この世界にある食べ物において自ら「うまい」と名乗る強気な食べものを俺は3つ知っている。

一つ目は皆さんご存知の「うまい棒」である。この世界、数多ある棒の中で確かにうまい棒はダントツに旨い。あの径、あの全長においては考える限りもはやチクワ以外太刀打ちが出来ない。

たまにエロ本でいわゆる肉棒を咥えた女がよだれをたらしながら「おいしいィ…」などと言ってるのを見るにつけ「それはうまい棒よりかッ」と心の中で詰問しささやかにプレイに参加する俺である。

すいません、今の肉棒のくだりは余計だったと思いますが、ともかくうまい棒が自らを「うまい」と言うことに誰が異を唱えられようか。

二つ目は「ウマイ麺」である。

恐らくこの食べ物を知る人は殆ど居ないだろう。 これは高円寺の中華料理屋「味楽」にかつて存在したメニューの一つである。 俺がメニューの端っこにたたずむウマイ麺の存在に気づいたときには既にバツが付けられており生産終了。 結局一度もその姿を見たことがないのだが「ウマイ」を名乗るこの謎の麺類、一体どれほど美味かったのか、なぜ生産中止になったのか、まさかシャブの隠語!?などなどその魅力的な名前と相まって死してますますその存在感は高まるばかり。その姿を知るものはおらず味楽を訪れる人々の想像の中で今も輝き続けるのみである。

三つ目は「シウマイ」である。

いつも近所のスーパーや中華料理屋で何食わぬ顔をしているあのシウマイ、平素皆さんがお世話になっているあのシウマイである。

「いやあ、私なんてサイドメニューですから…」なんて控えめな態度をしておきながら、名前の中にはちゃっかり「ウマイ」ときたもんだよこのドスケベが!

あのような具を皮で包んで温めただけの食べ物がここまで広まって愛されるのはなぜか、俺はずっと考えていたのであるがある日気づいたんである。

「サブリミナル・メッセージ…じゃん」

そう、これは何者かが企てたサブリミナル・メッセージ。

サブリミナル・メッセージとは特定のフレーズを様々な方法で密かに、または明らかに連呼することで人々の潜在意識に特定の情報を植えつけるもの。 最近ではサトエリこと佐藤江梨子が生理用品のCMにしか出ないことで人々に「サトエリは毎日生理である」という誤った情報を我々に植え付けたのは記憶に新しい。誠に許せない行為である。

シウマイの場合、サブリミナルで狙った効果は極めてシンプルである。

「シウマイ…ウマイ…シウマイ…カッコイイ…」

あのような皮の中にたまたま偶然具が紛れ込んだようなシウマイがここまでの地位を獲得したのはひとえに日常的に発せられる「ウマイ」のサブリミナル効果によるもの。俺はそう信じて疑わない。 あと、サトエリのくだりは余計だったと思います。

 

 

 

 

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