恐ろしいことに、2023年が半分すぎ去ろうとしております(速度で表現すると↑のような感じです)。

ということで、今月はバーグハンバーグバーグ社内の人々に「上半期に買って、読んで、見て、食べて、良かったモノ」を聞いてみたいと思います。

 

今週は、「見て良かった映画」!

 

 

ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り

ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り

【おすすめ人:ダ・ヴィンチ・恐山】


TRPGの古典「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の映画化。ザ・王道のファンタジー世界の冒険を正面からやってくれてかなり楽しかったです。子どもの頃に洋画劇場で何度も観て細かいセリフまで覚えちゃってるような感触のある「新定番ファンタジー」です。

全体的にコメディ調なので気楽に見られる一方、キャラクターが抱えている劣等感への向き合い方はかなり丁寧で現代的なのも良かった。ちょっとした小ネタに至るまで練りに練ったアイデアが満載なので、ソフト化されたらみんなでワイワイ言いながら観るのもいいと思います。

あと、ちょっとしか出ない死体の吹き替えがやたら豪華でした(神谷浩史・森川智之・津田健次郎・諏訪部順一)。

 

 

THE FIRST SLAM DUNK

THE FIRST SLUM DUNK

【おすすめ人:山口】

「3Dか〜どうなの〜?」と思ってたけど、マジでよかったです。なんなら過去イチよかった映画かも。特に試合終了直前の演出、まだアニメ映画にこんな表現のポテンシャル残ってるんだ、と腰抜かしました。

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ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME3

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME3

【おすすめ人:加藤】

ガーディアンズシリーズの最後ということで、いつものハイテンションより割と落ち着いた雰囲気。ですが、これまで辿ってきたメンバーの夢や目的がすべて回収され、本当に最高の最終回になりました。

ありがとうガーディアンズ!ありがとうジェームズ・ガン!! あと、映画館で買ったグッズのヤカの矢ペーパーウェイトとプラスチックタンブラーも最高です。

 

アフターサン

アフターサン

【おすすめ人:原宿】

これは強烈。ズシンと「人生ベスト」級の食らい方をしてしまった映画なのですが、観る側の記憶や家庭環境やらがかなり関わってくる映画だと思うので、「万人にすすめるべきなのか…?」というためらいも同時に感じる作品です。そんなところがまた愛おしい。

話は至極単純で、11歳の少女ソフィーが普段は離れて暮らすお父さんとの夏休み休暇をトルコのリゾート地で過ごす、というだけ。特に驚くような事件も起こらず、2人はプールサイドで日焼け止めを塗り合ったり、ビリヤードに興じたり、カラオケ大会に参加したり、一見退屈とも思えるダラダラとした時間を過ごします。

この説明の時点では「ああ、なんかそういう何も起こらない日常が、結局一番良かったよねーってやつ?」と思ってしまうのですが、話は単純だけど、映画は少し複雑。

この親子のひと夏の思い出は、お父さんが持っていた安物のビデオカメラで撮影されていて、その残された記録を31歳になったソフィーが見ているという設定が加わります。

つまり、

・11歳のソフィーの視点
・31歳のソフィーの視点
・31歳のソフィーがビデオを見ながら当時のお父さんの内面を想像する視点(あるいは妄想)

が、縦横無尽に混じり合い、かつては少女だったソフィーが、大人になった地点から父親の抱えていた優しさと苦しさに向き合うという、あの、これが……

 

これがねェ!!!!

キちゃいますわ!!!!!!

 

自分は今42歳なのですが、この年齢まで運良く生きてみると、親も自分も特別な人間じゃなかったという感覚がどんどん強くなってくるというか(もちろん驕り高ぶっていたというわけではなく)、何の因果かワケも分からず「親と子」という特別な間柄にたまたまなっただけという気がしていて。

でもだからこそ、「特別でもないのに、それなりによく親子をやったな」という気持ちが湧いてきている実感があります(当然、よく思えない親子関係というのもこの世には存在するので、それがこの作品を人にオススメし難い理由かも)。

親のしてくれたことはもちろん、不在だった部分や不足と感じていた部分ですら、自分という人間を形づくった要素にしっかりなっている、いや、なってしまっている。

過去はもう変えられない以上、なってしまったことは事実としてヘヴィだけれど、同時にそれが自分を「固有」の人間として、今この瞬間も立たせてくれているような感慨。そんな自分の過去や、親に対する言葉には収めにくい感覚が、映画にしかできない方法で焼きつけられているのが「アフターサン」という作品で、「これって映画にできたんだ!」ということ自体にまず感激しました。

子育てというのは誰もが一周目の体験で、子供にとって絶対的な存在に見えていた親でさえ何度も迷い、現実の前に立ちすくんだ夜もあったのだろう……っていうのは子どもの立場からの都合のいい想像も入ってるのだけれど、人間は他人の心を完全に覗き見ることはできない以上、事実とは違う都合のいい(ときには悪い)想像をして生きていくしかないとも言える。

そんな風にして記憶と向き合い、直視するのもおっくうな自分の心をイヤイヤ見つめた時、記憶や記録の中で自分を見つめていた親の視線は、ほんの少しだけ甘く香り、どこかで優しく自分を支えてくれるかもしれない。灼けてヒリヒリとした心に浸透していく、アフターサンオイルのように。