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漫画単行本『動物たち』(作・panpanya)が、白泉社より発売されました。

 

 

 

 

こちらは同人誌即売会「コミティア」などで活躍してきたpanpanya先生の、通算4冊目の商業単行本。アンソロジーコミック誌『楽園(ル パラディ)』掲載の漫画が17作収録されています。

以前から作者のpanpanya先生のファンで、今回もさっそく発売日に読んだのですが、相変わらずおもしろいです! そのわりに知られていない気がするので、ぜひいろんな人に読んでいただきたいと思います。

 

 

確立された作風

 

panpanya作品は、他の漫画にはあまりない作風が確立しているのが特徴です。思いつく特徴を列挙するとこんな感じでしょうか。

 

①同じキャラクター

ほとんどが読み切りの短編ですが、登場人物が毎回同じです。主人公は鉛筆描きの女の子として描かれ、その他の登場人物も役割は違えど外見は共通しています。

 

②寂れた空間

キャラクターが薄く簡素に描かれているのと比べて、背景の描き込みがかなり精密です。人の少ない住宅街や、地下、漁港、郊外の道路、など、どこかで見たようなうら寂しい空間がよく出てきます。「廃墟愛好」とはまた少し違う雰囲気です。

 

③超現実的な展開

ストーリーは他愛のないものが多く、深刻な話はありません。しかし、日常がいつのまにか奇妙な世界につながっているような感触の話が多いのが特徴です。たとえるなら「迷子」でしょうか。知っている道を少し外れて歩いたら、いつの間にか全く知らない場所に来てしまった。あるいは夜に見る「夢」にも似ています。冷静に考えたらおかしなものを、そのときは違和感なく受け取ってしまっている、狐につままれたような感じ。

 

 

寝る前に読みたい漫画

 

 

既刊作品には『足摺り水族館』『蟹に誘われて』『枕魚』があり、どれか気に入れば他の作品もきっと気にいるのではないか思います。

 

最新作の『動物たち』では、タイトルの通り「動物」が主軸に据えられた作品が多く、「訳なし物件」や「動物ごみ」、「猯(まみ)」など、見慣れない・聞き慣れないイメージの侵食を楽しむことができます。既刊3冊よりもストーリー仕立ての作品が多かったので、まだpanpanya作品を読んだことのない方は『動物たち』から読んでもいいかもしれません。

 

めくるめく奇妙な世界を楽しめる本作ですが、私はpanpanya作品の根底に流れている「知っている感じ」が好きです。絵を介して無意識に眠っている名のない存在にアクセスしている気がするので、寝る前にベッドの上でなんとなく読んだりしています。

 

楽園(外部リンク)

 

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また、上記のリンク先にある「『楽園』ご紹介漫画」で、panpanya先生による描き下ろし漫画が無料で読めます。

 

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さらに、「WEB増刊」では描き下ろしの短編も読めます。このテイストが気に入った方は、ぜひ単行本も手にとってみてほしいです。装丁が凝っていて、紙のおもしろさに満ちています。

 

SURMICLUSSER(外部リンク)

 

panpanya先生のサイト上に掲載されているエッセイも着眼点と筆致が心地よく、こちらが気に入った方にも漫画はおすすめです。