申し訳ないんだけど、声に出しながら読んでもいい? じゃないと途中で心折れると思う

みくのしんが読みやすい方法でいいよ

すげー時間かかると思うけど大丈夫?

覚悟するわ

 

 

メロスは激怒した。

うんうん。この一文は有名だよね。さすがの俺も知ってるわ

相槌うちながら読書するんだ。逆に読みにくくない?

ダメ? その方が自分のペースで読めるんだけど

その方が読みやすいならいいけどさ

 

必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の王を除かなければならぬと決意した。

邪智暴虐! かっけー言葉だな!

あら。難しい単語なのによく読めたね

バカにしてんのか

 

ふりがな付いてんだよ。「読めないストレス」を感じなくてすむし、これはマジで嬉しい

今どき、ふりがなに感謝する大人も珍しいな

全部こうなればいいのにな〜。利用規約とかさ

 

メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。

けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。

羊と暮らしてるのか…。ここって重要? 覚えといたほうがいい?

小説の読み始めってどれが大事な情報か分かんないからダルいよな〜。重要ならどうせ後でまた出てくるし、今はさらっと流しとけばいいよ

そんな読み方していいの? 怒られない?

大丈夫だよ。そういうもんだから

そういうもんなんだ

 

きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた(こ)のシラクスの市にやって来た。

「十里はなれた」ってどういう意味?

距離の単位だね。一里が4kmくらいだから、40kmくらい離れた場所ってことよ

あぁ〜!「母をたずねて三千里」っていうもんね。あれって距離のことだったんだ

 

ん…?

 

じゃあ十里って大したことない?

どこと比べてんだよ

でもマルコは三千里も行ってるのに、メロスは十里でしょ? 負けてない?

競ってないから気にせず続きを読め

 

……。え〜っと…?

どこまで読んでたか見失ってんじゃん

読書ってこのストレスがあるよな〜! これ、みんなどうしてんの?

みんなはメロスとマルコの対立煽りしないから

 

メロスには父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。

この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿(はなむこ)として迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。

いいお兄ちゃんだ。だんだんメロスのことがわかってきたかも

いい調子だね。スラスラとは言わないけど、思ったよりちゃんと読めてるじゃん

やっぱり声に出して読むとめちゃくちゃ頭に入ってくる。今度からこうしよう

小学校の音読って意味あったんだな

 

メロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。

いいねえ! めっちゃお金使ったんだろうな〜!

どこ気になってんだよ

俺、人が楽しい買い物してるの好きなんだよ。いくら使ったか書いてほしくない??

別にいいんだけど、このペースで読んでたら季節めぐるぞ

 

先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。

この大路…? ってなに?

“おおじ”ね。おっきい道だと思えばいいよ

わからない単語をすぐ教えてもらえる環境って楽だね。今後から本を読むときは毎回かまど呼ぶわ

どういう関係性だよ

 

メロスには竹馬の友があった。セリヌンティウスである。

竹馬の友! この単語覚えてる! 先生に「これどういう意味ですか?」って質問したなあ

「走れメロス」って妙に頭に残ってる単語多いよね

なんか面白い言葉だったから気になったんだよ。先生は「竹馬に乗ってるんじゃないですか?」って適当に流してたけど

最悪な先生に当たったんだね

 

今は此のシラクスの市で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。

ワクワクしてるねえ! 「つもりなのだ!」って言ってるわ

そんなハム太郎みたいな言い方じゃないだろ

いや、絶対楽しんでる。鼻歌を歌ってる可能性すらある

 

久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。

ほら自分でも言ってる! もう「〜♪」状態じゃん!

メロスはそんなにアホじゃない

大丈夫かな? 結婚式の荷物とかいっぱい持ってるのに飲みに行けるかな?

 

歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った。

ひっそりしている。

……雰囲気変わったね。この「ひっそりしている」って短い一文で、読む方もシャンとする感じがある

文章表現を味わう余裕もあるんだ。ちゃんと読書楽しめてるじゃん

これ書いた人すげー奴なのかも

太宰がすごいのはみんな知ってるよ

 

もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。

完全にBGM変わったな……

 

のんきなメロスも、だんだん不安になって来た。

やっぱりのんきだったんだ

解釈一致の笑顔を見せるな

 

路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、

ここ来るの2年ぶりなんだ。じゃあ友達と会うのもそれくらいかな?

まあ分かんないけど、そうかもね

そういうときのお酒ってめっちゃいいよな。結婚式の荷物汚しそう〜

 

夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈(はず)だが、と質問した。

若い衆は、首を振って答えなかった。

やっぱ街の様子はおかしいね。どうした…?

 

しばらく歩いて老爺(ろうや)に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。

老爺は答えなかった。メロスは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。

老爺……ってのはおじいちゃんのことよね?

そうそう

おじいちゃんを揺すぶってんのか。メロス、だいぶ不安になってるな

 

老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。

「低声」ってなんて読むの? 低い声って意味なんだろうけど

意味が分かるならそのまま進んでいいよ。別に読める必要もないし

そんなんでいいの? 怒られない?

本読んでる人はほとんどそうだよ。もっとなんとなくで読んでいいって

そういうもんなのか。なんか楽になってきたわ

 

でも「低声」は知りたいかも。これ読めるようになりたい

なるほど。じゃあ「ていせい」って読もう

どういう意味?

「低い声」よ

意外性ねえな〜

 

「王様は、人を殺します。」

きた! この台詞は覚えてる。クラスでちょっと流行ったから

教科書に出てくるパワーワードが流行る感じ懐かしいな

 

「なぜ殺すのだ。」

「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」

え〜っと…? ごめん。ここよく分かんないかも

要は「やましいところがない人を、勝手に疑って殺してる」ってことよ

なるほど。じゃあ王様じゃなくて魔王だね

 

「たくさんの人を殺したのか。」

「はい、はじめは王様の妹婿さまを。それから、御自身のお世嗣(よつぎ)を。

この「よつぎ」って何?

自分の子どもだね

え? 家族からいってんの? やばくない???

 

それから、妹さまを。それから、妹さまの御子さまを。

それから、皇后さまを。

皇后さまってのは…?

奥さんだね

どうしちゃったんだ。誰か止めろよ

 

それから、賢臣のアレキス様を。」

これは誰?

知らねえよ

 

まあ、そういう名前の家来がいたんだろうね。要は、家族から側近までみんな殺しちゃってるってことよ

マジか……

 

家、広くなっただろうな……

どこ気にしてんだ

自分の飯とか風呂とか大変だよ? 後先のこと考えてないのかな……

 

「おどろいた。国王は乱心か。」

禿同

 

「いいえ、乱心ではございませぬ。

人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。

だからって殺しちゃダメだろ

 

このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。

臣下って……家来のこと? なんで家来の人質をとるの?

「妙な真似したらお前の子ども殺すからな」とか言ってるんじゃない?

誰と戦ってんだよ。一回寝ろよ王様

 

御命令を拒めば十字架にかけられて、殺されます。

きょうは、六人殺されました。」

人足りなくなるって

 

聞いて、メロスは激怒した。「呆(あき)れた王だ。生かして置けぬ。」

メロスは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。

大丈夫? こんなの逮捕まっしぐらじゃん

それくらい素直な性格ってことだよ

せめて荷物はロッカーに預けようよ

 

たちまち彼は、巡邏(じゅんら)の警吏に捕縛された。

「巡邏」! すごい言葉出てきたな!こんな漢字本当にあんの?

「パトロール中」みたいな意味だね。俺も漢字は初めて見た

「辶」の底が割れそうになってんじゃん

 

調べられて、メロスの懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。

なんで持ってんの!? 結婚式の荷物しょって武器持ってたらそれはもう「キル・ビル」だろ

でもほら、メロスは十里離れてるところから来たんだから

短剣くらい持たなきゃ危ないのか。それ言えばギリ分かってもらえるかも……?

 

メロスは、王の前に引き出された。

え?

どうした?

ちょっと待って。もっかい読むわ

 

メロスは、王の前に引き出された。

ぜってー殺されるじゃん!!!

俺、こんなに楽しそうにメロス読む人初めてみたわ

警備室どまりじゃねえのかよ!!! だからロッカーに預けていけって言ったのに!!!

 

「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」

やばい!! これ王様のセリフ!? 王様しゃべってる!?

王様の強火オタク?

丸アイコンがないから誰がしゃべってるか分かんないんだよ

小説に←これ出てこねえだろ

 

この短刀で何をするつもりであったか。
言え!

こんな感じで言ったんだろうね

言い方はみくのしんの自由でいい

 

暴君ディオニスは静かに、けれども威厳を以(も)って問いつめた。

あ。ごめん。もっと静かな感じだったみたい

 

この短刀で何をするつもりであったか
言え!

こうか?

それは好きにしていいんだって

 

その王の顔は蒼白(そうはく)で、
眉間(みけん)の皺(しわ)は、刻み込まれたように深かった。

ダメだ。眉間にしわ入ってたみたい

 

じゃあこうだね

 

この短刀で何をするつもりであったか…。
言え…

早く読め

 

「市を暴君の手から救うのだ。」とメロスは悪びれずに答えた。

メロスかっこいいわ〜! どう? かまどはこの状況でこんなこと言える?

言えないだろうね。そこの市民でもないし

そっか、メロスはよその村人なのか。なのに王様に物申すなんて、すごい正義漢だな

 

「おまえがか?」王は、憫笑(びんしょう)した。

憫笑ってわかんないけど、多分バカにしてるんだよね。それはなんとなく分かる

そうそう

これで立ち止まらずに先に進んでいいんだよね?

理解できるなら読み進めても大丈夫だよ

よしよし。だんだん分かってきたぞ

 

「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」

あぁ……王様も思うところがあるっぽいね

 

「言うな!」とメロスは、いきり立って反駁(はんばく)した。

なんか普通に王様としゃべってるな。実はメロスって偉い奴なのか?

 

人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。

王は、民の忠誠をさえ疑って居られる。」

う……! これはすごい。読んでて泣きそうになった

え? ごめん、見逃してたかも。そんなに感動するシーンだったかな?

ちょっともっかい読んでいい?

 

人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。

本当にそうだよな

ここで感極まることあるんだ。いい感受性してるね

メロスがこれを何気なく言えるってことが……なんかスゴイな〜と思ったら急にブワッときた。本ってヤバいね……

 

今にも泣きそうじゃねえか

こぼれてないから泣いてません

せっかくだからこぼしとけ。滅多にないタイプの涙だから

 

「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。

人の心は、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりさ。

なるほど……。王がこうなったことにも理由があるってことか

王にも感情移入し始めてるな

「教えてくれた」ってすごくない? 嫌味な感じだけど、なげやりな感じでもあるし……。本当に人が信じられないんだな……

 

信じては、ならぬ。」

涙でてきた

すげー。走れメロスで泣いてる人初めて見た

難しいよな……。こんなのメロスとは理解りあえないって……

お前、読書向いてるよ

 

暴君は落着いて呟(つぶ)やき、ほっと溜息ためいきをついた。

落ち着いてる…。激しく言い争う感じじゃないんだね……

 

「わしだって、平和を望んでいるのだが。」

望んでるんだって……

泣くなよ。まだメロス走ってもいないのに

難しいなぁ王様。どうしてあげたらいいんだよ

 

「なんの為の平和だ。自分の地位を守る為か。」こんどはメロスが嘲笑した。

メロスがやりかえしてるね

 

「罪の無い人を殺して、何が平和だ。」

やっぱカッコいいね。何がメロスをこうさせたんだろ

 

「だまれ、下賤(げせん)の者。」

王は、さっと顔を挙げて報いた。

顔を挙げて報いた…?

まあ、ここでは「やり返した」みたいな意味かな

王様も痛いところをつかれたのかな

 

「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。

おまえだって、いまに、磔(はりつけ)になってから、泣いて詫(わ)びたって聞かぬぞ。」

王様はメロスを信じてないんだね。俺はここまで読んでるから、嘘じゃないって分かるのに

 

「ああ、王は悧巧(りこう)だ。自惚(うぬぼ)れているがよい。私は、ちゃんと死ぬる覚悟で居るのに。

命乞いなど決してしない。ただ、──」と言いかけて、

「ただ、──」?

 

メロスは足もとに視線を落し瞬時ためらい、

どうした?

 

「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい。

たった一人の妹に、亭主を持たせてやりたいのです。

そっか。そもそも結婚式の買い物に来てたんだった……

 

三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます。」

この交渉は難しいだろ……

 

「ばかな。」と暴君は、嗄(しわが)れた声で低く笑った。

やっぱそうだよな〜。笑ってくれてる分、まだ優しいよ

 

「とんでもない嘘(うそ)を言うわい。逃がした小鳥が帰って来るというのか。」

そりゃそう言うよ。ただでさえ疑い深い王様なんだし

 

「そうです。帰って来るのです。」

信じるかな〜〜〜???

楽しそうに本読むなあ

 

「そうです。帰って来るのです。」

多分こんな感じだよね

言い方はみくのしんの自由にしてくれ

 

「そうです。帰って来るのです。」

「え? なんで信じないの?」って感じ。普通に帰ってくるっしょ? くらいのノリだと思う

 

メロスは必死で言い張った。

必死だったんかい!! 勘違いだったごめん!!

 

じゃあこうだわ!

 

「そうです!! 帰って来るのです!!!」

これはもう命乞いだろ!!

お前、本一冊でどこまで楽しめるんだよ

 

「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。妹が、私の帰りを待っているのだ。

そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にセリヌンティウスという石工がいます。

こういう場で名前出してやんなって。セリヌンティウスも「え!?」ってなるから

 

私の無二の友人だ。

まあ、こういう状況で真っ先に名前が出るくらいの親友ってことなんだろうね

 

あれを、

“あれ”を?

 

あんまり友達をあれって言わないほうがいいぞ、メロス

 

 

人質として

え?

 

ここに置いて行こう。

なんかすごいこと言い出したんだけど

そこに新鮮に驚けるの羨ましいな

 

私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、

何これ? 本当にメロスの台詞???

 

ここに帰って来なかったら、あの友人を

……マジで言ってんの?

 

絞め殺して下さい。

メロス、乱心でした

 

たのむ、

頼まなくていいだろ

 

そうして下さい。」

殺したかったの?

それくらい信じてくださいって決意の現れなんだよ

ホントか? メロスもちょうどいい機会だと思ってない?

 

それを聞いて王は、残虐な気持で、そっと北叟笑(ほくそえ)んだ。

生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている

これは王様の方がまともだね

 

この嘘つきに騙だまされた振りして、放してやるのも面白い。

そうして身代りの男を、三日目に殺してやるのも気味がいい。

わるいねえ〜!

 

人は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代りの男を磔刑に処してやるのだ。

世の中の、正直者とかいう奴輩(やつばら)にうんと見せつけてやりたいものさ。

あ〜、これは相当悪いわ。こうすれば「俺は信じようとしたのに」って言えるもんね

市民から見ても王の行動に説得力が出ちゃうからな

3日目の視聴率すごいだろうね

全国ネットじゃねえよ

 

「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。

やばい。願い聞いちゃったよ

 

三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その身代りを、きっと殺すぞ。

なんか……この「きっと」って怖いね。含みがあるというか……

ほうほう

腹の中では「どうせ殺す」って思ってるのに、わざわざ「きっと」って使ってんのよ。これは怖いわ……

じゃあ、次の文、読んでみ?

 

ちょっとおくれて来るがいい。

……

 

おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ。」

……。

そこめっちゃ怖くない?

 

 

 

鳥肌たった

そこまでだとは思わなかった

 

「遅れてこい」ってなんだよ。「逃げていいよ」じゃないんだ

その台詞、凄みがあって好きなんだよな〜

遅れたら「あとちょっとで間に合ったのに」とか言い訳できるよ…ってことだよね

 

友達を殺されても「最後までがんばったメロス」でいられるもんな。こいつマジで性格悪いわ

 

どうなる…。メロスはどう返す…?

 

 

「なに、何をおっしゃる。」

ビビっちゃってんじゃん

口ごもるな! 頑張れ!!

 

「はは。いのちが大事だったら、おくれて来い。おまえの心は、わかっているぞ。」

コイツなめてんなぁ。メロスのことをよ!

言っとくけど、メロスはマジで帰ってくるからね。見てろマジで

お前セリヌンティウスか?

 

メロスは口惜しく、地団駄(じだんだ)踏んだ。ものも言いたくなくなった。

そうだよな。もうしゃべっても意味ないからな

 

竹馬の友、セリヌンティウスは、深夜、王城に召された。

暴君ディオニスの面前で、佳(よ)き友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた。

2年ぶりの再会がこんな形か〜

 

メロスは、友に一切の事情を語った。

セリヌンティウスは無言で首肯(うなず)き、

こんな友情あるか? ゴンとキルアの関係じゃん

何も言わずに身代わりを引き受けるって常軌を逸してるよな

もしかまどが捕まっても俺の名前出すなよ?

詐欺グループの誓いかよ

 

メロスをひしと抱きしめた。友と友の間は、それでよかった。

ここ、マーカー引きたい! すげーカッコいい!!

 

セリヌンティウスは、縄打たれた。

縄打たれた……ってどういう意味? もう処刑始まってる?

そこは「縛られた」みたいな意味だね

ああ、叩かれてるわけではないのか

 

メロスは、すぐに出発した。

いいぞ! もう時計の砂は落ち始めてるもんな!!

 

初夏、満天の星である。

かっこよすぎる

なんじゃこりゃ。CM入れるなら絶対ここじゃん

読書中に編成を気にすんな

 

メロスはその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、

路? 「ろ」ってなに?

それは「みち」って読んでいいと思うよ

OKOK。みち、ね

 

村へ到着したのは、(あく)る日の午前、

徹夜で走ったんだ。40kmって言ってたから、多分10時間くらいかかってるよね

 

陽は既に高く昇って、

この感じは10時っぽい。初夏だから太陽出るの早いし、多分10時だな

 

村人たちは野に出て仕事をはじめていた。

完全に10時だな

何時でもいいよ

 

メロスの十六の妹も、きょうは兄の代りに羊群の番をしていた。

よろめいて歩いて来る兄の、疲労困憊(こんぱい)の姿を見つけて驚いた。

妹もビックリするよな〜

 

そうして、うるさく兄に質問を浴びせた。

「どうしたのお兄ちゃん! 短剣も持たせたのに何やってたの!」みたいな感じかな

 

「なんでも無い。」

メロスは無理に笑おうと努めた。

ゾロじゃん

 

「市に用事を残して来た。またすぐ市に行かなければならぬ。

事情は明かさないんだね。さすがに言えないか

 

あす、おまえの結婚式を挙げる。早いほうがよかろう。」

妹は頬をあからめた。

ここで何でもない会話ができてるのもすごいと思わない? 妹にまったく悟られてない

たしかにね。普通だと「何かあったの?」ってバレるところなのに

それだけメロスも覚悟が決まってるんだろうな。かっけぇ……

 

「うれしいか。綺麗(きれい)な衣裳も買って来た。

さあ、これから行って、村の人たちに知らせて来い。結婚式は、あすだと。」

優しいね。自分が死ぬって分かってるのに、残りの時間を妹のために全部使おうとしてるんだ

 

メロスは、また、よろよろと歩き出し、家へ帰って神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、

「調え」……これなに? しらべえ?

「ととのえ」だね

いいねぇ! どんどん読めるぞ!

ムスカと同じ感動を味わってる

 

間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。

あ〜すごい! メロス、俺と一緒だわ!

……多分違うと思うけど何が?

俺と一緒で横になる前にやることをすませちゃうタイプの人間なんだよ。俺も仕事から帰ったらすぐ飯作るもん

やっぱり全然違った

 

眼が覚めたのは夜だった。

寝たなあ〜〜〜!!!

いいだろ。結婚式は次の日なんだから

先に準備すませとくタイプでよかったね。ここから準備するのはしんどいから

 

メロスは起きてすぐ、花婿の家を訪れた。

そうして、少し事情があるから、結婚式を明日にしてくれ、と頼んだ。

あ〜、そもそもの予定は明日じゃなかったんだ。それは困るな

 

婿の牧人は驚き、それはいけない、こちらには未だ何の仕度も出来ていない、

葡萄(ぶどう)の季節まで待ってくれ、と答えた。

ワイン飲みたいもんな…!

そういう理由じゃないと思う

ジンギスカンとかするんじゃない? 羊もいるんだしさ〜!

メロスの羊を食用として見るな

 

メロスは、待つことは出来ぬ、どうか明日にしてくれ給え、と更に押してたのんだ。

説得するターンもあるのか。事情言えたら楽なのにな……

 

婿の牧人も頑強であった。なかなか承諾してくれない。

この人にとっても大事な結婚式だもんね

 

夜明けまで議論をつづけて、やっと、どうにか婿をなだめ、すかして、説き伏せた。

あぁ!?

どうした?

「夜明けまで議論をつづけて」……?

 

次の日になってんじゃん!!!

メロスってこんな「24 -TWENTY FOUR-」みたいな楽しみ方する小説だったっけ?

ってことはあと2日!? いや、2日もない…??

 

ちょっと待って? 1日目に王様に会って、村に着いたのは次の日の10時で……?

そこは読んでいけば分かるから、厳密に把握しなくても大丈夫だよ?

でも、臨場感が出ないじゃん。何か時間経過が分かるものを置かせてほしい

それで分かりやすくなるなら自由にしていいけど……

 

 

 

 

 

これがメロスの持ち時間ね

ティッシュで表現すんな

1日目に王様と喧嘩して、次の日に戻ってきたんだよね……

 

で、最終日は日没までがタイムリミットだから……

 

こういうことか

どういうことだ

 

あと1日と半分しか残ってないってことよ。分かりやすくなったよね?

みくのしんが分かるならそれで良いけど

残り時間を可視化したら臨場感出てきたな。ヒリヒリするぜ……

 

……え〜っと?

どこまで読んだか見失ってんじゃねえか

これ困るよな〜。みんなはどうしてんの?

みんなは読書中にティッシュ置かないんだよ

 

結婚式は、真昼に行われた。

やばいやばい! もうこれが半分になってる!

さっそくティッシュ表記を使いこなしてる

 

新郎新婦の、神々への宣誓が済んだころ、黒雲が空を覆い

黒雲!?

 

ぽつりぽつり雨が降り出し、

おいおいおい……

 

やがて車軸を流すような大雨となった。

やばいじゃん……

 

よく見たら、表紙の時点でめっちゃ雨振ったわ

ほんとだ。雨のイメージないから気付かなかった

こんなのSASUKEでも中止するだろ

 

祝宴に列席していた村人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、

狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのも怺(こら)え、陽気に歌をうたい、手を拍(う)った。

あ〜! これはいい! 雨だけど結婚式は白けてないんだ!

新郎からしたら嫌だろうな。急に日程変えられて、その日も雨だなんて

でも、村人たちが率先して楽しもうとしてる感じがしてすごくいいわ! ここ、もっかい読も!

 

狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのも怺(こら)え、陽気に歌をうたい、手を拍(う)った。

いい人ばっかり!

 

メロスも、満面に喜色を湛(たた)え、しばらくは、王とのあの約束をさえ忘れていた。

メロスも楽しめててよかったね。結婚式が台無しになったら意味ないもんな!

 

祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。

いいね。みんなお酒入ってるね

 

メロスは、一生このままここにいたい、と思った。

わかる! こういう時、先に寝ると損しそうで部屋に戻りたくないよな!

そういう意味じゃないだろ

外から大雨の音だけ聞こえてるけど、部屋の中はめっちゃ盛り上がってる感じ…。席を抜けたら「あ、こんなに雨降ってたんだ」ってそこで気づく感じ…。それもいい!!!

 

でもこうよ!? メロス大丈夫!?

 

二次会は欠席だろうな〜!

メロスの二次会気にするやついねえよ

 

この佳い人たちと生涯暮して行きたいと願ったが、いまは、自分のからだで、自分のものでは無い。

そうだよ。お城ではセリヌンティウスが──

 

セリヌンティウス!?!?

なに? どうした?

忘れてた!! セリヌンティウスは何してんの!?

捕まってるよ

 

どんな気持ちで過ごしてんだよ。スピンオフとか出てないの!?

俺が知る限り、出てないと思う

 

ままならぬ事である。

禿同!!!

 

メロスは、わが身に鞭打ち、ついに出発を決意した。あすの日没までには、まだ十分の時が在る。

ちょっと一眠りして、それからすぐに出発しよう、と考えた。

寝ても大丈夫かな…? でも、今は雨降ってるしお酒も残ってるし……

初日は徹夜で走って朝には着いてるくらいだったし、大丈夫じゃない?

そっか!

 

実際これくらいで帰れたのか!

そのティッシュ換算、分かりにくくないの?

 

タイムリミットは日没だけど、初夏だから日が落ちるのも遅い可能性あるもんね!

何なら夜7時くらいかも! それなら一回休んでも全然大丈夫だ!!

 

その頃には、雨も小降りになっていよう。

たしかに!!!

 

少しでも永くこの家に愚図愚図とどまっていたかった。

メロスほどの男にも、やはり未練の情というものは在る。

未練あるんだ。人間だなあメロス

 

今宵呆然、歓喜に酔っているらしい花嫁に近寄り、

「おめでとう。私は疲れてしまったから、ちょっとご免こうむって眠りたい。

このあと殺されるのに「おめでとう」って言えるの凄すぎん? 俺、メロスのこと好きかも

 

眼が覚めたら、すぐに市に出かける。大切な用事があるのだ。

“大切な用事”か…。最後まで事情は言わないつもりなんだな

 

私がいなくても、もうおまえには優しい亭主があるのだから、決して寂しい事は無い。

うん……うん……

 

おまえの兄の、一ばんきらいなものは、

うん……

 

人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。

……ひぅ

 

……ぅぐ

 

ここで泣くの???

めっちゃ良いお兄ちゃんじゃん……

その涙は新婦が流すやつだろ

 

どうすんだよ。こいつの台詞まだ半分以上あるのに。我慢できる自信がねえよ

我慢すんな。ここで泣ける感受性を誇れ

ごめんかまど。ちょっとあっち向いてて

アクマと同じ涙のごまかし方すんな

 

おまえも、それは、知っているね。

亭主との間に、どんな秘密でも作ってはならぬ。

だめだ。この「、」の区切り方だけでもうやばい……。言い聞かせてるみたい……

 

おまえに言いたいのは、それだけだ。

もっと言いたいことあるはずなのに……

 

おまえの兄は、たぶん偉い男なのだから、

うん……うん……

 

おまえもその誇りを持っていろ。」

号泣じゃねえか

だってもう……こんなのもう……

 

メロスかわいそう……!!

一度でいいから俺もこういう風に本読んでみたいわ

絶対、結婚式楽しかったのに……途中抜けして殺されに行くとか……

 

ちょっと……もう……

 

1日もらっていいですか?

ティッシュを日数で数えるな

 

「おまえの兄の、一ばんきらいなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。」

この台詞がちょっとやばすぎる

そんな視点で読んだことなかったから新鮮な反応だなあ

妹に言ってるようで、自分にも言い聞かせてるんだと思う。そうじゃないとこんな幸せから抜けられる気しないもん……

 

花嫁は、夢見心地で首肯(うなず)いた。

妹は気付いてないね。気持ちよく祝福できてるじゃん

 

メロスは、それから花婿の肩をたたいて、

「仕度の無いのはお互さまさ。私の家にも、宝といっては、妹と羊だけだ。他には、何も無い。全部あげよう。

新郎への声掛けも忘れてない。マメだな〜。メロスって意外と仕事できるかも

 

もう一つ、メロスの弟になったことを誇ってくれ。」

切ないな……。メロスの最期を知ったら、この夫婦どうなっちゃうんだよ……

 

花婿は揉(も)み手して、てれていた。

メロスは笑って村人たちにも会釈(えしゃく)して、宴席から立ち去り、

もう二度と会えないのに……笑顔を貫いてる……

 

羊小屋にもぐり込んで、死んだように深く眠った。

死んだようにとか言わないで……

ティッシュ使いすぎじゃない?

はぁ……小説ってすごいね。めっちゃ泣けるわ……

まだメロス走ってないのに

 

眼が覚めたのは翌る日の薄明の頃である。

薄明……? これはどういう意味?

もうすぐ日の出ってことだよ

なるほど。ちゃんと早起きできたのか。寝坊しないのは偉いな

 

メロスは跳ね起き、南無三、寝過したか、

あるよな〜こういうとき! 飛び起きたあとに「土曜日か…」ってなるあの瞬間!

 

いや、まだまだ大丈夫、

本当に大丈夫? あとこれしかないのに!

日の出前に出発するんだから十分じゃない?

 

寝たの夜中の2時なのに?

そうとは限らないだろ

結婚式を見届けたら多分それくらいになるでしょ。で、夏の日の出前ってなると……いま4時とかじゃない? 

その計算だとメロスは2〜3時間しか寝てないことになるね

 

お酒も残ってるでしょ……大丈夫かな……

メロスの体調面を気にしながら読むような小説じゃないんだけどな

 

これからすぐに出発すれば、約束の刻限までには十分間に合う。

本人が言ってるなら大丈夫なのかな

 

きょうは是非とも、あの王に、人の信実の存するところを見せてやろう。

一回寝た後もこう思えてるのはすごいよな〜

 

そうして笑って磔の台に上ってやる。

これなんて読むの?

「はりつけ」だね

笑顔で処刑されようとしてるのか。もうルフィじゃん

 

メロスは、悠々と身仕度をはじめた。

雨も、いくぶん小降りになっている様子である。

雨が落ち着いてる! メロスの計算通りだ

 

身仕度は出来た。さて、メロスは、ぶるんと両腕を大きく振って、

こういう感じよね?

 

雨中、矢の如く走り出た。

カッコよ……

ポテポテと歩くんじゃないんだ。走らなくても間に合うのにね

 

私は、今宵、殺される。殺される為に走るのだ。身代りの友を救う為に走るのだ。

力強い文章なのに切ないなぁ……

 

王の奸佞(かんねい)邪智を打ち破る為に走るのだ。

なんですかこの言葉。奸佞邪知???

う〜ん。なんか、めっちゃ悪い心……みたいな意味かな

OKOK。そういう感じだろうと思ってた

 

走らなければならぬ。そうして、私は殺される。若い時から名誉を守れ。

さらば、ふるさと。若いメロスは、つらかった。

やっぱりつらかったんだね。こういう人間味を出されるとグッとくるな……

 

幾度か、立ちどまりそうになった。

えい、えいと大声挙げて自身を叱りながら走った。

わかる。俺も大声あげないと出社できない朝あるもん

それと一緒にしないであげて

 

村を出て、野を横切り、森をくぐり抜け、隣村に着いた頃には、雨も止(や)み、日は高く昇って、そろそろ暑くなって来た。

もう隣村なんだ。かなり順調じゃない?

 

メロスは額(ひたい)の汗をこぶしで払い、ここまで来れば大丈夫、もはや故郷への未練は無い。

「間に合うか」じゃなくて「未練が消えた」ことに安心してるんだね

いい読解力してるなあ。やっぱり読書向いてるんじゃない?

 

妹たちは、きっと佳い夫婦になるだろう。

私には、いま、なんの気がかりも無い筈だ。

走ってたのは急いでるからじゃなくて、未練を振り切るためだったのかもな……

みくのしんの読書感想文読んでみたいわ

 

まっすぐに王城に行き着けば、それでよいのだ。そんなに急ぐ必要も無い。

言う通り!

 

ゆっくり歩こう、と持ちまえの呑気(のんき)さを取り返し、好きな小歌をいい声で歌い出した。

ここで呑気さを取り戻すのがいいねえ。メロスっぽい!

そう? このあと殺されるのに鼻歌うたってるのは狂気じみてると思わない?

メロスはそうじゃないんだよ。今は「殺される」とかじゃなくて、「未練が断ち切れたこと」に安心してる状態だから

 

ぶらぶら歩いて二里行き三里行き、そろそろ全里程の半ばに到達した頃、

もう中間ポイントじゃん。調子いいね

 

降って湧(わ)いた災難、

……災難?

 

メロスの足は、はたと、とまった。

ザ・ノンフィクション???

CM前の煽りじゃないよ

こんなナレーション聞いたらチャンネル変えられないだろ

1チャンネルしかないから安心して続きを読め

 

見よ、前方の川を。きのうの豪雨で山の水源地は氾濫(はんらん)し、

やっぱり昨日の雨は伏線だったんだ……

 

濁流滔々(とうとう)と下流に集り、

え……これ……?

 

猛勢一挙に橋を破壊し、

!!

 

どうどうと響きをあげる激流が、

わぁ

 

木葉微塵(こっぱみじん)に橋桁(はしげた)を跳ね飛ばしていた。

こりゃダメだ!! なんじゃいこれは!!!

こんなにハシャいでもらえたら太宰も本望だろう

 

彼は茫然と、立ちすくんだ。

ここまで順調だったのに…。緊張の糸が切れちゃうんじゃない?

 

あちこちと眺めまわし、また、声を限りに呼びたててみたが、

繋舟(けいしゅう)は残らず浪に浚(さら)われて影なく、渡守りの姿も見えない。

繋舟……渡守り……? ちょっと分かんないな

ここは言葉難しいよね。まあ船も運転手もいないんだな〜って思えばいいよ

要は川を渡る手段がないってことか。オワタじゃん

 

流れはいよいよ、ふくれ上り、海のようになっている。メロスは川岸にうずくまり、男泣きに泣きながらゼウスに手を挙げて哀願した。

こういうとき、マジで「あぁ〜〜〜もう!!!!!」ってなるよな……分かる分かる

 

「ああ、鎮(しず)めたまえ、荒れ狂う流れを! 時は刻々に過ぎて行きます。

俺も今度からゼウスに頼も

 

太陽も既に真昼時です。

やばい!!

声でけー。ここが図書館じゃなくてよかった

もう時間ないって!!!!

 

あれが沈んでしまわぬうちに、王城に行き着くことが出来なかったら、あの佳い友達が、私のために死ぬのです。」

ゼウス聞け!!

 

もうこの半分くらいしか残ってないんだぞ!?

 

濁流は、メロスの叫びをせせら笑う如く、ますます激しく躍り狂う。

すごい表現だ。荒れてる川のイメージが強烈に浮かぶもんな

 

浪は浪を呑み、

オオカミでてんじゃん!!

狼じゃなくて浪(なみ)ね

ああ、なみか。OK。うん

 

捲き、煽(あお)り立て、そうして時は、刻一刻と消えて行く。

こういうときって時間たつの早いんだよね……

 

今はメロスも覚悟した。泳ぎ切るより他に無い。

それしかないか。どっかに丸太とか浮いてたらいいんだけど……

 

ああ、神々も照覧あれ!

照覧? なにこれ?

まあ「よく見てろ!」みたいなことかな

お! じゃあ気を取り直してるってこと?!

 

濁流にも負けぬ愛と誠の偉大な力を、いまこそ発揮して見せる。

いいぞ…やることが決まったあとのメロスは強いからね

 

メロスは、ざんぶと流れに飛び込み、

ざぶんじゃないよ! ざんぶだよ!!

そうだね

なにこれ、かっこいい言葉! 俺も今度からざんぶにするわ!

いつ使うんだよ

風呂入るときだろ

 

百匹の大蛇のようにのた打ち荒れ狂う浪を相手に、必死の闘争を開始した。

川の状況すごすぎない? ポニョみたいになってんじゃん

 

満身の力を腕にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる流れを、

荒れ狂う波の表現が豊かすぎる! どんだけボキャブラリーあるんだよ!

今になって、太宰治の語彙力を褒める人が現れるとはね

 

これ書いた人、絶対売れるわ

知ってるよ

 

なんのこれしきと(か)きわけ掻きわけ、

2回言ってる!! すごいなあ、これだけで波を押し分けてるようなパワーが伝わってくるもん

 

めくらめっぽう獅子奮迅の人の子の姿には、神も哀れと思ったか、ついに憐愍(れんびん)を垂れてくれた。

これは……神様も情けをかけてくれた的なことだよね?

そうそう

 

押し流されつつも、見事、

おおっ!?!

 

対岸の樹木の幹に、すがりつく事が出来たのである。

読書中に拍手する人いないよ?

チャレンジ成功!! マジすげえ!! スパチャするならここだろ!!

メロスに投げ銭すんな

 

だってこれ、相当流されてると思うよ? 川があって……こう泳いだわけだよね

感想戦をするにはまだ早いんじゃない?

何なら1kmくらい流されてるかもよ!?

ゴキゲンなのはいいんだけど……

 

本をそうやって置くのやめてほしいな

あ、ごめん。興奮しちゃってた

 

しおりにできる紐がついてるから、それ使ったら?

そういえばそんなのあったね。先に言ってよ

 

俺、この紐使ったの初めてかも!! 大人になった気分!!

人がその紐を初めて使う瞬間に立ち会えるとは

 

この紐は垂らしておこう! こっちの方が読書を楽しんでる感じするもんな!

格好を気にしなくても、もう十分楽しめてるよ

 

……え〜っと?

また続きを見失ってる

これ読書家の人はどう対策してんの? どこまで読んだか覚えてんの?

そのために紐があるんだよ

 

ありがたい。メロスは馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先きを急いだ。

野性的だな〜! メロスモテそう〜〜〜

 

一刻といえども、むだには出来ない。

陽は既に西に傾きかけている。

やばい!!! もうこんなんよ!!?

それ本当に分かりやすい?

 

ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠をのぼり、のぼり切って、ほっとした時、

川泳いだから体力も削られてるよな〜

 

突然、

……なんかやだな

 

目の前に

読みたくねえ

 

一隊の

もう

 

山賊が

さぁ……

 

躍り出た。

エンカウントじゃん

 

「待て。」

山賊にからまれてる。最悪だ……

 

「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちに王城へ行かなければならぬ。放せ。」

会話しなくていいよメロス。ヤンキーに絡まれたときは大きい声出して頭おかしいふりすればいいから

悲しい経験談

 

「どっこい放さぬ。持ちもの全部を置いて行け。」

なんでッッ!!! 

 

こっちの事情も知らねえでやんの!!! どうせ暇してたんだろ!! 見逃せや!!!

 

「私にはいのちの他には何も無い。

その、たった一つの命も、これから王にくれてやるのだ。」

こんなこと聞いた上で襲ってきたらマジでダサいからね

山賊にダサいもカッコいいもないだろ

これで見逃さなかったら、マジで俺、山賊を軽蔑する!!! 変なことすんなよ!!!!

 

「その、いのちが欲しいのだ。」

なんでッッ!!!

 

「さては、王の命令で、

アッ??!?

 

ここで私を待ち伏せしていたのだな。」

……やばいね

ブチ切れんなって

マジで白ける。こんなのズルじゃん。ノーカンでしょ

メロスが言ってるだけで、実際に王の仕業かは分かんないから

 

山賊たちは、ものも言わず一斉に棍棒(こんぼう)を振り挙げた。

……答えろよ卑怯者

本を恫喝しないで。傍から見てると本当に怖いから

答えねえってことは図星なんだろォが。これでメロスが怪我したらマジで最悪だから

 

メロスはひょいと、からだを折り曲げ、飛鳥の如く

メロスは……ひょいと、からだを折り曲げ……?

 

身近かの一人に襲いかかり、その棍棒を奪い取って、

棍棒を奪い取ってェ?!

 

「気の毒だが正義のためだ!」と

正義のためだと!!

 

猛然一撃、たちまち、三人を殴り倒し、

殴り倒し!!!

 

残る者のひるむ隙(すき)に、

ひるんだ隙にィ!!!!

 

さっさと走って峠を下った。

面白すぎるだろ!!!!

ジェットコースターにでも乗ってんのか?

アクションもあるのかよ!!! 映画じゃねえか!!!!

 

一時はどうなることかと思ったけど! いや〜安心したわ!

 

あ、ちょっとごめん

 

みくのしんは肩をなでおろした。

なんでナレーション口調になるんだ

 

ワハハ、じゃないよ

小説読んでたら文体が口調にうつっちゃいそうでソワソワしない?

正直、それは俺もある

 

一気に峠を駈け降りたが、流石(さすが)に疲労し、

疲れてるのか。運動量、トライアスロンどころじゃないもんな

 

折から午後の灼熱(しゃくねつ)の太陽がまともに、かっと照って来て、

これは3時だな……

何時でもいい

 

メロスは幾度となく眩暈(めまい)を感じ、

前日に酒も飲んでるしね…。水飲んでないんだろ〜な

 

これではならぬ、と気を取り直しては、よろよろ二、三歩あるいて、

川泳ぐときに、ついでに飲んどけばよかったのに……

 

ついに、がくりと膝を折った。

え!???!??

違う違う。座り込んだってことよ

びっくりした。自分でへし折ったのかと思った

 

立ち上る事が出来ぬのだ。天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。

どれもメロスのせいじゃないのに、やってらんないよな……

 

ああ、あ、濁流を泳ぎ切り、

すご……なにこの「ああ、あ」って。なんちゅう表現だ

嗚咽してるような息遣いが伝わるよね

文章ってこんな書き方していいんだ……

 

山賊を三人も撃ち倒し韋駄天(いだてん)、ここまで突破して来たメロスよ。真の勇者、メロスよ。

今、ここで、疲れ切って動けなくなるとは情無い。

メロスってドラクエやったことあるのかな?

なんでそう思うの?

いや、なんとなく

 

愛する友は、おまえを信じたばかりに、やがて殺されなければならぬ。

おまえは、稀代(きたい)の不信の人間、まさしく王の思う壺(つぼ)だぞ、と自分を叱ってみるのだが、

自分にムチ打ってる感じだ。あんま責めすぎんなよ!

 

全身萎(な)えて、もはや芋虫(いもむし)ほどにも前進かなわぬ。

ギブアップしそうになってる。初日の十里はすんなり帰れてたのに……

山賊とのバトルで体力使い切ったんだろうね

あのエンカウントさえなければ……

RTA走者の苦悩?

 

路傍の草原に

これはなんて読むの?

路傍(ろぼう)。「道端」と同じ意味かな

知らん日本語いっぱいあるな〜

 

ごろりと寝ころがった。

身体疲労すれば、精神も共にやられる。

分かってんじゃん。今、落ち込んでるのは体力のせいだって……自分を責めなくていいんだって……

 

もう、どうでもいいという、勇者に不似合いな不貞腐(ふてくさ)れた根性が、心の隅に巣喰った。

くそっ!!!

 

私は、これほど努力したのだ。約束を破る心は、みじんも無かった。

神も照覧、私は精一ぱいに努めて来たのだ。

そうだよ。メロス、いま一番カッコいいんだから。ネガティブになる必要ないんだよ

 

動けなくなるまで走って来たのだ。私は不信の徒では無い。

ああ、できる事なら私の胸を截(た)ち割って、真紅の心臓をお目に掛けたい。

嘆き方までカッコいい。心臓を差し出そうとしてるわ

 

愛と信実の血液だけで動いているこの心臓を見せてやりたい。

自分でそう言えるのは偉い! 自分が愛と信実でできてるって思える人生って羨ましいよ!

 

けれども私は、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。

……言っちゃったね

ダメだぞ。口に出したらマジになっちゃうから

 

私は、よくよく不幸な男だ。私は、きっと笑われる。

ほら。どんどんマイナスになってる

 

私の一家も笑われる。私は友を欺(あざむ)いた。

そんなことないって。ここまでやってんだから誰も笑わないよ

 

中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。

ギィーイ……ッ!!!!

え…?

 

……。

なに? どうした?

 

「中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。」

 

……って書いてあります

それは分かってるんだけど

 

本ッ当にそうなんだよなぁ……やりきらないと評価ってしてもらえないもんなぁ……

みくのしんって感極まるポイント珍しいね

ちょっと……ごめん、1日もらっていい?

 

メロスの貴重な1日がどんどん消費されていく

もう……泣かないと思ってるんだけど……急にくるから……

せっかくなら目いっぱい泣け。最高の読書体験なんだから

 

ああ、もう、どうでもいい。これが、私の定った運命なのかも知れない。

どうでもいいとか言うなよ。俺、こんなになってんだぞ

 

セリヌンティウスよ、ゆるしてくれ。

謝るなよ……メロスらしくないよ……

 

君は、いつでも私を信じた。私も君を、欺かなかった。

やばいやばい

 

私たちは、本当に佳い友と友であったのだ。

泣きそう泣きそう

 

いちどだって、暗い疑惑の雲を、お互い胸に宿したことは無かった。

いまだって、君は私を無心に待っているだろう。ああ、待っているだろう。

そうだよ。まだ終わってないよ

 

ありがとう、セリヌンティウス。よくも私を信じてくれた。それを思えば、たまらない。

友と友の間の信実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。

なんか締めにかかってない? 大丈夫?

 

セリヌンティウス、私は走ったのだ。君を欺くつもりは、みじんも無かった。

信じてくれ! 私は急ぎに急いでここまで来たのだ。

それはもう、本人の前で言お? セリヌンティウスも会って話したいだろ

 

濁流を突破した。山賊の囲みからも、するりと抜けて一気に峠を駈け降りて来たのだ。

飲み会でいくらでも喋れるから! いま回想することじゃないだろ!

 

私だから、出来たのだよ。

こんなッ……言い訳みたいな……言うな……ッ!!

何日使うんだよ

 

人間すぎるぞメロス!!

本読みながらこんな大声出すことないよ?

そんなとこまで見せなくていいんだよ!!

ザケル唱えてんじゃないだから

 

ひぃ……

また1日消費しちゃった

 

ああ、この上、私に望み給うな。放って置いてくれ。

もうお前が日本郵便のCMやれ……

 

どうでも、いいのだ。

松ちゃんの代わりにお前が「バカまじめです」って言え……

???

 

私は負けたのだ。

うそぉ……

 

だらしが無い。笑ってくれ。

王は私に、ちょっとおくれて来い、と耳打ちした。

ここで王様を思い出すんだ……

 

おくれたら、身代りを殺して、私を助けてくれると約束した。

そんなこと思い出さなくていいよ……

 

私は王の卑劣を憎んだ。けれども、今になってみると、私は王の言うままになっている。

なってねぇよ!!! おめえ、カッコいいんだからしっかりしろよ!!!

 

私は、おくれて行くだろう。

王は、ひとり合点して私を笑い、そうして事も無く私を放免するだろう。

間に合わなくても行くつもりなんだね。俺だったらもう逃げてるのに……

 

そうなったら、私は、死ぬよりつらい。

私は、永遠に裏切者だ。地上で最も、不名誉の人種だ。

妹にも嘘つくのが一番嫌いって言ってたもんな

 

セリヌンティウスよ、私も死ぬぞ。君と一緒に死なせてくれ。

そういうことじゃないだろ〜!!!

 

君だけは私を信じてくれるにちがい無い。

ダメだ。落ち込んでるときの俺とおんなじ思考回路してる。間違った方にばっかり理屈を作ってる

 

いや、それも私の、ひとりよがりか?

しんどいね…。一回寝た方がよくない?

酷な提案するなあ

でも、こういう状態って寝て起きたら忘れてるからさ

 

ああ、もういっそ、悪徳者として生き伸びてやろうか。

村には私の家が在る。羊も居る。妹夫婦は、まさか私を村から追い出すような事はしないだろう。

開き直っちゃってるね。こんなメロス見たくないよ

 

正義だの、信実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない。

人を殺して自分が生きる。それが人間世界の定法ではなかったか。

王様の言葉が蝕んでいってる……もう別人みたい

裏切りを正当化しようとしてるもんね

皮肉だけど、王様の理屈がメロスにも理解できちゃったシーンでもあるんだな

 

ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。

どうとも、勝手にするがよい。やんぬる哉(かな)

──四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。

……。

すげーショック受けてる

なんかどっと疲れた。メロスのネガティブにあてられたのかも

それは大声出して本読んでるからだと思う

 

 

 

ふと耳に、潺々(せんせん)、水の流れる音が聞えた。

あ、メロス起きた。一回寝たし気持ち楽になってないかな

 

そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。

すぐ足もとで、水が流れているらしい。

なんかいい雰囲気っぽい? アシタカが目を覚ましたときみたい……

 

よろよろ起き上って、見ると、岩の裂目から滾々(こんこん)と、何か小さく囁(ささや)きながら清水が湧き出ているのである。

これは!? 清水って水のことだよね!?

そうそう。自然のキレイな水って意味よ

岩から湧き水が出てるのか!!

 

美味しそう

すげーバカな感想

 

その泉に吸い込まれるようにメロスは身をかがめた。

いいじゃん! これで体力も回復できるでしょ!!

 

水を両手で掬(すく)って、一くち飲んだ。

飲んだ!!!

 

美味しそう!

食レポじゃねえんだぞ

 

ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。

いいねえ! 喉を冷たい息が通ってくのが伝わるわ!!

 

歩ける。行こう。

いけ!!

 

肉体の疲労恢復(かいふく)と共に、わずかながら希望が生れた。

義務遂行の希望である。わが身を殺して、名誉を守る希望である。

メロスいけるかもしんない!

そうだね。よかったね

うん!!!

 

斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。

夕方じゃね!???! やばいじゃん!!!

そうだね。時間ないね

うん!!!!

 

日没までには、まだ間がある。

私を、待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。私は、信じられている。

そうなんだよ。この状況で信じてもらえる人がいるってすごいことなんだぞ

 

私の命なぞは、問題ではない。

死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。

寝る前と言ってることが変わってる……!

 

私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。

勇者のメロスに戻ったんだ……!

 

走れ! メロス。

主題歌流せ

メロスにテーマソングはない

 

かまど! この小説すごいよ!!

知ってる知ってる

もっと早く読んどけばよかった!! 学校で教えろよ!!

教えてもらってるはずだよ

 

私は信頼されている。私は信頼されている。

先刻の、あの悪魔の囁きは、あれは夢だ。悪い夢だ。忘れてしまえ。

そうそう!! 分かってんじゃん!!

 

五臓が疲れているときは、ふいとあんな悪い夢を見るものだ。

メロス、おまえの恥ではない。

そういう人間っぽさも俺は好きよ!

 

やはり、おまえは真の勇者だ。

再び立って走れるようになったではないか。ありがたい!

気持ちいい〜〜〜!! 文章がいちいちカッコよくて、読んでるだけで気持ちがアガるね!!

文体を楽しむ心が芽生えてる。文学読むの向いてると思うよ

メロスも復活したし! やっぱ元気がいい人見てると楽しいよね!!

じゃあ文学向いてないかも

 

私は、正義の士として死ぬ事が出来るぞ。

でも、まだ終わったわけじゃないからね

 

ああ、陽が沈む。ずんずん沈む。

ここで間に合ってこそだから……

 

待ってくれ、ゼウスよ。私は生れた時から正直な男であった。

正直な男のままにして死なせて下さい。

ここからが正念場だぞ!!

 

路行く人を押しのけ、跳はねとばし、メロスは黒い風のように走った。

黒い風……すごい表現だね。純粋なメロスなのに、白とか赤じゃなくて”黒”で例えるんだ

たしかに。泥だらけでなりふりかまってないイメージなのかな?

言われてみれば、キレイなだけじゃないガムシャラな勢いは”黒”の方が感じるかも

こいつ、本当に本読むの初めてか?

 

野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駈け抜け、

市についてんじゃん! 宴をしてるってことはもう人が住んでるエリアに入ってるよね?!

街まではあとちょっとありそうだけどね

でも、これは間に合ったでしょ!! っしゃ!!!!

 

酒宴の人たちを仰天させ、

いいねいいね! ギャグ漫画みたいで微笑ましいわい!!

 

犬を蹴(け)とばし、

これは言わないほうがいいんじゃない?

 

小川を飛び越え、少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。

……まあまあ、犬は一旦忘れるか。いま、黒い風だもんな! しょうがないしょうがない

 

一団の旅人と颯さっとすれちがった瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。

「いまごろは、あの男も、磔にかかっているよ。」

大丈夫か…!? メロス、足止めるなよ…!?

 

ああ、その男、その男のために私は、いまこんなに走っているのだ。

その男を死なせてはならない。

めっちゃ緊張してきた。これ間に合うよな?

なんか分かんないけど、見てるこっちも緊張してきた。結末知ってるのに

ネタバレすんなよ?

ネタバレは義務教育中にくらってるはずだろ

 

急げ、メロス。おくれてはならぬ。

愛と誠の力を、いまこそ知らせてやるがよい。

これで間に合わなかったら、ゼウスに文句言うからな

 

風態なんかは、どうでもいい。

風態ってどういう意味?

見た目とか身なりのことだね

ああ、それは今さら気にしてらんないよな

 

メロスは、いまは、ほとんど全裸体であった。

あらっ

 

呼吸も出来ず、二度、三度、口から血が噴き出た。

もう極限状態だ。清水飲んでてよかったね、マジで

 

見える。

はるか向うに小さく、シラクスの市の塔楼が見える。

見えた!! もう街の中に入りましたね!!

まだ安心できなくない? 塔はまだ遠くにあるし

ここまできたら、あとは街中で「あれ? メロス来てるっぽくね?」って噂されると思うし、なあなあでなんとかなる気がする

走れメロスがそんな締りの悪い結末なわけないだろ

 

塔楼は、夕陽を受けてきらきら光っている。

皮肉にもきれい!

 

「ああ、メロス様。」

うめくような声が、風と共に聞えた。

誰だ!?

 

「誰だ。」

メロスは走りながら尋ねた。

メロスも言ってる!! 誰!? 王の家来?!

 

「フィロストラトスでございます。

マジで誰だ

 

貴方のお友達セリヌンティウス様の弟子でございます。」

ここで新キャラ参戦!? 盛り上がってきた!!!

走れメロスで、そんなスマブラみたいな盛り上がり方する奴いないって

 

その若い石工も、メロスの後について走りながら叫んだ。

そうだね。もういちいち止まってらんないからね

 

「もう、駄目でございます。むだでございます。

 

走るのは、やめて下さい。もう、あの方(かた)をお助けになることは出来ません。」

 

「いや、まだ陽は沈まぬ。」

メロスは迷ってないね。あとちょっとだもんな

 

「ちょうど今、あの方が死刑になるところです。

まずい!!

 

ああ、あなたは遅かった。おうらみ申します。

ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」

血を吐いて走ってる奴に「おうらみ申します」!? なんだコイツ!!

師匠が処刑されるんだから、そう言いたくもなるんじゃない?

山賊いなかったら普通に間に合ってたっつーの!!

 

「いや、まだ陽は沈まぬ。」

メロスは言い訳しないよ。カッコいいんだから

 

メロスは胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕陽ばかりを見つめていた。

走るより他は無い。

「赤く大きい夕日」……!!

 

ってことは……

 

 

 

 

 

もうこれしか残ってない

この写真だけ見せたら、みくのしんがまじめに読書してるとは誰も信じてくれないだろうな

 

よしよし……どうなんのよ……

 

「やめて下さい。走るのは、やめて下さい。

いまはご自分のお命が大事です。

一応、気遣ってくれてるんだ。それくらいヤバい状態なのかな、メロス

血を吐いて走ってるしね

 

あの方は、あなたを信じて居りました。

刑場に引き出されても、平気でいました。

メロスが走ってないときですら……

 

王様が、さんざんあの方をからかっても、メロスは来ます、とだけ答え、

強い信念を持ちつづけている様子でございました。」

やっぱスピンオフ出した方がいいって

 

「それだから、走るのだ。

信じられているから走るのだ。

俺もこのまま2人が別れるのは絶対やだ!!

 

間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。

問題ではあるだろ。目的を見失うなよ

 

人の命も問題でないのだ。

???

 

私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。

……すごいことを話してるね。これは読んでる人には分からない世界かも

たしかに抽象的だね。でも、なんとなく言いたいことは分かるんじゃない?

なんとなく、ね。でもこれを分かろうとするのは野暮かな

 

ついて来い! フィロストラトス。」

よく一回でこの人の名前覚えたな。メロス偉いぞ!

 

「ああ、あなたは気が狂ったか。それでは、うんと走るがいい。

ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。走るがいい。」

「走るがいい」? 偉そうだな。なんだコイツ

フィロストラトスに当たり強くない?

 

言うにや及ぶ。まだ陽は沈まぬ。

最後の死力を尽して、メロスは走った。

あれだけしゃべったのに全然ペース落ちてない!

メロスの肺活量まで気にして読んでるんだ

 

メロスの頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。

ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。

いけ……! いけ……!

 

陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、

メロスは疾風の如く刑場に突入した。

どっち!? これはいけた!? どっち!!??

 

 

 

間に合った。

間に合った!!!

走れメロスの応援上映?

 

「待て。その人を殺してはならぬ。

メロスが帰って来た。約束のとおり、いま、帰って来た。」

帰って来た!!!

コンディション万全の乙事主?

 

と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりであったが、

「あったが」?

 

(のど)がつぶれて嗄(しわが)れた声が幽(かす)かに出たばかり、

群衆は、ひとりとして彼の到着に気がつかない。

おいおいおいおい……

 

すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたセリヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。

待って待って! マジで待って!

 

メロスはそれを目撃して最後の勇、

先刻、濁流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、

頼む……!!

 

「私だ、刑吏! 殺されるのは、私だ。メロスだ。

彼を人質にした私は、ここにいる!」

気付いて……!

 

と、かすれた声で精一ぱいに叫びながら、ついに磔台に昇り、

釣り上げられてゆく友の両足に、齧(かじ)りついた。

あっ……あっ……あっ……!

 

群衆は、どよめいた。

気付いた

 

あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。

やった……やった……!!

 

セリヌンティウスの縄は、ほどかれたのである。

よかった〜!!

みくのしんってスポーツ観戦みたいに読書するね

 

拍手までしてるし

 

「セリヌンティウス。」

メロスは眼に涙を浮べて言った。

やっと2人が会話できるんだ。メロスがんばったね

 

「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。

私は、途中で一度、悪い夢を見た。

見たな〜。あのときはどうしようかと思ったけど

 

君が若(も)し私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」

抱擁…?

ハグのことだよ

すげえ……熱い男だな

 

セリヌンティウスは、すべてを察した様子で首肯(うなず)き、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。

いい友達だよ、ホント

 

殴ってから優しく微笑ほほえみ、

「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。

あ、そっちも?

 

私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。

ああ……セリヌンティウスにもそういう時間があったんだね……

 

生れて、はじめて君を疑った。

君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」

お互い殴り合ってチャラにするんだ。青春だな……!

 

メロスは腕に唸(うな)りをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。

……え?

 

ちょっと……

 

何笑ってんだよ

ごめん……でもこれは……

感動のシーンなのに、何がおかしいんだ

ちょっと……もっかい読んでいい?

 

メロスは腕に唸(うな)りをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。

唸りはつけなくてよくない???

いいだろ別に。ここで手加減しても意味ないんだし

でも殺傷力高める必要はないだろ

 

だって「お互い殴ってチャラにしようぜ」って言ってるのにさ

 

こうよ?

唸りつけてるな〜

 

殴られたとき、思ったより力強くてイラッとしたのかな

そんなチンケな男じゃないだろ

ごめんごめん。感動のシーンに水を差しちゃったね

 

「ありがとう、友よ。」

二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。

完璧な友情じゃん。こいつらカッコいいよ

 

群衆の中からも、歔欷(きょき)の声が聞えた。

めっちゃ湧いただろうな〜! 俺も生で見たかった

「走れメロス」に現地組はいないよ

 

暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、

どうよ!!ディオニス!! 見せつけてやってんじゃん!!

 

やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。

何て言うんだ…? こんなことになったら半端なことは言えないからな

 

「おまえらの望みは叶かなったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。

信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。

どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。

どうか、わしの願いを聞き入れて、

おまえらの仲間の一人にしてほしい。」

わぁ……

 

どっと群衆の間に、歓声が起った。

「万歳、王様万歳。」

……最高じゃん

 

ひとりの少女が、緋(ひ)のマントをメロスに捧げた。

メロスは、まごついた。佳き友は、気をきかせて教えてやった。

ひぅ……っ

 

「メロス、君は、まっぱだかじゃないか。早く そのマントを着るがいい。

この可愛い娘さんは、メロスの裸体を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」

う……グぅ……

 

勇者は、ひどく赤面した。

……。

 

(古伝説と、シルレルの詩から。)

ひぃ……ん……

 

 

ということで、3時間かけて見事「走れメロス」を読み終えました。

平均の6倍の時間はかかったものの、生まれてはじめて本を読み切ることに成功! ここまで読んだあなたもお疲れさまでした!

 

今まで本を読みきったことがないから、自分でもどうなるか分かんない。読み終わる頃には頭が一回り大きくなってそう

読む前はこんなことを言っていたみくのしんですが、実際は……

 

号泣

最後に泣くと思わなかった……

「本が読めない」って言ってる層にこんな逸材がいたなんて

こんなに幸せな終わり方になると思ってなかったから……

 

これは……もう……

 

月9でやった方がいい

そういう話じゃない

 

 

どうも感極まりすぎていたので、みくのしんが泣き止むのを待ってから改めて感想を聞くことに。

いえ〜い! 初めて本読みました! ブイ!

すごい読書体験だったね。これって「走れメロス」がすごいの? みくのしんがすごいの?

メロスだろ。本嫌いの俺でもこんなに心動かされるんだから

お前はもう本好きだよ

 

やっぱ「声に出して読んでいい」って状況が良かったかも。目だけじゃなくて耳からも入ってくるから、すごく楽だった

それがあるから感情移入しやすかったのかもね

読書家はそれを脳内だけでやってるんだもんね。すごいや

 

人生初の読了を経験したみくのしんですが、「映画一本見た気分」としきりに感じ入っていました。本って我々が思っているよりすごいものなのかもしれません。

 

本を読む習慣がない人にとって、読書はハードルが高いものです。一年で一冊も本を読まない人も珍しくないでしょう。

でも、人生で一度も本を読んだことがない男でもこんなに楽しめるのなら、僕らも久しぶりに何か読んでみようかなという気持ちになりますね。

 

今は過ごしやすい季節、いわゆる読書の秋。

みなさんもたまには本を読んでみてはいかがでしょうか?

 

 

終わりに

後日、みくのしんから読書感想文が送られてきました。そちらを紹介してこの記事の締めとさせていただきます。

 

 感動感情大感動。情景、浮かぶ浮かぶ。メロスの顔やその時の感情や汗まで手にとるようにわかる。すごい。

 今まで自分の中でストーリーを映像化することが出来なかったけど、なぜかメロスはそれができた。多分それは太宰治のとびきりZENKAIパワーのおかげなのだろうけど、こんなに短いのに、自分とは全く別の暮らしをしているのに、その至る所に自分のどこかがあって、ドキドキが止まらなかった。

 俺はメロスでありながらも王でありセリヌンティウスだし、フィロストラトスでもあれば、村の老爺の時もある。登場人物の感情の動きに直感的なリアリティを感じる。こういう物を頭に入れたかった。

 メロスが作中で生き続けて、服が乱れるのと同時に自分の心も丸裸にされた気分でした。本当に読み切った時の爽快感。喜びが止まらなかったです。土砂降りの雨上がりにステンドグラスを太陽が突くみたいなきもちのいいラスト。最高。

 表現の引き出しがエグすぎる。特に濁流。なんだあれは。濁流表現の父? 母? 何十年前の作品のその文字がここまで違和感なく読める太宰治に感服。いや、満腹かも。お腹いっぱい。ずるい。流石に嫉妬する。嫉妬できたんだ。おれ。

 

以上です。