2024年11月17日(日) 聖地巡礼編
東京都世田谷区、桜新町駅。
言わずと知れた『サザエさん』の街です。
この街には、『サザエさん』の作者として知られる長谷川町子さんの美術館・記念館がありまして、
ちょうど来週末(撮影時点)まで「アニメサザエさん展」が開催されていることを偶然知りました。
あまりにも僥倖すぎて、万障繰り合わせて飛んできました。
サザエさん通り(Sazaesan-dori St.)を10分ほど歩いて、
到着です。
屋外にフォトスポットがあります。
角度を変えると磯野家の人数が増減する、おばけえんとつみたいな仕様。
常設展は写真NGでしたが、アニメ展は写真OKとのこと。
スタッフの皆さんはサザエさんのカチューシャをしています。
これはすごい。
こんなに素晴らしい資料を得られるとは、夢にも思いませんでした。
あまりにも興奮してしまい、めっちゃ写真撮ったしめっちゃメモも取りました。
さすがにここまで熱心に鑑賞している人はいませんでしたが、館内は賑わっていて、でも独特のユルさと温かさにあふれていて、なんだかものすごく癒されます。
全部を紹介するとただのサザエさん展レポート記事になってしまうので、ほんの一部だけ。
こちらは、カツオの基本設定です。
カツオがストーリー展開の起爆剤になることが明らかになりつつあるので、カツオの行動原理は非常に重要な情報。
恋、いたずら、スポーツ、食べ物、外面、頭の回転。
どれも非常に納得できる軸ですし、改めてプロに再構成してもらうと僕の思考も整理されるのでありがたい。
こんなに素晴らしい資料が、磯野家全員分ありました。
隣には家族からの一言。
こういうのってだいたい当たり障りのないものですが、磯野家の皆さんはバッサリ言ってくれるのでリアルな関係性がちゃんとわかります。
「波平⇒サザエ」と「フネ⇒カツオ」が全く同じコメントなのが特に良い。
あと、「フネ⇒波平」と「マスオ⇒波平」のコメントが矛盾しているのも良い。
小道具の設定画集もありました(急須もビール瓶も炊飯器もカツオのグローブも全部色指定資料があるんですよ、すごくないですか)。
自宅の模型もありました。
アニメのベスト集が無限に流れていました。
原作マンガもアニメのムック本もドッサリあって、全部自由に読めました。
「マスオはこういう表情をしません」という設定資料もありました。
本物のサザエも展示されていました。
隣にある長谷川町子記念館にも行ってきました。
なんか最近『サザエさん』のことばっかり考えてるせいか、長谷川町子さんがどんな想い・どんな経緯で『サザエさん』を連載していたのか、という背景もすごい染み渡ってきます。
僕はどうやら、『サザエさん』を好きになってしまったようだ。
ただ、無音で『サザエさん』を観てストーリーを当てたかっただけなのに。
お土産も買いました。
お土産用の包装紙にそういう4コマを載せているのも、実に粋だ。
さらなるお土産としてマンガの全巻購入という選択肢もほんの一瞬だけよぎったのですが、今回は断念。
「無音サザエさん」の考察にもっとも使えそうな本を一冊選び抜きました。
それは、
『よりぬきカツオくん』
です。
カツオの機転やこだわりといった行動原理だけを凝縮した貴重な一冊。
帰りがけに一気読みしました。
有名な話ですが、やっぱりカツオはすごいです。
大人への切り返しも、機転も、自分の利のための行動力も、どれも一流。
ほんの一部だけ紹介すると、
・できの良い習字を凧にして近所に見せびらかす
・ふとんのうらにマンガを縫い付けてこっそり読む
・「行ったら書いてる暇がないから」という理由で、林間学校先から家族に宛てた手紙をあらかじめ家族に手渡しする
・波平が防災訓練と称して各々一番大事なものを背負いなさいと言い、カツオが波平を背負ったことで、欲しかった靴を買ってもらう
・庭師の仕事をしばらく眺め、それとなく仕事ぶりを褒めたことで七夕の竹を調達する
などなど。
修学旅行先の旅館で気に入られて、宿の主人が直接磯野家に来訪して「養子にしたい」と申し出るエピソードもありました。4コマの密度じゃない。
それを見たサザエは「外面が良い」と評しますが、外面というレベルではありません。
大名に見初められて武士に登用されるレベルです。
こうしたカツオの機転、主として利己的で、たまに利他的な圧倒的行動力が、4コマに限らずアニメという長尺(8分)のストーリー展開にも活かされている部分、かなりあると思います。
「ハヤカワさんの物干竿」を考える上で非常に重要な「カツオならどう考えるか」が、段々と僕の中にも入ってきた感じがします。
2024年11月25日(月) カツオ解析編
さて、最後のピースがこちら。
『祝・放送55周年 サザエさん秋の傑作選』と題して、過去の傑作エピソードがいくつか再放送されていたので、もちろん無音で視聴しました。
中でも11月25日(月)の一編「カツオ心と秋の空」は、カツオ軸のストーリー構造を考える上でかなり有益でした。
無音視聴する前の時点で、タイトル「秋の空」からしてカツオの心が移り変わる展開ということは想像できます。
実際に無音で観終わった直後の感想としては、正直「心が移り変わる」というレベルを超えてストーリー展開がめちゃくちゃだと感じてしまいました。
しかし、それは僕の大きな間違いだったんです。
どういうことか?
一旦、無音版をハイライトでご紹介しましょう。
礼服を着たマスオが、お土産を持って帰ってきて、
みんなでバームクーヘンを食べています。
ステーキやイセエビのシュポッが出てきたので、どうやら結婚式の披露宴に出席していたようです。
そのまま自然と、
「僕は誰と結婚するのかな~」
「花沢さんじゃない?」
「いや、カオリちゃんだ!」
というお決まりの展開に。
フキダシのおかげで、無音でもだいぶストーリーが読めます。
その後、ハヤカワさんに優しくされて「やっぱりハヤカワさんも良いなあ」、ウキエさんと出会って「ウキエさんも良いなあ」で悩みます。
これが秋の空ということかと思いきや・・・
色々あって最終的にはどの出前を取るかで悩んでいました。
さすがに移り変わりすぎでは!?
「誰と結婚したいか」という範囲の中での移り気なら、ストーリーに一貫性があるのですが、
その範囲を飛び出した移り気にまで飛んでいったので、いくら移り気がテーマだとしても一貫性のないブッ飛んだ展開にしか思えなかったんです。
しかし、有音版を視聴して、この違和感は完全に氷解しました。
キーになっていたのは、
マスオが披露宴で食べた豪華な料理の話をした直後でした。
「良いなあ~!僕も今度、披露宴に連れて行ってよ!」
しかし、家族から「カツオが出席できるのはまだだいぶ先」と言われ、落ち込むカツオ。
直後にひらめきます。
「そうだ!自分が結婚式の主役になれば良いんだ!」
これです。
つまりカツオは、流れでなんとなく自分の結婚相手を考え始めたのではなく、披露宴の料理をさっさと食べたいがために自分の結婚相手を考え始めたんです。
(そっちの方がだいぶ先、というかその日はおそらく永遠に訪れないのですが)
無音時には一貫性のない移り気に思えましたが、
実は「美味しい料理を食べたい」という一貫した極太の行動原理があって、その範囲の中でカツオは移り気をしていた、ということだったのです。
これこそ、カツオ軸のストーリー展開の重要ポイントでしょう。
他の家族からすると理解されづらいものの、カツオの中ではちゃんと一貫したこだわりがあって、しかも行動力もあるから、8分間の中で筋肉を最大限に消費して、一貫しつつ飽きさせない展開を作れる。
「ハヤカワさんの物干竿」も無音時には意味不明な展開でしたが、カツオの極太一貫原理さえ発見できれば、真のストーリーを当てることができるはずなんです。
きた!これだ!
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頭も心も身体も『サザエさん』に捧げた数週間。
先人の多い世界なので「サザエさんに詳しい」なんてとてもまだ言えませんが、「サザエさんが好き」とは胸を張って言えるようになりました。
そろそろ「ハヤカワさんの物干竿」をもう一度無音で視聴し、ストーリー当てに再挑戦しましょう。