こんにちは、JUNERAY(ジューンレイ)です。
突然の自分語りsorryなのですが、私はフリーランスでライターと飲料開発の仕事をしています。
飲料開発と聞いてもピンとこない方がほとんどかと思いますが、具体的には飲食店のドリンクメニューを考えたり、清涼飲料水メーカーにレシピを提供したりする仕事です。
(実際日本にはフリーでこのような仕事をしている人はほとんどおらず、なんと肩書きに書いたらいいかわからないため、海外の方が「Drink Developer」と名乗っているのを見て雰囲気で真似しています。)
今までドリンクを開発するために様々な食材を扱ってきましたが、最近、スーパーに行くたびにこんなことを思います。

スーパーで売ってる食材、ぜんぶ飲み物にできそうな気がする
職業病といいましょうか、どんな食材を見ても「これを飲み物にするならどういうレシピにするか」を考えるクセがついてしまったのです。
そんなわけで今回は、オモコロ編集部メンバーにリクエストされた食材で、おいしい飲み物を作れるか? というチャレンジ企画をお送りします!

何言ってんだこいつ? と思われてるかもですが、まあまあ見ててくださいや
〜食材をリクエストする人たち〜
【みくのしん】
オモコロ編集長。好きな飲み物は水。
体に必須なのに安いし美味いから。あと、透明なのに存在しているのも好き
【ダ・ヴィンチ・恐山】
オモコロ編集部員。
好きな飲み物は世界のKitchenからの「晴れ茶」
【永田】
元オモコロ編集部員&BHB副社長。
好きな飲み物はくっちゃいくっちゃいウイスキー。
〜飲み物をつくる人〜
【JUNERAY】
オモコロライター。好きな飲み物は白湯。
今回のチャレンジにあたって、下記の3つのルールを設けてみました。

①お題はスーパーで買える食材限定
メンバーから募集するお題はスーパーで買える食材限定とします。
逆にいえば、それ以外の材料は一般的なスーパーで扱われない食材を使ってもよしとします。
②お題の食材の味をしっかり活かしたドリンクにする
ジュースにお題食材を1滴だけ入れる、なんてレシピではつまらないので、お題がどんな食材であっても、持ち味を活かしたドリンクを目指します。
③ノンアルコールでつくる
酒税法の回避が面倒というのもありますが、個人的にはお酒よりもノンアルコールドリンクの方がイレギュラー食材を使った開発難易度が高いと思うので、チャレンジ性を上げるためにノンアル限定としました。
これ以外の縛りはいっさいありません。
代わりにみくのしん、恐山、永田の3人には、お題となる食材も「なんでも大丈夫」と伝えてあります。どんなリクエストが飛び出すか楽しみですね。
さて、それではさっそくお題を聞いていきましょう。
ドリンクになるお題食材はこれだ!

まずはオモコロ編集長みくのしん。
料理と食べることが誰よりも大好きなみくのしんのリクエスト食材は……?

野菜のキャベツに決定しました(試作の様子は後ほどまとめてお送りします!)。

続いてダ・ヴィンチ・恐山。
変なノンアルドリンクを買って飲んでみるのが趣味という、恐山のリクエストはというと……

恐山のリクエストはカレールー。
永田が割り込んできてカスみてえな会話をしていますが、当の永田のリクエストはというと……?


いくらカスといえど馬糞を飲ませるわけにはいかないため、お題食材はくさやに決定しました。
どうやら永田の近所のスーパーでくさやが売られているのはマジらしいです。

なんなんだこいつは
ということで、お題食材は「キャベツ」「カレールー」「くさや」の3つに決まりました。ノンアルコールドリンクの材料としては、かなり難易度の高いラインナップと思います。
くさやのドリンクに至っては本気で飲みたいと思ってリクエストしとるんか?? て感じですが、気にせずドリンクのレシピを考えていきましょう!
けっこう長いので、飲んでるとこだけ見たいよという人は次のページに飛んでね!!
ドリンクレシピを作ろう
ここからはレシピの構成&試作のようすと、都度何を考えているかのご説明をダイジェストでお送りします。
ダイジェストといってもけっこう長いので、読み飛ばしちゃっても大丈夫です。

キャベツ。
「お題はなんでも大丈夫」と言った手前アレですが、野菜の中でもよりによってキャベツか……というのが本音です。
実はかつて趣味でキャベツの飲み物を作ってみたことがあるのですが、独特の青臭さをうまく活かせず、飲みづらいドリンクになってしまいました。
葉野菜らしい青臭さこそがキャベツのアイデンティティですから、こればかりは仕方ありません。
青臭さを軽減する方法の一つに煮るという手法があるのですが、「煮たキャベツ」といえば代表的なワインやビールの欠陥臭(好ましくない香り)のひとつ。
飲み物の作り手としては、キャベツを煮るのは避けたいのが人情ってもんです。

とはいえキャベツを液体にする方法を考えなきゃいけないし……
……
…………

♡♡買っちゃった♡♡
かねてよりほしかったスロージューサーを買いました。
セールで安くなっていたとはいえもちろん自腹です。やったね。

届いたばかりのスロージューサーも、まさか初手でキャベツを絞らされるとは思っていなかったでしょうね。
おかげで純粋な非加熱キャベツ汁が手に入ったよ。ありがとうね。

キャベツの青臭さをポジティブな方面に活かすため、今回はフレッシュミントを使用することにします。
不思議なことに人間は、野菜の青臭さが飲み物にあると受け入れ難いのに、ハーブの青臭さとなると急に「オシャレな香り」とか言い出すものです。

青い香りの補強と、全体のバランスを調整するために、グリーンカルダモンと青山椒、グリーンペッパーも使うことにしました。
グリーンカルダモンはセブンイレブンのバターチキンカレーなどからよく香ってる、カレーにはお馴染みのスパイス。グリーンペッパーは熟す前の胡椒で、若草のような爽やかな香りが特徴です。
そんなわけで、キャベツドリンクのレシピ構成は下記のようになりました。
キャベツドリンク 使用材料
・スロージューサーで絞ったキャベツ汁
・フレッシュミントとてんさい糖のシロップ
・グリーンカルダモン、青山椒、グリーンペッパーの抽出液(有り体にいうとお茶)
・レモン果汁
わざわざ再現したい人もいないと思うので詳細なレシピは省きます!
つづいてカレールーのドリンクを作ります。

個人的には、今回の3つの食材のうち最も難しいお題がこのカレールーだと思います。
カレー粉であればスパイスミックス粉末として使えばいいので話が早いのですが、カレールーには脂と小麦粉が多く使われているため、どうしてもサラサラの澄んだ液体になりません。
さらに味も香りも馴染み深すぎるため、ほかの材料を丁寧に選定しても、カレーが香った瞬間においしいドリンクから「シャバシャバの変なカレー」に飲み心地が変わってしまいます。
つまり「トロトロ&ザラザラな口当たりが許容できるドリンク」であることと、「カレールーの香りを活かしても不快にならない飲み心地」が求められます。これはかなりの難題ではないでしょうか。

とりあえず飲み物として成立しそうなお湯の量を計算して、煮溶かしてみます。
加熱して食べる前提の食材は、飲み物においてもしっかり火を通しておくのが肝要です。

この時点ではまだ味の薄いスープカレー。
ファットウォッシュ(※)のイメージで冷蔵庫で冷やしてから不織布で濾して、可能な限り脂と固形物を除去することにしました。
※……飲み物に油を入れて撹拌し、冷やして固めた脂を取り除くことで、香りを移したり固形物を取り除いたりする技法
(卓上遠心分離機の導入も検討したのですが、すでにスロージューサーで予算オーバー&食品グレードのチューブを探すのが面倒だったので、ちょっと横着してます)
当初は素直にクラフトコーラを作ろうと考えていたのですが、やはり口当たりが気になるためジンジャーエールに仕立てようと思います。
生の生姜を使った自家製ジンジャーエールなら、口当たりが多少ザラついても不快にはならないですし、スパイスの香りとも調和してくれそうです。

細かく刻んだ生姜と砂糖を合わせておくと勝手にシロップになってくれます。
ちなみにこのフードプロセッサーはオモコロ杯で受賞したときのAmazonギフトカードで買いました。なんだか感慨深いですね。

全体の味と香りのバランスを調整するため、スパイスとハーブをミックスした抽出液も加えます。
カレールードリンクのレシピ構成は下記のようになりました。
カレールードリンク 使用材料
・なるべくサラサラにしたカレー液
・生姜、てんさい糖、ライム果汁で作ったジンジャーシロップ
・レモングラス、馬告、月桃の葉の抽出液(有り体にいうとお茶)
最後はくさやのドリンク。
恥ずかしながらくさやを食べたことがないため、試食のため少し多めにくさやを購入しました。

くさやといえば「日本一臭い食べ物」などと称され、とにかく強烈に臭いことでお馴染みの食材。
なんでそんな臭くなるん?? と製造方法を調べたところ、魚を乾燥させる前に浸す「くさや液」なる発酵液に理由がありそうです。
かつて水と塩が貴重だった地域で、干物をつくる際に魚を漬ける塩水を何度も再利用したことで、塩水自体が発酵し独特の香りを放つようになったとのこと。
この写真を撮影している間にも、袋を貫通して匂いが漂ってきています。先行き不安。

軽くオーブンで温めてから(もうめっちゃくさい)食べてみたところ……
かつて畜産農家だったおばあちゃん家の牛舎をリアルに思い出しました。腐敗と発酵の違いは人間の都合だということをよく理解させてくれる。どっかでナンプラーの瓶が割れまくってる牛舎のにおい。食べてる自分の内側がどんどん臭くなっていく。
めっちゃくさい!!!!!!!!!!!!!!
手持ちがベトベトンとクサイハナとダストダスのトレーナーがケンタロス100頭と戦っとるんか!!!????????
……とはいえ、臭さの方向性が「牛舎」だったおかげで光明が見えました。
「馬小屋の匂い(畜舎の匂い)」はワインやビールのテイスティングコメントとしてはそう珍しくなく、さらにビールにおいては馬小屋の匂いが肯定されているスタイルがあるからです。
ブレットビールと呼ばれるそのビアスタイル(=ビールの種類)は、時に強烈な家畜小屋臭をもちますが、慣れると不思議とおいしく飲めてしまいます。
今回はブレットビールを参考に、くさやの匂いを活かしたノンアルコール・ビアカクテルを作ることにしました。
さて、肝心なのはくさやをどうやって液体にするかですが……
……
…………

☪︎⋆˚。✩蒸留すっかぁ……☪︎⋆˚。✩
またファットウォッシュみたいなことするのも芸がないし、水蒸気蒸留しちゃおっかな。ね♡
水蒸気蒸留とは、ざっくり説明すると香りを取り出したい素材を加熱して、出てきた蒸気を冷やし、液体に戻してから集める手法です。説明がややこしいので省きますが、共沸という現象が起きることでとにかく香り成分をいっぱい取り出すことができます。

一応家に小型蒸留器があるのですが、どう考えても使用後はハイター漬け臭い抜きコースなので、家庭用の鍋を加工して簡易蒸留器として使うことにしました。
まずは適当に切ったくさやと水を鍋の底に入れ、網を敷き、中央に耐熱容器を置きます。

鍋蓋の取手を外し、逆さにして鍋にかぶせたら、写真のようにアルミホイルをつらら状にはめて液体が通る道を作ります。蓋の蒸気穴もついでに塞いでおきます。

蓋の上に清潔な布巾と、袋に詰めた氷を置いたら準備完了。
加熱するとくさやの匂いをたっぷり取り込んだ蒸気がたちのぼり、氷で冷やされ液体に戻り、アルミホイルのつららを伝って中央の耐熱容器に溜まります。
やってることとしては、お味噌汁の蓋の裏についた水滴を集めるようなものなので、実際大した作業ではありません。キッチンがくさやの臭いでヤバくなる以外は何も大したことじゃない。
(水蒸気蒸留は簡単だけど、素材によっては飲用に適さない液体がとれちゃうことがあるから、試す場合はよく下調べした上で自己責任でね!!)

くさやを蒸留している間、香りを整えるためのスパイスを使ったシロップを仕込みます。
魚に合わせるスパイスは古今東西どの地域にもありますから、選択肢が豊富で楽しいですね。今回はセージと、私が大好きなスパイスであるゴラカ(ガルシニア)を使います。
ゴラカとはフクギ科の果実を乾燥・燻製したスパイスで、スリランカなどで魚料理に使われています。燻製香と酸味が特徴です。
当初は黒文字(和菓子についてくる素敵な楊枝に使われる木の枝)を使ってスモークしようと考えていたのですが、オモコロ編集部のオフィスが火器厳禁とのことで断念しました。
代わりにビアカクテルらしく、ホップを使って少し細工をすることにします。

さて、そうこうしている間にくさやの蒸留液が目標量まで溜まりました。
無色透明で見た目はただの水ですが、しっかりと凝縮されたくさやの臭いがあり、我が家のキッチンは完全におしまいです。
最終的なくさやドリンクのレシピ構成は下記のようになりました。
くさやドリンク 使用材料
・くさや蒸留液
・セージ、ゴラカ、黒文字、てんさい糖のシロップ
・柚子果汁
・ホップ抽出液(お茶)
レシピが完成したので、いよいよ3人に飲んでもらいましょう。

JUNERAY
【みくのしん】
【ダ・ヴィンチ・恐山】
【永田】
【JUNERAY】








