まずはこちらの書をご覧頂きたい。

 

 

「人生は栗拾い 痛みの先に美味さがある」――

 

なんと胸にしみる言葉だろうか。

素朴なあたたかみのある書体とともに、

見る人の心を勇気づけてくれる、多分そんな感じだ。

 

 

この素晴らしい作品を産み出したのは、

現在若い女性を中心に大変な人気を博している

新進気鋭の書道家であり詩人――

 

宇真央保 々似(うまおっぽ ぽにてる)先生、

その人である。

 

 

 

早速泣きそうですね。泣くな。

 

彼の生み出す書の数々は

木梨憲武のクックドゥの喰い方のごとく

心に不思議な感情を呼び起こすともっぱらうるさい。

 

 

さて喜ばしいことに今回、

先生に実際いくつか作品を書いていただく運びとなった。

 

 

 

もっと広く使えば?というのは素人の勘ぐりというわけか。

 

 

 

愛筆のチューニングも完璧ときたもんだ。

 

 

では早速、先生の珠玉の作品たちをご堪能いただこう。

ハンカチのご用意を、忘れずに――。

 

 


 

 

 

友情

 

 

 

 

 

 

 

 

郷愁

 

 

 

 

 

 

 

真実

 

 

 

 

 

 

 

聖夜

 

 

 

 

 

 

 

奇蹟

 

 

 

 

 

 

 

転生

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・?

 

あっ!!!

 

 

コラーーーーーーーーーーーッ!!!!!!

 

大変だ、先生の集中力はもはや枯渇の一途を辿りつつある。

なんとかやる気を取り戻してもらわねば。

 

仕方がない・・・。

 

私は予め用意していた一枚の紙を取り出して、先生に手渡す。

 

先生、どうぞこちらをご覧ください。

 

 

 

渡された皆勤賞を手にしたまま、唇を葉脈のように歪ませる先生。

それで笑っているらしい。

良かった、一時はどうなるかと思ったが。

 

祖母が年金から出してくれたお小遣いを交番の前でカツアゲされたり、

大学受験のために通った塾の講師が小学校時代の同級生だったりと

ロクな学生時代を送ってこなかった先生にとって、

それでも一日も休まなかったことは人生における唯一の支えになっているのだ。

 

 

では気を取り直して、再度制作に取り掛かってもらう。

 

野生

 

 

 

 

 

 

 

興味

 

 

 

 

 

 

 

狂熱

 

 

 

 

 

 

 

揶揄

 

 

 

 

 

 

 

堕落

 

 

 

 

 

 

 

擁護

 

 

 

 

 

 

 

計算

 

 

 

 

 

 

 


 

如何だっただろうか。

心を打つ名作の数々に、命の危機さえ感じたのではないか?

だが心配しなくてよい。そんな時は心臓より上を冷やせばいい。

 

 

 

さて、このまま帰らせてしまっては

我々の面目が立たないので先生には最後に、

「人生」

をテーマに一枚書いていただくことになった。

 

 

先生は「人生ねえ……ふーむ、なるほどなるほど」とでも

言いたげな表情で思案し……

 

 

突然その目をカッと見開いた!

 

 

そして筆先に墨をたっぷしひたすと、

 

 

半紙へ思い切り叩きつける!

 

 

これは……、名作が期待できそうだ!

 

閉塞感漂う昨今の日本社会、

彼の放つこの一枚が、大きな風穴を開けてくれることを

期待せずには居られない!

 

では、見せていただこう。

 

 

 

 

あなたにとって「人生」とは?

 

 

 

 

 

 

 

最悪かい

 

~fin~