大地が混沌に包まれていた時代。ティカは太陽神の座を巡って、兄弟である シ・テトゥ(Zi-Textu)と対立し戦いに敗れ、地の底へと逃れ、死と再生をつかさどる冥府の神となった。
冥府は広く、神と言えど目が届かなかった。
それゆえ、ティカはその身を8つの蛇に変え、冥府の各所を見張らせた。
-テトゥノマキア 第1章 第1節 –
(Textunomaquia 1:1)
これが、よく知られるティカ像である。
続いてティカの分身・化身ともいわれる、8匹の蛇について説明しよう。
○子午線の王子 ナボック(Navoc)
ティカの八匹のうちの一匹、若き王子ナボック。エメラルドの長躯をもち北と南とを結び、自ら子午線となりて東方と西方とを分ける。その頭に赤い羽根をあしらいし王冠を戴き、死後に楽園へといざなうことを約束せん。
-良きプラチネーゼ達に宛てた手紙 序説 –
(Epistle to the Platinumaisers Introduction)
信仰の対象として、非常に人気が高く、その尾は、現地のプラチナテーブルと呼ばれる台地に下ろされているとされ聖地になった。人々はこぞってこの地に住居を構えようとした。それゆえこの地区は富裕層が多く占めプラチネーゼと呼ばれる。
○毒と薬草の神 ファクトジーン(Pharcutzen)とユーンロック(Yunroc)
有史以来、人々は獲物を捕らえるのに毒を用い、傷を癒すのに薬草を使った。
毒と薬は元来同じもので、ともに生活と切り離すことの出来ない要素であり、
それは叙事詩として17枚の粘土板のうちのひとつに刻み付けられた。
ファクトジーンとユーンロック。蛇の体は互いに巻きついて見分けがつかなかった。
千の川を超え、幾年もが過ぎたある日、女神マル・ノルティがその体に噛み付いた。その牙の袋からは「災厄」出で、二匹の流した血が池を作った。
苦痛に耐えかねファクトジーン、苦く味の渋いヨモギの谷へ落ちていった。
ユーンロック、その苦痛に身をくねらせながらも、月明かりの照らす島で、新しい木々の茂る場所を見つけ、その傷を癒した。
– フィリカイ・ユソー叙事詩 粘土板7-
(Epic of Philicae Juzzot Tablet7)
○転生の神 ギザ(Gixa)、従者 ビービャ(Bibra)
子午線の王子ナボックは「天国」の存在を暗示しているが、相反する要素の「転生」を司る神もまた存在し、臨死体験についても説明がなされる。
全ての死者は、ジャガーの門より入りて死者のための新しき橋を渡る、そこには銀の玉座に座すギザがいまし、審判を始める。生前に善行を積んだもの、二本の橋を三つほど越した神の田園の先、上の世界へと転生す。善行の足りないもの、従者ビービャにより現世へと戻さるる。
現世への道は長く、霞煙る関門を抜け、神々の住まう谷にて眠る。銀の玉座より戻りしもの、六本の木の間で目を覚まし、生者と再び合間みえん。しかし彼のものの両目、中は黒曜石の黒い光を宿す。死を見たものの証なり。
-カコムジョシュアの書 第20章 第4節-
(Cacom Josua 20:4 )
ティカ・テトゥ神話が我々の生活に、いかに根ざしたものなのかご理解いただけたと思う。最後にこの地に伝わる、大いなる手より生まれし4人の神を讃える歌を紹介する。
○大いなる手より生まれし4人の神
__あぁ、大いなる手より生まれし4人の神よダァシエリエス
チョーダ(Chogda)、西日、傾ぶきて里暮れる頃、未だ寝ず。
煙る霞の関門を抜け、明(あかつき)を治むる神の宮の前に立つ。
タンザ(Tanza)、その身は長く限りなく、東と西を結ぶ。
西の桟橋に船着きて、ハンザモックと交わりて、その罰に階級を九段下へと落とされ、中の国へ至る。
マル・ノルティ(Mar-Nart)、2つの分かれた尾を持つ女神。
働く女の守護者。新たに魂を宿し、4つの谷を越えたその先に赤き坂見つけ、ため池に山の王ありや。
ハンザモック(Hanzamoc)、清く済んだ白き川に住まう。
ある日金の糸を撚りて、高きを目指しその身を押し上げ天空へ伸びる大樹とならん。
__あぁ、大いなる手より生まれし4人の神よ
ダァシエリエス
ダァシエリエス
-作者不詳 ニ・デューサンクに伝わる民謡-
(Anonymous Folklore of Ni-Deuxsanc)
謝辞:
ティカ・テトゥ神話を体系的にまとめたこの「ロセンズ・ストーン」の発見により、各地の伝承に頼らざるをえなかった編纂は劇的に進み、研究者内外に広く知られることになりました。こちらの考古学上の大変貴重な資料を快く提供してくださった「東京地下鉄株式会社」に感謝の意を表します。
※参考資料:東京メトロ 駅の情報・路線図