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朝、ふつうの人が塗るよりも 2 倍おおくバターを塗ったパンを、ふつうの人より 2 倍長い時間をかけて食べ終えた私は、空いた食器をテーブルからシンクまで、ふつうより 2 倍慎重に運び、ふつうより 2 倍ていねいに洗った。(我が家のテーブルからシンクまでの距離は、普通の家のテーブルからシンクまでの距離よりも 2 倍離れている。)

 

わたしは、何でも人の 2 倍やらないと気が済まない質で、仕事は人の 2 倍やるし、遊びだって人の 2 倍遊ぶ。いつだって人より 2 倍はがんばらないと気が済まないし、人の 2 倍は楽しまなきゃ気がすまない。それはわたしがせいいっぱいに生きているからだ。

 

一度に放出されるヒトの精子は2~3億個といわれるが、そのうち受精するのは1個だけだ。そんな途方もない可能性の果てに、わたしたちは奇跡的に産まれてきた。せいいっぱい生きなくてどうする。せめてなんでも人の 2 倍はやらなきゃ、人生もったいない。わたしはそう考えている。

 

たっぷり時間をかけ丁寧に食器を洗い終えたわたしは、石を詰めて、敢えてふつうの人より 2 倍重くしたリュックサックを背中に背負って家を出て、ふつうの人の 2 倍重い足取りで仕事先に向かった。外はいつもの 2 倍、寒かった。

 

ところが、リュックサックに石を詰め込み過ぎたのが悪かったのか、その重さで体がふらつき、足がもつれて転倒。ふつうより 2 倍固い地面に頭を打ち付けそのまま意識を失った。

 

その後、ふつうより 2 倍遅く到着した救急車で病院に運ばれたわたしは、ふつうより 2 倍手元が定まらない看護師にふつうより 2 倍多く点滴をうってもらい、全治4カ月と診断された。(ふつうなら全治2カ月)

 

夕暮れ時、病室のベッドの上に半身を起して窓の外を眺めていると、黄昏の空を 2 羽の鳥が飛んでいくのが見えた。それを見てわたしは、ふつうなら 1 羽だろ、と思った。