みなさんは、山崎製パンが販売している「焼菓子ミックス」をご存知ですか?

 

焼菓子ミックスは、チョコまん・月餅・里見の郷(黄身あんのまんじゅう)・桃山・栗まんという5つの和菓子がセットになった商品。和菓子欲を手軽に満たせるので、よくスーパーで買って食べています。

……ですが最近、焼菓子ミックスに対する向き合い方がマンネリ化してきたように思います。というのも、食べる順番が毎回同じだということに気づいたのです。

 

僕が焼菓子ミックスを食べるときの順番は、決まって「チョコまん→里見の郷→栗まん→月餅→桃山」です。意識してこの順で食べようとしているわけではないのに、気づくといつもこうなっています。まあこれは単に好きな順でもあるので、自然にこうなるのは当然といえば当然なのですが、それにしても毎回順序に一切の変化がなく、まるで決まり事のようにこの順番で食べてしまうのです。

別にそれが悪いわけではありませんが、順番が決まっているせいで焼菓子ミックスを食べるのが一種の作業じみたルーティンになりつつあるのもまた事実。より楽しむなら、たまには変化をつけてしかるべきでしょう。また、いつもとは違う順番で食べることで、個々のお菓子に対する評価も変わってくるかもしれません。というわけで今回は、焼菓子ミックスを完全ランダムな順番で食べてみたいと思います!

 

使用するのは、こちらの「焼菓子ミックスランダムボックス」

 

この箱の中に焼菓子ミックスを入れ、引いた順に食べていこうという寸法です。ではさっそく1個目に参りましょう!

 

いつもなら最初はチョコまんですが、今回は一体何が出るか……

 

 

え??

入れた覚えのない紙が出てきました。どういうこと?

 

「5月6日 火曜日 雨」……

もしやこれは、誰かが書いた日記の1ページでしょうか。なぜそんなものがここに……?

 

5月6日 火曜日 雨

ゴールデンウィークも最終日だが、天気はあいにくの雨。特に予定もないのでぼんやりして過ごす。だがせっかくの休日、何もしないのはもったいない気がしてきて、家で映画でも観ることにした。取りうる選択肢は次の2つである。

1つは、サブスクで映画を観るか。

もう1つは、近所のゲオにDVDを借りに行くか。

正直、どちらも全然有りだ。気楽さでいえばサブスクだが、ゲオに行くのも別に億劫ではない。歩いて10分もかからないし、どうせちょっとした買い物には行くつもりなのでそのついでに寄ればいい。ゲオならサブスクに入っていない作品も借り放題だ。いやでも、まずはサブスクに観たい作品があるかどうか確認して……などと考えているうち、肝心なことを思い出した。

外付けDVDドライブが壊れている。

うちにはテレビやDVDプレイヤーがないので、DVDはパソコンに外付けのドライブをつないで見ることになる。しかしちょっと前からドライブの調子が悪く、ディスクを読み取ってくれないことを思い出したのだった。だからゲオでDVDを借りてきても観ることができない。であれば必然、サブスクで映画を観るしかない。こうなったとき、どうしてだろう、私ははっきり「嬉しい」と感じたのである。

 

なぜ嬉しかったのか考えてみると、ぱっと思いつく理由は「選ばなくてもよくなったから」だろう。何かを決断するというのは喜びであると同時に重圧でもある。サブスクで映画を観るかDVDを借りるかという、心底どうでもいいような事柄にさえ選択のプレッシャーは発生するらしい。それをひとつ免れることができたから、私は嬉しいと感じたのかもしれない。

あるいは、私は本当はゲオに行きたくなかったという可能性もある。DVDを借りに行くのは苦ではないのだが、問題は返しに行くときのことだ。DVDを借りに行くのは、無数の作品群の中から面白そうな映画を探す楽しい発掘作業である。しかしDVDを返しに行くのはただ義務を果たしているだけで、そこに喜びはない。思い返してみると、今までも借りたDVDをゲオに返しに行くときは足取りが重かったような気がする。知らず知らずのうちに返却時のことまで想像していたから、ゲオに行かずに済んだことを嬉しく思ったのかもしれない。

だが、これらの説明は的外れではないにしろ、いまひとつ本質を突いてはいないように思える。私が嬉しいと感じた本当の理由、それはこの一連の出来事が疑いようもなく「自然な流れ」だったからではないだろうか。

 

「サブスクとDVD、どちらで映画を観るか迷う」→「DVDドライブが壊れていることを思い出す」→「ならサブスクで観る」という判断は、人としてごく自然な、当然のものである。何ひとつあるべき因果に反していないし、誰かに咎められる心配もない。そんな、文句なしの自然さの中に身を置くことができたという安心感が、私の感じた嬉しさの正体ではないかと思う。

何をそんな当たり前のことで感極まってるんだ、と思われるかもしれない。だが、私にとってはまさしく「当たり前」こそが感動に値するのだ。私は「自分は人より劣っている」「人にできることが自分にはできない」というコンプレックスを強く抱えた人間である。だからこそ、当たり前で自然な振る舞いができて嬉しかった。たとえそれがどんなにささやかな内容だとしても。

そして私は、みんなはこういう「自然なこと」を日々意識せずに繰り返していると知っている。その集積が、いわゆる人生だということも知っている。私も人生を持っているはずだが、みんなのそれとは全くの別物だと感じることがある。でも今回のことを通して、みんなが生きている人生を少しだけ体験することができた。自然なことをするというのはとても気分が良く、誇らしい気持ちになるものだね。みんなが私のような人間をバカにするのもわかる。だから私はあなたを責めないし、今までのことも全て水に流そう。その代わり、私をまたそっちに連れて行ってほしい。そっちの世界の豊かさや美しさを味わわせてほしい。だってもう、こっちはほんとにうんざりなんだ。

結局、映画は観なかった。晩飯にマクドナルドを食べたら全てがどうでもよくなってしまったから。

 

 

はえ〜……

世の中、いろんなことを考えてる人がいるもんですね……

 

それでは気を取り直して、焼菓子ミックスを食べる順番を決めていきましょう! 一発目は何が出るかな?

 

……ん?

 

あれ!?

 

全部食べられてる……