こんにちは、オモコロ編集部です。
世の中には、劣悪な環境や条件での労働を強いるブラック企業というものが存在します。
・台風が来てるのに出勤しろと言われた
・給料が数カ月分も未払いだった
・翌日から急な転勤を命じられた
などなど、酷いエピソードは枚挙に暇がありません。
そんなブラック企業に警鐘を鳴らすべく、「存在しないブラック企業の社員となって架空のヤバいエピソード」を取り上げたいと思います。
それではよろしくお願いします。
存在しない人達の人物紹介
平山 秀一(ひらやま しゅういち):28歳。広告代理店の営業職。最近の悩みは薄毛。
田中 慎吾(たなか しんご):28歳。通信系のSE。ブルーベリージャムが好き。
佐野 優美(さの ゆうみ):27歳。金融系の総務。お酒を飲みながらYouTube観てる時が一番幸せ。
墓々鮫 韮未来(ぼぼさめ にらみらい):29歳。外資系勤め。青色発光ダイオードを発明した。
カンパ~~~イ!
「くぅぅぅ~~~!! これがなきゃやってられねえ!」
「あら、いい飲みっぷりねぇ」
「いや~、なんだかんだ言っても久しぶりだよな。このメンツで集まるの」
「みんな仕事忙しいもんね…」
「忙しいなんてもんじゃないわよ。忙獄(ぼうごく)よ」
「忙獄(ぼうごく)?!」
「忙獄(ぼうごく)の煉(れん)よ」
「忙獄(ぼうごく)の煉(れん)?!」
「実はウチの会社も最近かなりヤバくてさ……」
「どうした? お前が弱音吐くなんて珍しいな」
「仕事量が多いだけなら平気なんだけど、上層部の頭が固くて無駄な作業が多くて……」
「こないだなんてさ……」
「はぁ~~……。誰だよ、この書類フォーマット作った奴。EXCELの使い方わかってねえなぁ」
「テキスト入力する部分を、方眼紙で作る奴がいるかよ……。ったく、めんどくせえなあ」
~30分後~
「部長、書類のご確認お願いします」
「ん~? どれどれ……。むむむっ!」
「何だ!! この文字は!! 貴様、まさかパソコンで文字を打ったんじゃあるまいな?!」
「は? ええ、そうですが…(書類フォーマットが糞だったから打つのも大変だったけど)」
「貴様、舐めとるのかぁ?!?!」
「え?!」
「心がこもっとらん!!!!」
「手書きしろってことですか…? でも、書類の手書きは非効率なので辞めるよう、こないだ通達があったはず…」
「んなことはわかっとる!!」
「つまり、手書きの文字をスキャンしてパソコンに取り込んで印字しろということだろ?!」
「は……?」
「頭を使え! 頭を!!!」
「………」
「何やらされてんだろ…、俺……」
「マジで意味がわからん…」
「無駄な作業すぎて頭おかしくなりそう…」
「できましたよ、部長」
「どれどれ……。むむむむむっ!!!」
「ここの文字が罫線にかぶっとる!!!!!」
「やりなお~~~~~~し!!!!」
「なんだかんだでその後3回やり直しさせられたよ……。ただでさえ繁忙期なのに……」
「うわっ…。マジ最悪……」
「いるわよね…。パソコンには温かみがない、とか言ってくるタイプ…」
「いや、そんなのまだマシだぜ……」
「ウチのとこの上司なんてさ……」
俺が得意先に送るメールを打ってたら……
「キミ」
「な、なんでしょう…」
「まさかとは思うけど、メールマナーに違反するようなことしてないよね?」
「も、もちろんしてませんよ。以前、部長が仰っていたように、挨拶文のコピペもやめましたし……」
「ほう、感心感心…」
「で、組み立てたんだろうね?」
「は? 組み立て……?」
「バカもん!!!!!! こんなパソコンじゃ相手に誠意が伝わらん、とワシが言った意味がわからんのか!!!!」
「手作業の温かみ! それが最も大切なことだろうが!!」
「て、手作業と言われましても……」
「部長、お言葉ですが、今の時代パソコン使わないと仕事になりませんよ…」
「だから、そのパソコンを毎回自作して組み立てろ、と言うとるんじゃい!!!!」
「……は?」
「メール1通送るのに毎回パソコンを組み立てる。こうすれば無機質なパソコンにも手作業の温かみがこもるっちゅうもんだろ!!」
「ったく、察しの悪い。指示待ち人間はワシの部下にいらんぞ!!」
「………」
以来、俺はメール1通送ってはパソコンを壊し、また組み立てるを繰り返している。
他部署の人間からは『IT賽の河原』だと言われてるらしい……。
「ああ~~~~!!! クソ!!!!!」
「気にしなさんなて」
「気にするだろ! 先月なんて残業400時間超えだぜ……」
「なによ、残業代つくだけマシじゃない」
「残業で言えば私のところはひどいわよ……」
「お先失礼しま~~す」
ある日、私が定時で帰ろうとしたら……
「貴様、何しとる~~!!」
「え? 定時なので、今日はお先に失礼しようかなと……」
「貴様は会社を愚弄してるのか?! それとも社会を侮辱してるのか?!」
「え? え? だって、働き方改革で残業を減らすように通達もありましたし……」
「周りを見てみろ!!」
「な、 なにごと?!」
「『残業を減らせ』というのは、定時後は『精霊となって働け』という意味の通達に決まっとるだろうが!!」
「せ、精霊?」
「精霊の仮面をかぶれば、人間の意思は消える! つまり働いてるのは精霊になるので、残業扱いにはならない! 常識だろ!!」
「……ということは、残業代は?」
「出るわけなかろうが!! 貴様は精霊を金で買おうというのか?!?! 不届き者め!!!」
「おっと、いかんいかん。ワシもそろそろ精霊にならんとな」
「さあ、お前も精霊となり仕事に戻れ。以後は私語もトイレも禁止だ。我々は精霊だからな」
「………」
こうして私の会社の労働環境はさらに劣悪に、そして不気味になったのでした……。
「かぁ~~~! やってられないわよ、ホントに!」
「それは大変だったね…」
「大変よ! 精霊の仮面って可愛いデザインの少ないし!」
「ん…?」
「これ、私が使ってる精霊の仮面なんだけど」
「必死で探しても、全然いいのなくって!」
「精霊の仮面の中では、これはまだ可愛い方かなぁと思ってるんだけど」
「どう?」
「あ、うん…」
「……いいんじゃないかな?」
「でしょ?! いいよね?」
「ちょっとアンタたち、さっきから聞いてりゃねえ!」
「久しぶりに会ったのに会社の愚痴ばっかじゃない!」
「確かに…」
「ごめん、なんか俺からそういう流れになっちゃって…」
「それにね、愚痴の内容も低レベルなのよ!」
「私のところなんて、本当にもうひどいんだから……」
ある日、私が残業してたらね……
「キミ、ちょっとこっちに来なさい」
もうこの時点で嫌な予感がしたわ……
「これ、私の母親の似顔絵なんだが」
「は、はあ」
「髪の毛が上手く描けなくてね」
「そ、そうなんですか」
「このピスタチオを使って、母の髪を描いてくれないか?」
「先は長いわね……」
「こんな感じでいいのかしら?」
「よしよし、あとちょっと……」
「あ、キミキミ。明日の朝までにそれを8000枚頼むよ」
「ききききき…………」
「きああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
学生の時は思わなかったわよね……。
まさか自分がピスタチオマザーハラスメントの被害者になるだなんてさ……。
「何の話?」
「ごめん、ちょっとわからなかった」
「ピスタチオマザーハラスメントって何?」
「フッ、わからない方が幸せよね…」