はじめての工作
工作に挑戦するのは今回がはじめてだった。
中学生の頃、木材を加工してテーブルを作る授業があって、私は仕上げるのがクラスで一番遅かった。それからずっと工作に苦手意識がある。
パフェを生やすテーブルの仕組みは単純明快だ。
パフェを入れる透明の筒を用意し、筒と同じ大きさの穴をテーブルの天板に開け、筒と天板を接着する。
すごく簡単。ところが、いざ作るとなると大変だった。
まず板に穴を開ける方法が分からなかった。
電動ドリルとか使うのか? こわい。知らない電動器具を想像するだけで震えが止まらない。「なんか爆発しそう」という漠然とした思いがぬぐえない。
「すみません、ものすごい初心者なんですが、簡単に板に穴を開けるにはどういう器具を使ったら良いのでしょうか……?」
ホームセンターの店員さんをつかまえて正直に相談してみた。すると、たった300円で穴を開けてもらえることになった。
店員さんありがとう。あなたは神様だ。
神様に穴の寸法を伝えると、ふと疑問に思われたのだろう。板に下書きをしながらこうおっしゃった。
「ここに穴を開けて何に使うんですか?」
この穴からパフェが生えるんです。言えるわけがなかった。私は恥ずかしくて天に召されそうになった。
恥ずかしい思いもしたが、板にきれいな円が開いた。うれしい。
あとはテーブルの脚の代わりに透明の筒をくっつければ完成だ。板と一緒におすすめの強力な接着剤も買ったし、家に帰ったらちょうどAmazonから透明の筒が届いている頃だろう。
工作が楽しくなってきた。寒空の下、板をかついでスキップで帰った。
家に届いた透明な筒は驚くほど細かった。
直径16センチだと思っていたのに、16ミリだった。どう見積もってもこの筒にパフェは入らない。
ショックでまた天に召されそうになった。今日はよく昇天する日だ。
あまりに寸法が違いすぎて笑ってしまった。
あとどういうわけか送料が1300円もしたので、この筒にトータル2000円ぐらいかかっている。何も入らない筒に! 2000円!
ひと通り笑ったあと、少しだけ泣いて私は考えた。
だから、その筒を使って吹いた。吹いたらパフェが生えた。結果、よかったと思う。
それを見たヤスミノさんの時間は完全に停止してしまったけど。
そういえばパフェが生えたあの時、ヤスミノさんは何を思っていたのだろうか。
気になったのでチャットで聞いてみた。
「軽いパニックに陥ってました」
そうか、人はパニックに陥るとあんなに澄んだ湖のような瞳になるのだな。
あれはとてもきれいだったな。