴となった。
散策を終えて……
管理棟まで戻ってきた2人。
今日、来てみてどうでしたか?
自然もすごかったけど、何が一番すごいかって、この場所がちゃんと残されてることだよね。
たしかに。
現代の価値観なら「自然残すの大事だな」ってわかるけど、昭和の開発真っ盛りな時代も生き残ってきたわけでしょ? 絶対1回くらい、「やっぱここにビル建てません?」って言ったやつがいたはず。
住所で言えば、港区白金台ですからね。東京でもトップクラスに地価が高いところですし。
これだけ広ければ、野球場とかにされててもおかしくなかった。東京ドーム2(ツー)ができてたかも。
広さで言うと、東京ドーム4つ分あるそうです。
広すぎ。ここだけで東京ドーム5(ファイブ)までできてたかもしれない。
ただ「残す」と言っても簡単じゃなくて、たとえば雑草や落ち葉が積もりすぎると今ある動植物が育ちにくくなっちゃうんで、適度な環境になるように管理に手間暇がかかってるみたいです。ほかにも外来種の管理なんかもしていて、今日までこの自然が残ってるのはやはり大変な苦労の上に成り立ってることみたいです。
(※詳しくは科博のYOUTUBEにて解説されています)
そうなんだ……。みんなぜひ来てみてほしいね!
そうですね、じゃあ名残惜しいですが、外の都会に戻りましょうか。……って
ハッ………!
2人は、気付かぬうちにあまりに長い時間を園内で過ごしていた。
その間に、外の世界では人類はとっくに滅び、自然教育園の外もすべてが「自然(マザーネイチャー)」に還っていたのだった……。
(ENDING 2 文明崩壊)
■国立科学博物館附属 自然教育園
(公式サイト)https://ins.kahaku.go.jp/index.php
※開園時間や休園日については、公式サイトを参照ください。