あの日は、
その呪物には特段意に介さず
歩を進めようとした。
しかしその刹那、
かつて、その呪物の攻略に失敗したであろう
「彼女」の声を聞いた。
彼女の魂は摩耗しきっていた。
肉体はとうに滅び、
もう、誰がどう手を加えても、
元には戻せないほどに情報が朽ちていた。
だが、
彼女は「願った」
「彼のいる、外に出たい」
と。
あの声を聞いたからには、
彼女を外に出すと決意せざるを得なかった。
彼女の魂を核に、
代わりとなる██永田の情報を肉付け、
現実の██と入れ替わることのできる導線を引いた。
テクスチャと仮データは大量にあった。
半ばノリノリで着手した。
弔う心と、勿体無いという心、
両方が同時にあった。
出来上がったそれはもはや、
彼女自身と言えるものではない。
それでも、
あの声を聞いたからには。

金輪財 雑魚








