エントリーNO.3　みくのしん

さあ、続いてはみくのしん選手の登場です！

初出場で一切のデータがないため、実力は全くの未知数。一体どんな駄々を見せてくれるのでしょうか。

「お前ら退屈なんだよ…。俺が本当の駄々を見せてやる」

試合開始！！

いきなり、フルスロットルのみくのしん選手！

「何が怖いのよ！！あんた！！！！」

対するママの語気も自然と荒くなります。

早くも駄々こねボルテージは最高潮に！

「ふでだよ！！！！！！！」

「はあ？腕？」

「筆だよ！！！！！」

「……筆って？」

「あんた何わけわかんないこと言ってんのよ！！！！」

「いいから、こっち来なさい！！！」

「やだよ！！そっちでっけぇ筆あんじゃん！！！」

「ないわよ！！！！」

ものすごい声量のやり取りが続きますが、意味は全くわかりません。

「じゃあ俺もうこうするもんね！！」

おっと、これはどういうことだ？！

両腕をユニフォームの中に入れてしまった！

これはいけません、みくのしん選手。

全く踏ん張りが効かなくなってしまいました！

試合終了！！

圧倒的な声量と運動量、独自の世界観で圧倒していたみくのしん選手ですが、両腕をユニフォームに入れる行為によって自爆してしまいました。

耐久タイムが気になるところです。

声量に定評があるみくのしん選手、感性に振り切ったプレイを見せつけてきました。

駄々こねの表現方針を大別すると、詳細な風景を創り出す具体派と、あえてイメージを定めない抽象派に分けられます。みくのしんさんは抽象派の駄々こねで勝負に出たようです。

試合が始まるやいなや肩を張ってキョロキョロと周囲を見回し「怖い、怖い」「嫌だよー」と絶叫する姿からは、一体どんな世界観なのかがまったく見えてきません。しかし、生物の根源的な本能である「恐怖」に訴えてくる迫力が確かにあります。

ネゴシエーションからのグラップリングといった定石を無視し、終盤では「もう、こうする」と言ってタイツに両手を突っ込むという意味不明なアクロバットを見せつけたみくのしん選手。ひたすら本能に訴えかけるスタイルは賛否が分かれるところではありますが、力強さは本物です。

退場前の発声ワードは「聞き取り不能」でした。

耐久タイム：3.46　芸術点：4.29　総合計：7.75

みくのしん選手、やはり耐久タイムが響いて上位陣には届かず…！

「はあ…はあ……、筆が……、怖えよぉ……」

後でドクターに診てもらいます。

エントリーNO.4　原宿

最後の駄々こねは原宿選手！

防御を固めたスタイルで登場しました。一体どんな駄々を見せてくれるのでしょうか？

「駄々をこねることで、僕の右に出るものはいません」

やる気満々の原宿、一体どんな駄々を見せてくれるのでしょうか？

試合開始！

え……？

「木だ……」

「………」

ピィィィィ！！！

「原宿選手、失格！」

今、一体何が起こったのでしょうか？

原宿選手、木になってしまったようです。

なぜ？

ちょっともうこれは駄々こねとかではないと思うのですが。

すみません、いったん水を飲んできます。

耐久タイム：0.00　芸術点：0.00　総合計：0.00

「………」

「何なの？」

表彰式

というわけで、第59回全国駄々こね選手権大会の結果は……

かんち選手の優勝です！！

現代社会においてもっとも抑圧されている感情。それは怒りではないでしょうか。

それも義憤のような正義の怒りではありません。単なる「ワガママ」……つまり「イヤだ」という気持ち。大人になるにつれて、子どもじみたワガママは発散の機会を失っていきます。

駄々こねは、人間性の開放です。内に秘めた幼児性を開放し、地団駄を踏んで叫ぶ。そこにもっとも純粋なエネルギーが表れるのです。

かんち選手の駄々こねには「まさにこれこそが駄々だ」と誰もが認めてしまうような輝きがあります。親への信頼、甘え、怒り。あらゆる感情が混ざった叫びには思わず心が震えてしまいます。

これからも現役の駄々こね選手として活躍し、幼児性の躍動を見せてほしいと強く願っております。

「ありがとうございます！まさか自分が全国大会に出場できて優勝までできるとは思いませんでした。今後は駄々の普及に努め、社会貢献していきたいと思っております」