論文。

 

 

    

 

研究者の努力の結晶だ。

 

研究者たちが日夜クソ真面目に研究し、その結果を心血注いでまとめ上げた論文が面白くないわけがない。

さらにその論文が面白いテーマで書かれていたらもう最強だ。超面白いに違いない。

 

 

世界にはそんな超面白い論文がゴロゴロ転がっている。最高だ。生まれてきてよかった。

 

 

最近ではサンキュータツオさんの『ヘンな論文』シリーズなどで紹介され、そういった面白論文が注目を集める機会も少なくない。

 

間違いなく面白論文ブームがくる。いやもう来ている。

明日貴方は友人から「この論文めっちゃ面白いから読んでみ」と言われ、PDFファイルを渡される。

 

「なんだって!? じゃあ僕も面白論文を探して読みたい! でもどうしたらいいの?」

 

そう思ったあなたも心配しなくていい、面白論文をディグるのは簡単だ。

 

Google Scholarというサービスがある。

 

Googleが提供している論文用の検索エンジンだ。読者のみなさんの中には嫌になる程お世話になった方も少なくないだろう。

 

使い方は簡単、ググるのと変わらない。

興味がある言葉や面白そうな言葉を入力して検索すれば、関連する論文がズラリと出てくる。

あとはその中から面白そうなのを選んで開くだけだ。

 

面白そうな論文を面白く読むコツ

 

「で、でも待ってくれよ! 専門外の分野の論文読んだってちんぷんかんぷんだよ!」

 

あなたはそう思うかもしれない。俺もそう思う。

でも大丈夫だ、面白そうな論文を面白く読むにはコツがある。

 

面白そうな論文を見つけたら

 

・まず最初らへんの要旨だの研究概要だの序論だのを読む

・中間はとりあえずすっ飛ばす

・あとは最後らへんの結果、考察、まとめを読む

 

書いた人間が言いたいことは大抵そのあたりに全部書いてある。

最後にザーッと全体を見て面白そうなとこだけ読む。

 

すると、わかんないところはさておき超面白い!となる。

論文だってただ面白がるのが目的で読むならそれで十分だ。

 

ただしあまりお行儀は良くないし、わかったフリをして知ったかぶるのも良くない。この読み方はただ面白がる時にだけ使おう。

 

 

さて早速いくつか面白論文をディグった例を紹介しよう。

 

検索キーワード【アイドル】

 

まず【アイドル】で検索してみた。

 

論文とアイドル、なかなか結びつかない言葉かもしれないが、そういうキーワードの方が面白論文にたどり着きやすかったりする。

 

『Twitterを利用した新語・流行語研究の可能性 ーアイドルグループ「Sexy Zone」の略語を例にー』

 

   

 

新潟大学の岡田祥平さんの論文だ。もうタイトルからして面白い。

 

内容はタイトル通り、

新しい言葉や流行語の研究にTwitterってめっちゃ使えるんじゃない?というのを、ジャニーズのアイドルグループ【Sexy Zone】の名前の略し方がTwitter上でどう移り変わっていったかを例にとって研究したものだ。

 

研究結果も興味深い。

 

「セクゾ」「セクゾン」「セクゾー」の使用率を時期ごとに調べ上げ、

 

・セクゾーはあんまり使われてない

・最初はセクゾンが優勢だったけど現在ではセクゾが優勢

 

ということを表やグラフを用いて説明している。

個人的には図8の「セクゾ」の使用率の推移というグラフタイトルにキュンキュンくる。

 

そして最終的にこのことからTwitterを用いた日本語研究には可能性があることを結論づけている。めっちゃめちゃ興味深い。Twitterを用いた日本語研究超興味ある。

 

 

検索キーワード【地蔵】

 

次に【地蔵】で検索してみた。お地蔵様だ。お地蔵様に関する研究だってたくさんある。

 

こちらの研究を紹介しよう。

 

『京都における地蔵の配置に関する考察』

 

 

もう最高めちゃめちゃ興味ある。こちらは東北工業大学の竹内泰さんと日本大学の布野修司さんの論文。

俺は今まで生きてきて地蔵の配置のことなんて全く気にしたことなかった。

 

調査方法がまたすごい。詳しいことは論文を読んで欲しいのだが、京都の街の一定の範囲の道という道を全部歩き回って聖祠(お地蔵さんや道祖神など)を探して全て記録するというものだ。超地道だ。

 

そして調査の結果京都のお地蔵さんは「境界型」「中心型」「不特定型」の三種に分類できると結論付けている。

 

地蔵の配置など「そんなのに規則性とかあるの?」みたいなところから明確な規則性を発見するような研究、本当にかっこいい。

 

街でお地蔵様を見かけたとき「あのお地蔵様は【境界型】だね」とか言いたい。

 

検索キーワード【河童 正体】

 

内心「出るか?」と不安に思いながら検索したら、出た。

 

『河童の正体は渦』

 

 

これは日本流体力学会誌「ながれ」に掲載されたもので、論文というのかどうだかわからないが、ヒットしたし面白いので紹介させてもらう。

書かれたのは東洋大学の望月修さん。

タイトルの英訳『A Kappa is a Vortex』があまりにもかっこいい。

「渦」をテーマに松井辰彌先生という方にインタビューしたものをほとんどそのまま文に起こしたもので、その中の松井先生のお話にこの「河童の正体は渦だと思う」という話が載っている。

そこだけ要約すると

 

・松井さんは子供の頃「川にはカッパがいて、尻を抜く」と言われていた

・川の淀んだところと流れの間に渦ができる

・渦の低圧で人が引きずり込まれる

・渦の低圧に尻がくると「尻が抜かれる」ような感覚がある

 

という話だ。なんだか納得してしまう。

しかし「尻子玉を抜く」なら聞いたことがあるが「尻を抜く」という表現は初めて聞いた。

どういうことなんだろう。その辺も興味深い。

 

 

検索キーワード【クソゲー】

 

キーワードに反してめっちゃめちゃ面白い論文がヒットした。

 

『レビュー解析精度向上に向けた皮肉検出手法の提案』

 

 

電気通信大学の鈴木翔太さんの論文だ。「皮肉」をについての研究、めちゃめちゃ面白い。

 

レビュー文がポジティブな内容なのかネガティブな内容なのか自動で解析するときに邪魔になるのがみんな大好きな「皮肉文」だ。

ポジティブな内容に見せかけてネガティブな内容を書いたり、逆だったり。その皮肉を自動で検出する方法についての研究だ。

 

「買ってすぐに壊れました. 本当にすばらしい耐久性ですね.」

 

「ゲームを買った帰りに寄ったケーキ屋さんでとても美味しいケーキが買えました. ゲームはケーキの包み紙にくるんで処分しました!ありがとう!」

 

(『レビュー解析精度向上に向けた皮肉検出手法の提案』より引用)

 

など、論文中の例文を拾って読むだけでも楽しい。

 

皮肉の検出方法はちょっとサクッと説明するのが難しいのでこの辺は実際に読んでみて欲しい。よくわからないけどなんか面白い。

 

そして実際にやたら皮肉レビューがついている商品をAmazonから選んで、検出方法の実用性を確かめている。

結果としては、従来の皮肉検出方よりはマシだけどまだ実用的な段階ではないとのことなので、この分野の研究の発展を心から期待したい。超面白そう。

 

検索キーワード【サンタクロース】

 

最後は【サンタクロース】で検索してヒットした論文を紹介しよう。

 

『子どもはなぜサンタクロースを信じ、やがて信じなくなるのか?:大学生による回想報告をもとに』

 

 

三重大学の富田昌平さんの論文だ。タイトル通り、子供がサンタクロースを信じるきっかけとそれを信じなくなるきっかけを大学生に聞いて調査した論文だ。

面白くないわけがない。

 

中には事例がしこたま書かれている。

 

【事例 4】クリスマスの朝、枕もとに私が駄々をこねて結局買ってもらえなかったものがたくさん置いてあり、私の欲しいものばかりどうしてわかったのか、とても不思議だった。そして、私をいつもからかっていた兄にはプレゼントが少ししかなく、サンタは本当にいるんだなぁと思った。(幼児期まで)

 

(『子どもはなぜサンタクロースを信じ、やがて信じなくなるのか?:大学生による回想報告をもとに』より引用)

 

このような、なんか良いな〜〜という感じの信じていたエピソード

 

【事例 17】ずっと信じていたが、プレゼントはもらったことがなかった。小学生くらいの時に諦めかけていたら、友達が英語で書かれた手紙をサンタからもらったと言って見せてきて、それでまたサンタへの思いが出てきた。次の年、ベッドの横に靴下の形をした袋をかけておいて、朝見たらお母さんからの手紙と1円玉が入っていて、「これがサンタからのプレゼントだ」というようなことが手紙に書かれていた。それ以来、サンタへの思いは消えた。(小4まで)

 

(『子どもはなぜサンタクロースを信じ、やがて信じなくなるのか?:大学生による回想報告をもとに』より引用)

 

このようなややハードなエピソード。さらに

 

【事例 14】私は小学生の頃、よくサンタさんに手紙を書いていました。「○○が欲しいです。無理だったら○○でいいです」とか書いていました。小学4年生くらいになると、テレビや友達から「サンタは親だ」と聞かされるようになり、本当にいるのか微妙になってきて、サンタさんに手紙を書いて、返信用の紙も一緒に入れて、「返事を下さい」と書きました。そしたら、ちゃんと返事があり、字は日本語で書いてあったけど、震えた字で、日本語が難しい感じで書かれていました。苦手みたいで、短い文しか書いてありませんでした。これは結構うれしくて、信じました。次の年、また疑いがあって、また同じように手紙を書いて、今度は読めなくてもいいからサンタさんの言葉で書いてくださいと頼みました。すると、起きたらちゃんと返事が置いてあって、全部英語で、しかも筆記体で書かれてあり、「うわぁー」って思いました。それでかなり信じました。この年くらいになると、クラスでもサンタさんが来る人は少なく、まだ来ているというのが自慢でした。あと、何度かクリスマスの日とかに家中プレゼントを探し回ったことがあるけど、見つけたことはありません。(今でも信じている)

 

(『子どもはなぜサンタクロースを信じ、やがて信じなくなるのか?:大学生による回想報告をもとに』より引用)

 

このように、なんなら今も信じているという事例も紹介されている。

これらの事例を読むだけでもめちゃめちゃ面白いし、信じるきっかけから信じなくなるまでの心の揺れ動きについて考察しているところもすごく面白い。

 

 

 

以上、Google Scholarで検索して出てくる面白論文をいくつか紹介させてもらった。

ぜひ皆さんも面白論文をほじくり返して「論文、面白えー!!!」って言って回ってほしい。

 

おわり