いろんな人のいろんな体験談が載ってる本が好き
どれくらい好きかというと2冊出してるくらい好き

作家や有名人に限らない、とにかくいろんな人から集めた小さなエピソードがいっぱい載ってる本が好きだ。なので、そういう本を紹介する記事を書く。
オモコロ読者向けに説明するとナ月の記事みたいなジャンルの本、というかナ月の記事がこの辺からバリバリ影響を受けている。
ナショナル・ストーリー・プロジェクト
アメリカのラジオ番組に投稿されてきたリスナーからのエピソードをまとめた本。テーマは特に絞られていないが、次のような呼びかけで募集されている。
物語は事実でなければならず、短くないといけませんが、内容やスタイルに関しては何ら制限はありません。私が何より惹かれるのは、世界とはこういうものだという私たちの予想をくつがえす物語であり、私たちの家族の歴史のなか、私たちの心や体、私たちの魂のなかで働いている神秘にして知りがたいさまざまな力を明かしてくれる逸話なのです。言いかえれば、作り話のように聞こえる実話。大きな事柄でもいいし小さな事柄でもいいし、悲劇的な話、喜劇的な話、とにかく紙に書きつけたいという気になるほど大切に思えた体験なら何でもいいのです。いままで物語なんて一度も書いたことがなくても心配は要りません。人はみな、面白い話をいくつか知っているものなのですから。
新潮文庫 ポールオースター編 ナショナル・ストーリー・プロジェクト① P12~13より
要するに「なんか面白いあなたの実話送ってくれ」という呼びかけだ。これがめちゃめちゃ面白い。
一つ目が「道端にいたニワトリが知らん人の家のドアをノックして中に入って行ったのを見た」というなんとも言えない話からはじまる。あまりにも俺好みすぎる。
「行方不明になっていた婆ちゃんの食器がフリマにあった話」のようなほのぼのしたやつから「戦時中あの手この手で日本兵から大事な時計を隠し続けた話」のようなハードなやつまでいろんな人のいろんな話がしこたま載っている。
いろんな人のいろんな話は身近でイメージできるようなのも良いけどこれはアメリカならではの「全然身近じゃなさ」が魅力。
Web文芸誌「マトグロッソ」で募集されていたものをまとめた本で、さっきのナショナル・ストーリー・プロジェクトの日本版と銘打っている。めっちゃ面白い。
本家は特に募集テーマがなかったのに対してこちらはある程度お題が用意されている。これがかなり絶妙なお題で良い。
・犬と猫の話
・おばあさんの話
・マジックナンバーの話
・ばったり会った話
・戻ってくるはずがないのに、戻ってきたものの話
・そっくりな人の話
・変な機械の話
・空に浮かんでいたものの話
・予知した話
・あとからぞっとした話
お題を見るだけで「ああ、なんか俺にもあった気がする」と思える。
本家のナショナル・ストーリー・プロジェクトはラジオで朗読するための文だったのである程度の長さがあったのに対して、こちらは本当に短いエピソードがちょいちょいあるのも特徴。「子供の頃たくさんの野良犬と遊んでいた話」や「食べたバーガーが不味かった話」など、小粒ながら印象深い話が多い。
あとこっちは日本版なので情景がイメージできてかなり読みやすい。
死ぬかと思った
DPZの林雄司さんが個人サイト「Webやぎの目」でやっていた企画の書籍。ナ月が中学生くらいの時に父親から読んでみろと手渡されてめちゃめちゃハマった本でもある。めちゃめちゃ人気で続刊やコミカライズがドサドサあるので死ぬほど読める。
タイトルの通り色々な人の「死ぬかと思った」話がドッサリ載っている本。
精神的に恥ずかしくて死ぬかと思った話はまだ笑いながら読めるが普通に肉体的に死にかけた話もいっぱいあってヒョエ〜〜〜〜ってなる。
「死ぬかと思った」というテーマ1つにしても「彼氏のチンポに猫が噛み付いた話」みたいなのから「かんしゃく玉を口の中で爆発させた話」「目の前でセスナ機が落ちた話」のような壮絶なものまで幅広い。「低レベルな臨死体験集」というキャッチコピーだが、全然そんなことはない。レベル高い。
うんこ系の話がやたらと多い。みんなうんこ漏らしてる。
こっちは田中圭一先生によるエッチなエピソード中心のコミカライズ。
死にたい
これも個人サイト「死にたい」の書籍化。
タイトル通り「死にたい」と思ったエピソード集でどれも「死にたい」で締めくくられている。タイトルからヘビーな内容を想像するかもしれないが、どちらかといえば表紙やサブタイトルのイメージでかなりライトな死にたさが集められている。
各死にたさに編者による一言コメントがついていたり、編者自身が死にたいエピソードをドサドサ書き下ろしているのも特徴。
今読むとかなり「あの頃のインターネット」の匂いがして懐かしくなる本。
個人ルール大法廷
さっきから2000年代前半のインターネット由来の本を連発している。好きなので。
この本はメールマガジン「ウィークリーまぐまぐ」内の投稿コーナーを書籍化したもの。「世界一どうでもいい日本の争点87」という副題の通り、本当にどうでもいいお題に対して読者の投稿を募り「いろんな意見があるなあ」と思いながら読む本。エピソード集とかでもない。強いて言うなら、意見集か。
例えば「遊びのローカルルール」「変な校則について」「財布にいくら入れておくべきか」「勝負下着の定義」など。そんなの人それぞれじゃろがいと言いたくなるような本当にどうでもいいお題に対して「自分はこうです」という意見が集まっている。どれも「そんなの人それぞれ」ではあるが実際にその「人それぞれ」の内容を並べて見ることってあまりないので面白い。
まだXどころかツイッターすらなかった頃の本だが、今読み返していて「ツイッターみたいな本だな」と思った(褒めです)。
山で暮らす人々から聞いた山にまつわる怪奇体験談集。続刊も出ているし漫画化や映像化もされている。
なんだかわからないものに遭遇した話やなんだかわからない声を聞いた話。なにしろ体験談なのでホラー映画やホラー小説のように終わりにオチがついてスッキリする話が全然ない。最高。こういうホラー大好き。
大真面目に「狐や狸に化かされた」といった話がいっぱい出てくるのも最高。「山仕事が斧からチェーンソーになったので最近のたぬきはチェーンソーの音を真似する」という話がかなり印象深い。
ほぼ日の怪談。
「ほぼ日刊イトイ新聞」に投稿された怪談を集めた本。
山怪同様どれも誰かの体験談なので、具体的にイメージできる身近な怖さなのがいい。それぞれのエピソードがかなり短くて読みやすいのも嬉しい。
「タタミの隙間からピンク色のゴム手袋みたいな手が生えてきたので握手をした」みたいな、突拍子もなさすぎて体験しないと書きようがないような変な怪談が読めるのが読者投稿怪談の醍醐味だと思う。読者投稿怪談大好き。
あと装丁がかっこいいので手に取ってみてほしい。
読もう
今回はなんとなく活字に絞ったけど漫画だと「やれたかも委員会」とかもいいよね……
オモコロだと室木おすしさんの「たまに取り出せる褒め」とかね……
いろんな人のいろんな体験談を読みまくりたい。こういう本がいっぱい出ていっぱい売れますように。
最後にナ月が出してる本も載せておくのでこういうのが好きな人はあわせて買ってください。
いろんな人の精通の話
いろんな人が恋しかけた話

ナ月
かまど
みくのしん


ブロス編集部







