ある日俺はエッチなビデオを見ていた。アダルトビデオだ。男や女がセックスなどのエッチなことをする映像の、18歳未満は見てはならないビデオだ。
「ハァー、エッチだ。なんて性的なんだろう」
そのようなことを思いながら非常にエッチな気分で見ていた。
画面の中でセックスが行われている最中、やたら淫語を連発するAV女優が喘ぎながら言った。
「まんこの裏側擦れちゃってる!」
確かにそう言った。念のためもう一度再生して確かめたがやっぱりそう言っていた。俺はこの言葉が妙に気になって仕方なかった。
まんこの裏側って、どこだ。
一度気になるともうエッチな気分どころではなくなってしまった。どこかはっきりさせないと気が済まねえ。俺はビデオそっちのけで考え込んでしまった。
性行為の最中に擦れるのだから、おそらく膣内のどこかだろう。膣内の腹側のことではないか。なんとなくそんな気がする。一番しっくりくる。
いや待て。では膣内の背側はなんだ。その反対側だからまんこの表側か? 違う。膣内の背側を表側と表現するのは不自然だ。まんこの裏側の向かい側にあるからそれはもう別の物件だ。繋がっているにも関わらず別の物件扱いになるのは不自然だ。膣内の腹側をまんこの裏側とすると背側の表現に困ってしまう。よってまんこの裏側は少なくとも膣内の腹側のことではなさそうだ。膣内をエリア分けして考えるのはやめたほうがいいだろう。
まずまんこの表側がどこなのかはっきりさせるのが良さそうだ。表がわかれば自ずと裏もわかるというもの。まんこの表、やはりイメージするのは膣の外側だろうか。となればまんこの裏側とは膣内全てになるだろう。いや、やっぱり不自然だ。だったら「まんこの内側」というはずだ。そこをあえて「裏側」と言ったのだ。何か意味があるはず。
では膣~膣内を全てまんこ、まんこの表側と捉えてはどうだろうか。そうなると裏側とはすなわち粘膜の体内側。体内側が擦られることは常識では考えられない。もしそうなら出血どころではない。そんなのエロビデオではない、スナッフフィルムだ。
だが、そこまで擦られていると感じる「ほど」の感覚だったと考えればどうだ。膣内の、さらに内側まで擦られる「ような」感覚だったと。それなら説明がつく。だが確信は持てない。俺にはまんこが無いから。
女性ならば「まんこの裏側? ああ、あのへんね」とわかるのかもしれないが俺は男性だし、女性に「まんこの裏側ってどこ?」と聞く勇気は持ち合わせていない。
裏、表。考えれば考えるほどわからない。ここが裏かと思えば表のような気もする。ここは表かと思えば裏な気もする。まるでメビウスの輪だ。
まんこは、メビウスの輪だ。