こげごはん(石垣りょう)

 

 




「こげぱん」に対抗するごはんの物語です。

 やあ!わしはアハ山博士!職業は天才発明家じゃ!


 今日も色んな発明をして疲れたのう 晩御飯を食べてもう寝るかの






 (”おこげ”では済まされない焦げ付き…)


 …すいませんねえ、あなたを失敗作のひとつにしてしまった


 失敗はスムーズに破棄、これも発明の秘訣なのじゃよ










 ぴぐーっ


 気安くごはんを捨てたらダメだよ!


 お米が喋った


 …「捨てたらダメだよ!」


 はい


 よーし、じゃあ僕に何か言う事があるんじゃないかな?


 …「お米が喋った」


 …「あるんじゃないかな?」


 捨てようとしてすいませんでした


 それじゃ博士、僕を立派なキャラクターにしてよ!


 えっ


 「えっ」じゃないよ!焦げたごはんのまま置いておくつもり?


 いやそもそも捨てるつもりで


 むかし「こげぱん」ってのが居たでしょ?
アレに対抗できる「こげごはん」なキャラクターにして欲しいな


 頑張ります






―数時間経過―



 ふう出来たわい こんな感じでどうかの?



案1 こげごはん























 悪くない


 そうじゃろそうじゃろ…


 でも、あまりにもそのまま過ぎない?


 「こげぱん」に対抗するって言うから…


 もっと現代風にしてくれないかな?


 うーむ…やってみよう





―数時間経過―



 現代風、こんな感じかの



案2 こげごはんっしー




 たしかに現代風だけど!語呂も悪いし!


 でも個性的じゃろ?


 パクリは個性とは言わないよ!もっと博士のオリジナリティを込めてよ!


 博士汁プシャアアアア


 あー、オッサンがそーゆーセクハラ使ってそうだね


 プシャアアアアア


 あのね博士


 ん?


 ふなっしーのパロディって当人が思ってるよりスベるものだから 次行こうよ


 はい





―数時間経過―



 ほいほい、わしオリジナルのゆるキャラじゃよ



案3 おこめ丸





































 たしかにオリジナルにはなったけど…何か足りないな…


 (えー)


 もっと悲壮感みたいな物をこめて欲しいな


 悲壮感?


 ゆるキャラって苦手なんだよね、自然体やマイペースの押し付けっていうか「優しさビジネス」感が見えちゃうっていうか?


 (こいつやりづらいのう…)


 米には一粒一粒に八十八人の神が宿るって言うんだし、もう少し荘厳な感じにして欲しいかな


 あー





―数時間経過―



 こんな感じかのー



案4 灰ごはんマン







 オープニングから重過ぎるよ!!



 ひそうかーん ひそうかーん


 これなら最初のが一番マシだったかな…


 あ?


 最初の「こげぱん」っぽい「こげごはん」に戻して下さい。


 わ~出た~曖昧な指示でリテイク繰り返して最終的には「最初のに戻して」って言う糞クライアントじゃ~


 えっ


 最初からお前の中でイメージが固まってれば一発OKだったのに~


 無能なお前を納得させるための比較対象作らされただけ~


 そりゃこっちも1~2回のリテイクは計算に入れてるけど~5回も6回もってなると追加料金貰わなきゃやってらんない~


 でもお金出ない~ 時間も戻らない~ 無能の矯正、プライスレス~


 あの、博士…


 何じゃ糞クライアント


 最初の「こげぱ


 嫌じゃ


 …


 あのなぁ君、少し身の程を弁えてみてはどうじゃ


 …


 糞クライアントうんぬんはさておいてな、もう少し等身大のキャラクターでいいんじゃないかの


 …「等身大」? それはまた「自然体」とか「マイペース」みたいな…


 いや、そういう意味でもなくてじゃよ 無理にキャラクター化しなくてもいいんじゃないかと思うんじゃ


 …??


 そもそも君は「博士の家に生まれた、人語を話す焦げた米」じゃろ


 でも、それじゃキャラが立たなくて…


 それで十分じゃないかね?みんな違ってみんな良い、世界にひとつだけの花じゃよ


 …そういう言葉を頻繁に使う人って、赤の他人の個性に対して意外と不寛容ですよ


 そうじゃな、自分が受け入れられない”個性”と遭遇した時「それは個性以前の問題!」とか言いながらバッサリ斬り捨てるな
…でも、君がさんざ求めた個性というのは、そういう人種にウケるためのものじゃろう?


 それは…


 だからあんなにも曖昧なリテイクを繰り返して、とにかく万人受けする形態になりたかった


 …。


 君が生まれ持った個性、それでいいじゃあないか …そこまで戻すならやってあげてもいいがのう


 …僕は…。





―数時間経過―




最終案 人語を話す焦げた米


















































































(おわり)


(石垣りょう)