はなまるうどんの秋の天ぷら定期券。
ありがとうございました。
おかげ様で財布に優しい日々を過ごすことができました。

 

300円の定期券で約1ヶ月、100円ちょっとする天ぷらが一品無料になるんです。
バランスぶっ壊れてませんかね。
それはもう、3日にあげず通うことになりました。

 

最初は、素直に天ぷらが無料になる幸せを享受していました。
値段の最も高い170円のゲソ天を狙い撃ちにすることで、定期券の効果を噛み締めるのです。
こりゃあいいや。

 

しかしあるとき、ふと違和感を持ったのです。
言語化すると、「幸せすぎて怖い」みたいな感覚に近いです。
ただ、それだと新婚さん。
もっと近い言葉があるのではないかと必死で探しました。

 

あった。
「おしおき部屋に入れられるのではないか」です。

 

おしおき部屋。分かりますかね。
ファミコンのドラえもんのゲームで、ダイヤモンドや金塊を取り過ぎると閉じ込められる部屋のことです。
そこには狭いスペースに敵がひしめき合っていて、一定時間が経過しないと元の世界には戻れません。
レトロゲームで言えば、マイティボンジャックにも同様のシステムがあります。

 

その恐怖感が、私を襲ったのです。
はなまるうどんで。

 

確かに、どう考えてもおしおきに値するだけのゲソ天を消費してしまいました。
無料になるというシステムに甘えて。
これは、おしおき部屋に入れられてしまう。

 

次にはなまるうどんの平べったい陶器のお皿にゲソ天を乗せた瞬間、私は異次元に飛ばされてしまうでしょう。
薄暗い空間。
そこでは、はなまるうどんに初めて行ったときから一顧だにしなかった、イモ天が飛び交っています。
もちろんイモ天にはダメージ判定があり、当たるたびに体力が減っていきます。
おしおきは、もう始まっているのです。

 

私は必死でイモ天を避けます。
ときには空気砲でイモ天を撃墜します。
体力的にもきついですが、いつまでこの状況が続くのか分からない中で生き延びなければいけないのがつらいです。
精神力が膝から揺らぐ。
何度も諦めそうになる。

 

永遠にも思える時間をやり過ごすと、何の前触れもなく元のはなまるうどんのレジ前に戻されます。
まだ夢うつつな気分の私を尻目に、店員さんが精算を始めます。
「かけうどんの小おひとつと、天ぷら一品無料で130円です」

 

「安いな」の感想でようやく現実に戻って来た実感が湧いてくる。
私は生還したのです。

 

よかった。
もうゲソ天を頼むのはやめよう。

 

2日後。
私は、怖い思いをしたことをすっかり忘れてゲソ天を選んでいました。
おしおきの第二幕が、始まろうとしている。

 

 

 

 

他の「文字そば」を読む