常にミンティアを食べたい気持ちがあり、いつも持ち歩いている。

その日も例外なくポケットに忍ばせていた。

それはいつもと違うミンティアだった。ミンティアブリーズ。これは通常のミンティアより大粒で、たった1粒で5分間も清涼感が持続する。味も普通のよりおいしい。

バス停での待ち時間、私はここぞとばかりにミンティアブリーズをポケットから取り出した。左手の上でケースを振る。

 

カシャッ カシャッ カシャッ

 

うまく出てこない。

 

カシャッ カシャッ カシャッ

 

大粒だから詰まりやすいのかもしれない。

マラカスのような音を鳴らしていると、隣にいたAさんの視線に気がついた。見つかってしまった。

私はとっさの照れ隠しに「食べる?」と聞くと、Aさんは静かに頷いた。

 

カシャッ カシャッ カシャッ

 

私はすぐに後悔した。「食べる?」と聞いたせいで、マラカスプレイにAさんが注目する流れになってしまった。プレッシャーがずしりとのしかかる。

 

カシャッ カシャッ カシャッ

 

2人とも無言だ。Aさんの待ちの姿勢に焦る。せめて1粒でも出てくれればAさんに渡せるのに。

 

カシャカシャカシャカシャカシャカ!

 

出ない! お願いだから出てきて!

……いや、こういう時こそ落ち着きたい。そう思い直し、深呼吸して息を整えた。

ぶおん! とミンティアのケースに天空落としをかました。

大粒のミンティアが出てきた。しかも2粒。ちょうどぴったりの奇跡!

「すいません、お待たせしました」

はにかみながら、ミンティアが2粒のった左手をAさんの前に差し出した。恥ずかしい場面もあったが、Aさんの期待に答えられて誇らしかった。

 

 

Aさんはミンティアを2粒つまみ、口へ放りこんだ。

 

「あーーーーー!!」

 私は反射的にバカでかい声を上げてしまった。

 目をまんまるくしたAさんがこちらを見る。

「えーーーーー!!」

2粒いかれたショックが大きすぎて私は雄たけびが止まらない。

 

……ちょっと考えてみてほしい。

例えばミンティアが勢いで2、3粒ほど手に出ても、それはそのままあげるだろう。

でも今回は話がちがうじゃないか。

ミンティアブリーズは粒が大きいのだ。存在感でいえば通常のミンティア3粒分に相当する。しかも、散々マラカスとして演奏した挙句、私の手というステージに躍りでたのが2粒ぴったりなのだったら、1粒ずつ分け合うのが美しいフィナーレのはずだ。

 

私はまくしたてるようにミンティア論をAさんにぶつけた。あ、あなたはねぇ、とんでもないことをしたんですよ!

ところが、Aさんはキョトンとしている。私の大声にまだびっくりしながら「そう言われればそうかな?」という温度感で立っている。

そんなAさんを見て、我に返った。

私はなんて器の小さい人間なんだ。ミンティアの粒はこんなに大きいのに、何を小さいことを言っているんだ。

人は大粒のミンティアを前にした時、本性を現してしまうのかもしれない。

 

 

 

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