手を洗う場所が、もし世界に一か所しかなかったら…
もしそうだったら、みんながそこに手を洗いに集まって来ます。
全ての人間と、全てのアライグマが、その場所に来て手を洗います。
地球外に生命体が存在するのかしないのかは分からないけど、
もし、宇宙のどこかにいたとして、
かつ、それがもし手を洗うタイプの生命体であった場合には、
その生命体も来て、手を洗います。
世界に一か所しかない手を洗う場所に、全ての人間と、全てのアライグマと、
全ての手を洗うタイプの宇宙の生命体がやって来ます。
もしそうなったら、そこには長い長い、順番待ちの行列ができます。
野を山を越えてどこまでも続く、永遠に続く、長い長い行列ができます。
そして、もしそうなったら俺は…
俺は、行列に並ぶ人たちにお弁当やお菓子、ビールに雑誌、雑煮などを売ってまわる、
売り子のアルバイトをしなければなりません。
そんな仕事やりたくないけど、でも、やらなければなりません。
なぜならそれは 「義務」 だからです。
ああ 嫌だ。
嫌だ 嫌だ やりたくない やりたくない。