こんにちは、ライターのかぼちゃといいます。
突然ですが、アントン・イェルチンという俳優をご存知でしょうか?
映画『スター・トレック』(2009年)で、ロシア訛りの若い隊員パヴェル・チェコフを演じていた人ですね。
別に「アントンを知ってるのは私だけよ」なんて思ってないので「は? 知ってますけど…???」とか言わないでください。
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プロフィール
アントン・イェルチン
1989年ロシア生まれ。赤ん坊のころ渡米、アメリカ育ち。
子役から俳優のキャリアをスタート。
2016年6月に車の事故で急逝。享年27歳。
そう、アントンは昨年亡くなりました。将来ある若者が亡くなるというだけでも悲劇ですが、アントンの死は映画界の大きな損失…。
というのも、アントンはさまざまな役を変幻自在に演じるカメレオン俳優としてすごく期待されていた若手なんです。
この記事ではアントンの死がどんなに惜しいかを力説すべく、アントン出演作5作品をご紹介し、そのカメレオン俳優っぷりをお伝えしたいと思います。
『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』と『ラスト・リベンジ』
『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』あらすじ
平和な街に何らかの大惨事が起きることを察知した霊能力を持つフリーター⻘年が、美人彼女の力をかりつつ未来の事件の真相を追う、ちょっとブラックなラブコメアクション
『ラスト・リベンジ』あらすじ
認知障害が判明し退職に追い込まれたベテランCIA捜査官を、彼に恩義のある若手捜査官が手助けし、2人でケニアに潜伏するテロリストを追う真面目なスパイサスペンス
まずはこの2作。
どちらの作品もアントンの役は「悪を追う正義感の強い⻘年」ですが、その設定は対象的。なんたって「ラブコメのフリーター」と「サスペンスのCIA捜査官」ですもんねぇ。
なのに、アントンはどちらの役にもしっくり馴染んでいるんですよ。ボサボサ頭にTシャツのフリーターにも、きちっとなでつけた短髪にスーツのエリートにも…。
レビューや批評だとよく「この俳優さんはこういう作品のこういう役やらせるとうまいよね」みたいな意見ってありますよね? でもアントンに関しては、彼の方が役や作品ジャンルに染まってしまう…。カレーにも肉じゃがにも馴染む玉ねぎ並みのポテンシャルで、観る人を魅了してくれるんです。
『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』予告編
『ラスト・リベンジ』予告編
『君が生きた証』と『グリーンルーム』
『君が生きた証』あらすじ
ミュージシャンを目指す⻘年が偶然見かけたシンガーソングライターのおじさんを口説き落としてバンドを組むも、おじさんには秘密があったという感動ヒューマンドラマ。
『グリーンルーム』あらすじ
売れないパンクバンドが郊外のライブハウスに呼ばれて行ったらネオナチの巣窟で、おまけにうっかり殺人事件を目撃してしまったため消されそうになるグロ系密室スリラー。
お次はこの2作。
作品ジャンルはやはり対象的ですが役の設定はかぶっていて、どちらも「有名ミュージシャンを目指している⻘年」。ところが…この2役って見比べてみると、まったくかぶってないんです。
『君が…』の⻘年は明るく無邪気で、歳より幼い雰囲気。「これからスタートを切るぜ!」という意欲に溢れています。
一方『グリーン…』の⻘年はいいヤツなんだけど若いのにどこか疲れた雰囲気が。なかなかヒットできずオンボロワゴンでドサ回りをしている苦労がにじみ出ているんです。
このジンジャエールとドライジンジャーエールくらい微妙な味わいの違いを、アントンは見事に表現。この2役を見比べることで「音楽⻘年にもいろんな人いるよね」と思えるんですよ…。演じてるのは同じアントンなのに!
『君が生きた証』予告編
『グリーンルーム』予告編
『ポルト』
『ポルト』あらすじ
⻘年がカフェで年上の美女に勇気を出して声をかけたところ彼女の方からグイグイきたのですっかり本気になったら「本気になられても困る」とフラれる悲しいラブストーリー。
「タイプは違っても、結局ぜんぶ“好⻘年”役じゃないか」なんて方に向けて、最後はこの作品を。
『ポルト』でアントンが演じる⻘年は、定職ナシ人付き合いナシの変人。少し病んでいる部分もあって、女性にフラれたら通報されるまで玄関先で騒いだりします。
いくらカメレオンといっても、ザ・好⻘年のアントンが病んでる変人なんてぇ〜と思って観てみると…え? これアントン???
スクリーンに映るのは、頰がげっそりとこけた病み上がりみたいにやつれた男。しかも全身から発する根暗オーラが凄まじい。
“好⻘年”なんて影も形もない、完全に”ヤバい男”になりきった俳優がそこにはいました。アントン好きにこそ、この変化を楽しんでほしい作品です!
『ポルト』予告編
まとめ
以上、アントン・イェルチンのカメレオン俳優っぷりが堪能できる5作品をご紹介させていただきました。
このうち『グリーンルーム』と『ポルト』は今年日本公開されたばかり作品。そのためアントンの死後に彼のファンになった方もいるんじゃないでしょうか? かく言う私がそうなんです…。
興味を持っていただいた方は、ぜひ彼のこれまでの演じ分けに注目して鑑賞いただければ幸いです。