全くそれを感じさせることはないかと思うが、かれこれ半年以上アメリカに住んでいる。
この国にどれくらい住むのかなんて誰も教えてくれはしないが、おそらく5年は住むことになりそうだ。

そして俺は2児の父であり、今は家族と一緒にこの異国の地で暮らしている。面倒だった諸手続き、例えば住居契約、車の購入、テレビやネットなどの様々な契約関係も済ませ、病院や家の中の修理など経験すべき事は一通り済ませた。

するとあとは英語である。渡米して半年経つと仕事で日頃から英語を使わざるを得ない俺は緩やかながらも日々上達を感じているつもりであるが、家族はなかなかそうもいかないようだ。

子供の将来を思い、最初は辛いが近所にあるアメリカ人だけの幼稚園へ入れようと思っていたが体験入園で家族を待っていた本場英語の洗礼。妻と子は「なにいってるかわからない」と日本語さえも棒読みになるほど心を折られ「ディス・イズ・アメリカ!」と力説する俺をよそに日本人が半分以上を占める遠方の幼稚園への入園を決めた。

英語に関してはそんな苦労が何度となく家族の前に立ちふさがり、その度に「英語さえ分かれば日本より快適なのに」と嘆く日々。アメリカは住みやすい。全てがデカくて、全てがスローである。

それから数ヶ月、彼らの英語アレルギーは解消されつつあり妻は英会話学校へ通い始め、息子も徐々に英語に興味を持ち始めて来たようだ。
妻子から英語の質問を受けるたびに喜んで回答している。それを繰り返していけば彼らがいつか英語を話せるようになると信じて…。

「おとうさん、英語のこと聞いていい?」

あの日も息子がそう切り出してきた。

段々質問が増えているように思う。とても喜ばしいことだ。「いいよ」という俺に息子、

 

「じゃあ、チンポって英語で何ていうの」

 

「ついに来やがったな…」というヤツである。しかもここU.S.Aで。

 

「オウオウオウオウ…きやがったなテメエこの野郎。お前は絶対人前で言うだろうからな、俺たち家族がアメリカにいる内は絶対にチンポの英語は教えないからな!」

 

年頃の子供がウンコ、チンコに興味を持つことを俺は否定しないがここはアメリカである。もちろん正解はよく知っているが絶対に教える訳にはいかない。そんな気持ちが表に出てしまい子供相手につい声を荒げてしまった。しかし息子、さすがはムスコというだけあってチンポへの興味はハンパなく、「何でだよ!チンポの英語、教えてよ!」などとなおも食い下がろうとする。

 

「ダメダメダメェ!チンポの英語、ゼッタイ、オシエナイヨ!」

 

俺の喋り方が少しだけガイジンになったのは今しがた脚色した俺の演出だが、しかしこれは紛れもなく俺の中にいる潜在的な家族思いの外国人がそう言わせたものと捉えて看過して欲しい。

 

「教えてよ!チンポの英語!」

「ダメダメェ!」

「チンポの英語!!」

「ダメ!!教えない!」

 

俺のアメリカ生活、かくのごとき次第である。

 

 

 

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