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ストローを使ってジュースを飲むとき、決して忘れてはいけないこと。それは、鼻で息をすることだ。わたしは、ジュースを吸うことに夢中になるあまり、鼻で息をすることを忘れた結果、死にかけたことが今までに一万千五百十回あります。

 

商店街の喫茶店の窓際の席。わたしはジュースをストローで、鼻で息をするのを忘れないよう十分注意しながら、飲んでいた。すると、窓の外、雑貨屋の店先で、エプロンをした若い女性が風船を配っている姿が目に入った。

 

女性は、商店街の通りを行く人ひとりひとりに何やら声をかけては、にこやかにほほ笑み、そして風船を持った手を差し出す。喜んでそれをもらう人も、けっこうですというそぶりを見せてそのまま行ってしまう人もいる。それを見て、わたしは思わず鼻で息をすることを忘れてしまい、窒息しかけた。それもそのはず。何せわたしは、風船が大好きなのだ。

 

風船を見ると、テンションが上がる、そういう類の人間なのだ。だからわたしは、いてもたってもいられなくなって、飲みかけのジュースをテーブルに残したまま、喫茶店を飛び出していったのです。

 

エプロン姿の若い女性は、そんなわたしに、赤い風船をひとつくれた。

 

わたしはその風船を持ったまま、マンションの理事会に出席した。