「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変わる瞬間選手権

 

——彼女いない歴0079年。

 

 

束の間の平和を享受していた衆生に、ある日衝撃が走った。

 

 

 

 

何の変哲もないガラケーの一機種のカメラシャッター音が
ある人には「エーアイアイ」と聞こえ、
またある人には「撮ったのかよ」に聞こえるというのだ。

 

そのニュースは当時の最先端SNS「探偵ナイトスクープ!」を通じて
瞬く間に巷間へ広まった。

 

やがて、【教えて君は】エーアイアイについて語るスレPart124332【(・∀・)カエレ!!】
スレ住民の有志の研究によって一つの事実が判明する。

 

——シャッター音の再生速度を次第に遅くすることで、
「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変貌する瞬間がある。

 

多くの若者たちは、「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変わる刹那のスリル、
興奮、カタルシスの虜となった。

 

 

 

やがて彼らの中から、自らの身体を用いて
「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変わる瞬間を表現する者たちも登場した。

 

「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変わる瞬間は、
新時代のエクストリームスポーツとしてここに完成を見たのである。

 

 

 

 

 


 

 

 

――オーストリア、「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変わる瞬間大聖堂。

 

 

本日、第1回「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変わる瞬間選手権大会が
この地で開かれる。

 

世界中から集まったのは、「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変わる瞬間の
予選大会を勝ち抜いてきた猛者たち。

 

全ては、「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変わる瞬間の頂点を決めるために。

 

 

 

 

 

 決勝の前に、まずは前大会の優勝者である老人による演舞です。

 

 

 ふむ……ではボチボチやらせてもらいますかな……
なにぶんブランクがあるもので、腕が落ちていなければいいんじゃが……

 

 

 

 エーアイアイ……エーアイアイ……

 

 

 

 

 は、はじまったんだぜ……!

 

 最初はかなりスローペースなんだな……

 

 

 

 エーアイアイ……エーアイアイ……っかよ……

 

 !!

 

 ぼ、ボクには聞こえるぞ!!「撮ったのかよ」に変わる瞬間の、その母胎が!!

 

 エーアイっのかよ……エーアたっかよ……!

 

 エーアたっかよ……!エーアたっかよ……!エーアたっかよ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 撮ったのかよッッッ!!!!!!!

 

 ビクッ!!!!!

 

 ッッッ!!!
なんて「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変わる瞬間なんだぜ、
ビリビリきたんだぜ……!!

 

 これが王者の「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変わる瞬間……!!
あなたの生き様、しかとこの目で見させてもらいました……!!

 

 あとは僕たち、新世代の
「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変わる瞬間に
任せてお体の方ご自愛ください!!

 

 う、うむ。それじゃあそうさせてもらおうかな……

 

 さすがは前回優勝者、覇者としての貫禄を見せつけてくれました!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……フン、それが今の「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変わる瞬間のレベルか。堕ちたもんだな」

 

 

 だ、誰だ!?

 

 

 俺だ。

 

 

 

 俺はエーアイアイが撮ったのかよに変わる瞬間秘密結社
「ネバー・エビデンス」の幹部、ゼウザー。

 エーアイアイが撮ったのかよに変わる瞬間秘密結社
「ネバー・エビデンス」の幹部、ゼウザー!?

 

——突如会場に現れた、
エーアイアイが撮ったのかよに変わる瞬間秘密結社
「ネバー・エビデンス」の幹部、ゼウザーとは一体……!?

 

 

 

 

 

 

 大会は中止だ。今から貴様らは俺の命令に従ってもらう。
拒否権はない

 

 ハァ!?そんなことするわけないだろ!5時撤収なんだぞ!!

 

 拒否すればどうなるかわかっているんだろうな?

 

 黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!

 

 まあまあ、ここはワシにまかせんしゃい

 ゼウザー?さんとやら、少々お自慰さんがすぎましたな

 

 フン、1日2回は老体にはこたえるじゃわてぃ……仕方ありませんな

 

 

 

 

 エーアイアイ……エーアイアイ……

 

 エーアイアイ……エーアイアイ……

 

 エーアイアイ……エーアイアイ……

 

 

 おい!なんかまた始まってるぞ!

 やべっ!お客様の笑顔のこと考えてて全然聞いてなかった

 

 

 

 エーアイアイ……エーアイアイ……

 

 エーアイアイ……エーアイアイ……っかよ……

 

 遅い。

 

 

 

 エーアイアイエーアイアイエーアったのかよエったのかよ……

 

 

 

 

 撮ったのかよッッッ!!!!!!!

 

 ぐ、ぐぁぁああああああああああ!!!!!!!(痛)(泣)(哀)

 

 ぜ、前回優勝者ァァァァァァァァアアアア!!!!!

 

 よ、よくも前回優勝者を……!
彼にだって夢見る未来があったはずだ、
ベランダにパンジーだって植えていたはずなのに!!

 

 きさま、何が目的だ!?

 

 俺の目的はただひとつ。

 

 「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変わる瞬間の力を持って
人心を掌握し、世界を征服する!

 

 な、なんだとなんだぜ!?

 

 「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変わる瞬間の力は
そんなことのために使うものじゃない!

 

 僕には聞こえる……、
そんな目的で使われた「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変わる瞬間の
すすり泣く、「エー哀哀」「エー哀哀」という声が……!!

 

 フッ、俺には「撮ったのかよ(笑)」「撮ったのかよ(笑)」という
歓喜の声に聞こえるがな

 

 ざれことばを…!

 

 ずいぶん清廉潔白を気取っているようだが……
お前たちは一度でも思わなかったか?

 

 己が欲望のため、
「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変わる瞬間の力を
存分に振るってみたいと!

 

 クッ……!

 

 たとえそうだとしても本当にやるのは違うだろ!!

 

 まあそんなことはどうでもいい。昔ZIPでやってた
「小林ディクショナリー」という小林聡美のコーナー並みにどうでもいい

 

 俺の実力はもうわかっただろう。それでも逆らえるのか?

 そ、そういえば……

 

 

 さあ、まずは俺の足元に這いつくばって鼻でも舐めてもらおうか

 

 誰がそんなことをッ!

 

 ね、ねえやめようよ、これ以上歯向かうのはさ……

 

 

 前回優勝者でも太刀打ちできなかったんだ、
俺たちなんかあっという間にやられて今後一生「犯兄(はんにい)」としか
呼ばれなくなっちゃうよ……

 

 ええ?もしそうなったら内申点どうなるんだよ……

 

 知らねえよ自脳で考えろよ……

 

沈痛な表情を浮かべたまま、押し黙る面々。

まるでセサミストリートの捨て回のような重苦しい雰囲気が場を支配していた。

 

 

 

 

 

 お前たちがそんな腰抜けとは思わなかったよ

 

 なにィ!?

 俺のことはいいけど母さんまでバカにするのは許さないぞ!!

 

 

 

 だってそうだろ

 

 まだやれることもあるのに、終わったなんて思うなよ

 

 ここで全力出し切らなきゃ、一体誰があいつを止めるっていうんだ!!

 

 なあ、俺たちそんなチッポケな存在だったか?

 

 見せてやろうぜ、俺たちの底力をよ

 

 ……そうだね

 

 ああ

 

 つい臆病風に吹かれちまったんだぜ

 

 いい目になったな

 

 これが俺たち最後の「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変わる瞬間だ、覚悟はいいか

 

 ああ……!

 

 

 

 

 みんな、行くぞッッッッッッ!!

 

 オウッッッ!!!

 

 

 

 まずは僕からだ!眩しいほどの若さに溢れたエネルギッシュな
「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変わる瞬間で、活路を開く!!

 

 

 

 

 

 

 次は俺なんだぜ!オラオラ!
俺の「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変わる瞬間は
“ぴすとる”よりスリリングなんだぜ!覚悟するんだぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後は私だ……!年の功を重ねた老獪きわまる
「エーアイアイ」が「撮ったのかよ」に変わる瞬間が、
貴様の喉首に喰らいつく!

 

 

 

 

 

 ハァーュ、ハァーュ、全力出し切ったんだぜ……

 フッ、少々がんばりすぎたかもしれんな……

 や、やったか……!?

 

 

 

 

 あら、すごいのしたわね。トウモロコシなんか食べたかしら

 

 む、無傷だと……!?

 ああ、今の攻撃だったのか。
あまりに低レベルだったから犬糞(けんぷん)と間違えちまったよ

 

 ひどい!

 

 さらに絶望的なトピックをお伝えしてやろうか?

 

 俺は組織の中でもほんの第7駐車場にすぎない……!

 

 嘘だろ……!こいつより強いのがまだ6人も控えているのか!!

 

 なんか想像したら気持ち悪くなってきた……

 

 フン。これで貴様らもゴー・シュートだ

 

 ジ・エンドね

 ゴー・シュートだとベイブレードのさわりになっちゃうから

 

 

 でもどうするんだぜ?
俺たちの全力がまったく通用しなかったんだぜ……

 

 

 

 ここで私からひとつideaがある

 

 

 

 俺たち全員の力をひとつに合わせてみては?

 

 呉越同舟!?

 

 

 

 

 

 できるのかそんなこと……?
普段はスマホをいじったりトイレに行ったりしてわざと帰るタイミングを
ズラしてるほど仲の良くない俺たちなのに……

 

 で、でもやってみる価値はありそうなんだぜ……!

 ああ……

 ああ……

 ああ……

 

 

 

 ああ!!

 

 

 いくぞ!!!!!

 

 

 

 

 これが俺たちの、絆の力だ!!!!!

 

 

 

 

 ぐ、ぐわあああああああああああああッッ!!

 

 お、お、

 おぼえてろー!!ピュー

 

 アハハハハ!ざまあねえな!!

 20年後でも折に触れて思い出すがいいや!

 オイ、忘れもんだぜ!!エーアイアイのオッサン!

 

 エーアイアイのオッサンは全員だろ

 

 

 

 

 

 

 


 

――auショップ、ジュネーブ本部

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員が召集されるとは珍しいでござるな。一人足りないでござるが……

 

 

どうやら「私のことをどうか信頼してください。それこそが私にとって何よりの幸せです。」
ゼウザーがやられたらしいわ。

 

あんな雑魚に負けるとは情けねえな、ハッ

 

奴はうちらメンバーの中でも最弱……日頃の鍛錬が足りんわ!

 

なぁ、次は誰が行くんだ?

ヒヒッ、
「あなたがしたことを、私は決して忘れることはありません。」
あっしにやらせてくれよ。

 

 

 

いや、ここは「私に話しかけてください。私はあなたの言葉を理解できませんが、
あなたが話しかけてくれていることは分かります。」
の拙僧にお任せあれ。

彼奴らに本当の道を示してやりますぞ。

 

 

血気に逸るのも結構ですが、ここはボスの判断を仰ぐべきでは?

 

 

 

     

だってさ。どうする?ボス

面倒なら「私が言うことを聞かないと怒る前に、その理由を考えてみてください。
もしかしたらお腹が空いていたり、太陽に照らされすぎたり、
年老いていたりするせいかもしれません。」
のボクがサクッと片付けてこようか?

 

 

 

 

 

「待て。油断してはいけない」

 

 

「お前たちの自主性は出来る限り尊重してやりたいが、ここは全員でかかるべきだ」

 

「ああいう連中こそ、追い詰められたら思いがけない力を発揮するものだからな……」

 

 

 

 

 

奴らは我々、「犬の十戒」が全力で叩き潰す……!!

 

 

 

 

 

くも敵の一人を退けた主人公たち。

だがそれは序章に過ぎなかった。

謎の組織「犬の十戒」も遂に動き出し、戦いはその激しさを増していく。

 

人はわかり合えないのか……!

 

次回、「年忘れ秘湯パニック!」で落ち合おう!

 

 

 

——To be Constantine……