問題:次の文を読んで考えなさい。

 

「君、外界から遮断されてるよね」

 

一体これは何のセリフか。

 

 

 

これはこの俺が中学二年生の頃にクラスの美人でキツめの女子に言われた呪いの言葉だ。

フライパンの焦げのように脳裏にこびりついて、29歳になった今でも頭から離れない。

頼むから助けて欲しい。

 

 

別に中学時代の俺は太平洋の孤島に置き去りにされていたわけでもないし、異次元に一人で引き込まれていたわけでもない。

普通の中学生だった。そのはずだ。

 

それなのに、これだよ。

 

「君、外界から遮断されてるよね」

 

だよ。

 

されてねえよ。遮断。

 

じゃあ俺に話しかけてるお前はなんなんだよ。

 

突破しているのかよ。遮断してる何かを。

 

どういうことだよ。

 

もちろん当時の俺もそう思った。普通の中学生だったからだ。

だから当時の俺は聞き返したんだ。

 

「え、何?」

 

って。

 

すると美人でキツめの女子は続けたんだ。

 

「君、まず目が悪いじゃん」

 

うん、悪い。そうだ俺は目が悪い。悪くて眼鏡をかけている。

それは認めよう。俺は眼鏡越しにしか世界を見ることができない。

だがなぜそれで外界と遮断されていることになるのか。

俺とお前の間にはこの眼鏡しかないというのに。

 

「でさ、あと耳も悪いじゃん」

 

悪い。耳も悪い。当時はよく言われたことを聞き返していた。

正確には、多分聞き取れてはいるが聞き取った内容に自信が持てなくて聞き直すということをよくしていた。

そういう性格だったから。

 

「これでもう、入力? がダメじゃん」

 

……なるほど、ダメだ。言われてみればそうだ。

そんなこと今まで考えもしなかったが確かに俺は入力がダメだ。

俺がショックを受けていると、その女子はさらに続けた。

 

「んでさ、滑舌も悪いじゃん」

 

悪い。俺は滑舌が悪い。よく言葉を噛んでいた。

あと発言したことを小声でもう一度言う変なクセもあった。

 

「字も汚いじゃん」

 

汚い。もう、すんごい汚い。時々自分でも読めない。今でも汚い。

 

「君、周りのことを見聞きして知ることもできないし、言葉や字で外に伝えることもできないじゃん。君、外界から遮断されてるよね」

 

ハァーーーーーー。

なるほど。

恐れ入った。

 

されてるわ。遮断。

 

言われて初めて気がついた。

 

当時の俺はそんなことを言われて怒るでもなくただ

 

「本当だ~」

 

と言うほかなかった。

 

あれからだいたい15年経とうとしているが、未だに俺は外界から遮断され続けているのではないかという気がしている。

 

俺はどうすればいいのか、考えを述べよ。

 

 

 

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