刹那の見斬りを準備するの、大変だったろうなあ。
そんなことを思います。
刹那の見斬りとは、星のカービィスーパーデラックスというゲーム内にあるミニゲームです。
反応速度を競うゲームで、ガンマンの早打ちのようなイメージです。
何が大変って、メタナイト(ボス格のキャラクター)との交渉ですよ。
よくオファー受けてくれたな。
まず、クールそうな彼がおまけゲームに参加してくれるなんて想像がつかないです。
「楽しいミニゲームのお誘いです」
こんな件名でメタナイトの仕事用メールアドレスに送ったら、開いてもくれないでしょう。
無表情でスルーする姿が思い浮かびます。
「【1/23案件】刹那の見斬りのお誘い」
あくまで業務として淡々とお願いした方がいいでしょうか。
そして、メールを読んでくれたとして、よく参加オッケーになりましたよね。
もちろん、全力でメタナイトの顔を立てる企画にしています。
ボス待遇ということで、5人勝ち抜きの5番目に配置していますからね。
しかも、格式を保障するために4番目にデデデ大王まであてがっています。
もう一つのミニゲーム「メガトンパンチ」ではせいぜい中ボスまでしか出ないことを考えると、破格のキャスティングです。
その上で!その上でですよ。
参加を阻む要因が2つあるんです。
1つ目は、刹那の見斬りが和風テイストなこと。
参加する以上は、メタナイトにもそれは遵守してもらいます。
マントは取ってもらわなくてはいけませんし、宝剣ギャラクシアも控え室のロッカーにしまってもらう必要があります。
代わりに、無骨な侍のイメージでちょんまげを付けて草鞋を履いてもらいます。
2つ目は、負けたときに仮面が取れること。
早押しで相手よりも遅かった場合は、相手の剣がメタナイトの仮面を剥がし、素顔が暴かれることになります。
いやいやいや。
無理でしょう。
イメージ壊れちゃいますよ。
特に2つ目。
素顔はまずいです。
迫力ある印象の仮面とは裏腹に、顔は素朴でかわいいんです。
部下たちに見られたら、なめてかかられるリスクがあります。
メタナイトとしても、コンプレックスを隠すために仮面を付けてる気がしますしね。
考えれば考えるほど参加に至った経緯が分からなくなります。
金額がよかった?
気分でなんとなく?
それとも普段のメタナイトは、意外とノリのいい性格なんでしょうか。
あ、そうか。
製作者クラスが直々にお願いしに行ったのかもしれません。
宮本プロデューサーや桜井ディレクターから言われれば、さすがのメタナイトも断りづらいでしょう。
メタナイトのいる戦艦ハルバードにトランク一つで単身乗り込むプロデューサー。
最終決戦の部屋に着くと部下たちに席を外してもらい、メタナイトと一対一で交渉を進めます。
「メタナイト君、この刹那の見斬りって企画出てみない?絶対いい経験になるし、仕事の幅も広がると思うんだ」
「あっ、はい是非」
なるかなあ。