それは、つまらないものの代表格とされるもの。

どこまでいっても主観でしかない夢の話は、確かに他人からすれば聞くに堪えないかもしれません。

でも、でも、でもですよ。ちょっと想像してみてください。

 

ただでさえつまらないとされる夢の話が、「嘘」だったとしたら──?

 

 

どうも、彩雲と申します。(これは道端に咲いていた名も知らぬ花です。私の写真よりどんなに価値があるか)

というわけで「嘘の夢の話」です。改めて説明するまでもないかもしれませんが、嘘の夢の話とは「嘘」の「夢の話」のことで、実際には見てもいない夢について語るということです。

私はかねてより嘘の夢の話の無意味さに注目していて、過去にオモコロでそれに関する記事を書いたこともあります。でもそれ以前から個人的に嘘の夢の話を書いていて、noteに1年間毎日嘘の夢の話を投稿したこともありました。何の勝算があって1年も続けたのか思い出せませんが、当時の私はそれほど嘘の夢の話に可能性を感じていたのでしょう。

 

それで最近になって、そのときの嘘の夢の話を久しぶりに読み返してみたのですが……これが意外と悪くなかったんですよね。恥ずかしながら「このまま埋もれさせておくのはもったいない」とさえ思ってしまいました。もっともこれは、当時の自分に日の目を見せてやりたいという功名心が抑えられなくなっているだけかもしれません。でも、だとしてもいいじゃないですか。私だって仙人じゃないんだから、そんな夜もありますよ。

というわけで今回は、私が書き溜めた1年分の嘘の夢の話から、個人的に好きなものを10個選んでお届けしたいと思います。そして願わくば、みなさんの日々が銀色の微笑みであふれますように。

 

2020年9月7日の嘘の夢の話

一人でキャンプに行く。キャンプ場の近くの売店で買い物をしてテントに戻ってくると、私のテントの中で知らない男女がイチャイチャしている。私は反射的に謝ってテントから出て行くが、それが自分のテントであることを思い出し二人に抗議する。しかし彼らは私の言うことを意に介さず、それどころかこちらを馬鹿にするようなジェスチャー(腰を振りながらスイカを食べる真似をする)をしてきたので、頭に来てテントを燃やすことにする。広場でキャンプファイヤー用の薪を持ってきてテントの周りにくべ、チャッカマンで火を点ける。炎に呑まれていくテントを見ていると大変なことをしてしまったという気持ちが湧き上がってくるが、消火を行うわけでもなくテントが燃えていくのをただ眺めている。

火が燃え尽きてから焼け跡を探ると、どういうわけかそこに人間の痕跡はなく、金属片がいくつか散らばっているだけである。私は罪滅ぼしのつもりで、その金属片を拾い集めて近くのブロック塀の上に綺麗に並べようとする。しかし何回やっても向きがずれていたり間隔が均等でなかったりして、調整をしているうちに夜になってしまう。

 

何度やってもうまく金属片を並べられないもどかしさが夢っぽくていいですね。「腰を振りながらスイカを食べる真似をする」ジェスチャーも人をバカにする態度として新しくて気に入っています。

 

2020年9月9日の嘘の夢の話

黄色いランドセルを背負った男の子と一緒に大きな橋を渡っている。男の子は福助のような顔をしていて、妙に歩幅が狭くちょこちょこ歩くのでそれに合わせてゆっくり歩かなければならない。彼はこちらの質問は無視するくせに、私の経歴や交友関係についてしつこく聞いてくるのでなんとなく嫌な子供だなと思う。

にわかに天気が悪くなり、激しい雨が降り出す。急いで橋を渡ろうと男の子の腕を掴むと、まるで粘土を握ったようなぐにゃっとした感触があり、私はぎょっとして彼をその場に置き去りにし、一人で橋のたもとにある建物に逃げ込んでしまう。そこの職員に息も切れ切れに「変な子供が……」と報告して橋の方を指差すと、男の子は橋の真ん中あたりで立ち止まり、ランドセルを下に置いてその中に頭から入ろうとしている。私はその光景が凄まじくおぞましいものに思え、パニックになりながら職員に助けを求める。職員は私を落ち着かせようとして、Mr.Lonelyを歌ってくれる。

 

悪夢って目が覚めてから思い出すと何が怖かったのかわからないこともありますが、その感じをうまく表現できたと思います。ただ、最後の歌はMr.Lonelyではなかったかも。今の私ならカントリーロードにします。

 

2020年10月27日の嘘の夢の話

フェリーに乗って夜の海を渡っている。窓の外は暗くてほぼ何も見えないが、灯台の光に照らされる一瞬だけ辺りの様子を窺うことができ、海面に何かがたくさん浮かんでいるのがわかる。よく見ると、それは無数の枕である。それが枕だとわかった瞬間、私は「自分の枕を海に落としてしまった」と思い、拾いに行くことにする。しかしデッキに出る扉はすでに施錠されており、ドアノブをガチャガチャ回してどうにか開かないか確かめる。そうしていると警備員がやって来て注意され、ようやくあの枕が自分のものであるわけがないと気付く。

怖くなって、なるべく海の方を見ないようにしながら自分の部屋に戻る。窓のブラインドを閉め、もう寝ようとベッドに潜り込むと、本当に枕がなくなっている。どうしようか迷った末、ブラインドの隙間から外を覗き見る。だが灯台の光はもう届いてこず、海は今度こそ漆黒の闇に包まれている。私は何も見えなかったことにかえって安心し、タオルを折って枕代わりにして眠る。

 

これは全「嘘の夢の話」の中でもかなりうまく書けたと思うものの一つです。夢というものの脈絡のなさやざらついた質感が、嘘にしてはいい感じに再現できていると思います。

 

2020年12月30日の嘘の夢の話

池袋にあるビルの一室で天文学に関する講義を受けている。天文学のことなど何も知らないが、講師の人の説明がわかりやすいので楽しんで話を聞くことができる。そんな中、講師が「それでは持ってきたものを出してください」と言う。何のことかわからず周りを見回すと、他の人たちはみんなカバンからビスケットを取り出して机の上に並べている。どうやらそれを使って何かの実験をするらしい。私はビスケットなど持っていないので、隣の席の人にお願いして1枚譲ってもらうが直後にそれを割ってしまい、気まずくなってトイレに行くふりをして部屋から抜け出す。

私は扉の前に立って部屋に戻るタイミングを窺うが、なかなか中に入れない。その間、扉の向こうからは笑い声や何かに驚く声などが絶えず聞こえてきて、いっそう疎外感を掻き立てられる。もう帰ってしまおうかと考えていると、扉が開いて女性が出てくる。彼女は私にか、それとも部屋の中の人に向けてかわからないが、大声で「今が一番楽しいのに!」と言って階段を下りていく。

 

シチュエーションとしては地味ながらどこか趣深く、なぜかずっと覚えている記憶っぽい手触りのある話です。ともすれば本当にあった出来事のような気さえしてきますが、嘘の夢の話を実際の記憶と混同するようになったらいよいよ終わりなので気をつけたいです。

 

2021年1月15日の嘘の夢の話

箱いっぱいに詰まったスズメをラップにくるんでは、ベルトコンベアに載せていく。スズメはどこへ運ばれるでもなく、ただコンベアの上をぐるりと一周して私のところに戻ってくる。そのため、さっきラップで包んだスズメが戻ってくる頃には窒息死して動かなくなっている。こんなことをしていてはダメだとわかっているが、酒に酔っているように頭がぼんやりして思考が働かない。

やがて箱が空になったので倉庫に向かう。倉庫は半地下のような場所にあって、光源は天窓から差し込む日光だけである。倉庫じゅうを探しても新しい箱は見つからず、もうあんなことをしなくてもいいんだと安心する。倉庫を出ようとすると、天窓からムチのようなものが垂れ下がっている。それは弧を描いてゆらゆら揺れており、そのうちに途中から千切れて切れ端が倉庫の床に落ちる。私はそれを踏まないようにして倉庫から出るが、そんな自分が情けなくなり、戻ってその切れ端をめちゃくちゃに踏み潰す。

 

ラストのムチの切れ端を踏み潰すところにカタルシスが感じられて好きです。それ以前のスズメを殺すところとかはなんとなく「逃れられない悲しい使命」的なニュアンスを感じるのですが、最後に切れ端を踏み潰すことで、それに対する逆襲を想起させるというか。アツい展開です。

 

2021年2月8日の嘘の夢の話

ビョークと大きなお屋敷でかくれんぼをしている。私が鬼なので、壁に顔を伏せ10数えてから振り向くと、そこには家の中なのにポストが立っている。本物かどうか観察しようとして、これが時間稼ぎのために仕掛けられた罠だと気づく。ビョークめ、と思いながら探索を開始する。

広い屋敷内を歩き回るにつれ、私はこの屋敷の中に自分やビョークとは別の何者かがいることを直感する。しかもその人物は、明確な悪意を持って私たちを付け狙っているようだ。こうなってくるとかくれんぼどころではないので、携帯電話を使ってビョークと合流し、二人でここからの脱出を図る。屋敷はきわめて複雑な造りでなかなか出口が見つからないが、なんとか勝手口らしき扉を見つけることに成功する。しかし、私が先に立って扉を開けると、その一歩先は地面が見えないほど高く切り立った崖になっている。あまりのことに一瞬で扉を閉めて振り向くと、私はよほどひどい顔をしていたらしく、ビョークに「救急車呼ぶ?」と聞かれてしまった。

 

嘘の夢の話に実在の有名人の名前を出すと出落ちっぽくなってしまう気がして避けていたのですが、これは最後までビョークの存在が活きているのが良いですね。ビョークに「救急車呼ぶ?」と聞かれるのは今読んでも普通に面白いと思います。

 

2021年2月18日の嘘の夢の話

病院で診察を受けた後、いつも利用していた調剤薬局が移転したことを知る。地図を見て移転先に向かうとそこは空き地で、古い電車の車両が打ち捨てられている。電車の中は大量のガラクタであふれ返っていて、この中から自分で薬を見つけ出さなければならないらしい。考えただけで骨の折れる作業だが、観念して探し始める。

ところが、意外にも薬はすぐに見つかる。網棚の上に救急箱が置いてあり、その中に普通に入っていたのだ。早く見つけられて安心した一方、この宝探し的なイベントを満喫したい気持ちもなくはなかったので少し残念でもある。外に出ると外国人の少年が空き地にいて、「ここの薬、もっとわかりづらい所に隠してくれればいいのにね」と話しかけてくる。その通りだと思うし、彼が見ず知らずの私にそうやって話しかけてくれたことも嬉しかったのだが、突然のことに面食らって「あ、そう」みたいな冷たい反応を返してしまう。

 

薬がすぐ見つかるという意外性、そして外国人少年との会話における心の機微の描写が気に入っています。なぜこんな心の動きをわざわざ書いたのかわかりませんが、嘘の夢の話のおかげでこの描写を引き出せたと思うとなんだか嬉しいです。

 

2021年5月2日の嘘の夢の話

クラスのガキ大将的なポジションだった子と校庭で遊んでいる。現実では私は彼にいじめられてばかりだったが、夢の中では普通の友達同士のように気兼ねなく遊ぶことができる。

私たちは追いかけっこをしているうちに、一軒の小さなイタリアンレストランにたどり着く。こんな場所に子供だけで入っていいのだろうかと思うが、彼はお構いなしに入店して奥の席を陣取る。私も恐る恐る彼について行き、その店のメニューの中で一番安い牛乳を注文する。

ふと彼の方を見ると、彼はいつになく真面目な表情でこちらを見つめている。「お前と初めて会った時も、こういう店に来たよな」と彼は言う。しかし私は過去に彼とレストランに来たことなど一度もない。以降も彼は思い出話らしいことを色々話してくるが、どれも身に覚えのないものである。何かがおかしいと思って周囲を見回すと、いつの間に私の隣にでかいゴールデンレトリバーが座っている。彼はずっと、私ではなく犬に向かって話していたのだ。私は途端に気恥ずかしくなって退席しようとするが、金縛りにあったように体が動かず、うっとりとした顔で犬に語りかける彼を延々眺める羽目になる。

 

子どもの頃の淡い記憶に思いを馳せているような、感傷的な気持ちになる話です。不思議なことに、私はこのイタリアンレストランのテーブルの感じや壁の色を「思い出せる」のです。さっきも似たようなことを言いましたが、嘘の夢の話を書き続けたという記憶やその1つ1つの内容が、本物の思い出とすり替わろうとしているのかもしれません。自分が老人になる頃には、いよいよ「乗っ取られて」いるんじゃないかと心配です。

 

2021年5月20日の嘘の夢の話

何人かの人たちと一緒に、棺桶のような大きくて縦長の木箱を運んでいる。辺りは夕日に包まれていて何もかもがオレンジ色に見える。私は一団の最後尾にいるが、他の人たちの姿は逆光でよく見えない。

私たちの中に口を開く者はいないが、空気が沈んでいるわけではなく、大きな仕事を成し遂げた後の達成感と爽やかな疲労を誰もが噛み締めているのがわかる。私は、一体我々は何をしたのだろうと考える。今運んでいる木箱が関わっていることは間違いないが、それ以外のことは思い出せない。でも確かに私たちは、偉大で有意義で、いつかは誰かが必ずやらなければならないことをやったのだ。

突然、誰かが「あっ」と声を上げる。見ると、道の左側に貯水池があり、その中央あたりに人影がある。私は、あれは河童だと思う。私たちは河童を凝視し続け、やがて貯水池の横を通り過ぎてからもしばらく同じ方向を見つめていた。

 

どちらかといえば悪夢寄りの内容が多い嘘の夢の話で、これは珍しく前向きな感じのシチュエーション。それでいていかにも夢っぽい大げさな喜びではなく、しみじみした充足感を描いているところに嘘の夢の話を書くセンスが養われてきたことがわかります。終わり方の余韻も気持ちいいです。

 

2021年6月15日の嘘の夢の話

アパートの隣室に住んでいる催眠術師に誘われ、二人で酒を飲むことになる。催眠術師は窓から顔を出し、外の通りを歩いている人を次々と催眠にかけていく。催眠をかけられた人たちは顔が大きく膨らみ、そのまま風船のように空へ飛んでいってしまう。私はその芸当に感動し、しきりに褒めたたえる。

そんな中母からLINEがあり、見るとその催眠術師は危険だからすぐに逃げろとある。そう言われると確かに危ない気がしてきて、コンビニに酒を買い足しに行くと言って部屋から抜け出す。しかし、コンビニまで行くとそこは完全な更地になっている。私は催眠術師の力に戦慄し、近くに住んでいる幼なじみの家に匿わせてもらう。突然の訪問にもかかわらず幼なじみとその家族は私を歓迎してくれ、晩ご飯もちょっと豪華なものを作ってくれるという。ご飯ができるまでの間、私と幼なじみはスマブラをして待つことにする。こうしていると小学生に戻ったみたいだな、と思う。

 

前半と後半のギャップが良いです。嘘の夢の話を読み返していると、こういう「危険な状況に追い込まれるが、結局何事もなく済む」という展開のものが散見されたのですが、改めて考えるとこれは私の弱さの表れのような気もします。嘘の夢の中でさえ、私はひどい目に遭いたくないのです。でもその弱さが……「味」、ですよね?

 


 

以上、私の好きな「嘘の夢の話」10選でした。noteにはまだまだ嘘の夢の話がありますが、それを読んでほしいとまでは言いませんが、私がこういうことをしていたと知ってもらいたかったのです。嘘の夢の話を書き続けて、それを最後まで誰にも言わずにいられたらさぞクールだったでしょうね。でもそういうのは諦めました。今の私にはみなさんのほうが大切です。私の話を聞いてくれてありがとう。今後ともよろしくお願いします。