「ちょっと一服してきます」
このセリフに憧れている。
飲み会の合間、会議の途中休憩、お昼休みの余った時間……。
タバコを吸わない人には分かると思うが、一服タイムはいつも置いてけぼりだった。

これまで幾人もの一服しにいく人を見送ってきた。
さっと会場を抜け出し、リフレッシュした顔で戻ってくる。
なんてスマートなんだ。あの感じ、羨ましくてたまらない。
いつか私もあんな風に一服しに行ってみたい、そんなことを思いながら日々過ごしていた。
ある日の昼下がり、私は会社の非常階段にいた。
デスクワークで凝り固まった筋肉をこっそりとほぐすためだ。
ストレッチを終え、何気なくポケットに手を入れると、なにかが指に当たった。

ビスコの包み紙。
おやつに食べてそのままポケットにつっこんだやつだ。

包み紙の中を嗅いでみた。理由はない。ただ目の前にあったから嗅いだ。
小麦の素朴な香りの中に、レモンクリームの甘酸っぱいにおい。優しくて心が癒される。

まるでビスコそのものが手の中にあるような錯覚に陥った。
包み紙というのは臨場感があるな、そんなことを思いながら包み紙に向かって吸っては吐いてを繰り返した。お菓子のにおいっておいしい。
そうこうするうちに、ひらめいてしまった。
もしかして、一服するってこういうこと……?
そうか、なにも吸うものはタバコじゃなくても良かったのか。
心が安らいだりリフレッシュできるなら一服になるのかもしれない。
私の場合は、お菓子の包み紙を吸うこと、それが一服!
ということで、一服するために吸っていきたいと思う、いろいろなお菓子の包み紙を。
あらゆるシーンで一服してみる
寒い季節の外回りは体に堪える。
冷たい風に体力を奪われながら、次の訪問先へ向かわなければいけない。
時計を見るとまだ時間に余裕がある。そうだ、あれをやろう。

さっき食べたスニッカーズの包み紙を取り出した。
手軽にカロリーを摂取できるスニッカーズは、忙しい社会人にぴったりのおやつである。

その包み紙を川沿いでこっそりと吸ってみた。

欧米のにおいだ。パワフルな甘い香りは、私の中に住む半そでの欧米人を目覚めさせた。寒さが和らいだ。

今度はチョコボールの箱を取り出した。中身は完食している。

チョコボールの箱がこんなに吸いやすい形だったなんて。驚きを隠せなかった。
鼻が隙間なくフィットするからだろうか、チョコボールの香りが鼻孔に直撃してクラクラした。重量感のある吸い心地だ。

車移動のあとに駐車場の脇で吸ってみた。
ミルキーの包み紙は見た目がかわいくて気分が上がる。

ほぼ紙のにおいだった。
デザインがかわいければ良いというものではなかった。

ケバブを食べたあと、お店の脇にある喫煙所に寄ってみた。
ここでも吸わせてもらおう。気分はチロルチョコきなこもちの包み紙。

辺りに漂うスパイシーな香りと、きな粉風味のコラボ。悪くない。
異国のデザートを食べたかのようなエキゾチックな余韻に浸った。

夕方、ベランダからオレンジ色に染まるビル群を眺めた。そろそろ終業時間だが、仕事は終わりそうもない。そんな時はキットカットの包み紙を吸おう。

「きっと勝つよ」
包み紙に残るキットカットの幻影に励まされた。仕事がんばるぞ。

飲み物を買いにコンビニに来た。ついでに外の灰皿で一服していきたい。
取り出したのは北海道土産にもらった白い恋人の包み紙。上等品だ。

ミルクの甘いかおりを吸いながら、日常から遠く離れた北海道に思いを馳せた。

吸いがいがありそうな筒状のプチシリーズ。
「カカオの香り広がるおいしさ」というキャッチフレーズも良い。
もしかしてプチシリーズは吸われる前提で作られているのかもしれない。
中身を食べたあと、いそいそと非常階段へ出た。

密かに憧れていたタバコの持ち方をやってみた。
慣れてないのでそれぞれの指が所在なさげで情けない。

長細いものを吸うのは良い。一服してるという実感に浸り、気分が盛り上がる。

海外のお菓子はパワフルで吸いがいがある。
ということでイタリアのチョコ菓子、フェレロ ロシェを試してみたい。

その香りはイタリアだった。工事真っ只中のレオパレスからの景色が、イタリアの灰色の空に見えた。

チョコレートとヘーゼルナッツの香りで昼間からキマった。甘い香りは日々の受け止めがたいニュースを忘れさせてくれる。
海外のお菓子、 なかなか良いぞ。

カルディで出会ってしまったロータスのビスケット。
シナモンとカラメルが香る魅惑のおやつだ。これは吸いたい。25個入りは絶対に多すぎるが見逃せなかった。カートンで買った。
大量のロータスを手に入れてからは節操なくあちこちで包み紙を吸いまくった。

夜の公園で一服

温かい缶コーヒーと一緒に一服

白い息を吐きながら一服
ロータスのシナモンの香りは冬の乾いた空気にぴったりだ。

かとみ








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オモコロ編集部






