序文

 

長らく未調査であった遺跡から石彫、通称『ロセンズ・ストーン(Rossen’s Stone)』が発見された。彩色されており保存状態も良好だ。

何より、発見者を驚かせたのは、古き神々 クク・テトゥ(Kuku-Textu) が描かれていたことだ。

 

 

 

 

しかし、ククの名をあなたが聞いたことがなくても無理はない。

なぜなら、今やククを呼ぶものはいないからだ。

信仰の厚い者たちは、名を口にすることを畏れ、別名を与えた。

やがてある2文字『聖二文字』で別名を示すようになり、ついには別名の発音も失われてしまった。

 

 

そうして歴史の影に消えた神話が クク・テトゥ(Kuku-Textu) である。

しかし、本当にクク神話は完全に失われてしまったのであろうか?

 

 

 

 

 

答えは、

 

 

 

 

 

 

 

__否だ。

 

 

 

 

 

 

その姿は、各地の碑や伝承の中にその断片を見つけることができる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ククは三十七の姿を持ち、地上に顕現する蛇神と伝えられる。

描かれた主要な神の伝承を通して、ククの秘密を解き明かしていこう。

 

 

 

 

 

馬の神 ムスサノー(M’susanoo)

 

首府の中の本当の町より生まれたムスサノー。

新しき座に就き、北には朝もや西、南、東に裏はあり

谷を越えた湖の町新しき戸が待つ。新しき八柱の神は西の船着き場の桟橋に顕現せん。

 

-宮廷者シマズの歌 –

(Song of Court man the Simaz)

 

馬神ムスサノーを讃えた歌である。現在でも周辺地域では休日に馬の競技会が行われており、ムスサノーとの関係は色濃い。

 

 

 

 

 

疾き姿へ至る サーキォ(Zaxquio)

川を越え大宮殿にサーキォは生まれる。浮間に船を渡し赤い羽根舞い散らせ、内へ回る。

その大いなる先にて、御身捨て疾きリンカクスクへと変わる。

 

恐れることなかれ、信仰を降りることはない。リンカクスクは新しい牙を得るだろう。

 

-ジャック・レインボーの社石碑 –

(Jack Rainbow’s shrine monument)

 

民族研究者ジャック・レインボー氏が発見した社の石碑の言葉である。

クク・テトゥ(Kuku-Textu)がリンカクスク・テトゥ(Lincacuzc-Textu)という別の神に変わる(化身ではない!)内容だ。

信仰を揺るがす内容に衝撃を受け、氏は地域信者へ聞き取り調査を行った。

 

タチアンゴの祭壇は異なる神を繋ぐ」

真っ直ぐ通る運は転がっていくものだ」

 

 

と、全く意に介さぬようであったという。

 

 

 

 

 

 

走る者 スオー( Suo )
歩む者ゾブー( Zob )

 

大なる月昇りしとき、八人の王子これを迎えん。三羽の鷹、空をめぐり、スオーよりゾブー生まれん。

無駄とも思えし千の谷を越え、スオーは東の都で旅を終えん。

 

ゾブーの旅は続く。

秋の平原を抜け街には金の糸天幕を張り千の言葉を聞けん。

 

-トゥーカマシ叙事詩 –

(Epic of Toecamci)

 

東への凱旋が記された叙事詩だ。

二神は分かちがたく「スオー・ゾブー神」と合わせて呼ぶ信仰形態もある。

また、スオーの神速を讃え、「スオー・ガイソック」と呼ぶ向きもある。反対に「一歩ずつ歩む者」の語は「コクティ」だ。

 

西へ向かうスオーも描かれており、こちらはコクティ。「スオー・コクティ」は、ぶどうの園を抜け、やがて竜の王となった。

 

 

 

 

 

 

神の扉を開く蛇 トッカド(Toxcado)

 

東の都のトッカドは新しき橋3つの函と3本の棍棒を手にした。

川の先横たえる浜にひときわ大きな船が攻め寄せている。

勇敢に戦った魂はオドゥハラに迎えられる。

 

さらに西を目指すなら熱い海があるが、その先はフィグシ・ニ・フォンの加護の及ばない土地だ。

 

-ツールキン・ガイソック 西への旅 第3章 –

(Journey to the West, Tulkien Gaisoc 3)

 

トッカド神の記述に満ちた旅行記だ。

補足すると、熱い海の西の国は、うろこのない魚、柑橘類や葉を食し、職人は弦楽器のような打楽器、鉄の騎馬を作るという。

さらに西では、朝を喰らいし国ミャー、黄金寺の古国ドス、太陽塔がそびえる国ヤテを旅していく。

 

そして最後には神の扉を開き、物語は締めくくられる。

 

 

 

 

 

 

 

東の蛇 ジョハン(Johan)
有翼の蛇 ナタリ(Natar)
茨の蛇 ミット(Mittho)

 

ジョハンは日の暮れる里に降りる。南に千人、北に千人住んでいるのが見えるだろう。

私は孫であり子である。天空の道を目指すのであれば、千の葉より出でしナタリの道に入れ。見よ。4つの街道咲く。

さもなくばミットの支配する茨の道をいくことになるだろう。

 

-ホムドアの教え 第2章 第4節 –

(Homdoa’s Lore 2:4)

 

ジョハン(Johan)の道は2つに分かれる。

ナタリ(Natar)の支配する天に続く道、ミット(Mittho)の支配する茨の道だ。人の生きる道の戒めのようである。

 

茨の道ミットの半ばにヴシクー(vsicoo)という9つの青銅製の半牛半人立像が屹立しており、恐ろしい方法で背信者を罰すると伝えられる。

そしてナタリの天の道も油断はできない。天空への港はいくつかの階層があり、信者は自身の向かう先を心得ておらねばならないからだ。

 

 

 

 

 

 

 

おわりに

 

ククの神話は多岐にわたる。

たとえば八人の王子を中心とした蛇伝説、福が生まれながらも、最奥に多くの魔が待ち構えるとオーメン(Omen) 。

北方の「包む者」あるいは宇宙都市の宮殿を意味するウーツェンマイア(U’tzenmaia)などだ。

 

ここでは紹介しきれない神々もいるが、最後にシュトーの中心を飾る蛇神を讃える歌を紹介して締めくくろう。

 

 

 

 

 

 

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